介護保険の在宅サービスには、要介護度ごとに1か月あたり給付される上限額(区分支給限度基準額)が定められています。この記事では、要介護度別の限度額の目安、限度額を超えた場合の扱い、対象外となるサービスについて、厚生労働省の告示にもとづいて解説します。ケアプランを検討する際、「使えるサービスの総量」を先に把握しておくと、優先順位を考えるうえでの判断材料になります。
区分支給限度基準額とは何か
区分支給限度基準額とは、訪問介護やデイサービスなどの在宅(居宅)サービスを利用する際に、介護保険から給付される1か月あたりの上限額のことです。要介護度が重いほど、必要とされる介護の量も増えるため、限度額も高く設定される仕組みになっています。
在宅サービスに設けられた1か月の上限
この限度額は、訪問介護やデイサービス、短期入所(ショートステイ)、福祉用具貸与など、在宅で利用する複数の介護保険サービスを合算した金額に対して適用されます。特定のサービス1つだけの上限ではなく、組み合わせて利用した合計額に対する上限である点がポイントです。例えば訪問介護とデイサービスを併用する場合、それぞれの利用料を合算した金額が、要介護度ごとに定められた1つの限度額の枠内に収まっている必要があります。
「単位」という考え方
介護保険のサービス費用は「円」ではなく「単位」という共通の物差しで計算されます。1単位はおおむね10円ですが、地域やサービスの種類によって若干の地域加算がかかる場合があります。限度額も単位数で定められており、実際の金額はお住まいの地域の単価によって多少前後します。
要介護度別の限度額
厚生労働省の告示(居宅介護サービス費等区分支給限度基準額)にもとづく、要介護度別の限度額(単位数)の目安は次のとおりです。
要支援1・2の限度額
要支援1はおよそ5,032単位、要支援2はおよそ10,531単位が1か月あたりの限度額の目安です。1単位10円で換算すると、要支援1で約5万円、要支援2で約10.5万円相当のサービスを、自己負担割合(1〜3割)で利用できる計算になります。
要介護1〜5の限度額
要介護1はおよそ16,765単位、要介護2はおよそ19,705単位、要介護3はおよそ27,048単位、要介護4はおよそ30,938単位、要介護5はおよそ36,217単位が目安です。要介護5では要支援1のおよそ7倍の限度額が設定されており、要介護度が上がるほど利用できるサービスの幅が大きく広がることが分かります。ただし限度額いっぱいまでサービスを使う義務はなく、実際に利用する量は本人の状態や希望に応じて決めるものである点にも注意してください。
種類支給限度基準額・福祉用具購入費支給限度基準額など他の限度額との違い
「支給限度基準額」という言葉は、区分支給限度基準額以外にも複数の種類があり、それぞれ対象となるサービスや金額の考え方が異なります。ここでは介護保険法にもとづく主な限度額を整理します。
支給限度基準額には複数の種類がある
介護保険法第43条にもとづき、法律上は主に4種類の支給限度基準額が定められています。区分支給限度基準額(在宅サービスを合算した1か月あたりの上限。本記事で解説している限度額)、種類支給限度基準額(特定のサービスの種類ごとに市町村が条例で定めることができる上限)、福祉用具購入費支給限度基準額(特定福祉用具の購入費に対する年間の上限)、住宅改修費支給限度基準額(住宅改修費に対する上限)です。いずれも「介護保険から給付される範囲」を示す基準額である点は共通していますが、対象となるサービスの範囲や金額の考え方はそれぞれ異なります。
福祉用具購入費支給限度基準額は年間10万円
腰かけ便座や入浴補助用具などの特定福祉用具を購入した場合に適用される限度額です。厚生労働省の告示(居宅介護福祉用具購入費支給限度基準額及び介護予防福祉用具購入費支給限度基準額)により、支給限度基準額は10万円と定められています。同一年度内(4月から翌年3月まで)の購入費用の合計に対して適用され、保険給付は原則9割(所得に応じて8割・7割)です。区分支給限度基準額とは別枠のため、在宅サービスの限度額を使い切っていても、福祉用具購入費の限度額の範囲内であれば別途利用できます。
住宅改修費支給限度基準額は20万円とリセットの例外
手すりの取り付けや段差の解消などの住宅改修を行った場合に適用される限度額です。厚生労働省の告示(居宅介護住宅改修費支給限度基準額及び介護予防住宅改修費支給限度基準額)により、要介護状態区分にかかわらず定額20万円と定められています。原則として1人につき生涯で1回の利用が基本ですが、厚生労働省の通知では例外的に限度額がリセットされるケースが2つ示されています。1つは要介護状態区分が改修当時から3段階以上重くなった場合(この取扱いは1人1回のみ)、もう1つは転居した場合です。転居によるリセットは住民票上の住所を移した場合に限られますが、回数に制限はありません。
種類支給限度基準額は市町村が条例で定める仕組み
種類支給限度基準額は、区分支給限度基準額とは別に、市町村が条例で、特定のサービスの種類(訪問介護など)ごとに上限を設定できる制度です。介護保険法第43条4項・5項に規定があり、地域における当該サービスの提供体制の状況などを勘案して、区分支給限度基準額の範囲内で市町村が金額を定めます。特定のサービスに利用が偏ることでほかの利用希望者がサービスを受けにくくなる事態を避けるための仕組みですが、条例を定めるかどうかは市町村の判断に委ねられています。お住まいの市町村がこの制度を導入しているかどうかは、ケアマネジャーや市区町村の介護保険担当窓口に確認するとよいでしょう。
四種類の限度額を比較する
ここまで見てきた4種類の限度額を整理すると、対象となる費用と金額の考え方は次のとおりです。
| 限度額の種類 | 対象となる費用 | 金額の目安 | 管理の単位 |
|---|---|---|---|
| 区分支給限度基準額 | 訪問介護・通所介護など在宅サービスの合算 | 要支援1で約5,032単位〜要介護5で約36,217単位 | 単位数(1か月ごと) |
| 種類支給限度基準額 | 特定のサービスの種類(市町村が条例で指定した場合) | 市町村が条例で個別に設定 | 単位数(1か月ごと) |
| 福祉用具購入費支給限度基準額 | 特定福祉用具の購入費 | 10万円 | 円(1年度ごと) |
| 住宅改修費支給限度基準額 | 手すりの設置などの住宅改修費 | 20万円 | 円(原則生涯で1回) |
区分支給限度基準額と種類支給限度基準額は単位数で1か月ごとに管理されるのに対し、福祉用具購入費支給限度基準額と住宅改修費支給限度基準額は円単位で、年度や生涯といった長い期間で管理される点が大きな違いです。ケアプランを検討する際は、この4つを別々の枠として捉えたうえで、それぞれの範囲内でサービスを組み立てることになります。
支給限度額の地域差(1単位あたりの単価の違い)
区分支給限度基準額そのものは、要介護度ごとに全国一律の「単位数」で定められています。しかし、単位を円に換算する際の単価は地域によって異なるため、同じ要介護度でも実際に利用できるサービスの金額や自己負担額には地域差が生じます。
単位数は全国一律でも円換算額は地域で異なる
介護保険法第43条2項では、区分支給限度基準額は「厚生労働大臣が定める額」とされており、単位数そのものは全国どこでも同じです。一方で、実際のサービス費用を計算する際の「1単位あたりの単価」は、サービスを提供する事業所の所在地や、サービスの種類によって異なります。目安としてよく使われる「1単位=10円」はあくまで概算であり、実際の単価はこれより高くなる地域もあります。
1単位あたりの単価に差が生まれるのは、介護サービスを提供する事業所の人件費(給与水準)が地域によって異なるためです。都市部は家賃や物価水準が高く、事業所が職員に支払う給与水準も相対的に高くなる傾向があるため、それを踏まえて単価が調整される仕組みになっています。区分支給限度基準額の単位数自体は要介護度だけで決まりますが、実際の費用や自己負担額を左右する単価は、こうした地域ごとの事情を反映したものです。
自治体ごとの単価の違いの実例
堺市の介護保険担当窓口が公開している資料では「1単位は、10円から10.7円となります(サービスの種類ごとに異なります)」と説明されています。東京都目黒区の資料でも、区分支給限度額の目安を「1単位あたり10円」で計算しているとしたうえで、実際の単価はサービスの種類によって異なる旨が明記されています。同じ要介護度・同じ単位数のサービスを利用していても、居住地域によって円換算額や自己負担額(1〜3割)が変わりうる点は理解しておくとよいでしょう。お住まいの地域の正確な単価は、担当のケアマネジャーや市区町村の介護保険担当窓口で確認できます。
地域差がケアプランの検討に与える影響
区分支給限度基準額の「単位数」自体は転居しても変わりませんが、円換算した実質的な金額や自己負担額は、転居先の地域区分によって変動する可能性があります。特に都市部から地方へ、あるいはその逆方向へ転居する予定がある場合は、転居前と転居後で1単位あたりの単価が異なることを念頭に置き、ケアマネジャーと相談しながらケアプランを見直すことが望ましいでしょう。
正確な単価を確認できる資料
実際に利用している事業所に適用される1単位あたりの単価は、事業所が加入する地域区分と、提供するサービスの種類によって決まります。厚生労働省が公表している「介護給付費単位数等サービスコード表」には、サービスごとの基本の単位数が掲載されており、これに事業所所在地の地域区分に応じた単価を掛け合わせることで、実際の費用額が算定されます。あわせてケアプランの第7表(サービス利用票別表)には、その月に適用された「単位数単価」が事業所ごとに記載されるため、実際に自分がどの単価で計算されているかを確認したい場合は、担当のケアマネジャーに第7表の写しを見せてもらうのが確実です。複数の事業所のサービスを組み合わせている場合、事業所によって所在地の地域区分が異なることもあるため、それぞれの明細を確認するとよいでしょう。
限度額の「単位数」が変わらない安心感
転居をしても、要介護度が変わらない限り、区分支給限度基準額そのもの(単位数)は変わりません。変わるのは単位を円に換算する際の単価だけです。そのため、「利用できるサービスの量の目安」という観点では、地域が変わっても大きな不公平は生じにくい仕組みになっています。一方で、家計への影響という観点では、転居先の地域区分によって自己負担額の絶対値が変わりうるため、遠方への引っ越しを検討する際はあわせて確認しておくとよいでしょう。
限度額を超えた分はどうなるか
限度額はあくまで「介護保険から給付される範囲」の上限であり、それ以上のサービス利用ができないわけではありません。
超過分は全額自己負担
限度額を超えてサービスを利用すること自体は可能ですが、超えた部分については介護保険の給付が受けられず、全額自己負担になります。1〜3割負担だった部分が、超過分については10割負担に切り替わるため、家計への影響は小さくありません。
限度額を超えやすいケース
認知症の症状が強く見守りが頻繁に必要なケース、同居家族の介護力が乏しく訪問介護を多用せざるを得ないケースなどでは、限度額に近づきやすい、あるいは超えやすい傾向があります。ケアプランを作成する段階で、ケアマネジャーと一緒に限度額とのバランスを確認しておくことが大切です。限度額を超える見込みが事前に分かっている場合は、超過分の自己負担額も含めた総額を把握したうえで、サービス内容を決めることが望ましいでしょう。
複数サービスを組み合わせた場合の具体的な計算例
実際にどのようにサービスを組み合わせ、限度額と比較するのか、要介護3(区分支給限度基準額27,048単位)を例に、単位数の合算方法を確認します。以下の単位数は、厚生労働省の介護給付費単位数等サービスコード表(令和7年4月施行版)に掲載されている基本部分の単位数であり、各種加算は含みません。実際の請求額は事業所ごとの加算の有無によって変動します。
要介護3で複数サービスを利用するケース
訪問介護の身体介護1(20分以上30分未満、244単位/回)を月20回、訪問介護の生活援助2(20分以上45分未満、179単位/回)を月12回、通所介護(通常規模型、7時間以上8時間未満、要介護3、900単位/回)を月8回利用した場合を想定します。
限度額内に収まる組み合わせの計算
単位数を合算すると、身体介護1が244単位×20回=4,880単位、生活援助2が179単位×12回=2,148単位、通所介護が900単位×8回=7,200単位となり、合計は14,228単位です。要介護3の区分支給限度基準額27,048単位に対して十分に余裕があり、この組み合わせであれば全額が保険給付の対象になります(自己負担はそのうちの1〜3割)。
限度額を超えた場合の自己負担額の計算
仮に、上記に加えて短期入所生活介護などをさらに組み合わせ、月間の合計単位数が27,048単位を1,000単位超えて28,048単位になったとします。この場合、超過した1,000単位分は介護保険の給付対象外となり、1単位10円で換算するとおよそ1万円相当を全額自己負担(10割)で支払うことになります。限度額に近づいている月は、ケアプランの第7表(サービス利用票別表)で「区分支給限度基準を超える単位数」が算出されるため、超過が見込まれる場合は事前にケアマネジャーと利用回数を調整することが望ましいでしょう。
福祉用具貸与は区分支給限度基準額の対象に含まれる
計算例を組み立てるうえで注意したいのが、福祉用具の扱いです。腰かけ便座などを購入する「特定福祉用具購入費」は前述のとおり区分支給限度基準額とは別枠(年間10万円)ですが、車いすや介護用ベッドなどをレンタルする「福祉用具貸与」は区分支給限度基準額の対象に含まれます。そのため、訪問介護や通所介護に加えて福祉用具貸与を利用する場合は、そのレンタル費用分の単位数も合計に含めて限度額と比較する必要があります。レンタル費用は用具の種類や貸与事業者によって異なるため、正確な単位数はケアマネジャーやレンタル事業者に確認するとよいでしょう。
要介護5でサービス利用が多いケースの計算例
要介護度が重くなるほど、区分支給限度基準額そのものも大きくなります。要介護5(区分支給限度基準額36,217単位)で、訪問介護の身体介護1(244単位/回)を月30回、生活援助2(179単位/回)を月20回、通所介護(通常規模型、7時間以上8時間未満、要介護5、1,148単位/回)を月12回利用した場合を計算すると、身体介護1が244単位×30回=7,320単位、生活援助2が179単位×20回=3,580単位、通所介護が1,148単位×12回=13,776単位となり、合計は24,676単位です。要介護5の限度額36,217単位に対してはまだ余裕がありますが、ここに短期入所生活介護や訪問看護などをさらに組み合わせると、限度額に近づいていきます。要介護度が重いほど利用できるサービスの総量も増える一方、日々の見守りや介助の必要度も高いため、結果として限度額に近い水準までサービスを組み合わせるケースが多く見られます。限度額との比較はケアプランを見直すたびにこまめに確認することが大切です。
限度額の対象に含まれないサービス
すべての介護保険サービスが、この区分支給限度基準額の対象になるわけではありません。
施設サービスは対象外
特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの施設サービスは、区分支給限度基準額の対象外です。施設サービスは施設ごとの介護報酬体系にもとづいて費用が決まる仕組みになっています。
住宅改修費・福祉用具購入費も別枠
手すりの設置などの住宅改修費(原則20万円が上限、生涯で1回が基本)や、腰かけ便座などの特定福祉用具購入費(年間10万円が上限)は、区分支給限度基準額とは別枠で設定されています。在宅サービスの限度額を使い切っていても、これらの制度は別途利用できます。手すりの設置やスロープの設置など、複数回に分けて住宅改修を行いたい場合でも、合計で上限額に達するまでは追加の申請が可能です。
ケアプランと限度額の関係
限度額の範囲内でどのサービスをどう組み合わせるかは、ケアプランの重要なテーマです。
ケアマネジャーが限度額内で調整する
居宅介護支援事業所のケアマネジャーは、本人・家族の希望や生活状況を踏まえながら、限度額内に収まるようにケアプランを作成します。希望するサービスをすべて限度額いっぱいまで詰め込むのではなく、優先順位を付けて組み立てるのが一般的なアプローチです。
優先順位を付けて組み合わせる
例えば、入浴介助を重視するなら訪問介護やデイサービスの利用回数を優先し、見守りが中心であれば福祉用具の活用を組み合わせるなど、生活の中で本当に必要な支援から優先的に限度額を配分する考え方が基本になります。
ケアプラン様式における支給限度額管理の実務
支給限度額の管理は、ケアマネジャーが作成する居宅サービス計画書(ケアプラン)の様式の中で、具体的な帳票と計算手順にもとづいて行われています。
第6表・第7表で限度額を管理する仕組み
厚生労働省が示す居宅サービス計画書の標準様式では、第6表「サービス利用票」に被保険者証に記載された区分支給限度基準額(単位数)と限度額適用期間を転記し、第7表「サービス利用票別表」で、その月に位置付けられた各サービスの単位数を事業所ごと・サービスコードごとに集計します。
第7表で行う具体的な計算内容
第7表では、集計した単位数の合計から区分支給限度基準額を差し引き、「区分支給限度基準内単位数」と「区分支給限度基準を超える単位数」を算出します。区分支給限度基準内の単位数には地域ごとの単位数単価をかけて費用総額を計算し、保険給付率(原則9割、所得に応じて8割・7割)に応じた保険給付額と利用者負担額を算出します。この一連の計算様式は、厚生労働省老健局が示す「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」の通知にもとづいています。
種類支給限度基準額がある場合の管理欄
市町村が種類支給限度基準額を条例で定めている場合は、第7表にサービスの種類別に単位数を合計し、種類支給限度基準額と比較して超過単位数を算出する欄も設けられています。種類支給限度基準額が設定されていない市町村では、この欄は使用せず、区分支給限度基準額のみで管理します。
限度額適用期間の考え方
ケアプランの第6表には、区分支給限度基準額とあわせて「限度額適用期間」が記載されます。これは被保険者証に記載された要介護認定の有効期間に対応するもので、要介護状態区分が更新・変更されるとあわせて限度額適用期間も更新されます。月の途中で要介護状態区分が変わった場合は、原則としてその月のうち重い方の要介護状態区分に対応する限度額が適用されます。認定更新のタイミングと限度額の変更時期は連動しているため、更新後にケアプランの内容を見直す際は、新しい限度額を前提に組み立て直す必要があります。
明細と第7表の突合せ確認
サービス提供事業所から利用者に交付される領収書や利用明細に記載された単位数は、原則としてケアプランの第7表に記載された単位数の内訳と一致します。両者の間に相違がある場合は、加算の算定もれや実績報告の記載誤りである可能性があるため、担当のケアマネジャーや利用している事業所に確認することが望ましいでしょう。特に、月の途中でサービスの回数を変更した場合や、複数の事業所を利用している場合は、実績報告の反映にタイムラグが生じることがあるため、限度額に近い水準でサービスを利用している月は特に注意が必要です。
高額介護サービス費など自己負担の上限制度との違い
「限度額」という言葉を使う介護保険の制度は、区分支給限度基準額のほかにもう1つあります。それが高額介護サービス費です。名前が似ているため混同されやすいですが、上限の対象がまったく異なります。
上限の対象が「単位数」か「自己負担額」かの違い
区分支給限度基準額は、介護保険から給付される「単位数(サービスの利用量)」の上限です。一方、高額介護サービス費は、実際に利用者が支払った「自己負担額(円)」の上限であり、世帯の所得区分に応じて月額の上限額が段階的に設定されています。1か月の自己負担額の合計がこの上限額を超えた場合に、超えた分が申請にもとづいて払い戻される仕組みです。制度の詳しい所得区分や上限額の目安は、高額介護サービス費とはを解説した記事で説明しています。
限度額超過分は高額介護サービス費の対象にならない
注意したいのは、区分支給限度基準額を超えて全額自己負担(10割)になった部分は、高額介護サービス費の対象に含まれない点です。高額介護サービス費の対象になるのは、あくまで介護保険が適用された自己負担部分(1〜3割)に限られます。限度額を大きく超えてサービスを利用しても、その超過分の負担が高額介護サービス費によって軽減されるわけではない点は理解しておく必要があります。
両制度を組み合わせて考える具体例
区分支給限度基準額の範囲内でサービスを利用していても、要介護度が重く利用量が多い場合は、1〜3割の自己負担額そのものが高額になることがあります。この場合、区分支給限度基準額を超えているわけではないため超過分の全額自己負担は発生しませんが、月々の自己負担額の合計が高額介護サービス費の所得区分ごとの上限額を超えていれば、超えた分の払い戻しを受けられる可能性があります。逆に、区分支給限度基準額を超えて全額自己負担になった部分がある場合は、その部分は高額介護サービス費の対象に含まれません。したがって、限度額内に収まるようにケアプランを組み立てることは、結果的に自己負担額を保険給付と高額介護サービス費の両方の仕組みの中でコントロールしやすくすることにもつながります。
名称が似た制度との混同に注意
介護保険には、区分支給限度基準額・種類支給限度基準額・福祉用具購入費支給限度基準額・住宅改修費支給限度基準額・高額介護サービス費など、「限度額」「上限額」という言葉を使う制度が複数あります。名称が似ているため、市区町村の窓口やケアマネジャーに相談する際は、「介護保険から給付される単位数の上限について知りたいのか」、それとも「実際に支払う自己負担額の上限について知りたいのか」を明確にして質問すると、話がかみ合いやすくなります。
制度は改正されることがある
高額介護サービス費の所得区分や上限額、区分支給限度基準額の単位数は、いずれも介護報酬改定などのタイミングで見直されることがあります。本記事で紹介した内容は目安であり、最新の基準は厚生労働省や市区町村の窓口で確認することが望ましいでしょう。
限度額の見直し・確認方法
限度額は固定的なものではなく、制度改正のタイミングで見直されることがあります。
介護報酬改定にともなう見直し
介護報酬は原則3年ごとに改定されており、それにあわせて区分支給限度基準額の単位数が見直されることがあります。本記事で紹介した数値は目安であり、最新の基準額は厚生労働省の告示や、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口で確認することが望ましいでしょう。特に地域差が生じる単価部分(地域区分)は市区町村ごとに異なるため、全国一律の目安と実際の請求額には多少のズレが生じる可能性がある点も理解しておきましょう。
自分の限度額を確認する方法
自分や家族の要介護度に応じた限度額は、ケアマネジャーに確認するのが最も確実です。ケアプランには利用しているサービスの単位数の合計が記載されているため、限度額に対してどの程度余裕があるかも把握できます。
まとめ
- 区分支給限度基準額は、在宅サービスを合算した1か月あたりの介護保険給付の上限額
- 要支援1の約5,032単位から要介護5の約36,217単位まで、要介護度が上がるほど限度額も上がる
- 限度額を超えた分は全額自己負担になる
- 施設サービス、住宅改修費、福祉用具購入費は区分支給限度基準額の対象外
- 限度額内でのサービスの組み合わせは、ケアマネジャーと相談しながら優先順位を付けて決める