生活福祉資金貸付制度とは|介護費用に使える福祉費の限度額と申込方法を解説

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目次

生活福祉資金貸付制度は、低所得世帯や高齢者世帯、障害者世帯に対して、都道府県社会福祉協議会が資金を貸し付ける公的な制度です。介護サービスを受けるための費用に充てられる「福祉費」は、期間が1年以内であれば170万円、1年を超え1年6月以内で世帯の自立に必要と認められる場合は230万円まで借りることができます。この記事では、制度の全体像と介護費用に関わる福祉費・緊急小口資金・不動産担保型生活資金の内容、申込みの流れ、給付制度との違いを厚生労働省・全国社会福祉協議会の一次情報にもとづき解説します。

生活福祉資金貸付制度とは何か

制度の目的と実施主体

生活福祉資金貸付制度は昭和30年度に創設された公的な貸付制度で、資金の貸付とあわせて必要な相談支援を行うことにより、借受世帯の経済的自立と生活の安定を図ることを目的としています。実施主体は都道府県社会福祉協議会で、財源は全額が公費です。償還された資金を原資として次の貸付に循環利用する仕組みになっており、制度の利用にあたっては、生活保護や他の公的貸付制度など「他の制度でまかなえる場合はそちらを優先する」という原則があります(厚生労働省「生活福祉資金貸付制度」)。

窓口となる実務は、住民に身近な市区町村社会福祉協議会に委託されているのが一般的です。まず相談すべき窓口は、お住まいの市区町村社会福祉協議会になります。

対象となる世帯の種類

対象となるのは、次の3種類の世帯です(全国社会福祉協議会・厚生労働省掲載資料)。

  • 低所得世帯:必要な資金を他から借りることが困難な世帯で、目安として市町村民税非課税程度の世帯。ただし各都道府県の実態に応じて弾力的に運用されています。
  • 障害者世帯:身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者等が属する世帯。低所得世帯のような所得の要件はありません。
  • 高齢者世帯:65歳以上の高齢者が属する世帯。ただし福祉資金は、日常生活上療養または介護を要する高齢者等が属する世帯に限定されます。高齢者を含む4人世帯の場合、年収概ね600万円程度が目安とされています。

いずれの区分に該当するかによって、利用できる資金の種類や審査の観点が変わります。

4種類の資金の全体像

生活福祉資金貸付制度には、用途の異なる4種類の資金があります(全国社会福祉協議会「福祉の貸付制度」)。それぞれの限度額の水準をまず俯瞰しておきます。

福祉費(介護サービス等・230万円)230万円就学支度費(一律50万円)50万円緊急小口資金(10万円以内)10万円

図:福祉費・就学支度費(教育支援資金)・緊急小口資金の主な貸付限度額の比較(1万円あたり2pxで統一)。福祉資金全体の総枠は580万円以内、不動産担保型生活資金は月30万円以内(評価額の70%が上限)という月額制のため、この棒グラフとは別の指標として扱っています。

総合支援資金

生活再建までの間に必要な生活費用等を貸し付ける資金です。生活支援費は2人以上世帯で月20万円以内、単身世帯で月15万円以内、貸付期間は原則3月(最長12月)とされています。据置期間は最終貸付日から6月以内、償還期限は据置期間経過後10年以内です。利率は連帯保証人がいる場合は無利子、いない場合は年1.5%となっています(全国社会福祉協議会・厚生労働省掲載資料)。総合支援資金は住宅入居費・一時生活再建費とあわせて生活困窮者自立支援制度の自立相談支援事業の利用が原則要件とされています。

福祉資金(福祉費・緊急小口資金)

福祉資金は、介護サービスを受けるための経費や住宅の増改築費用など、目的が定まった資金を貸し付ける「福祉費」と、緊急かつ一時的に生計の維持が困難になった場合の「緊急小口資金」の2つで構成されます。介護費用に直接関わるのは主にこの福祉資金であり、詳細は後述の見出しで解説します。

教育支援資金

低所得世帯の子どもが高等学校・大学・高等専門学校等に就学するために必要な費用を貸し付ける資金です。「教育支援費」(月額)と入学時の「就学支度費」(一律50万円)に分かれます。介護そのものの費用ではありませんが、同一世帯内で複数の資金を組み合わせて生活を支えるケースもあるため、制度の全体像として押さえておきます。

不動産担保型生活資金

低所得の高齢者世帯が、居住用の不動産を担保に生活資金の貸付を受ける、いわゆるリバースモーゲージ型の資金です。一般世帯向けと、生活保護を必要とすると認定された世帯向けの「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」の2種類があります。仕組みの詳細は後述します。

介護費用に使える福祉費の内容

対象となる経費

福祉費のうち、介護費用に直接関わるのは「介護サービス、障害者サービス等を受けるのに必要な経費及びその期間中の生計を維持するために必要な経費」という費目です。訪問介護や通所介護などの介護保険サービスの利用料、福祉用具の購入・レンタルに伴う自己負担、及びその期間中の生活費が対象になり得ます(厚生労働省「生活福祉資金貸付条件等一覧」)。福祉費全体の限度額の総枠は580万円以内とされ、用途ごとに個別の上限が定められています。

貸付限度額(170万円・230万円)

介護サービス等を受けるための経費の限度額は、貸付けの対象となる期間によって次のように分かれます。

  • 貸付けの期間が1年を超えないとき:170万円以内
  • 貸付けの期間が1年を超え1年6月以内で、世帯の自立に必要と認められるとき:230万円以内

据置期間(借りたお金の返済を始めなくてよい猶予期間)は貸付けの日(分割して交付する場合は最終貸付日)から6月以内、償還期間は据置期間経過後20年以内です。資金の使途や個別の審査によって償還条件が異なる場合があるため、実際の適用条件は申込窓口で確認する必要があります(厚生労働省「生活福祉資金貸付条件等一覧」)。

連帯保証人と利率

福祉費の利率は、連帯保証人を立てる場合は無利子、連帯保証人を立てない場合は年1.5%です。連帯保証人は原則として必要とされていますが、連帯保証人を立てられない場合でも貸付を受けられる仕組みになっています。介護保険サービスの自己負担が高額になり、高額介護サービス費の払戻しを待つ間の一時的な資金繰りとして福祉費を検討するケースもありますが、あくまで貸付であり返済義務が生じる点に注意が必要です。高額介護サービス費については高額介護サービス費の仕組みを解説した記事で詳しく説明しています。

緊急小口資金の内容

対象となる場面

緊急小口資金は、緊急かつ一時的に生計の維持が困難になった場合に、少額の費用を貸し付けるものです。医療費や介護費の急な出費が生じ、次の年金や給与の支給までのつなぎ資金が必要になった場合などが想定されます。福祉費のように使途を限定した審査ではなく、緊急性・一時性が重視される点が特徴です。

限度額・据置期間・償還期間

緊急小口資金の限度額は10万円以内で、据置期間は貸付けの日から2月以内、償還期限は据置期間経過後12月以内、無利子・連帯保証人不要です(厚生労働省「生活福祉資金貸付事業の見直しの概要」)。少額かつ短期間で完結する資金であるため、福祉費のようなまとまった介護費用には適さず、あくまで一時的なつなぎとしての位置づけになります。

不動産担保型生活資金(リバースモーゲージ型)の仕組み

対象となる世帯と不動産の条件

一般世帯向けの不動産担保型生活資金は、借入申込者本人が単独で所有するか、配偶者との共有名義の不動産に居住しており、世帯に概ね65歳以上の者を含む、市町村民税非課税〜均等割課税程度の低所得世帯が対象です。居住用不動産(土地)の評価額が概ね1,500万円以上であることが目安とされています(神奈川県社会福祉協議会の資料による記載であり、全国一律の基準かどうかは確認できていないため、あくまで目安として捉え、実際の適用条件は申込窓口で確認してください)。

このほか、福祉事務所が生活保護を必要とすると認定した世帯を対象とする「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」もあります。こちらは申込者本人または配偶者が65歳以上であること、居住用不動産の評価額が500万円以上であることが要件で、実施主体は都道府県・指定都市社会福祉協議会です。生活保護受給中で要件に該当する場合は本制度への切替えが可能ですが、生活保護と本資金の併用はできず、貸付終了後に改めて生活保護へ移行する扱いになります(足立区「要保護世帯向け不動産担保型生活資金貸付制度について」)。

貸付限度額と利率

一般世帯向けの貸付限度額は、土地評価額の70%を上限とし、月30万円以内の範囲で3ヶ月ごとに交付されます。利率は年3%、または毎年4月1日時点の長期プライムレートのいずれか低い方が適用されます(神奈川県社会福祉協議会「不動産担保型生活資金」)。

償還のタイミング

償還は、借受人が死亡したとき、または貸付元利金が限度額に達したときのいずれか早い時点で行われます。契約終了後の据置期間は3ヶ月で、延滞した場合の延滞利子は年3.0%です。生活資金を分割で受け取りながら、最終的に不動産を担保に一括して清算する仕組みであるため、担保となる不動産の権利関係や相続人への影響について、事前に十分な説明を受けたうえで検討する必要があります。

教育支援資金の内容

教育支援費

教育支援費は月額で貸し付けられ、進学先によって上限が異なります。高等学校・専修学校(高等課程)は月3.5万円、高等専門学校は月6万円、短期大学・専修学校(専門課程)は月6万円、大学は月6.5万円が目安で、特に必要と認められる場合はこれらの1.5倍まで借りることができます(神奈川県社会福祉協議会「教育支援資金」)。

就学支度費

入学時にまとまった費用が必要になる就学支度費は、進学先の区分によらず一律50万円です。教育支援資金全体の償還期間は20年以内、利率は無利子(延滞した場合のみ年3.0%)で、償還の開始は卒業後概ね6ヶ月後からとされています。

申込みから貸付までの流れ

相談窓口(市区町村社会福祉協議会)

申込みはまず、お住まいの市区町村社会福祉協議会、または地域を担当する民生委員に相談するところから始まります(東京都社会福祉協議会「生活福祉資金貸付事業」)。窓口では、他に利用できる制度がないか、生活困窮者自立支援制度の自立相談支援事業の利用が必要かどうかなど、相談支援も含めて対応が行われます。

民生委員による面接調査

申込みにあたっては、原則として担当地区の民生委員による面接調査が行われ、意見書の提出が求められます。特に福祉費の申込みでは、この民生委員の意見書が必須とされているのが一般的です。生活状況や資金の使途、償還の見込みなどについて、面接を通じて確認されます。

審査・決定・送金までの期間

申込み内容は、まず市区町村社会福祉協議会で審議され、その後、実施主体である都道府県(指定都市)社会福祉協議会で最終的な決定が行われます。決定後は借用書を提出し、指定した口座へ送金される流れです。審査には一定の期間がかかるため、緊急に資金が必要な場合は緊急小口資金の利用も含めて早めに窓口へ相談することが重要です。

他の制度との違い

高額介護サービス費・住宅改修費との違い(給付か貸付か)

介護保険制度には、自己負担額が一定の上限を超えた場合に払い戻される高額介護サービス費や、手すりの設置などの小規模な改修に対する住宅改修費の支給、社会福祉法人等による利用者負担軽減制度など、返済不要の「給付」「軽減」の仕組みがあります。これに対して生活福祉資金貸付制度は、あくまで「貸付」であり、借りた金額を償還(返済)する義務が生じる点が根本的に異なります。介護保険の給付を受けられるかどうかは別途住宅改修費の仕組みを解説した記事で確認できます。どちらが有利かという評価ではなく、返済義務の有無という制度設計の違いとして理解しておくことが大切です。

成年後見制度利用支援事業との違い

成年後見制度利用支援事業は、市区町村が実施する、成年後見制度の申立てにかかる費用や、後見人等への報酬の全部または一部を助成する事業です。生活福祉資金貸付制度とは異なり、こちらも返済を要しない「助成」であり、貸付ではありません。成年後見制度そのものの費用については成年後見制度の費用を解説した記事で詳しく取り上げています。介護に関する費用負担を軽減する制度には、貸付・給付・助成という異なる性質のものが混在しているため、それぞれの位置づけを混同しないよう注意してください。

注意点・よくある失敗

他制度優先の原則

生活福祉資金貸付制度には、生活保護や他の公的な貸付・給付制度で対応できる場合はそちらを優先するという原則があります。窓口での相談時に、まず利用できる他の制度がないかを確認されるのはこのためです。介護費用であれば、高額介護サービス費や社会福祉法人による利用者負担軽減制度など、返済不要の制度が優先的に検討されます。

償還(返済)義務がある点

生活福祉資金はあくまで貸付制度であり、借り受けた資金には償還(返済)義務があります。無利子または低利子であっても、借入金であることに変わりはありません。連帯保証人を立てるかどうかで利率が変わる点も含め、申込み前に償還計画をよく確認しておく必要があります。

コロナ特例貸付との違い

2020年3月から実施された新型コロナウイルス感染症を理由とする特例貸付は、対象世帯の範囲を拡大し要件を緩和した特別な枠組みであり、緊急小口資金は20万円以内、総合支援資金は月15〜20万円という、通常の生活福祉資金貸付制度とは異なる限度額が設定されていました。また、住民税非課税世帯等を対象とした償還免除の特例も設けられており、これは通常の生活福祉資金貸付制度には無い仕組みです(厚生労働省「生活福祉資金貸付(緊急小口資金)の特例貸付について」)。厚生労働省のページにも「新型コロナウイルス感染症の特例貸付の内容ではありません」と明記されているとおり、通常貸付とコロナ特例貸付は別枠の制度である点に注意してください。

まとめ

  • 生活福祉資金貸付制度は都道府県社会福祉協議会が実施する公的な貸付制度で、低所得世帯・障害者世帯・高齢者世帯が対象
  • 介護サービス等を受けるための福祉費は、期間1年以内で170万円、1年超1年6月以内で230万円が限度額の目安
  • 緊急小口資金は10万円以内で無利子・保証人不要の短期のつなぎ資金、不動産担保型生活資金は居住用不動産を担保にした長期の生活資金
  • 高額介護サービス費や成年後見制度利用支援事業などの「給付・助成」とは異なり、償還(返済)義務のある「貸付」である点を理解しておく
  • 申込みはまず市区町村社会福祉協議会へ。他制度優先の原則があるため、他に使える制度がないかも合わせて相談するとよい

本記事で取り上げた制度・金額は今後の制度改正により変更される可能性があります。実際の利用にあたっては、最新の情報をお住まいの市区町村社会福祉協議会で確認してください。かいごの窓では特定の制度や事業者を評価・推奨するものではなく、公的な一次情報にもとづき中立的に制度を紹介しています。サイトの編集方針についてはこのサイトの立ち位置をご覧ください。

よくある質問

生活福祉資金貸付制度で介護費用はいくらまで借りられますか?

介護サービス等を受けるための経費に該当する福祉費であれば、貸付期間が1年以内の場合は170万円以内、1年を超え1年6月以内で世帯の自立に必要と認められる場合は230万円以内が限度額の目安です。福祉資金全体の限度額の総枠は580万円以内とされています。

生活福祉資金貸付制度は誰が対象になりますか?

低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯のいずれかに該当する世帯が対象です。低所得世帯は概ね市町村民税非課税程度、高齢者世帯のうち福祉資金は日常生活上療養または介護を要する高齢者等が属する世帯に限られます。

生活福祉資金は返済しなくてよいのですか?

返済(償還)が必要です。無利子または年1.5%程度の低利子で借りられる制度ですが、給付や助成とは異なり、借りた資金には償還義務があります。福祉費の場合、据置期間経過後20年以内に償還する仕組みです。

緊急小口資金と福祉費の違いは何ですか?

緊急小口資金は緊急かつ一時的な生計維持のための少額(10万円以内)のつなぎ資金で、無利子・保証人不要・据置期間1ヶ月以内です。福祉費は介護サービス費用など使途を特定した資金で、限度額が170万円〜230万円と大きい分、民生委員の面接調査など審査の過程が必要です。

生活福祉資金貸付制度はどこに申し込めばよいですか?

まずはお住まいの市区町村社会福祉協議会、または担当地区の民生委員に相談してください。面接調査を経て市区町村社会福祉協議会で審議された後、実施主体である都道府県(指定都市)社会福祉協議会が最終的な貸付の決定を行います。

貯金や収入があっても借りられますか?

資金の種類によります。低所得世帯を対象とする資金では、目安として市町村民税非課税程度の世帯が想定されていますが、実際の審査基準は各都道府県社会福祉協議会の運用により幅があります。また制度全体として、生活保護や他の公的制度で対応できる場合はそちらを優先する原則があるため、貯金や収入の状況次第で他制度の利用を案内されることもあります。詳細な審査基準は窓口でご確認ください。

参考・出典

  1. 生活福祉資金貸付制度|厚生労働省 (厚生労働省)
  2. 福祉の貸付制度|全国社会福祉協議会 (全国社会福祉協議会)
  3. 生活福祉資金貸付制度について|厚生労働省 (厚生労働省・全国社会福祉協議会)
  4. 生活福祉資金貸付条件等一覧|厚生労働省 (厚生労働省)
  5. 生活福祉資金貸付事業の見直しの概要|厚生労働省 (厚生労働省)
  6. 教育支援資金|神奈川県社会福祉協議会 (神奈川県社会福祉協議会)
  7. 不動産担保型生活資金|神奈川県社会福祉協議会 (神奈川県社会福祉協議会)
  8. 要保護世帯向け不動産担保型生活資金貸付制度について|足立区 (東京都足立区)
  9. 生活福祉資金貸付事業|東京都社会福祉協議会 (東京都社会福祉協議会)
  10. 生活福祉資金貸付(緊急小口資金)の特例貸付について|厚生労働省 (厚生労働省)