機能訓練指導員とは、通所介護(デイサービス)や特別養護老人ホームなどで、利用者の身体機能の維持・向上を目的とした訓練を行う職種の呼び名です。実は「機能訓練指導員」という単独の国家資格は存在せず、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護職員・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師、そして一定の実務経験を持つはり師・きゅう師のいずれかの資格を持つ人が、事業所の人員配置基準上「機能訓練指導員」として配置される仕組みです。本記事では厚生労働省令・通知にもとづき、なれる資格、配置基準、仕事内容、加算の仕組みまでを解説します。
機能訓練指導員とは何か
介護保険法上の「配置すべき職種」であり単独資格ではない
機能訓練指導員は、介護保険法にもとづく「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(厚生労働省令第37号)第93条第1項第4号で、通所介護事業所に配置が義務づけられている職種です。同条第4項では、機能訓練指導員について次のように規定しています。
日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有する者
つまり法令上は「特定の資格を持つ人」ではなく「機能訓練を行う能力を有する者」という職務内容による定義であり、実際にどの資格保有者が該当するかは、後述する通知で具体的に列挙されています。
根拠となる法令は以下のとおりです。
- 通所介護:「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(厚生労働省令第37号)第93条第1項第4号・第4項
- 特別養護老人ホーム:「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」(厚生労働省令第39号)第2条第1項第5号(配置「一以上」)、同条第7項・第8項(兼務の取り扱い)
よくある誤解|特養は「入所者100人に1人」ではない
インターネット上では「特別養護老人ホームの機能訓練指導員は入所者100人に1人」といった配置比率がよく紹介されていますが、これは生活相談員やケアマネジャーの配置基準と混同した誤りです。厚生労働省令第39号が定める機能訓練指導員の配置基準は、入所者数にかかわらず一律で「一以上」であり、人数に比例した基準ではありません。制度を正確に理解するうえで、まずこの誤解を解いておく必要があります。
機能訓練指導員になれる資格一覧
基本となる6資格
機能訓練指導員として配置できる資格は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護職員(看護師・准看護師)・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の6資格が基本です。これらはいずれも身体機能や運動機能に関する国家資格・免許であり、通知でも明確に対象職種として列挙されています。
図:機能訓練指導員として配置できる7つの資格(基本6資格+一定要件を満たすはり師・きゅう師)。介護福祉士やそれ以外の資格は対象外です。
はり師・きゅう師が加わった経緯と実務経験要件
2018年度(平成30年度)の介護報酬改定で、一定の実務経験を有するはり師・きゅう師が機能訓練指導員の対象に加えられました。厚生労働省が公表した「平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」問32・問33によると、対象となるのは「機能訓練指導員を配置している事業所において、6か月以上、機能訓練指導に従事した経験を有する」はり師・きゅう師です。実務時間や日数について細かい規定は設けられておらず、事業所の管理者が「十分な経験を得た」と判断できることが要件とされています。確認方法についても、実際に従事した事業所の管理者による書面での証明があれば足りるとされています。
介護福祉士・実務者研修修了だけではなれない理由
介護福祉士は、機能訓練指導員として認められる7資格のいずれにも該当しないため、介護福祉士の資格だけでは機能訓練指導員になれません。介護福祉士とはどのような資格かは別記事で解説していますが、あくまで介護の専門職としての国家資格であり、機能訓練を専門に行う資格ではないためです。
同様に、介護福祉士実務者研修を修了しただけでも機能訓練指導員にはなれません。実務者研修は介護福祉士国家試験の受験要件の一つに位置づけられている研修であり、機能訓練指導員の資格要件とは制度上まったく別の枠組みです。この2点は特に混同されやすいため、資格取得やキャリアを検討する際は注意してください。
配置基準|どの介護サービスに何人必要か
サービス種別ごとの配置基準(一覧表)
機能訓練指導員の配置が義務づけられている主な介護サービスと、その基準は以下のとおりです。
| サービス種別 | 配置基準 | 兼務 |
|---|---|---|
| 通所介護(デイサービス) | 1以上 | 可 |
| 地域密着型通所介護 | 通所介護に準じる | 可 |
| 通所リハビリテーション | 1以上(配置が必要) | 可 |
| 特別養護老人ホーム | 1以上 | 可 |
| 介護老人保健施設 | 1以上(配置が必要) | 可 |
| 短期入所生活介護 | 1以上(配置が必要) | 可 |
表のとおり、どのサービス種別でも「利用者数に比例した人数」ではなく「一以上」という最低配置数が基準になっている点が共通しています。
兼務の可否と委託・出向・派遣の扱い
機能訓練指導員の配置に関する主なルールは、以下の4点に整理できます。
- 兼務可:機能訓練指導員は他の職務との兼務が認められています。
- 委託不可:機能訓練指導員の業務を外部の事業者へ「委託」する形での配置は認められていません。
- 出向・派遣は条件付きで可:出向や派遣による配置は、必要な書類要件を満たせば可能とされています。
- 病院連携特例は不適用:看護職員には「病院等との連携による確保の特例」がありますが、この特例は機能訓練指導員には適用されません。事業所自身が確保する必要があります。
機能訓練指導員の仕事内容
個別機能訓練計画の作成とPDCA
機能訓練指導員の中心的な業務は、利用者一人ひとりの心身の状態や生活状況を評価したうえで「個別機能訓練計画」を作成し、その計画にもとづいて計画的に機能訓練を行うことです。この計画作成・実施・評価・見直しのプロセスは、後述する個別機能訓練加算の算定要件にも直結しています。
日常生活動作(ADL)維持のための支援
通所介護の運営基準(厚生労働省令第37号第97条)では、通所介護計画にもとづき、機能訓練および日常生活動作(ADL)に必要な援助を行うことが定められています。具体的には、歩行や立ち上がり、着替えなどの動作訓練、関節可動域を維持するための運動、生活動作の指導などが含まれます。単に運動プログラムを提供するだけでなく、利用者が自宅や施設での生活を継続できるよう、生活動作全体を見据えた支援を行う点が特徴です。
個別機能訓練加算の仕組みと令和6年度改定
加算(I)と加算(II)の違い
通所介護等では、個別機能訓練計画を作成し計画的に機能訓練を実施することで「個別機能訓練加算」を算定できます(事業所からの届出が必要です)。この加算には、訓練の実施体制に応じて加算(I)(イ・ロ)と、生活機能の向上を評価する加算(II)があります。加算(I)イと(I)ロは、いずれも機能訓練指導員が計画的な訓練を提供する体制を評価するものですが、(I)ロは(I)イよりも手厚い実施体制(後述のとおり令和6年度改定前は専従配置が要件)を求める区分であり、(II)は訓練の実施体制ではなく、訓練の結果として生活機能が向上したことを評価する加算です。
令和6年度改定で何が変わったか
2024年度(令和6年度)の介護報酬改定後の単位数は、個別機能訓練加算(I)イが56単位/日(据え置き)、(I)ロが76単位/日(改定前の85単位/日から引き下げ)、(II)が20単位/月(据え置き)となっています。(I)ロについては、改定前は「専従の機能訓練指導員をサービス提供時間帯を通じて1名以上配置する」ことが要件でしたが、令和6年度改定でこの配置時間の定めが撤廃され、他業務との兼務や非常勤職員の活用など、より柔軟な人員配置が可能になりました。
※「単位」とは介護報酬の計算単位のことで、実際の金額は「単位数×単価」で計算されます。単価は地域区分やサービス種別によって異なるため、具体的な金額は厚生労働省の最新の単位数表・地域区分の情報で確認してください。
図:個別機能訓練加算(I)ロの単位数は令和6年度改定で85単位/日から76単位/日へ引き下げられましたが、配置要件は柔軟化されました。
| 加算区分 | 改定前(〜令和5年度) | 改定後(令和6年度〜) |
|---|---|---|
| 個別機能訓練加算(I)イ | 56単位/日 | 56単位/日(据え置き) |
| 個別機能訓練加算(I)ロ | 85単位/日 | 76単位/日(引き下げ) |
| 個別機能訓練加算(II) | 20単位/月 | 20単位/月(据え置き) |
この単位数は本記事執筆時点(2026年9月)の情報です。介護報酬は3年ごとの制度改定で見直されるため、実際の算定にあたっては厚生労働省の最新情報を必ず確認してください。
機能訓練指導員の給与についての考え方
資格職種によって給与水準が異なる理由
機能訓練指導員は、理学療法士・作業療法士・看護師など複数の資格職種が就く職種であり、「機能訓練指導員」という単体の職種区分での厚生労働省の賃金統計は存在しません。理学療法士や看護師など資格ごとの賃金統計は公表されていますが、それらの人が機能訓練指導員として勤務した場合の給与だけを切り出した公的な集計はないためです。このため、機能訓練指導員としての給与水準を検討する際は、配置される資格職種(理学療法士なのか看護師なのか等)や事業所の規模・地域によって差があることを前提に考える必要があり、本記事では具体的な年収額を断定的には示しません。参考情報として、理学療法士・看護師など資格別の給与水準は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査で職種別に公表されているため、資格ごとのおおまかな水準を確認したい場合はそちらを参照してください。
機能訓練指導員が働く主な職場
通所介護(デイサービス)
通所介護(デイサービス)は、機能訓練指導員が最も多く配置されているサービス類型の一つです。日帰りで通所する利用者に対し、個別機能訓練計画にもとづく運動プログラムやADL訓練を提供します。
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設
入所施設である特別養護老人ホームでも「一以上」の配置が義務づけられています。また介護老人保健施設(老健)もリハビリテーションを重視した施設であり、機能訓練指導員(理学療法士・作業療法士等)が中心的な役割を担います。施設全体の人員配置の考え方については老人ホームの人員配置基準の記事もあわせて参照してください。
機能訓練指導員になるまでの流れ
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のルート
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、いずれも養成校を卒業し国家試験に合格することで得られる資格です。これらの資格を取得したうえで、通所介護や特養等の求人に応募し、事業所側が機能訓練指導員として配置することで機能訓練指導員として勤務することになります。
看護職員のルート
看護師・准看護師の資格を持つ人も機能訓練指導員として配置できます。看護職員は医療的なケアと機能訓練の両方に関わることができるため、医療的なケアを必要とする利用者が多い施設で重宝されます。
柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・はり師きゅう師のルート
柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師は、それぞれの国家資格を取得すればすぐに機能訓練指導員として配置可能です。一方、はり師・きゅう師については、前述のとおり機能訓練指導員を配置している事業所で6か月以上の実務経験を積んだうえで、管理者による証明を受ける必要があります。
機能訓練指導員のやりがいと課題
利用者の生活機能の変化に直接関われる
機能訓練指導員は、利用者の身体機能や生活動作が改善していく過程に継続的に関われる仕事です。個別機能訓練計画の作成から実施、評価まで一貫して担当することが多く、利用者の変化を長期的に見守れる点が特徴です。
1人配置による孤立・相談相手の少なさ
多くの事業所で機能訓練指導員は「1以上」、つまり1人体制で配置されるケースが少なくありません。同じ専門職種の同僚が身近にいない環境で働くことも多く、専門的な相談相手が限られる点は、この仕事を検討するうえで理解しておきたい特徴です。
注意点|制度は改定されるため最新情報の確認を
本記事で紹介した配置基準・資格要件・加算の単位数は、いずれも執筆時点で確認できた厚生労働省の省令・通知にもとづいています。介護保険制度は3年ごとに報酬改定が行われ、配置基準や加算の要件・単位数が見直されることがあります。実際に事業所を運営する場合や就職・転職を検討する場合は、必ず厚生労働省や都道府県・市区町村の最新の公表情報を確認してください。
すでに介護サービスを利用しているご家族がいる場合、利用中の事業所に機能訓練指導員が実際にどのような体制で配置されているか、個別機能訓練計画の内容はどうなっているかを知りたいときは、担当のケアマネジャーや事業所のスタッフに相談してみるとよいでしょう。
まとめ
- 機能訓練指導員は単独の資格ではなく、通所介護や特養等の人員配置基準における「配置すべき職種」の呼び名
- なれるのは理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護職員・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の6資格に加え、実務経験6か月以上のはり師・きゅう師
- 介護福祉士や実務者研修修了だけではなれない
- 特養の配置基準は「入所者100人に1人」ではなく一律「一以上」
- 個別機能訓練加算の単位数や配置要件は令和6年度改定で見直されており、最新情報は厚労省で確認する必要がある
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