「レンタルではなく買った方がいいのでは」——ポータブルトイレやシャワーチェアの購入を検討し始めると、多くの人がこの疑問にぶつかります。介護保険の特定福祉用具販売は、腰掛便座や入浴補助用具など9品目を対象に、購入費用の一部を介護保険から支給する制度です。支給限度基準額は同一年度で10万円、自己負担割合に応じて7〜9割が払い戻されます。対象品目の内訳、限度額の仕組み、申請方法、福祉用具貸与や住宅改修費との違いまで、厚生労働省と複数の自治体の一次情報にもとづき解説します。
特定福祉用具販売とは何か
特定福祉用具販売とは、入浴や排泄などに使う福祉用具のうち、他の人が使ったものを再利用することに心理的な抵抗が大きい品目に限り、レンタルではなく購入というかたちで介護保険の給付対象にする仕組みです。要支援・要介護の認定を受けた人が、都道府県知事等の指定を受けた「指定特定福祉用具販売事業者」から対象品目を購入した場合に、費用の一部が介護保険から支給されます。
制度上の位置づけ
介護保険のサービスの多くは、訪問介護やデイサービスのように毎月利用するたびに費用が発生し、要介護度ごとの区分支給限度基準額の範囲内で給付されます。これに対し特定福祉用具販売費は、後述する住宅改修費と同じく、区分支給限度基準額とは別枠で、購入というかたちで一時的に支給される給付です。年度ごとに10万円という独立した上限が設けられている点が、通所介護や訪問介護などの月々の利用料とは異なる特徴です。
福祉用具貸与との違い
介護保険で使える福祉用具には、レンタルの「福祉用具貸与」と購入の「特定福祉用具販売」の2種類があります。車いすや特殊寝台のように、体格や状態の変化に応じて交換が必要になりやすい用具はレンタル(福祉用具貸与)が原則です。一方、腰掛便座や入浴補助用具のように、肌に直接触れたり衛生面での抵抗が大きかったりする用具は、他人が使ったものを再利用しにくいため、購入の対象になっています。福祉用具貸与の詳しい対象品目や料金の仕組みは、福祉用具貸与とは(介護保険でレンタルできる品目と要介護度別の対象)で解説しています。
なぜ購入という選択肢があるのか
ポータブルトイレやシャワーチェアなどは、レンタル品として何度も消毒・再生して貸し出すことが技術的にも心理的にも難しく、レンタルにすると割高になりやすいという事情があります。そこで、これらの品目については購入した費用の一部を介護保険が負担する形にすることで、利用者が新品を安心して使いながら、費用面の負担も一定範囲に抑えられるように設計されています。制度開始当初からこの考え方は変わっておらず、後述するように対象品目が増えたあとも「肌に直接触れる・衛生面での再利用が難しい」という選定の軸は一貫しています。
対象となる9品目
特定福祉用具販売の対象品目は、厚生労働大臣が定める告示(平成11年厚生省告示第94号、その後の改正を含む)で定められています。2026年9月時点の対象は、排泄に関する3品目、入浴に関する2品目、移動に関する4品目の合計9品目です。品目ごとに対象となる製品の範囲が細かく決められているため、同じ名称の製品でも仕様によって対象外になることがあります。
排泄に関する3品目
- 腰掛便座:ポータブルトイレ、和式便器の上に置いて洋式化する据置式便座、補高便座、立ち上がり補助機能付き便座などが該当します。
- 自動排泄処理装置の交換可能部品:尿や便を自動的に吸引する装置のうち、レシーバー・チューブ・タンクなど、排泄物や身体に直接触れて洗浄が難しい部分が対象です。本体はレンタル(福祉用具貸与)の対象で、購入対象になるのは交換可能な部品のみという点に注意が必要です。
- 排泄予測支援機器:センサーで膀胱内の状態を感知し、排尿のタイミングが近づいたことを本人や介護者に通知する機器です。2022年(令和4年)4月に対象品目へ追加されました。
入浴に関する2品目
- 入浴補助用具:入浴用いす(シャワーチェア)、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルトなどが含まれます。
- 簡易浴槽:空気式・折りたたみ式・組み立て式などで、居室に浴槽を持ち込んで入浴できるようにするものです。排水用ホースや浴槽の温度を保つための付属品も対象に含まれます。
移動に関する4品目
- 移動用リフトのつり具の部分:床走行式や据置式のリフト本体はレンタルの対象ですが、体に直接触れるつり具(スリングシート)の部分だけは購入対象です。
- スロープ(持ち運びを前提とした可搬型スロープを除く。一般に「固定用スロープ」とも呼ばれます):玄関や段差に固定して設置するタイプのスロープです。可搬型スロープは引き続きレンタルの対象になります。
- 歩行器:歩行を補助する器具のうち、車輪やキャスターが付いた「歩行車」を除いたものが対象です。
- 歩行補助つえ:松葉づえを除く、単点杖(一般的な杖)と多点杖(先端が複数に分かれた杖)が対象です。
| 分類 | 対象品目 | 対象に加わった時期 |
|---|---|---|
| 排泄 | 腰掛便座 | 2000年4月(制度施行時) |
| 自動排泄処理装置の交換可能部品 | 2000年4月(制度施行時) | |
| 排泄予測支援機器 | 2022年4月 | |
| 入浴 | 入浴補助用具 | 2000年4月(制度施行時) |
| 簡易浴槽 | 2000年4月(制度施行時) | |
| 移動 | 移動用リフトのつり具の部分 | 2000年4月(制度施行時) |
| スロープ(固定用) | 2024年4月 | |
| 歩行器(歩行車を除く) | 2024年4月 | |
| 歩行補助つえ(単点杖・多点杖) | 2024年4月 |
5品目から9品目に増えた経緯
「特定福祉用具販売は5品目」という説明を目にすることがありますが、これは制度施行時点(2000年4月)の姿です。2026年9月現在の対象は9品目まで広がっているため、古い情報のまま把握していると、実際に使える用具を見落としてしまう可能性があります。
2000年の制度施行時は5品目からスタート
対象品目の根拠となる告示(平成11年厚生省告示第94号)自体は1999年(平成11年)に公布されましたが、実際に介護保険制度がサービス提供を開始したのは2000年4月です。この時点で特定福祉用具販売の対象は、腰掛便座・自動排泄処理装置の交換可能部品・入浴補助用具・簡易浴槽・移動用リフトのつり具の部分の5品目でした。この5品目は、以後20年以上にわたり基本の枠組みとして使われてきました。
2022年に排泄予測支援機器を追加
2022年(令和4年)4月1日、令和3年厚生労働省告示第80号により、排泄予測支援機器が新たに対象品目に加わり、6品目になりました。夜間の排泄ケアの負担軽減や、失禁の不安から生活範囲が狭まってしまうことへの対策として導入された比較的新しい品目です。従来の品目と異なり、支給申請の際に医師の所見が確認できる書類(主治医の意見書、サービス担当者会議での医師の所見、ケアプランに記載された医師の所見のいずれか)の提出が求められる点が特徴です。
2024年の選択制導入で3品目を追加
2024年(令和6年)4月1日には、固定用スロープ・歩行器(歩行車を除く)・歩行補助つえ(単点杖・多点杖、松葉づえを除く)の3品目が特定福祉用具販売の対象に加わり、現在の9品目になりました。これらはもともとレンタルのみの対象でしたが、比較的単価が安く長期間同じ用具を使い続けるケースが多いことから、レンタルと購入のどちらかを利用者が選べる「選択制」が同時に導入されています。選択制の詳しい考え方は、貸与の側から解説した福祉用具貸与とはでも取り上げています。
2000年の制度施行時は5品目でしたが、2022年に排泄予測支援機器、2024年にスロープ(固定用)・歩行器・歩行補助つえが加わり、現在は9品目が対象です。
支給限度基準額(年間10万円)の仕組み
特定福祉用具販売の支給限度基準額は、要介護度にかかわらず一律で、同一年度(4月1日から翌年3月31日までの1年間)で10万円と定められています。訪問介護やデイサービスの上限である「区分支給限度基準額」と名前が似ていますが、両者は別の制度です。混同しやすい点なので、違いは後の章であらためて整理します。
同一年度10万円という考え方
10万円という枠は、1回の購入だけでなく、同一年度内であれば複数の品目・複数回の購入を合算して使うことができます。たとえば同じ年度内に腰掛便座を3万円で購入し、その後に入浴用いすを4万円で購入した場合、合計7万円分の枠を使ったことになり、残り3万円分まで別の品目を購入できます。仮に年度の後半に購入した場合でも使える枠が減るわけではなく、購入した時点でその年度の枠から差し引かれる形で計算されます。年度が変わればまた新たに10万円の枠が使える点も、住宅改修費(原則1住宅につき生涯で20万円)との大きな違いです。
自己負担割合との関係
購入費用のうち介護保険から支給される割合は、利用者の所得に応じた自己負担割合(1〜3割)によって決まります。自己負担割合が1割の人であれば、10万円分の購入に対して9万円が介護保険から支給され、自己負担は1万円で済みます。2割・3割負担の人は、それぞれ自己負担が2万円・3万円になります。自己負担割合は毎年、所得の状況に応じて見直されるため、前年度と同じ割合とは限らない点にも留意が必要です。
同一年度内に10万円分を購入した場合の内訳です。自己負担割合は所得に応じて1〜3割のいずれかに決まります。
区分支給限度基準額との違い
訪問介護やデイサービスなど月々利用する居宅サービスには、要介護度ごとに区分支給限度基準額という別の上限が設定されています。特定福祉用具購入費はこの区分支給限度基準額には含まれず、独立した年間10万円の枠として扱われます。そのため、訪問介護やデイサービスを限度額いっぱいまで使っている月でも、福祉用具の購入費とは別枠で申請できます。同様に、後述する住宅改修費(原則20万円)も区分支給限度基準額とは別枠で管理されており、月々のサービス利用計画とは切り離して考えることができます。
対象となる利用者の条件
要支援・要介護共通で利用できる
特定福祉用具販売は、要支援1・2、要介護1〜5のいずれの認定を受けた人でも利用できます。福祉用具貸与の一部品目(車いすや特殊寝台など)が原則として要介護2以上でなければ利用できないのと異なり、特定福祉用具販売には要介護度による品目の制限がありません。これは、対象品目が身体機能の低下度合いにかかわらず必要になりやすい排泄・入浴関連の用具中心であることによります。要支援1・2の人が利用する場合は「介護予防福祉用具購入費」という名称になりますが、対象品目・限度額の考え方は要介護者向けの制度と同じです。
在宅生活者が対象
特定福祉用具販売費が支給されるのは、自宅など在宅で生活している要支援・要介護認定者に限られます。特別養護老人ホームや介護老人保健施設のような介護保険施設に入所している場合、施設側が必要な用具を含めたサービスを一体的に提供する仕組みになっているため、個人単位での特定福祉用具購入費の申請対象にはなりません。
施設入所者は原則対象外
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、グループホームなど「住まい」に該当する施設に入居している場合は、居宅サービスの一種として特定福祉用具販売を利用できることが多い一方、介護保険施設(特養・老健・介護医療院)に入所している場合は対象外になります。介護保険施設は、施設の運営費の中に必要な設備・用具の提供分があらかじめ含まれているため、入所者が個人単位で別途保険給付を申請する仕組みにはなっていません。入院中で退院後の在宅生活に備えて購入したい場合の扱いも自治体により案内が異なるため、退院時期が見えてきた段階で早めに相談しておくと安心です。入居している住居の種類によって扱いが変わるため、迷う場合は担当のケアマネジャーや市区町村の窓口に確認することが確実です。
購入までの流れと申請方法
指定事業者から購入する
特定福祉用具購入費の対象になるのは、都道府県知事等から「指定特定福祉用具販売事業者」の指定を受けた事業所で購入した場合に限られます。指定を受けていない一般の店舗やインターネット通販で同じ製品を購入しても、介護保険からの支給対象にはなりません。指定事業者には福祉用具専門相談員(一定の国家資格保有者、または福祉用具専門相談員指定講習の修了者)が2人以上配置されており、利用者の状態に合った用具の選定を相談できます。福祉用具専門相談員として業務にあたれる国家資格には、保健師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・介護福祉士・義肢装具士などがあり、これらの資格を持たない場合は都道府県が指定する講習の修了が必要です。
ケアプランへの位置づけ
購入を検討する際は、まず担当のケアマネジャーに相談し、必要に応じてケアプラン(居宅サービス計画)に福祉用具購入の位置づけを記載してもらいます。あわせて、指定事業者の福祉用具専門相談員が利用者の身体状況や生活環境を確認したうえで「福祉用具サービス計画」を作成し、選定した用具が適切かどうかを整理します。この計画書には、なぜその用具が必要なのか、どのような目標のために使うのかが具体的に記載され、市区町村が支給の可否を判断する際の材料にもなります。ケアマネジャーが関わらない自己判断だけでの購入は、後から保険給付が認められない可能性があるため避けたほうが安全です。
償還払いと受領委任払い
費用の支払い方法は、利用者がいったん購入費用の全額を事業者に支払い、その後市区町村に申請して保険給付分の払い戻しを受ける「償還払い」が原則です。自治体によっては、利用者が自己負担分のみを事業者に支払い、残りの保険給付分を市区町村が事業者へ直接支払う「受領委任払い」を選べる場合もあります。受領委任払いは、購入時にまとまった現金を用意する必要がないという利点がある一方、利用できるのは市区町村へあらかじめ登録された事業者に限られます。受領委任払いを利用できるかどうか、対象となる事業者があらかじめ登録されているかどうかは自治体ごとに異なるため、居住地の窓口での確認が必要です。
申請に必要な書類
共通して必要になる書類
多くの自治体で共通して求められる書類は、福祉用具購入費支給申請書、購入した福祉用具の領収書(被保険者本人宛て)、商品のパンフレットや仕様書、福祉用具サービス計画書などです。振込先口座の情報や、受領委任払いを利用する場合は委任状が追加で必要になることもあります。領収書は被保険者本人宛てに発行してもらう必要があり、家族名義で支払った場合に申請が受け付けられないケースもあるため、購入時に宛名を誰にするかを事業者へ伝えておくと手続きがスムーズです。
医学的所見が必要なケース
排泄予測支援機器を購入する場合は、他の品目と異なり、医師の所見が確認できる書類の提出が必要になります。具体的には、要介護認定の際に作成された主治医意見書の写し、サービス担当者会議における医師の所見の記録、ケアプランに記載された医師の所見、個別に取得した医師の診断書等のいずれかが該当し、どれを用意すればよいかは自治体によって案内が異なります。機器の特性上、身体状況に適した機種を選ぶために医学的な判断が求められることが理由です。
事前申請が必要になるケース
特定福祉用具購入費は購入後の事後申請(償還払い)が基本ですが、自治体によっては、同一品目の再購入、既製品ではないオーダーメイド品の購入、排泄予測支援機器の購入について、事前に相談・申請を求めているところがあります。事前申請の要否や様式は自治体ごとに差があるため、購入前に必ずケアマネジャーまたは福祉用具専門相談員、市区町村の介護保険担当窓口に確認することが重要です。
再購入・買い替えのルール
原則は1回
同じ種目の福祉用具を購入できるのは、原則として1人につき1回です。年度をまたいで長期間使い続けることを前提とした給付のため、年度が変わったことだけを理由に、同じ種目のものを理由なく何度も購入することは認められていません。
例外として認められるケース
次のような場合には、例外的に同一種目の再購入が認められることがあります。
- 一般的な耐用年数を超えて用具が経年劣化し、修理不能なほど破損した場合
- 要介護度が上がるなど身体状況が著しく変化し、既存の用具では対応できなくなった場合
これらに該当する場合でも、市区町村への申請時に理由書の提出や聞き取りが行われるのが一般的です。
認められないケース
一方で、単に古くなった・汚れが気になるといった衛生面だけを理由にした買い替えや、温水洗浄機能など標準的な機能ではない付属機能のみが故障した場合の買い替えは、再購入が認められないことがあります。福祉用具は消耗品ではなく、長く使うことを前提に選ぶ必要がある点を踏まえておくと、購入時の失敗を減らせます。判断に迷うケースでは、購入前に市区町村の窓口へ事情を説明し、再購入が認められそうかどうかを確認してから手続きを進めると、購入後に給付を受けられないという事態を避けやすくなります。
福祉用具貸与との違いと選び方
基本的な違い
| 項目 | 福祉用具貸与(レンタル) | 特定福祉用具販売(購入) |
|---|---|---|
| 費用負担の考え方 | 月々のレンタル料の1〜3割 | 購入費用の1〜3割(限度額内) |
| 支給限度基準額 | 区分支給限度基準額に含まれる | 区分支給限度基準額とは別枠、年間10万円 |
| 対象品目の主な性質 | 床ずれ防止用具、認知症老人徘徊感知機器など、体格や状態の変化に応じた交換が必要になりやすいもの | 簡易浴槽、移動用リフトのつり具の部分など、他人が使ったものの再利用に抵抗が大きいもの |
| 要介護度による制限 | 一部品目は原則要介護2以上 | 要支援1から要介護5まで共通 |
貸与と購入それぞれの対象品目や料金の詳細は福祉用具貸与とはで解説しています。
選択制対象品目での選び方
固定用スロープ・歩行器・歩行補助つえの3品目は、貸与と購入のどちらも選べる「選択制」の対象です。身体状況の変化に応じて用具を見直す可能性が高い場合はレンタルの方が交換しやすく、長期間同じ用具を使い続ける見込みが立っている場合は購入の方が総費用を抑えられることがあります。どちらが向いているかは、福祉用具専門相談員やケアマネジャーが本人・家族に説明したうえで、最終的に利用者が選ぶ仕組みになっています。
貸与から購入への切り替え
いったんレンタルを選んだ品目を、後から購入に切り替えることも制度上は可能です。逆に、購入した用具を貸与に戻すことはできないため、判断に迷う場合はまずレンタルから始め、使用状況を見ながら購入を検討するという考え方もあります。
住宅改修費との違い
限度額と申請タイミングの違い
介護保険には、特定福祉用具販売費のほかに、手すりの取付けや段差の解消などを対象とする介護保険の住宅改修費という制度もあります。住宅改修費は原則1つの住宅につき生涯で20万円が上限で、工事着工前の事前申請が必須です。これに対し特定福祉用具購入費は、年度ごとに10万円の枠が繰り返し使え、購入後の事後申請(償還払い)が基本という違いがあります。
対象となる工事・用具の違い
住宅改修費は手すりの取付け・段差の解消・床材の変更・扉の取替え・便器の取替え・それらに伴う付帯工事の6種類に限られる「工事」が対象です。一方、特定福祉用具購入費は工事を伴わない「既製品や設置だけで使える用具」が対象になります。たとえば固定式の手すりを壁に取り付ける工事は住宅改修、置くだけで使える浴槽用手すりは特定福祉用具販売、という形ですみ分けられています。
併用の考え方
住宅改修費と特定福祉用具購入費はそれぞれ別枠の限度額のため、同じ年度内に両方を利用することも可能です。たとえば、段差解消の工事(住宅改修費)とあわせて浴槽用の手すり(特定福祉用具販売)を購入するなど、生活環境の改善を工事と用具の両面から進められます。浴室であれば、工事を伴う手すりの増設は住宅改修費、置くだけで使えるバスボードやシャワーチェアは特定福祉用具販売というように、同じ空間でも工事か用具かで申請先が分かれる点に注意が必要です。どちらを使うべきか迷う場合や、両方を組み合わせたい場合は、ケアマネジャーに相談しながら計画を立てることが基本です。
注意点・よくある失敗
指定外事業者からの購入は対象外
介護保険の指定を受けていない事業者や、指定を受けていないインターネット通販サイトで対象品目を購入した場合、後から申請しても保険給付は受けられません。価格だけで購入先を決めず、購入前に指定特定福祉用具販売事業者かどうかを確認することが欠かせません。
型番違い・オーダー品の注意
同じ「入浴用いす」という名称の製品でも、介護保険の対象になる型番と対象外の型番が混在していることがあります。介護保険の対象製品かどうかは、公益財団法人テクノエイド協会が運営する福祉用具情報システムに登録されているかどうかが一つの目安になりますが、最終的な判断は保険者である市区町村が行います。購入前にケアマネジャーや福祉用具専門相談員に型番を確認してもらい、対象製品であることを確かめてから購入することで、支給が受けられないという事態を防げます。特注のオーダーメイド品を希望する場合は、既製品では対応できない理由を明確にしたうえで、事前に市区町村へ相談しておく必要があります。
制度改定の可能性
介護保険制度は3年ごとに見直しが行われており、対象品目や支給限度基準額、申請方法は今後も変更される可能性があります。本記事の内容は2026年9月時点の情報にもとづいていますが、実際に購入を検討する際は、居住する市区町村の最新の案内やケアマネジャーへの確認を必ず行ってください。
まとめ
- 特定福祉用具販売の対象は、排泄・入浴・移動に関する9品目(腰掛便座、自動排泄処理装置の交換可能部品、排泄予測支援機器、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具の部分、固定用スロープ、歩行器、歩行補助つえ)
- 支給限度基準額は同一年度で10万円、区分支給限度基準額とは別枠で、自己負担割合(1〜3割)に応じて7〜9割が支給される
- 要支援1から要介護5まで共通で利用できるが、在宅生活者が対象で介護保険施設の入所者は原則対象外
- 指定特定福祉用具販売事業者からの購入が必須で、償還払いが原則。同一種目の再購入は原則1回だが例外もある
- 住宅改修費とは限度額・申請タイミング・対象範囲が異なり、それぞれ別枠のため併用もできる
実際に購入を検討する場合は、対象品目や指定事業者かどうかを自己判断せず、まず担当のケアマネジャーや市区町村の介護保険担当窓口に相談することが最初の一歩になります。
制度の詳細は今後も見直される可能性があるため、このサイトでは特定の商品や事業者を評価・推奨することはせず、公的機関の一次情報にもとづいた制度の仕組みの説明に徹しています。運営方針についてはこのサイトについてもあわせてご覧ください。