高額介護サービス費は、1か月の介護サービス利用における自己負担額が所得区分ごとの上限を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。この記事では、所得区分別の上限額の目安に加え、現役並み所得のさらに細かい内訳、境界層措置、支給申請の時効、世帯分離による影響、介護保険負担限度額認定証との違いまで、厚生労働省・自治体の公表情報にもとづいて詳しく解説します。
高額介護サービス費とは何か
高額介護サービス費とは、1か月に支払った介護保険サービスの自己負担額(1〜3割の自己負担割合にもとづく部分)の合計が、所得区分ごとに定められた上限額を超えた場合に、その超過分が申請にもとづいて払い戻される制度です。支給の対象になるかどうかは、サービスを利用した月ごとに、実際に支払った自己負担額の合計を上限額と比較して判定されます。
自己負担が際限なく増えないための仕組み
要介護度が重く、多くのサービスを利用するほど自己負担額も増えていきますが、この制度があることで、月々の負担には実質的な上限が設けられます。所得の少ない世帯ほど上限額が低く設定されており、負担能力に応じた仕組みになっています。世帯の中に65歳以上の方(第1号被保険者)が複数いる場合は、それぞれの自己負担額を世帯単位で合算したうえで上限額と比較します。制度の背景には、要介護度が重い人ほど、また所得が低い人ほど負担が重くなりやすいという介護保険制度の構造上の課題があり、その調整弁としての役割を果たしています。医療保険における高額療養費制度と似た仕組みですが、対象になる費用や判定の単位(1か月ごと、世帯ごと)は介護保険独自のルールにもとづいて運用されています。
対象になる費用・ならない費用
対象となるのは、訪問介護やデイサービス、施設サービスなど介護保険が適用される自己負担部分(1〜3割)です。福祉用具の購入費や住宅改修費の自己負担分、施設利用時の居住費・食費、日用品費などは対象外です。
- 対象になる例:訪問介護・訪問看護・通所介護(デイサービス)・短期入所生活介護・施設サービスなどの自己負担(1〜3割)
- 対象にならない例:福祉用具購入費・住宅改修費の自己負担、施設の居住費(滞在費)・食費・日用品費、区分支給限度基準額を超えた全額自己負担分
対象外となる費用の詳しい内訳は、後述の「施設サービス利用時と在宅サービス利用時の違い」で解説します。
所得区分別の月額上限額
上限額は、世帯の所得水準に応じて段階的に設定されています。以下は目安であり、具体的な金額は制度改正で見直されることがあるため、最新の金額は市区町村の窓口で確認してください。所得区分の判定は、原則として毎年8月を基準に、その世帯の前年の所得・課税状況にもとづいて行われます。年度の途中で世帯構成や課税状況が変わった場合も、判定のタイミングによって適用される区分が変わることがあるため注意が必要です。
現役並み所得相当の世帯
現役世代並みの所得がある世帯は、世帯内の課税所得の水準に応じてさらに3段階に細分化されており、月額の上限額はおおむね44,400円から140,100円程度の範囲で設定されています。3段階の具体的な内訳と判定基準は、後述の「現役並み所得の3段階の詳しい内訳」で解説します。
一般世帯
現役並み所得にも住民税非課税にも該当しない一般的な世帯では、月額の上限額はおおむね44,400円(世帯)が目安です。65歳以上の方の多くはこの区分に該当し、上限額を超える月が発生した場合に高額介護サービス費の対象になります。
住民税非課税世帯
世帯全員が住民税非課税の場合、月額の上限額はおおむね24,600円(世帯)が目安です。このうち、老齢福祉年金を受給している方や、公的年金等の収入額と合計所得金額の合計が年間80万9千円以下の方は、世帯の上限額が24,600円、個人の上限額が15,000円とさらに低く設定されます。生活保護を受給している場合の上限額は、個人・世帯とも15,000円です。所得の少ない世帯ほど手厚く軽減される仕組みです。
世帯分離をした場合の上限額への影響
高額介護サービス費の判定でいう「世帯」は、住民基本台帳上の世帯を指します。そのため、同居している家族の一部が住民票上の世帯を分ける「世帯分離」を行うと、世帯全体の課税状況が変わり、結果として月額上限額の区分が変わる場合があります。たとえば介護サービスを利用する親と同居する子に課税所得がある場合、世帯が同一であれば課税世帯として扱われますが、世帯を分けて親のみが住民税非課税であれば非課税世帯の区分が適用される可能性があります。仮に一般世帯の上限額44,400円が適用されていた親が、世帯分離によって住民税非課税世帯の区分(上限額24,600円)に変わった場合、同じ自己負担額でもより多くの金額が払い戻される計算になります。一方で、世帯を分けると、複数の要介護者がいる世帯であっても自己負担額を世帯単位で合算できる範囲が狭くなる点には注意が必要です。区分の判定は自治体が行うため、世帯構成を変更する場合は事前に市区町村の窓口へ相談し、上限額や他の制度への影響を確認することが望ましいでしょう。
現役並み所得の3段階の詳しい内訳
現役並み所得相当の世帯は、一律の負担ではなく、世帯内の65歳以上の方(第1号被保険者)の課税所得に応じて3段階に細分化されています。以前は現役並み所得相当であれば一律44,400円が上限額でしたが、令和3年8月の見直し以降、より所得の高い層に応分の負担を求める形で3区分に分けられ、各自治体の窓口案内でも次の3区分にもとづいて運用されています。
課税所得690万円以上(年収の目安1,160万円以上)
世帯内の65歳以上の方のうち、課税所得が690万円以上(年収の目安1,160万円以上)の方がいる世帯は、月額の上限額が140,100円(世帯)です。3段階のうちもっとも高い所得水準の区分にあたり、医療保険における75歳以上の高額療養費制度の現役並み所得III区分の基準とおおむね対応する形で設定されています。
課税所得380万円以上690万円未満(年収の目安770万円以上1,160万円未満)
課税所得が380万円以上690万円未満(年収の目安770万円以上1,160万円未満)の方がいる世帯は、月額の上限額が93,000円(世帯)です。3段階の中間に位置する区分です。
課税所得380万円未満(年収の目安383万円以上770万円未満)
課税所得が380万円未満(年収の目安383万円以上770万円未満)の方がいる世帯は、月額の上限額が44,400円(世帯)です。この区分は一般世帯と同じ金額ですが、判定上は「現役並み所得相当」に分類されます。3段階のいずれも世帯合算での金額であり、世帯内に対象者が複数いる場合はその合計額が上限額と比較されます。どの区分に該当するかは、市区町村が毎年の課税情報にもとづいて判定し、対象になった世帯には通知が届く運用が一般的です。
申請方法
高額介護サービス費は、自動的に払い戻されるわけではなく、原則として申請が必要です。申請から払い戻しまでには、自治体によって差はあるものの、おおむね1〜3か月程度かかることが一般的です。
初回のみ市区町村への申請が必要
上限額を超える月が発生すると、多くの市区町村では対象者に申請書が送付されます。必要事項を記入し、振込先の口座情報がわかる書類(通帳の写しなど)を添えて、市区町村の介護保険担当窓口に提出することで、超過分が指定口座に払い戻されます。申請書は、サービスを利用した月の1〜2か月後を目安に発送されることが多く、届いたら記載内容を確認したうえで速やかに提出することが望ましいでしょう。
2回目以降は自動的に払い戻される自治体が多い
一度申請して口座情報を登録すると、その後は上限額を超えるたびに自動的に払い戻される運用をしている自治体が多く見られます。ただし運用は自治体によって異なるため、初めて対象になった際に窓口で確認しておくと安心です。振込先の口座を変更した場合は、変更の届出をしないと払い戻しが受けられなくなることがあるため、あわせて注意が必要です。本人が施設に入所していたり、家族が遠方に住んでいたりする場合は、家族や成年後見人など代理の方が手続きできる場合もあるため、詳しい手続き方法は市区町村の窓口に確認してください。
支給申請の時効と時効後の扱い
高額介護サービス費の支給申請には、時効があります。通知が届いても手続きをしないままにしておくと、受け取れるはずだった払い戻しを受けられなくなる場合があるため、注意が必要です。
時効の起算点はいつか
時効の起算点は、対象となる介護サービスを利用した月の翌月1日です。この日から2年を経過すると、時効により支給を受ける権利が消滅します。たとえば5月に利用したサービス分であれば6月1日が起算日となり、翌々年の5月末が申請の期限の目安になります。同様に、12月利用分であれば翌々年の12月末が目安です。
時効を過ぎるとどうなるか
時効が成立した分については、その後に申請しても払い戻しを受けることができません。市区町村から届いた申請書を紛失した場合や、対象になっていることに気づかず放置していた場合でも、時効の起算点自体は変わらない点に注意してください。時効の中断や延長といった特別な救済措置は、一般的には設けられていないため、通知が届いた時点でできるだけ早く手続きを進めることが重要です。
早めの申請が望ましい理由
初めて上限額を超えた月については、市区町村から申請書が送付される運用が一般的ですが、送付のタイミングは自治体によって差があります。案内が届いたら早めに手続きを済ませ、口座情報を登録しておくと、2回目以降の払い戻しを自動化しやすくなり、時効による受給漏れも防ぎやすくなります。長期間にわたって施設に入所している場合など、家族が本人に代わって手続きする機会が少ないケースでは、特に申請漏れが起こりやすいため注意が必要です。
医療費と合算できる制度もある
介護保険だけでなく医療保険の自己負担も重なっている世帯には、別の軽減制度もあります。高額介護サービス費が「介護保険だけ」の月単位の上限であるのに対し、こちらは医療保険と介護保険を合わせた年単位の上限という位置づけです。高齢の親を介護しながら、本人も持病で通院しているような世帯では、月々の高額介護サービス費に加えて、この年間の合算制度もあわせて確認しておくと、負担の全体像を把握しやすくなります。
高額医療・高額介護合算療養費制度の概要
高額医療・高額介護合算療養費制度は、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額を世帯単位で合算し、所得区分ごとに定められた年間の上限額を超えた場合に、その超過分が払い戻される制度です。持病の治療を続けながら介護サービスも利用している世帯にとって、重要な負担軽減策になります。申請先は加入している医療保険(国民健康保険、後期高齢者医療制度、健康保険組合など)の窓口で、そこから介護保険者に必要な情報が照会される仕組みになっています。
所得区分別の年間自己負担限度額
70歳以上の方がいる世帯の年間自己負担限度額(医療保険+介護保険の合計)は、所得区分に応じて次のとおりです。
| 所得区分(70歳以上) | 年間自己負担限度額 |
|---|---|
| 現役並み所得III(課税所得690万円以上) | 212万円 |
| 現役並み所得II(課税所得380万円以上690万円未満) | 141万円 |
| 現役並み所得I(課税所得145万円以上380万円未満) | 67万円 |
| 一般 | 56万円 |
| 低所得II(住民税非課税) | 31万円 |
| 低所得I(住民税非課税・年金収入等が一定以下) | 19万円 |
70歳未満の方がいる世帯では、次のとおり所得区分に応じて年間限度額が設定されています。
| 所得区分(70歳未満・年間所得目安) | 年間自己負担限度額 |
|---|---|
| 年間所得901万円超 | 212万円 |
| 年間所得600万円超901万円以下 | 141万円 |
| 年間所得210万円超600万円以下 | 67万円 |
| 年間所得210万円以下 | 60万円 |
| 住民税非課税世帯 | 34万円 |
具体的な計算例
たとえば、ともに70歳以上の夫婦世帯(住民税非課税の低所得IIに該当)が、1年間で医療保険の自己負担20万円、介護保険の自己負担15万円を支払った場合、合計の自己負担額は35万円になります。この世帯の年間限度額は31万円のため、超過した4万円が高額医療・高額介護合算療養費として払い戻されます。一方、同じ自己負担額(医療20万円・介護15万円)でも、世帯が「一般」区分(年間限度額56万円)に該当する場合は、合計35万円が限度額を下回るため支給の対象にはなりません。年間の自己負担合計が限度額をわずかに下回る場合は支給されない点にも注意が必要です。実際の支給額は加入している医療保険者と介護保険者の双方への申請にもとづいて計算されるため、詳しくは加入する医療保険の窓口に確認してください。
境界層措置
境界層措置とは、通常の負担基準を適用すると生活保護が必要になってしまう方について、より負担の低い基準を適用すれば生活保護を必要としない状態になると福祉事務所長が認めた場合に、その低い基準を適用する仕組みです。高額介護サービス費の負担上限額区分についても、この措置の対象になることがあります。
対象になるのはどのような人か
対象になるのは、生活保護の申請をした方、または受給中の方のうち、境界層措置を適用すれば生活保護を必要としない状態になると福祉事務所長に認められた方です。福祉事務所での相談・生活保護の申請を経て、「境界層該当証明書」の交付を受ける必要があります。介護保険の窓口だけでは手続きが完結せず、生活保護の担当部署である福祉事務所が関わる点が、この制度の特徴です。介護保険の担当窓口に相談しただけでは境界層措置の対象になるかどうかは判断できず、まず福祉事務所での生活保護の相談・申請の手続きが前提になる点に注意してください。
5段階で行われる軽減措置
境界層措置は、生活保護制度への影響が小さいものから順に、次の5段階で検討されます。
- 介護保険料の滞納があっても給付制限を行わない措置
- 施設利用時の居住費(滞在費)の負担限度額を低くする措置
- 施設利用時の食費の負担限度額を低くする措置
- 高額介護サービス費の利用者負担上限額の区分を1段階下げる措置(たとえば月額44,400円を24,600円にする)
- 介護保険料の所得段階をより低い段階にする措置
この順番で軽減を適用し、生活保護を必要としない状態になった段階で適用を止める仕組みになっています。したがって、必ずしも高額介護サービス費の上限額まで軽減が及ぶとは限らない点に留意してください。
境界層該当証明書の申請の流れ
申請の流れは、まず福祉事務所に相談したうえで生活保護の申請を行い、「境界層該当証明書」を受け取ります。その証明書を市区町村の介護保険担当窓口に提出することで、軽減後の基準が適用されます。継続して適用を受けるには、毎年申請が必要になる点にも注意してください。証明書の有効期間は、認定の発効日が属する月に応じて自治体ごとに定められており、年度の途中で認定を受けた場合は、次の更新時期までの間だけ有効となる運用が一般的です。
利用イメージの例
実際の払い戻し額は、世帯の所得区分と1か月の自己負担合計額の組み合わせで決まります。以下はあくまで金額の考え方を示す例であり、実際の給付額は各市区町村が個別に算定します。
単身世帯の例
一般世帯に区分される単身の方が特別養護老人ホームに入所し、施設サービス費の自己負担(1割部分)が月56,000円だった場合、一般世帯の上限額44,400円との差額である11,600円が高額介護サービス費として払い戻されます。居住費・食費はこの計算に含まれないため、実際に手元に残る負担額は、施設サービス費の自己負担44,400円に居住費・食費を加えた金額になります。
夫婦世帯の例
夫婦がともに要介護認定を受け、同一世帯で在宅サービスを利用している場合は、2人分の自己負担額を合算した金額で上限額と比較します。たとえば住民税非課税世帯(世帯の上限額24,600円)で、夫の自己負担が18,000円、妻の自己負担が14,000円だった場合、合計32,000円から上限額24,600円を差し引いた7,400円が世帯として払い戻されます。個人ごとに見れば上限額に届いていなくても、世帯合算によって払い戻しの対象になる点がポイントです。
現役並み所得世帯の例
現役並み所得の中間区分(課税所得380万円以上690万円未満、上限額93,000円)に該当する世帯が、複数の在宅サービスを併用して月の自己負担合計が110,000円になった場合、上限額93,000円との差額である17,000円が高額介護サービス費として払い戻されます。所得水準が高い区分ほど上限額も高くなるため、同じ払い戻しを受けるにはより多くの自己負担額が必要になる点が、一般世帯や住民税非課税世帯との違いです。
要介護度による自己負担額の違い
要介護度が重くなるほど利用できるサービスの量(区分支給限度基準額)が増え、自己負担額も比例して大きくなりやすい傾向があります。要支援1・2のように利用量が少ない段階では上限額に届かないことが多い一方、要介護4・5のように利用量が多くなる段階では上限額を超えやすくなります。ただし高額介護サービス費の上限額そのものは要介護度ではなく所得区分で決まるため、要介護度が高い方ほど月々の自己負担が上限額に達しやすく、高額介護サービス費の対象になりやすいという関係になります。
施設サービス利用時と在宅サービス利用時の違い
高額介護サービス費の対象となる費用の範囲は、施設サービスと在宅サービスで共通する部分と異なる部分があります。
在宅サービスで対象外となる費用
在宅サービスを利用する場合、対象になるのは介護保険が適用される自己負担部分(1〜3割)のみです。福祉用具購入費や住宅改修費の自己負担分は、高額介護サービス費の対象になりません。また、要介護度ごとに定められた区分支給限度基準額を超えて全額自己負担になった部分も、保険給付ではないため高額介護サービス費の対象にはなりません。
施設サービスで対象外となる費用
施設サービス(特別養護老人ホームや介護老人保健施設など)を利用する場合も、対象になるのは介護サービス費の自己負担部分(1〜3割)のみです。施設利用時に別途発生する居住費(滞在費)・食費・日用品費などの生活費相当分は、高額介護サービス費の対象になりません。なお、特別養護老人ホームなど一部の施設サービスは区分支給限度基準額の枠外で提供されるため、在宅サービスのように月間の利用量に上限があるわけではなく、1〜3割の自己負担分がそのまま高額介護サービス費の合算対象になります。これらの居住費・食費を軽減する制度としては、後述する介護保険負担限度額認定証があります。
自己負担額は世帯単位で合算される
施設サービスと在宅サービスのどちらであっても、同じ月に利用した複数のサービスの自己負担額は世帯単位で合算されます。同じ世帯に介護保険サービスを利用している方が複数いる場合も、全員分の自己負担額を合計したうえで上限額と比較する点は共通しています。たとえば同じ世帯で一方が施設に入所し、もう一方が在宅で訪問介護を利用している場合でも、両者の自己負担額(1〜3割部分)は合算されます。合算されるのはあくまで介護保険サービスの自己負担部分であり、施設の居住費・食費や日用品費、福祉用具購入費などは、世帯合算の対象にも含まれません。
介護保険負担限度額認定証との違い・使い分け
高額介護サービス費とよく混同される制度に、介護保険負担限度額認定証があります。名称が似ていますが、対象となる費用も判定基準も異なる別の制度です。
制度の目的の違い
| 項目 | 高額介護サービス費 | 介護保険負担限度額認定証 |
|---|---|---|
| 軽減する費用 | 介護サービス費の自己負担(1〜3割) | 施設・ショートステイの居住費(滞在費)・食費 |
| 対象になるサービス | 在宅サービス・施設サービス全般 | 特別養護老人ホーム等の施設サービス、短期入所生活介護・短期入所療養介護 |
| 判定に使う基準 | 世帯の課税状況(所得区分) | 世帯の課税状況に加え、預貯金等の資産要件 |
| 手続き | 上限額を超えた後に申請し、超過分を払い戻し | 事前に認定証の交付を受け、利用時から費用を軽減 |
| 有効期間 | 申請ごと(口座登録後は自動化される自治体が多い) | 原則1年ごとの更新(毎年の再申請が必要) |
対象者の所得段階(第1〜第4段階)
介護保険負担限度額認定証は、世帯の課税状況と本人の所得に加えて、預貯金等の資産要件も満たす必要があります。段階ごとの目安は次のとおりです。
| 段階 | 所得等の要件(目安) | 預貯金要件(目安) |
|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護受給者、または老齢福祉年金受給で世帯全員が住民税非課税 | 単身1,000万円以下/夫婦2,000万円以下 |
| 第2段階 | 世帯全員が住民税非課税で、年金収入と合計所得金額の合計が年間80万円台以下 | 単身650万円以下/夫婦1,650万円以下 |
| 第3段階(1) | 世帯全員が住民税非課税で、第2段階を上回りおおむね120万円以下 | 単身550万円以下/夫婦1,550万円以下 |
| 第3段階(2) | 世帯全員が住民税非課税で、おおむね120万円を超える | 単身500万円以下/夫婦1,500万円以下 |
| 第4段階 | 上記のいずれにも該当しない(世帯に課税者がいる等) | 軽減の対象外 |
第4段階に該当する場合は、居住費・食費の軽減の対象外です。各段階の細かい所得基準・預貯金基準は制度改正で見直されることがあるため、詳しい要件は市区町村の窓口で確認してください。
両方の制度を併用できるケース
この2つの制度は目的が異なるため、要件を満たせば併用できます。たとえば住民税非課税世帯で施設に入所している方であれば、介護保険負担限度額認定証で居住費・食費の負担を軽減しつつ、介護サービス費の自己負担が上限額を超えた分については高額介護サービス費として払い戻しを受けられる場合があります。それぞれ申請先や必要書類が異なり、介護保険負担限度額認定証は原則として毎年の更新申請が必要になるため、両方の制度について市区町村の窓口で確認しておくとよいでしょう。逆に、施設に入所しておらず在宅サービスのみを利用している場合は、居住費・食費の軽減を行う介護保険負担限度額認定証の対象にはならず、高額介護サービス費のみが関係する点も押さえておきたいポイントです。
利用時の注意点
制度を活用するうえで知っておきたい点です。
上限額は制度改正で見直される
高額介護サービス費の上限額は、介護報酬改定にあわせて見直されることがあります。現役並み所得の3段階化のように、所得区分そのものの構成が変わることもあるため、本記事で紹介した金額は目安として捉え、実際の手続きの際は市区町村の最新情報を確認することが望ましいでしょう。介護保険制度は原則3年ごとに見直しが行われるため、次の制度改正のタイミングでも上限額が変更される可能性があります。過去の改正でも、現役並み所得相当の区分が一律の負担から所得水準に応じた3段階へと見直された経緯があり、今後も社会保障制度全体の動向にあわせて調整される可能性があります。
居住費・食費・日用品費は対象外
施設に入所している場合、居住費や食費は高額介護サービス費の対象になりません。これらの費用を軽減する別の制度として、所得の低い方向けの介護保険負担限度額認定証があり、あわせて確認しておくとよいでしょう。高額介護サービス費が支給されるかどうかは、あくまで介護サービス費の自己負担部分(1〜3割)の合計で判定されるため、居住費・食費を含めた総支払額だけを見て「上限を超えているはずだ」と判断しないよう注意してください。
まとめ
- 高額介護サービス費は、1か月の介護サービス自己負担額が上限を超えた場合に超過分が払い戻される制度
- 現役並み所得相当の世帯はさらに3段階(44,400円・93,000円・140,100円)に分かれ、住民税非課税世帯ほど上限額が低い
- 支給申請には2年の時効があり、対象になった月の翌月1日から起算される
- 医療費とあわせて高額になる場合は高額医療・高額介護合算療養費制度、生活保護に至る場合は境界層措置も利用できる
- 居住費・食費・日用品費は対象外で、これらは介護保険負担限度額認定証など別の制度で軽減される仕組み