親や配偶者の要介護認定の結果が「要支援2」や「要介護1」だったとき、その数字が何を意味するのか、今までと何が変わるのかが分からず戸惑う人は少なくありません。「要支援」と「要介護」はどちらも介護保険の認定区分ですが、意味も、受けられるサービスも、1か月に使える金額の上限も異なります。要支援は「生活の一部に支援があれば自立を維持できる状態」、要介護は「日常生活動作そのものに介助が必要な状態」を指し、前者は要支援1・2の2段階、後者は要介護1〜5の5段階に分かれます。この記事では、状態像・判定基準・利用できるサービス・支給限度額・ケアプランの作成者・施設利用の可否という6つの軸で両者の違いを整理します。あわせて、要支援から要介護へ移る場合の区分変更申請の手続きも、厚生労働省と自治体の公表資料にもとづいて解説します。
要支援と要介護の違いとは(全体像)
介護保険の認定は、介護を必要としない「非該当(自立)」を除くと、要支援1・要支援2・要介護1〜5の合計7段階に分かれます。このうち要支援と要介護を分ける最も大きな違いは、「支援によって状態の維持・改善が見込めるかどうか」という点です。
定義の違い―「支援」と「介護」
要支援は、日常生活の基本的な動作はおおむね自分で行えるものの、入浴や家事の一部などに見守りや手助けが必要な状態です。適切なサービスを利用すれば、状態の悪化を防いだり、能力を維持・改善したりできる可能性があるとされています。一方の要介護は、身体上または精神上の障害により、食事・排泄・入浴といった日常生活動作の一部または全部について、継続的に介護が必要な状態を指します。
この違いは単なる言葉のニュアンスではなく、後述するとおり「予防給付」と「介護給付」という異なる保険給付の枠組みにそのまま対応しています。
全体像:非該当を含む8段階の要介護度区分
要介護度は、非該当(自立)・要支援1・要支援2・要介護1・要介護2・要介護3・要介護4・要介護5の8段階です。数字が大きくなるほど、日常生活で必要とする介護の量(介護の手間)が多いことを意味します。ただし要支援と要介護は数字の連続ではなく、性質が異なる区分であることに注意が必要です。要支援2の次が要介護1になるからといって、単純に「ワンランク重い」という意味ではなく、受けられるサービスの体系自体が切り替わります。認定の申請方法や認定調査・主治医意見書といった手続きの詳細は、要介護認定とはの記事で詳しく解説しています。
要支援・要介護の認定を受けている人はどれくらいいるか
厚生労働省の介護保険事業状況報告(年報)によると、2023年度末時点で要支援・要介護の認定を受けている人は初めて700万人を超えました。65歳以上の第1号被保険者に占める認定率は過去最高を更新しています。
| 項目(2023年度末時点) | 数値 |
|---|---|
| 要支援・要介護の認定者数 | 約708万人 |
| 65歳以上(第1号被保険者)の認定率 | 19.4% |
| 65歳以上(第1号被保険者)の人数 | 約3,589万人 |
65歳以上のおよそ5人に1人が、何らかの認定を受けている計算になります。高齢化の進行にともない、要支援・要介護の認定者数は今後も増加していくと見込まれており、要支援・要介護の違いを理解しておくことは、いずれ多くの家庭にとって身近な課題になります。
40〜64歳でも認定を受けられる場合がある
要支援・要介護の認定は65歳以上(第1号被保険者)だけの制度ではありません。40歳から64歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)も、末期がん、関節リウマチ、初老期における認知症、脳血管疾患など、加齢にともなって生じるとされる16種類の「特定疾病」が原因で介護が必要になった場合には、要支援・要介護の認定を申請できます。特定疾病以外の交通事故によるけがなどが原因の場合は、第2号被保険者は要支援・要介護の認定対象になりません。この年齢による対象範囲の違いは、要支援と要介護のどちらであっても共通するルールです。
状態像の違い:要支援1・2と要介護1〜5
要介護度ごとの状態像は、実際にはひとりひとり異なりますが、自治体が公表している目安を見ると、区分ごとにどのような生活動作の困りごとが想定されているかが分かります。堺市が公表している目安を要約すると、次のとおりです。
| 区分 | 状態像の目安 |
|---|---|
| 要支援1 | 入浴などの動作の一部に介助が必要 |
| 要支援2 | 立ち上がり・歩行がやや不安定、排泄・入浴に部分的な支援が必要 |
| 要介護1 | 立ち上がり・歩行が不安定、排泄・入浴などで一部介助が必要 |
| 要介護2 | 起き上がりが自力では困難、排泄・入浴などで一部〜全部の介助が必要 |
| 要介護3 | 起き上がり・寝返りが自力では困難、排泄・入浴・着脱等で全面的な介助が必要 |
| 要介護4 | 排泄・入浴・着脱など多くの行為で全面的な介助が必要 |
| 要介護5 | 生活全般で全面的な介助が必要 |
要支援1・2の状態像の目安
堺市が公表している目安によると、要支援1は日常生活の能力はおおむね自分で行えるものの、入浴などの動作の一部に介助が必要な状態とされています。要支援2は、立ち上がりや歩行がやや不安定になり、排泄や入浴で部分的な支援が必要になった状態で、適切なサービスの利用によって要介護状態への進行を防げる可能性があるとされています。歩行がおぼつかなくなってきた、浴槽をまたぐ動作に不安があるといった変化が、要支援の相談を検討するきっかけになることが多いといわれています。
要介護1〜3の状態像の目安
要介護1は、立ち上がりや歩行が不安定で、排泄や入浴などで一部介助が必要な状態です。要介護2は、起き上がりが自力では難しくなり、排泄・入浴などで一部または全部の介助が必要になります。要介護3になると、起き上がりや寝返りを自力で行うことが難しく、排泄・入浴・衣服の着脱などで全面的な介助が必要な状態とされます。要介護3は、後述する特別養護老人ホームの入所要件の目安にもなっている区分で、在宅介護と施設介護のどちらを選ぶかを検討し始める家庭が増える節目でもあります。
要介護4・5の状態像の目安
さらに介護の必要度が高くなるのが要介護4・5です。要介護4では、排泄・入浴・衣服の着脱など多くの行為で全面的な介助が必要になります。要介護5になると、生活全般について全面的な介助が必要で、意思の疎通が困難な場合も含まれる、最も介護の必要度が高い区分とされています。この段階になると、家族だけで介護を続けることが難しくなり、施設サービスや医療的なケアを組み合わせた支援を検討する家庭が多くなります。
状態像はあくまで目安(判定は基準時間で行われる)
ここまでの状態像は、あくまで目安です。実際の認定は、次章で説明する「要介護認定等基準時間」という客観的な指標にもとづいて行われます。同じ「歩行が不安定」という状態でも、認知症の有無や介護者の状況によって認定結果は変わり得るため、目安と実際の認定区分が一致しないケースもあります。
判定の分かれ目:要介護認定等基準時間
要支援・要介護の判定は、印象や自己申告だけで決まるのではなく、「要介護認定等基準時間」という全国共通の物差しを使って行われます。
基準時間とは何を測る指標か
要介護認定等基準時間は、認定調査の結果と主治医意見書の内容から、統計的な手法で算出される「介護の手間」を分単位で示した指標です。実際の介護時間そのものではなく、あくまで区分判定のための共通のものさしとして使われる点に注意してください。この時間は、次の5つの分野を積み上げて算出されます。
- 直接生活介助:入浴・排泄・食事などの介助
- 間接生活介助:洗濯・掃除などの家事援助
- 問題行動関連行為(通称BPSD関連行為):徘徊への対応など、認知症にともなう行動・心理症状への対応
- 機能訓練関連行為:歩行訓練など身体機能の訓練
- 医療関連行為:輸液管理など診療の補助
| 区分 | 要介護認定等基準時間 |
|---|---|
| 要支援1 | 25分以上32分未満 |
| 要支援2・要介護1 | 32分以上50分未満 |
| 要介護2 | 50分以上70分未満 |
| 要介護3 | 70分以上90分未満 |
| 要介護4 | 90分以上110分未満 |
| 要介護5 | 110分以上 |
要支援2と要介護1はなぜ迷いやすいのか
表を見ると分かるとおり、要支援2と要介護1は基準時間の範囲が同じです。この2つを分けるのは時間の長さではなく、認知機能の状態と心身の安定性です。認知症の症状がなく状態が安定している場合は要支援2、認知機能の低下がみられる場合や、病状が不安定で今後大きく状態が変化するおそれがある場合は要介護1と判定されやすい傾向があります。どちらに認定されるかは、コンピューターによる一次判定と、保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会による二次判定を経て最終的に決まります。一次判定・二次判定の詳しい仕組みは、後述する要介護認定の記事でも取り上げています。
受けられるサービスの違い:介護給付・予防給付・総合事業とは
要支援と要介護の最も実務的な違いは、利用できるサービスの枠組みそのものが異なる点です。要介護は「介護給付」、要支援は「予防給付」と「総合事業」という、名前も申請先も異なる仕組みでサービスが提供されます。
要介護1〜5が使う「介護給付」
要介護1〜5の認定を受けた人が利用する保険給付が「介護給付」です。対象となるのは、訪問介護・訪問看護・通所介護(デイサービス)・短期入所生活介護(ショートステイ)・福祉用具貸与といった在宅サービスです。これに加えて、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの施設サービスも、原則として要介護認定を受けた人だけが利用できます。認知症の診断を受けた要介護1以上の方であれば、5〜9人程度の小規模な共同生活を営む「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」も選択肢に入ります。
要支援1・2が使う「予防給付」と「総合事業」
一方、要支援1・2の認定を受けた人が利用するのは「予防給付」です。要介護状態になることを防ぐ観点から提供されるサービスで、訪問看護や福祉用具貸与など介護給付と共通する種類のサービスもありますが、施設サービス(特別養護老人ホームなど)は対象に含まれません。予防給付には、このほかにも次のようなサービスがあります。
- 介護予防訪問看護
- 介護予防訪問リハビリテーション
- 介護予防通所リハビリテーション
- 介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)
- 介護予防福祉用具貸与
加えて、訪問介護と通所介護(デイサービス)に相当する部分は、現在は全国一律の予防給付ではなく、市区町村が地域の実情に応じて実施する「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」に移行しています。なお、認知症の診断を受けた方のグループホームについても、要支援2であれば「介護予防認知症対応型共同生活介護」として利用できますが、要支援1の方はこのサービスの対象に含まれていません。
訪問介護・通所介護は総合事業に移行している点に注意
総合事業は市区町村ごとに内容や利用料が異なり、住民主体の生活支援サービスなど、多様な担い手によるサービスが用意されている場合があります。そのため「要支援1・2でどのサービスが、どの程度の自己負担で使えるか」は、居住する市区町村の窓口や地域包括支援センターに確認する必要があります。要支援の認定を受けた人の介護予防ケアプランは、居宅介護支援事業所ではなく地域包括支援センターが作成する点も、要介護との大きな違いです(詳しくは後述します)。
区分支給限度基準額の違い
在宅サービスを利用する際、介護保険から給付される金額には1か月あたりの上限があります。これを区分支給限度基準額といい、要介護度が上がるほど上限額も高くなります。
要介護度別の1か月あたりの上限額(単位数)
| 区分 | 区分支給限度基準額(単位/月) | 給付の枠組み |
|---|---|---|
| 要支援1 | 5,032単位 | 予防給付 |
| 要支援2 | 10,531単位 | 予防給付 |
| 要介護1 | 16,765単位 | 介護給付 |
| 要介護2 | 19,705単位 | 介護給付 |
| 要介護3 | 27,048単位 | 介護給付 |
| 要介護4 | 30,938単位 | 介護給付 |
| 要介護5 | 36,217単位 | 介護給付 |
要支援1から要介護5までの間で、上限額はおよそ7倍以上の差があります。この単位数は2019年10月の改定以降、直近の介護報酬改定でも変更されていません。上限額と対象サービスの詳しい内訳、複数サービスを組み合わせた場合の具体的な計算例は区分支給限度基準額を解説した記事にまとめています。この上限額の差は、前章で説明した要介護認定等基準時間、つまり「介護の手間」の差にほぼ比例するように設計されています。要介護度が上がるほど、直接生活介助や医療関連行為などにかかる時間が長くなると想定されるため、それに応じて利用できるサービス量の上限も引き上げられている、という関係になっています。
単位数が同じでも地域で円換算額が変わる
区分支給限度基準額は全国共通で「単位数」で定められていますが、1単位を何円に換算するかは、サービスの種類と地域の人件費水準によって異なります。地方の多くの地域では1単位10円ですが、人件費の高い地域では1単位あたり10円を上回ることがあります。そのため同じ要介護度でも、居住地によって円換算後の上限額は変わります。
上限を超えた分は全額自己負担になる
区分支給限度基準額は暦月(1日から末日まで)単位で適用され、月をまたいで繰り越すことはできません。この上限を超えてサービスを利用した場合、超過分は介護保険の給付対象外となり、全額が自己負担になります。要支援は上限額そのものが小さいため、複数のサービスを組み合わせる際は、要介護以上に上限を意識した調整が必要になります。仮に上限いっぱいまでサービスを利用し、自己負担割合が1割の場合、自己負担額の目安は要支援1で月5,000円程度、要介護5で月36,000円程度と、要介護度によって大きな差が生まれます(1単位10円で計算した概算であり、実際の自己負担割合や地域単価によって金額は変わります)。
ケアプランを作る担当者の違い
介護保険サービスを利用するには、原則としてケアプラン(介護サービス計画)が必要ですが、要支援と要介護ではケアプランを作成する機関、そして作成後の関わり方も異なります。
要支援は地域包括支援センターが担当
要支援1・2の認定を受けた人の介護予防ケアプランは、日常生活圏域ごとに設置されている地域包括支援センターが作成します。地域包括支援センターは、要支援認定者に限らず、その地域に住む高齢者全般の相談を受け付ける総合相談窓口としての役割も持っています。
要介護は居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当
要介護1〜5の認定を受けた人のケアプランは、居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャー(介護支援専門員)が作成します。ケアマネジャーは、本人・家族の希望や心身の状態を踏まえ、区分支給限度基準額の範囲内でサービスの種類や回数を調整する役割を担います。
利用開始後の見直し(モニタリング)の頻度も異なる
ケアプラン作成後も、状態に変化がないかを定期的に確認する「モニタリング」が行われます。介護報酬改定にともなう見直しにより、居宅介護支援では原則として少なくとも2か月に1回、介護予防支援では少なくとも6か月に1回、利用者の自宅を訪問して行うこととされています(一定の要件を満たせばオンラインとの組み合わせも可能です)。要支援から要介護へ区分が変わる場合は、ケアプランの担当が地域包括支援センターから居宅介護支援事業所のケアマネジャーへ引き継がれることになり、モニタリングの頻度もあわせて変わります。
施設サービスを利用できるかどうかの違い
「施設に入れるかどうか」も、要支援と要介護を分ける実務上の大きな違いのひとつです。主な施設・住まいの利用可否をまとめると、次のとおりです。
| 施設・住まいの種類 | 要支援1・2 | 要介護1〜5 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 利用不可 | 原則要介護3以上(要介護1・2は特例入所のみ) |
| 介護老人保健施設(老健) | 利用不可 | 要介護1以上で利用可 |
| 介護予防特定施設入居者生活介護(特定施設) | 利用可 | 対象外(要介護は特定施設入居者生活介護が別途あり) |
| 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 要支援2のみ利用可(要支援1は不可) | 要介護1以上で利用可 |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 物件によっては入居可 | 物件によっては入居可 |
特別養護老人ホームは原則要介護3以上
特別養護老人ホーム(特養)は、平成27年度の制度改正により、新規入所の対象が原則として要介護3以上の人に限定されています。要介護1・2の人であっても、認知症により日常生活に支障をきたす症状が頻繁に見られるなど、自宅での生活が著しく困難と認められる特別な事情がある場合には、市町村の関与のもとで特例的に入所が認められる場合があります。要支援1・2の人は、この特例入所の対象にも含まれていません。特別養護老人ホームの入所条件や費用の目安については、特養を解説した記事も参考にしてください。
介護老人保健施設(老健)は要介護1以上が対象
介護老人保健施設(老健)は、介護保険法上「要介護者」を対象とする施設と定義されており、要介護1〜5の人が利用できます。要支援1・2の人は、この「要介護者」に該当しないため、老健に入所することはできません。老健は在宅復帰を目指すリハビリテーションを中心とした施設で、特養のように長期の生活の場となることを前提とした施設ではない点も、特養との違いとして押さえておきたいポイントです。
要支援は「介護予防特定施設入居者生活介護」等に限られる
要支援1・2の人が施設系のサービスを利用する場合は、有料老人ホームなどのうち「特定施設」の指定を受けた施設で提供される「介護予防特定施設入居者生活介護」など、予防給付に含まれる限られたサービスが対象になります。特別養護老人ホームや介護老人保健施設のような施設サービスそのものは利用できません。前述のとおり、認知症の診断を受けた要支援2の人に限っては、「介護予防認知症対応型共同生活介護」というグループホームのサービスを利用できる例外もあります。
サービス付き高齢者向け住宅は要介護度を問わず入居できる場合がある
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、介護保険の施設サービスではなく高齢者住まい法にもとづく賃貸住宅であるため、要支援・要介護のどちらでも、また要介護認定を受けていなくても入居できる物件があります。ただし、住宅そのものに含まれるのは安否確認と生活相談サービスが基本で、介護が必要な場合は外部の訪問介護・通所介護などを別途契約して利用する形が一般的です。物件によって対応できる要介護度の範囲や体制が異なるため、個別の確認が欠かせません。見学時には、要支援・要介護のどちらの段階まで住み続けられるのか、状態が重くなった場合に退去を求められる条件があるのかを、あわせて確認しておくと安心です。
認定の有効期間と更新
要支援・要介護の認定には有効期間があり、期限が切れる前に更新の手続きが必要です。
新規認定・更新認定それぞれの有効期間
新規に認定を受けた場合の有効期間は原則6か月で、心身の状態に応じて3か月から12か月の範囲で市区町村が設定します。更新認定の場合は原則12か月で、状態が安定しており、前回と同じ要支援度・要介護度が続くと市区町村が認めた場合には、3か月から48か月の範囲で有効期間を延長できる仕組みがあります。状態が変わりやすい人ほど短めに、安定している人ほど長めに設定される、という考え方です。
更新申請は満了日の60日前から受け付けられる
有効期間が満了する前には、通常は自治体から更新の案内が届きます。更新認定の申請は、有効期間満了日の60日前から満了日までの間に行うこととされています。うっかり有効期間を過ぎてしまうと、いったんサービスの利用に介護保険が適用されなくなるおそれがあるため、案内が届いたら早めに手続きを進め、有効期間の管理はケアマネジャーや地域包括支援センターと一緒に行うと安心です。
状態が急に変わったときは更新を待たなくてよい
ここまでは、状態が安定している場合の通常の更新サイクルです。一方、有効期間の途中で心身の状態が大きく変化した場合は、次の章で説明する「区分変更申請」という手続きを使えば、更新時期を待たずに要介護度の見直しを受けられます。
要支援から要介護へ移る場合の手続き(区分変更申請)
前章で説明したとおり、認定の有効期間中に心身の状態が変化した場合、次の更新時期を待たずに認定区分を変更する手続きがあります。ここでは特に、要支援から要介護へ移る場合を中心に説明します。
区分変更申請とは
区分変更申請とは、現在の認定有効期間中であっても、心身の状態が著しく変化した場合に、市区町村へ申請して要介護度の見直しを受けられる制度です。要支援から要介護へ移る場合だけでなく、要介護度がより軽くなった場合や、逆に要介護の中でさらに重い区分へ変わる場合にも使われます。
申請できる条件とタイミング
区分変更申請は、更新時期を待たなくても、状態の変化に気づいた時点で行うことができます。40歳から64歳までの第2号被保険者については、要介護状態の原因が国の定める特定疾病によるものである場合に限られます。転倒による骨折や急な病状の悪化など、短期間で介護の必要度が大きく変わったと感じたタイミングが申請の目安になります。
申請の流れと必要書類
申請は、本人・家族のほか、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所、介護保険施設などが代行することもできます。必要書類は、主に次のとおりです。
- 要介護・要支援認定の区分変更用申請書
- 介護保険被保険者証
- 本人確認書類
- 医療保険の資格情報(第2号被保険者のみ)
申請を受けて、通常の新規申請と同様に認定調査と主治医意見書の作成が行われ、一次判定・二次判定を経て新しい要介護度が決定します。認定調査の74項目の聞き取りや主治医意見書の内容など、申請から結果通知までの詳しい流れは前述の要介護認定に関する記事で解説しているとおりです。
申請後、認定が変わるまでの期間の目安
区分変更申請の結果も、新規申請と同様に、申請から原則30日以内に通知するとされています。ただし、認定調査の日程調整や主治医意見書の準備状況によって、実際にはこれより時間がかかる場合もあります。区分変更の審査中でも、暫定的にケアプランを作成してサービスを利用できる場合があるため、詳しくは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してください。
要支援・要介護のどちらに該当するか分からないときの相談先
「自分や家族の状態が、要支援と要介護のどちらに当てはまりそうか分からない」という場合は、判定を自己判断する前に、まず身近な相談窓口を利用することが大切です。
まずは地域包括支援センターに相談する
地域包括支援センターは、要支援・要介護の認定を受けているかどうかにかかわらず、高齢者本人やその家族からの相談を無料で受け付ける窓口です。生活の中でどのような困りごとがあるかを伝えると、要介護認定の申請が必要かどうか、申請するとしてどの窓口に行けばよいかといった案内を受けられます。地域包括支援センターの役割や探し方は地域包括支援センターとはの記事で詳しく解説しています。
認定を受けていない状態でも相談はできる
要介護認定をまだ申請していない段階でも、体調の変化や生活上の困りごとについて相談すること自体は可能です。持病の治療で通院している場合は、主治医に日常生活での困りごとを伝えておくと、後日申請する際の主治医意見書の準備にもつながります。急に生活動作が難しくなったと感じた場合は、様子を見すぎずに早めに相談する方が、必要な支援につながりやすくなります。
家族が付き添う場合に準備しておきたいこと
本人が自分の状態をうまく説明できない場合、家族が日頃の生活の様子を具体的にメモしておくと、相談や認定調査の際に実態に近い内容を伝える助けになります。「できている日とできない日がある」「特定の動作だけ時間がかかる」といった変動やばらつきも、要支援・要介護のどちらに近い状態かを判断するうえで重要な情報になります。
要支援・要介護の違いに関するよくある誤解
ここまで見てきたとおり、区分支給限度基準額や利用できるサービスには制度上の差がありますが、実際の負担感や生活への影響は、どれだけサービスを利用するかによっても変わります。要支援と要介護を比較するときに生じやすい誤解を3つ取り上げます。
「要支援だから何もできない」わけではない
要支援は要介護に比べて上限額が小さく、利用できるサービスの種類も限られますが、「サービスがほとんど使えない」という意味ではありません。訪問看護や福祉用具貸与、市区町村の総合事業による生活支援サービスなど、状態の維持・改善に役立つサービスを組み合わせて利用できます。むしろ要支援の段階で適切な支援につながることが、要介護状態への進行を防ぐうえで重要とされています。
「要介護のほうが自己負担額が高い」とは限らない
区分支給限度基準額は要介護度が上がるほど高くなりますが、これは「介護保険から給付される上限額」であり、利用者の自己負担額そのものが自動的に高くなるという意味ではありません。実際の自己負担は、上限の範囲内でどれだけサービスを利用したかによって変わります。所得に応じた自己負担割合や高額介護サービス費といった負担軽減の仕組みもあわせて確認しておくと安心です。
「要支援は将来必ず要介護になる」とも限らない
要支援の認定を受けた人が、時間の経過とともに必ず要介護へ進むわけではありません。適切なサービスの利用や生活環境の見直しによって状態が維持・改善し、更新時の認定で要支援のまま変わらない場合や、非該当に近い状態まで回復する場合もあります。区分は状態を評価するためのものであり、一方向に進むことが前提の仕組みではありません。
まとめ
要支援と要介護は、どちらも介護保険の認定区分でありながら、状態像・判定基準・利用できるサービスの枠組み・支給限度額・ケアプランの担当者・施設利用の可否まで、性質の異なる制度として設計されています。どちらに認定されるかによって次に取るべき行動も変わるため、まずは自分や家族がどちらに近い状態なのかを、この記事の比較の軸に沿って確認してみてください。
- 要支援1・2は「予防給付」、要介護1〜5は「介護給付」と、利用できるサービスの枠組み自体が異なる
- 区分支給限度基準額は要支援1の5,032単位から要介護5の36,217単位まで、要介護度が上がるほど高くなる
- 要支援2と要介護1は要介護認定等基準時間が同じ範囲だが、認知機能の状態や心身の安定性で判定が分かれる
- ケアプランの作成者は、要支援なら地域包括支援センター、要介護なら居宅介護支援事業所のケアマネジャーと異なる
- 特別養護老人ホームは原則要介護3以上、介護老人保健施設は要介護1以上が対象で、要支援は施設サービスを利用できない
- 心身の状態が変化した場合は、更新時期を待たずに区分変更申請を行うことができる
このサイトでは、特定の施設やサービスの優劣を評価するのではなく、公的機関が公表している情報にもとづき、制度の仕組みを中立的に整理することを方針としています。サイトの立ち位置についてはこのサイトについてもあわせてご覧ください。