介護支援専門員(ケアマネジャー)は、資格を取得したあとも介護支援専門員証の有効期間が5年ごとに区切られており、業務を続けるには「更新研修」を修了して証を更新し続ける必要があります。更新研修には種類があり、初回更新か2回目以降か、実務経験があるかによって受講する研修と時間数が異なります。さらに2026年6月に成立した法改正により、2027年4月からこの更新制度自体が廃止される予定です。ただし、2027年に更新制度そのものが廃止される予定だからといって、今まさに更新時期を迎える人が受講を省略できるわけではありません。むしろ今更新時期を迎える人ほど、施行日との前後関係を確認しておく必要があります。この記事では、更新研修の種類・時間数・費用の目安と、制度改正の内容を公的機関の情報にもとづき整理します。
介護支援専門員の更新研修とは何か
介護支援専門員として働き続けるには、介護支援専門員証(以下、「証」)の有効期間内に定められた研修を修了し、更新の手続きを行う必要があります。これは介護保険法に基づく仕組みで、資格そのものを失うわけではありませんが、証が失効すると介護支援専門員としての業務ができなくなります。
介護支援専門員証の有効期間は5年
介護支援専門員証の有効期間は、交付の日から5年間です[1][4][11]。東京都福祉局や大阪府、新潟県など複数の自治体が同様の説明をしており、全国共通の枠組みといえます。有効期間の満了日までに、対象となる更新研修を修了し、都道府県(実務上は指定研修実施機関)を通じて更新の交付手続きを行うことで、証の有効期間がさらに5年間延長されます[1][4]。
更新研修を修了しないとどうなるか
有効期間満了までに更新研修を修了せず証が失効した状態で介護支援専門員として業務を行うと、介護保険法の規定により登録が消除される処分(=介護支援専門員としての登録が取り消されること)の対象となり得ます[4]。消除処分を受けると、そこから5年間は介護支援専門員として業務ができなくなるとされています[4]。失効後に再び介護支援専門員として業務を行うには、後述する「再研修」の受講が必要とされています[7]。うっかり失効させてしまうと業務に長期的な空白が生じるため、有効期間と更新研修の受講スケジュールの管理は重要です。
更新研修の種類と対象者
更新研修は一種類ではなく、これまでの実務経験や更新の回数によって受講すべき研修が分かれています。新潟県の案内では「初回更新は専門研修課程I・II、2回目以降は専門研修課程IIまたは主任更新研修」という整理が示されており[11]、これが基本的な考え方です。
専門研修課程I(初回更新)
現任の介護支援専門員が、証の有効期間中に一定の実務経験を積んだうえで受講する研修です。初回の更新時に必須とされています[5][6][7][9]。
専門研修課程II(2回目以降)
専門研修課程Iに続いて受講する研修で、2回目以降の更新では原則としてこちらが対象になります[5][6][7][9][11]。
更新研修(実務未経験者向け)
証の有効期間内に介護支援専門員としての業務経験が無い人向けの研修です[2][3][7][10]。名称は「更新研修(実務未経験者)」のほか、自治体によって表記が異なる場合があります。
再研修(資格失効後)
証の有効期間が一度満了・失効したあとに、新たに証の交付を受けようとする人が対象の研修です[7]。失効期間の長さにかかわらず、再研修を修了しなければ介護支援専門員として再び業務を行うことはできません。
| 研修種類 | 対象者 | 実務経験要件 | 時間数の目安 |
|---|---|---|---|
| 専門研修課程I | 初回更新を迎える現任者 | 就業後6か月以上経過 | 56時間以上 |
| 専門研修課程II | 2回目以降の更新者 | 就業後3年以上経過 | 32時間前後(32〜34時間程度) |
| 更新研修(実務未経験者向け) | 証の有効期間内に実務経験が無い人 | 実務経験なし | 54時間前後(都道府県により差あり) |
| 再研修 | 証の有効期間が満了・失効した人 | 失効後、再度登録を目指す人 | 54〜56時間程度(都道府県により差あり) |
より基本的な資格や業務内容についてはケアマネジャーとはという記事で解説していますので、あわせてご確認ください。
専門研修課程Iの内容と時間数
専門研修課程Iは、初回更新にあたって現任者の実務能力をあらためて体系的に確認・向上させることを目的とした研修です。
受講対象となる実務経験要件
専門研修課程Iの対象は「現に介護支援専門員の業務に従事しており、かつ就業後6か月以上経過している者」とされています(茨城県の案内より)[7]。実務経験がまだ浅い段階でも、証の更新時期が来れば受講対象になり得る点に注意が必要です。
カリキュラムの時間数の目安
56時間以上という時間数が、千葉県・茨城県ではいずれも共通して示されています[5][7]。ただし、時間数の設定や実施回数は都道府県によって多少の違いがあるため、実際に受講する都道府県社会福祉協議会等の指定研修実施機関の案内で最新の時間数を確認してください。
専門研修課程IIの内容と時間数
専門研修課程IIは、2回目以降の更新で必要となる研修で、より実践的な事例検討やケアマネジメントの質の向上に重点を置いた内容とされています。
受講対象となる実務経験要件
茨城県の案内では、専門研修課程IIの対象は「就業後3年以上経過している者」とされています[7]。専門研修課程Iを修了して初回更新をしたあと、次の更新に向けて一定の実務経験を積んでから受講する流れになります。
カリキュラムの時間数の目安
専門研修課程IIの時間数は、千葉県では32時間以上とされる一方[5]、茨城県では34時間という表記も見られます[7]。専門研修課程Iよりも短時間で設定されていますが、都道府県によって32時間前後(32〜34時間程度)の幅があるため、一律の数字として覚えるのではなく目安ととらえておくのが安全です。
千葉県・茨城県の公表資料をもとにした目安時間です。都道府県や年度により数時間の差があるため、実際の受講先の最新案内で確認してください(出典:千葉県、茨城県)。
実務未経験者向け更新研修・再研修
専門研修課程I・IIは実務に従事していることが前提ですが、証は取得したものの実務経験が無いまま有効期間が来てしまう人や、一度失効させてしまった人向けの研修も用意されています。
実務未経験者向け更新研修の時間数
実務未経験者向けの更新研修は、都道府県によって時間数や実施方法に差があります。おもな例は以下のとおりです。
- 東京都・茨城県:54時間以上[3][7]
- 鹿児島県:前期のオンデマンド講義25時間+後期の演習5日間(合計約30時間)[10]
オンデマンド併用かすべて集合研修かなど実施方法も自治体によって異なり、呼び方や区分も都道府県ごとに違うため、居住地・勤務地の都道府県の最新案内で確認してください。
※参考として、宮崎県では実務経験者が初回更新で受講する更新研修(専門研修I・II相当)を88時間以上、2回目以降を32時間以上としています[6]。これは実務経験者向けの区分であり、上記の実務未経験者向け研修とは対象が異なります。
再研修が必要になるケース
証の有効期間が一度満了して失効したあとに、あらためて介護支援専門員として登録しようとする場合には再研修が必要です[7]。時間数は都道府県によって差があり、茨城県では54時間以上[7]、福岡県では56時間とされています[8]。失効期間が長くなるほど実務から離れる期間も長くなるため、可能な限り有効期間内に更新研修を修了しておくことが、結果的に負担の少ない選択といえます。
更新研修の費用の目安
更新研修は原則として自己負担での受講となり、受講料は都道府県や研修の種類によって差があります。金額は年度によって改定されることがあるため、あくまで目安として参考にしてください。
都道府県による費用の違い
同じ研修種類でも、都道府県によって受講料が1万円以上異なる場合があります。石川県と福岡県の例をまとめると、以下のとおりです[8][9]。
| 研修種類 | 石川県 | 福岡県 |
|---|---|---|
| 専門研修課程I | 23,000円 | 38,000円(8日間) |
| 専門研修課程II | 12,000円 | 28,000円(5日間) |
| 再研修 | 28,000円 | 38,000円 |
| 主任研修 | 43,000円 | ― |
| 主任更新研修 | 36,000円 | ― |
同じ研修でも自己負担額に差があるため、更新のタイミングでは在住・勤務先の都道府県の最新の受講料案内を確認しておくと安心です。
同じ「専門研修課程I」でも実施日数や運営体制の違いにより受講料に差が出ます(出典:石川県、福岡県)。
受講料補助の例
千葉県では、県が更新研修受講料の一部を補助する制度を設けており、補助単価は5,000円とされています[5]。このような補助制度の有無や補助額も都道府県によって異なるため、居住地・勤務地の都道府県または委託先の指定研修実施機関の案内で確認するとよいでしょう。
主任介護支援専門員研修との違い
更新研修としばしば混同されやすいのが「主任介護支援専門員研修」です。両者は目的も対象者も異なります。
主任介護支援専門員研修と更新研修の関係
主任介護支援専門員研修は、はじめて主任介護支援専門員の資格を取得するための研修であり、これを修了しても介護支援専門員証そのものの更新にはなりません。石川県の受講料一覧でも、主任研修(43,000円)と主任更新研修(36,000円)は専門研修課程I・IIとは別項目として整理されています[9]。主任資格については主任介護支援専門員とはという記事で詳しく解説しています。
主任更新研修が通常の更新に代わる場合
主任介護支援専門員にも別途、有効期間と更新制度が設けられています。新潟県の案内では、既に主任資格を持つ人が2回目以降の介護支援専門員証の更新を行う際、主任介護支援専門員更新研修の修了をもって専門研修課程IIの受講に代えられる場合があると整理されています[11]。ただし主任資格を含めた更新の扱いは制度が複雑なため、この記事では概要にとどめます。主任介護支援専門員としての更新を検討している場合は、必ず居住地・勤務地の都道府県が公表している実施要綱の最新版を確認してください。
更新研修の申込方法とスケジュール
更新研修は誰でも好きな時期に受けられるわけではなく、都道府県ごとに定められた募集期間に申し込む必要があります。
申込時期の目安
申請受付は原則として証の有効期間満了日の3か月前の月初から開始するとされています(東京都の案内)[1]。有効期間の満了直前になって慌てないよう、満了日の半年〜数か月前には研修機関の募集案内を確認しておくことが望ましいでしょう。
実施主体と研修機関
東京都・茨城県・石川県などの案内では、更新研修は都道府県が実施主体として案内されています[1][7][9]。実務上は、都道府県社会福祉協議会や介護支援専門員協会などの指定研修実施機関に委託して運営されています[1][7][9]。厚生労働省は介護支援専門員資質向上事業として、こうした研修体系の整備を進めています[12]。申込方法・会場・オンライン実施の有無は都道府県によって異なるため、自身が更新手続きを行う都道府県の案内を確認してください。研修受講試験そのものについては介護支援専門員実務研修受講試験とはという記事もあわせてご覧ください。
2027年4月施行予定の制度改正
2026年6月19日成立、2027年4月1日施行予定(一部条項を除く)
更新研修を考えるうえで、現時点でもっとも重要な情報が、2027年4月に予定されている制度改正です。
更新制度の廃止の概要
2026年6月19日、参議院本会議で「社会福祉法等の一部を改正する法律」が可決・成立しました[13]。この法律には、介護支援専門員証の有効期間を廃止するとともに、その交付または有効期間の更新を受けるために受講することとされている研修を廃止する内容が含まれています[13]。施行は一部条項を除き、令和9年(2027年)4月1日からとされています[13]。これが実施されると、この記事で解説してきた「5年ごとに証の有効期間があり、更新研修を修了しないと失効する」という仕組み自体が、原則として無くなることになります。ただし、施行日(2027年4月1日)より前に有効期間が満了する人は、従来どおり更新研修の受講が必要です。廃止の決定を理由に受講を見送ってしまうと証が失効するおそれがあるため、注意してください。
今後の資質向上のための研修はどうなるか
法案の要点には、改正後に研修がどのような形で継続されるか、実施主体がどこになるかについての記載はなく、現時点では公表されていません[13]。厚生労働省は従来から介護支援専門員資質向上事業として研修体系の整備を進めていますが[12]、更新制度廃止後の具体的な研修のあり方は、この記事の執筆時点では未確定です。現時点で確定していない部分については、今後の厚生労働省・各都道府県の公表情報を継続して確認することが必要です。
まとめ
- 介護支援専門員証の有効期間は交付から5年間で、満了までに更新研修を修了し更新手続きを行う必要がある
- 更新研修には専門研修課程I(初回更新)・専門研修課程II(2回目以降)・実務未経験者向け更新研修・再研修があり、対象者と時間数が異なる
- 時間数・費用は都道府県によって差があり、専門研修課程Iはおおむね56時間前後、専門研修課程IIはおおむね32時間前後が目安
- 主任介護支援専門員研修は更新研修とは別の制度であり、主任更新研修が通常の更新に代わる場合もあるが詳細は都道府県の実施要綱を確認する必要がある
- 2026年6月成立の法改正により、2027年4月から更新制度自体が廃止される予定で、今後は制度の切り替わりの動向を注視する必要がある
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