介護保険サービスを利用する際の自己負担割合は、原則1割ですが、所得によって2割または3割になります。この記事では、負担割合の判定基準、負担が高額になった場合の軽減制度、サービスごとの負担額のイメージまで、厚生労働省の制度情報にもとづいて解説します。
介護保険の自己負担割合とは
介護保険サービスを利用した際、費用の一部を利用者本人が負担する割合のことです。残りは介護保険から給付されます。負担割合は所得水準によって1割・2割・3割の3段階に分かれており、全員が一律1割というわけではありません。介護保険は40歳から保険料を納め始める社会保険制度ですが、実際にサービスを使う場面になって初めて自己負担割合の存在を知る方も少なくありません。「介護保険料を納めているのだから、サービスも一律の負担で使えるはず」と思い込んでいると、いざ利用を始めた際に想定より負担が重く感じられることがあります。特に、現役時代に一定の所得があった方や、企業年金等で年金収入が多い方は2割・3割負担になる可能性があるため、早めに自分の位置づけを確認しておくと安心です。親の介護をきっかけに制度に触れる家族にとっては、「1割で済むと思っていたら2割だった」という誤解が資金計画のずれにつながることもあります。
原則1割、所得に応じて2割・3割に
65歳以上(第1号被保険者)のうち、一定以上の所得がある方は2割、現役世代並みの所得がある方は3割の負担となります。40〜64歳の第2号被保険者は、所得にかかわらず一律1割負担です。負担割合が上がるのは、あくまで65歳以上の方のうち所得水準が高い一部の方に限られます。
負担割合証で確認できる
自分(または家族)の負担割合は、市区町村から交付される「介護保険負担割合証」で確認できます。要介護・要支援認定を受けている方全員に交付され、介護保険被保険者証とあわせてサービス利用時に事業所へ提示します。負担割合証を紛失した場合は、市区町村の窓口で再交付を申請できます。新しく契約する事業所には初回利用時までに提示する必要があるため、複数の事業所を併用する場合は、原本のコピーを取っておくなど管理方法を工夫しておくと安心です。
介護保険料と自己負担割合の違い
「介護保険料」と「自己負担割合」は、名前が似ているために混同されがちですが、まったく別の仕組みです。介護保険料は、40歳以上の全員が所得や年金額に応じて毎月(または年金天引きで)納める保険料で、サービスを利用するかどうかにかかわらず発生します。一方、自己負担割合は、実際に介護サービスを利用した際に、その費用の一部として支払う割合のことです。つまり、保険料を多く納めている方が必ずしも自己負担割合も高くなるわけではなく、両者はそれぞれ別の基準(保険料は所得段階、自己負担割合は合計所得金額・年金収入等)で決まります。介護保険料の詳しい仕組みは別記事で解説しています。
2割負担になる基準
2割負担となるのは、本人の所得と世帯の年金収入等がいずれも一定の基準を超える場合です。
本人の合計所得金額の基準
本人の合計所得金額が一定額(目安として160万円程度)以上であることが、2割負担の判定における一つ目の条件です。合計所得金額は、給与収入や年金収入から必要経費や控除を差し引いた金額で、収入額そのものとは異なります。
年金収入等の基準
本人の合計所得金額の基準を満たした上で、さらに世帯の「年金収入+その他の合計所得金額」が、単身世帯・2人以上世帯それぞれで定められた基準額を超える場合に2割負担となります。両方の基準を満たさない場合は1割のままです。ここでいう「合計所得金額」は、給与所得控除や公的年金等控除を適用した後の金額であり、額面の年金受給額や給与収入そのものとは異なります。自分がどちらに該当するか正確に把握するには、確定申告書や住民税の課税明細書に記載された「合計所得金額」の欄を確認するのが確実です。具体的な基準額は制度改正の対象になりやすいため、最新の基準額は厚生労働省の公式情報やお住まいの市区町村窓口で確認してください。
基準額の具体的な内訳(政令で定める金額)
2割負担の判定に使う基準額は、介護保険法施行令で全国一律に定められています。厚生労働省が示す利用者負担割合の判定事務に関する通知によれば、本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満である第一号被保険者のうち、本人を含めた同一世帯の第一号被保険者全員の「公的年金等の収入金額とその他の合計所得金額」の合計が、346万円以上463万円未満(同一世帯の第一号被保険者が本人のみの場合は280万円以上340万円未満)である場合に2割負担となります。合計所得金額の基準である160万円は、制度導入時に65歳以上の被保険者のうち所得の高い方から数えて上位20%に相当する水準として設定されたものです。合計所得金額とは、給与収入や年金収入から給与所得控除・公的年金等控除や必要経費を差し引いた後で、基礎控除などの人的控除を差し引く前の金額を指します。
3割負担になる基準
3割負担は、2割負担よりもさらに高い所得基準を満たす、現役世代並みの所得がある方が対象です。
本人の合計所得金額の基準
本人の合計所得金額が2割負担の基準よりもさらに高い水準(目安として220万円程度)以上であることが条件です。
年金収入等の基準
本人の合計所得金額の基準を満たした上で、世帯の年金収入等が単身・2人以上世帯それぞれの基準額を超える場合に3割負担となります。2割・3割いずれも、基準額は制度改正で見直されることがあるため、負担割合証に記載された内容が最終的な判定結果になります。3割負担に該当する方は、現役世代並みの所得がある一方で、介護サービスの利用頻度が高い場合には自己負担額もそれだけ大きくなるため、次に説明する高額介護サービス費の仕組みをあわせて理解しておくことが特に重要になります。
基準額の具体的な内訳(政令で定める金額)
本人の合計所得金額が220万円以上である第一号被保険者のうち、同一世帯の第一号被保険者全員の公的年金等の収入金額とその他の合計所得金額の合計が463万円以上(本人のみの世帯では340万円以上)である場合に3割負担となります。この基準は、後期高齢者医療制度における現役並み所得者の考え方を踏まえて設定されたもので、平成30年8月の制度改正にあわせて厚生労働省が自治体向けに配布した周知用リーフレットでも「高齢者医療においては、若年世代と同程度の所得がある方について、窓口負担を3割としている。介護保険についてもこの所得区分を踏まえて基準を設定しています」と説明されています。
医療保険の自己負担割合との違い
介護保険と医療保険は別の制度であり、自己負担割合もそれぞれ別の基準で判定されます。どちらも「1〜3割」という同じ数字の区分があるため同じ仕組みだと思われがちですが、対象年齢や所得の見方が異なるため、混同すると誤解が生じやすい部分です。
対象年齢と制度の違い
介護保険の自己負担割合は、40〜64歳(第2号被保険者)が一律1割、65歳以上(第1号被保険者)が所得に応じて1〜3割です。一方、75歳以上(および一定の障害がある65歳以上)が加入する後期高齢者医療制度でも、自己負担割合は1〜3割の3区分に分かれています。65〜74歳の方の多くは国民健康保険や被用者保険(協会けんぽ、健康保険組合等)に加入しており、義務教育就学後から69歳までは原則3割負担という、介護保険とは別の負担割合が適用されます。介護保険の負担割合証と医療保険の被保険者証(またはマイナ保険証)は別の書類であり、記載されている割合が一致するとは限りません。
判定基準の違い
介護保険の負担割合は、本人の合計所得金額と、同一世帯の第1号被保険者の年金収入等を合算した金額の2段階で判定します。これに対し、後期高齢者医療制度の負担割合は、世帯内の後期高齢者医療の被保険者の住民税課税所得を基準に判定する仕組みです。後期高齢者医療広域連合が公表している資料によれば、同一世帯の被保険者に住民税課税所得145万円以上の方がいる場合は現役並み所得者として3割負担となり、課税所得28万円以上かつ「年金収入とその他の合計所得金額」の合計が単身世帯で200万円以上、複数世帯で320万円以上の場合は2割負担となります。介護保険は「合計所得金額」、後期高齢者医療は「住民税課税所得」を基準にする点でも計算方法が異なるため、同じ年収でも両制度の判定結果が一致しない場合があります。
混同されやすい注意点
介護保険の負担割合が3割だからといって、医療保険の負担割合も同じ3割になるとは限りません。逆に、医療保険は1割のままで、介護保険だけ2割・3割になっているケースもあります。介護サービスを利用する事業所には介護保険負担割合証を、医療機関を受診する際には医療保険の被保険者証を、それぞれ別に提示する必要がある点に注意してください。両方の制度を利用している方は、医療費と介護費の合計が高額になった場合に備えた高額医療・高額介護合算療養費制度(後述)もあわせて確認しておくと安心です。
2割負担が導入された時期の違い
医療保険(後期高齢者医療制度)における2割負担の区分は、介護保険よりもかなり後の令和4年(2022年)10月1日に導入されました。介護保険の2割負担が平成27年(2015年)8月に導入されてから、7年以上のブランクがあります。医療・介護のどちらも「一定以上の所得がある方に2割負担を求める」という考え方は共通していますが、導入時期や対象範囲の基準はそれぞれの制度で個別に検討されて決まっているため、医療保険の負担割合が変わったからといって、介護保険の負担割合が連動して変わるわけではありません。
負担割合証の交付と適用期間
負担割合は毎年見直され、前年の所得にもとづいて決定されます。
毎年7月に更新される
介護保険負担割合証は毎年7月頃に対象者へ交付され、その年の8月1日から翌年7月31日までの1年間適用されます。前年の所得が確定するタイミングにあわせて、毎年判定が行われる仕組みです。
世帯構成が変わった場合
退職や年金受給の開始、配偶者の死亡などで世帯構成や収入状況が変わった場合、翌年度の負担割合が変わることがあります。年度の途中で急に割合が変わるわけではなく、基本的には毎年7月の更新のタイミングで反映されます。
所得が年度の途中で大きく変わった場合の扱い
所得が年度の途中で大きく変わっても、負担割合は原則としてすぐには反映されません。介護保険負担割合証は前年の所得にもとづいて毎年8月1日に一斉に切り替わる仕組みのため、年度の途中で退職して収入が下がった場合や、逆に一時的に所得が増えた場合でも、次の8月の更新まで現在の割合が適用されるのが基本です。ただし、修正申告などにより前年の所得そのものが遡って訂正された場合は、市区町村が改めて判定を行い、既に徴収した利用者負担額との差額を事後的に精算する「過誤調整」が行われることがあります。厚生労働省が示す事務処理の取扱いでは、この過誤調整は介護保険法上の保険給付を受ける権利の消滅時効(2年)や、地方自治法上の不当利得の返還請求権の消滅時効(5年)の範囲内で行うとされています。
世帯に複数の要介護者がいる場合の判定
同じ世帯に要介護認定を受けた方が複数いる場合、負担割合の判定は少し複雑になります。「世帯全体で1つの割合が決まる」わけではない点を理解しておくと、家族それぞれの負担割合が異なる理由が分かりやすくなります。
負担割合は本人ごとに判定される
厚生労働省の事務処理通知は「負担割合は世帯単位で判定する仕組みではなく、あくまで第一号被保険者個人を単位として判定する仕組みである」と明記しています。つまり、まず本人自身の合計所得金額で1割か「2割・3割の可能性がある層」かをふるいにかけ、その上で世帯の年金収入等の合計額を使って最終的な割合を決めるという2段階の判定を、世帯にいる第1号被保険者一人ひとりについて個別に行います。
年金収入等の基準だけは世帯で合算する
個人ごとに判定すると説明しましたが、判定の2段階目で使う「公的年金等の収入金額+その他の合計所得金額」は、本人を含めた同一世帯の第1号被保険者全員分を合算した金額で判定します。そのため、たとえば夫婦のどちらか一方の年金収入が多い場合、その配偶者自身は合計所得金額の基準を満たしていなくても、世帯合算額の基準に影響を与えることがあります。逆に、配偶者の年金収入が少なければ世帯合算額が基準額未満となり、本人の合計所得金額が160万円以上あっても1割負担に戻るケースがあります。
具体例で見る判定の仕方
例えば、夫婦とも要介護認定を受けており、夫の合計所得金額が180万円、妻の合計所得金額が90万円だったとします。夫は合計所得金額の基準(160万円以上)を満たすため2段階目の判定に進みますが、妻は基準未満のため単独では1割です。次に世帯の年金収入等の合計額を計算し、2人以上世帯の基準額である346万円以上463万円未満であれば、夫は2割負担、妻は本人の合計所得金額が160万円未満のため引き続き1割負担、という組み合わせになり得ます。同じ世帯でも家族それぞれで負担割合証に書かれた割合が異なることは珍しくありません。なお、次章で説明する高額介護サービス費の負担上限額は、個人の負担割合とは別に世帯単位で合算して判定されます。
負担割合証も本人ごとに交付される
負担割合の判定が本人ごとに行われるのと同様に、介護保険負担割合証も世帯で1枚ではなく、要介護・要支援認定を受けている方一人ひとりに交付されます。同じ世帯に複数の要介護者がいる場合は、家族の人数分の負担割合証が別々に届き、記載されている割合もそれぞれ異なることがあります。介護サービスを利用する際は、家族の証を取り違えて事業所に提示しないよう、氏名と割合を確認してから提出することが大切です。
自己負担が高額になったときの軽減制度
自己負担割合が上がった場合や、サービス利用量が多い場合に備えて、負担を軽減する制度が用意されています。
高額介護サービス費
1か月に支払った介護保険サービスの自己負担額(1〜3割部分)の合計が、所得区分ごとに定められた上限額を超えた場合、超えた分が「高額介護サービス費」として払い戻される制度です。上限額は所得によって段階的に設定されており、住民税非課税世帯は上限額が低く抑えられ、現役世代並み所得の世帯は上限額が高く設定されるなど、負担能力に応じた仕組みになっています。市区町村への申請(初回のみ)が必要です。一度申請すると、その後は上限を超えた分が自動的に払い戻される自治体が多いですが、具体的な上限額は改定されることがあるため、最新の金額はお住まいの市区町村や厚生労働省の情報で確認してください。
高額医療・高額介護合算療養費制度
医療保険と介護保険の両方を利用し、1年間(8月〜翌年7月)の自己負担額の合計が著しく高額になった世帯を対象に、それぞれの限度額を超えた分を合算して払い戻す制度です。医療費と介護費の両方がかさむ世帯にとって、重要な負担軽減策になります。
特定入所者介護サービス費との違い(居住費・食費の軽減)
施設サービスや短期入所を利用する際にかかる居住費・食費は、サービス費とは別の枠組みで扱われ、自己負担割合(1〜3割)の対象には含まれません。原則は施設ごとに定める実費負担ですが、住民税非課税世帯等に該当する方は、市区町村に申請して負担限度額認定を受けることで、居住費・食費の自己負担額が軽減される「特定入所者介護サービス費」という別の制度が用意されています。高額介護サービス費が「サービス費部分」の負担に上限を設ける仕組みであるのに対し、特定入所者介護サービス費は「居住費・食費」の負担を軽減する仕組みであり、対象となる費用の範囲が異なる点に注意してください。
高額介護サービス費の所得区分別上限額
自己負担割合が2割・3割になった方や、サービスの利用量が多い方にとって特に重要なのが、月々の負担に上限を設ける高額介護サービス費の具体的な金額です。上限額は所得区分によって細かく分かれています。高額介護サービス費とは何かを詳しく解説した記事もあわせて参考にしてください。
所得区分別の負担上限額(月額)
厚生労働省が令和7年6月に示した事務処理の取扱いにもとづく、令和7年8月1日からの負担上限額(月額)は次のとおりです。
- 同一世帯の第1号被保険者に課税所得690万円以上の方がいる場合:世帯140,100円
- 同一世帯の第1号被保険者に課税所得380万円以上690万円未満の方がいる場合:世帯93,000円
- 同一世帯の第1号被保険者に課税所得380万円未満の方がいる場合(住民税課税世帯):世帯44,400円
- 世帯の全員が市町村民税非課税の場合:世帯24,600円
- 市町村民税世帯非課税で、公的年金等の収入金額とその他の合計所得金額の合計が80万9,000円以下の方、または老齢福祉年金を受給している方:世帯24,600円(個人15,000円)
- 生活保護を受給している方:個人15,000円
この上限額は、老齢基礎年金の満額が改定されるたびに見直される仕組みになっており、令和6年(1〜12月)に支給された老齢基礎年金(満額)が80万9,000円となったことを踏まえ、非課税世帯に関する基準額が令和7年8月から見直されました。
上限額は世帯単位で合算される
高額介護サービス費の負担上限額は、自己負担割合の判定とは異なり、同一世帯に属する第1号被保険者全員の1か月の自己負担額を合算した上で判定します。そのため、世帯に複数の利用者がいる場合、一人ひとりの負担額が上限に届かなくても、合算した金額が上限を超えていれば差額が払い戻されます。世帯構成が年度の途中で変わった場合は、変更があった月の翌月分から新しい上限額が適用される仕組みです。
申請から支給までの流れ
高額介護サービス費は、上限額を超えた月があっても自動的に支払われるわけではなく、初めて対象になった際に市区町村への申請が必要です。厚生労働省の事務処理では、受給対象者の申請・受給に係る負担を軽減するため、申請は原則として初回のみで足りるようにし、以後は初回申請時に指定した口座へ自動的に振り込む運用が示されています。申請の際に利用者負担額の申告や領収書の添付を求めない取り扱いも推奨されており、一度手続きをすれば、その後は上限を超えた月に自動的に払い戻しを受けられる自治体がほとんどです。
境界層措置(生活保護に至らないための特例)
高額介護サービス費や特定入所者介護サービス費の本来の上限額を適用すると生活保護が必要な状態になってしまう方については、「境界層措置」という特例が設けられています。厚生労働省の事務処理の取扱いによれば、生活保護の申請が却下された場合や、既に受けている生活保護が廃止された場合であって、より低い負担上限額を適用すれば保護を必要としない状態になると認められるときは、通常よりも低い上限額が遡って適用されます。適用期間は、認定を行った年度の翌年度の7月末までとされており、対象になりうる方は市区町村の窓口で相談することができます。
サービス別の負担額のイメージ
実際にどの程度の自己負担になるのか、代表的なサービスでイメージをつかんでおきましょう。
訪問介護を利用した場合
自己負担割合1割の方が訪問介護を利用する場合、身体介護・生活援助ともに1回あたり数百円〜1,000円台の自己負担が目安です。2割・3割負担の方は、この金額がそれぞれ2倍・3倍程度になります。
施設に入所した場合
特別養護老人ホームなど施設サービスの場合、自己負担1割であれば施設サービス費は月額数万円が目安ですが、2割・3割負担になると、この部分の負担が単純計算で2倍・3倍に増える点に注意が必要です。居住費・食費は負担割合にかかわらず所得等に応じた金額がかかります。負担割合が変わるタイミングは毎年7月なので、施設入所を検討している時期に自分の負担割合がどう変わりそうかを事前にシミュレーションしておくと、資金計画が立てやすくなります。
2割・3割負担が導入された経緯(制度改正の歴史)
現在の2割・3割負担の仕組みは、介護保険がスタートしてから何年も経ってから段階的に導入されたものです。制度改正の経緯を知っておくと、今後の見直しの動きも理解しやすくなります。
平成27年8月:2割負担の導入
介護保険の自己負担割合は、2000年の制度創設から2015年(平成27年)7月までは、所得にかかわらず一律1割でした。厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会の資料によると、2割負担は平成27年8月に施行され、65歳以上の被保険者のうち所得の高い方から数えて上位20%に相当する、合計所得金額160万円以上の層を対象に導入されました。あわせて、同一世帯の第1号被保険者に現役並み所得相当の方がいる場合の高額介護サービス費の上限額も、この改正で新たに設けられています。
平成30年8月:3割負担の導入
3割負担は、その3年後の平成30年8月に追加で導入されました。厚生労働省が自治体向けに配布した周知用リーフレットでは、導入の理由について「介護保険制度を今後も持続可能なものとし、世代内・世代間の負担の公平、負担能力に応じた負担を求める観点から、負担能力のある方についてはご負担をお願いするため、見直しを行うこととした」と説明されています。対象は65歳以上で合計所得金額220万円以上の方のうち、世帯の年金収入等が一定額以上の方に限られ、2割負担の対象者すべてが3割になったわけではありません。
見直しの背景にある考え方
2割・3割負担の導入は、高齢化にともなって増え続ける介護費用を、現役世代の保険料だけでなく、負担能力のある高齢者にも応分に分担してもらうことで、制度を維持していくための見直しです。前述のとおり、3割負担の基準は医療保険(後期高齢者医療制度)の現役並み所得者の考え方を踏まえて設定されており、医療・介護それぞれの制度で負担の公平性を図る方向性は共通しています。高額介護サービス費の上限額も、2割・3割負担の導入とあわせて見直され、負担能力の高い世帯の上限額が段階的に引き上げられてきました。
今後の制度見直しの動向
介護保険制度は数年ごとに見直しが行われており、自己負担割合についても議論が続いています。
2割負担対象者の拡大が検討されている
介護保険財政の持続可能性を背景に、2割負担の対象者を拡大する方向の見直しが厚生労働省の審議会で継続的に議論されています。具体的な基準の変更時期や内容は今後の制度改正で確定するため、最新情報は厚生労働省の公表資料で確認することが望ましいでしょう。介護保険制度は3年を1期とする「介護保険事業計画」にあわせて定期的に見直されており、自己負担割合だけでなく、サービスの種類や支給限度額なども含めて制度全体が改定される可能性があります。現在1割負担の方も、将来的に基準が変わる可能性があることを念頭に置いておくとよいでしょう。
直近の基準額改定(令和7年8月)
2割・3割負担そのものの基準額(合計所得金額160万円・220万円等)は毎年見直されるものではありませんが、これに連動する軽減制度の基準額は、年金額の改定にあわせて調整されることがあります。令和6年(1〜12月)に支給された老齢基礎年金(満額)が80万9,000円となったことを踏まえ、特定入所者介護サービス費や高額介護サービス費の利用者負担段階の基準額が令和7年8月1日から見直されました。このように、負担割合そのものの基準と、負担を軽減する制度の基準額は、それぞれ別のタイミングで見直される場合がある点も押さえておくとよいでしょう。今後の制度改正の内容は、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会などで継続的に議論されているため、最新の情報は厚生労働省の公表資料で確認することが望ましいでしょう。
まとめ
- 介護保険の自己負担割合は原則1割だが、所得水準に応じて2割・3割になる場合がある
- 65歳以上の方のみが対象で、40〜64歳の第2号被保険者は一律1割
- 負担割合は「介護保険負担割合証」で確認でき、毎年7月に前年所得をもとに更新される
- 自己負担が高額になった場合は「高額介護サービス費」等の軽減制度がある
- 負担割合の基準は制度改正で見直されることがあるため、最新情報は市区町村や厚労省で確認する