介護老人保健施設の在宅復帰率とは|施設選びで確認したい指標と類型の仕組み

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目次

「在宅復帰率」とは、老健(介護老人保健施設)の介護報酬上の施設類型(超強化型・在宅強化型・加算型・基本型・その他型)を決める公的な評価指標のひとつです。この記事では、在宅復帰率の意味と算定の考え方、施設類型ごとの基準値や実際の分布推移を、厚生労働省の公開資料にもとづいて解説します。なお「在宅復帰率が高い施設が優れている」という単純な優劣ではなく、体制や人員配置の違いを反映した数値であるという前提で読み進めてください。

介護老人保健施設(老健)とは何か

法律上の定義と対象者

介護老人保健施設は、介護保険法第8条第28項において「要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者」に対し、施設サービス計画にもとづき看護、医学的管理下の介護および機能訓練その他必要な医療ならびに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設と定義されています。介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)第一条の二の基本方針では、入所者が自立した日常生活を営めるようにするとともに、「その者の居宅における生活への復帰を目指すものでなければならない」と明記されています。

2つの役割と制度の沿革

老健は「①在宅復帰・在宅療養支援のための地域拠点」「②リハビリテーションを提供し機能の維持・改善を図る役割」の2つを担う施設として整理されています。制度の沿革としては、昭和60年の社会保障制度審議会意見書で医療機関と特別養護老人ホームの「中間施設」構想が示され、昭和63年に老人保健施設として本格実施、平成12年の介護保険法施行によって現行制度に移行しました。こうした経緯から、老健は病院と自宅・地域の中間に位置し、在宅生活への復帰を前提としたリハビリ支援施設という性格を制度発足当初から持っています。より詳しい役割や入所の仕組みは介護老人保健施設(老健)とはの記事で解説しています。

「在宅復帰率」とは何を示す指標か

基本的な考え方

在宅復帰率は、老健の介護報酬を決める「在宅復帰・在宅療養支援等指標」10項目のうちの1項目です。一定期間の退所者のうち、自宅・軽費老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅等を含む在宅に戻った人の割合を示す考え方の指標として位置づけられています。老健は入所時点から在宅復帰を目指すことが基本方針に明記されているため、実際にどれだけの入所者が在宅生活に戻れているかを示すこの数値が、施設の介護報酬区分に直接反映される仕組みになっています。

告示上の数値区分

在宅復帰率の評価は、国が定める基準(告示)で「50%超であれば20点」「30%超50%以下であれば10点」「30%以下であれば0点」という3段階の区分で行われます(在宅復帰・在宅療養支援等指標の最高値90点のうちの一部)。令和6年度介護報酬改定でも、この在宅復帰率と後述するベッド回転率の区分自体は据え置かれました。なお、分母・分子の号数レベルの厳密な告示文言(何日間の退所者を対象とするか等の細目)は本記事執筆時点で一次資料からの完全な確認に至っていないため、断定的な表現は避け「一定期間の退所者のうち在宅に戻った者の割合」という説明にとどめます。

在宅復帰・在宅療養支援等指標と5つの施設類型

5つの施設類型と基準値

老健の基本報酬は、在宅復帰・在宅療養支援等指標の合計点数(最高値90点)に応じて「超強化型」「在宅強化型」「加算型」「基本型」「その他型」の5つの類型に区分されます。令和3年度改定時点(令和5年8月時点の資料に基づく)の基準値は次のとおりです。

超強化型 70点以上 在宅強化型 60点以上 加算型 40点以上 基本型 20点以上 その他型 要件未達

図1:在宅復帰・在宅療養支援等指標(最高値90点)の基準値。超強化型70点以上、在宅強化型60点以上、加算型40点以上、基本型20点以上、その他型はこれらの要件を満たさない場合の区分(厚生労働省 社保審-介護給付費分科会第221回資料2にもとづく)。

10の評価項目の内訳

在宅復帰・在宅療養支援等指標は、在宅復帰率のほかに次の項目で構成されています(令和3年度改定ベース)。①在宅復帰率(50%超20点/30%超10点/30%以下0点)、②ベッド回転率(10%以上20点/5%以上10点/5%未満0点)、③入所前後訪問指導割合(30%以上10点/10%以上5点/10%未満0点)、④退所前後訪問指導割合(同基準で10点・5点・0点)、⑤居宅サービス実施数(3サービス5点等)、⑥リハビリ専門職(PT・OT・ST)の配置割合、⑦支援相談員の配置割合、⑧要介護4または5の割合、⑨喀痰吸引の実施割合、⑩経管栄養の実施割合、の合計10項目です。在宅復帰率だけでなく、訪問指導の実施状況や専門職の配置状況など複数の要素を総合して点数化する仕組みになっています。

施設類型別の基本報酬と分布の推移

施設類型の分布はどう変化したか

厚生労働省老健局の集計によると、施設類型の分布は次のように推移しています。

平成30年5月 令和5年2月 超強化型 28.6% 在宅強化型 10.0% 加算型 31.6% 基本型 24.1% その他型 5.7%

図2:施設類型別の割合推移。上段が平成30年5月、下段が令和5年2月(数値は下段の主要類型に付記)。超強化型は7.8%から28.6%へ増加、基本型は51.1%から24.1%へ減少している(厚生労働省 社保審-介護給付費分科会第221回資料2 p.10にもとづく。アニメーションは初回表示時に一度だけバーが伸びる演出で、reduce motion設定時は静止表示)。

令和5年度調査における類型別の平均在宅復帰率

令和5年度調査(対象503施設)では、類型別の在宅復帰率の平均値が公表されています。超強化型56.9%、在宅強化型46.7%、加算型36.1%、基本型18.9%、その他型7.8%で、全体平均は40.0%でした。この数値からも、指標の点数が高い類型ほど実際の在宅復帰率の平均値も高い傾向にあることが読み取れます。

基本報酬の差

基本報酬も類型によって差があります。多床室・令和3年度改定単価(1単位はおおむね10円前後で、地域や施設により異なります。要介護1〜5)で比較すると、在宅強化型は836〜1,085単位、基本型は788〜1,003単位となっており、類型間で報酬水準に差が設けられています。この報酬差は、訪問指導やリハビリ専門職・支援相談員の手厚い配置を維持するための原資になっていると考えられます。

令和6年度介護報酬改定での見直し点

指標の基準引き上げ

令和6年度介護報酬改定では、①在宅復帰率と②ベッド回転率の区分自体は据え置かれた一方で、③入所前後訪問指導割合と④退所前後訪問指導割合の基準が引き上げられました。具体的には、③④ともに「30%以上」が「35%以上」に、「10%以上」が「15%以上」に、「10%未満」が「15%未満」に見直されています。あわせて⑦支援相談員の配置割合の指標には、社会福祉士の配置有無が新たな評価要素として加わりました(3以上かつ社会福祉士配置ありで5点、配置なしで3点、2以上1点、2未満0点)。①②⑤⑥⑧⑨⑩の項目は令和6年度改定でも据え置かれており、6か月の経過措置期間が設けられました。

関連する加算の見直し

あわせて、退所前連携加算500単位が入退所前連携加算Ⅰ600単位/Ⅱ400単位に再編されたほか、ターミナルケア加算に死亡日前45〜31日を対象とする80単位/日の新区分が新設され、総合医学管理加算の算定日数も7日から10日に延長されました。これらは在宅復帰率そのものの算定式ではありませんが、老健の在宅復帰・在宅療養支援機能を評価する報酬体系全体が見直されたことを示しています。

在宅復帰率の高い類型・低い類型で何が違うのか

体制面での違い

在宅復帰・在宅療養支援等指標の点数が高い類型(超強化型・在宅強化型)ほど、「入所前後訪問指導」「退所前後訪問指導」「リハビリ専門職(PT・OT・ST)の複数職種配置」「支援相談員の複数名配置(社会福祉士配置を含む)」といった要件を満たしている傾向があります。これは在宅復帰率という結果指標だけでなく、それを支える人員配置や支援プロセスの体制の違いを反映したものです。ここでいう違いは体制・要件の差であり、「点数が高い施設が優れている」という評価を意味するものではありません。

支援相談員の配置状況の差

支援相談員として社会福祉士を配置している施設の割合は、超強化型78.3%、在宅強化型67.7%、加算型61.9%、基本型56.4%となっており、類型間で差があります。平均配置人数も超強化型3.2人、基本型2.3人という差が報告されています。こうした体制の違いを知ったうえで、見学や相談の際に確認する材料として活用することができます。

特別養護老人ホームなど他施設との制度上の違い

設置根拠と入所要件の違い

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は介護保険法第8条第22項・第27項、老人福祉法第20条の5にもとづいて設置される施設で、入所要件は原則要介護3以上です。一方、老健は要介護1以上から入所対象となり、医学的管理下でのリハビリ・在宅復帰支援を前提とする点が制度上の役割の違いです。特養と老健の違いをより詳しく知りたい場合は特別養護老人ホームと介護老人保健施設の違いを解説した記事を参照してください。

特養には類型区分の仕組みがない

特養の基本報酬体系には、老健のような在宅復帰率の指標区分(超強化型等)は存在しません。特養にも「在宅復帰支援機能加算」(1日あたり10単位)は設けられていますが、算定率は事業所ベースで0.02%と極めて低く、基本報酬の区分そのものを左右する仕組みにはなっていません。この点は、在宅復帰を制度上の前提とする老健との明確な違いといえます。

在宅復帰率をどこで、どう確認すればよいか

介護サービス情報公表システムの活用

厚生労働省が運営する介護サービス情報公表システム(kaigokensaku.mhlw.go.jp)では、老健を含む施設種別ごとの制度概要や基本情報を確認することができます。ただし、個別の事業所ページで在宅復帰率の具体的な数値そのものが必ず公表されているかどうかは、都道府県ごとの公表項目の運用次第という面があり、一律に断定はできません。

施設への直接確認が確実

そのため、具体的な在宅復帰率の数値や、その施設が超強化型・在宅強化型・加算型・基本型・その他型のどれに該当するかを知りたい場合は、施設への直接確認、重要事項説明書、パンフレットでの確認がより確実な方法です。見学や相談の際には次のような質問を用意しておくと、制度上の位置づけを把握しやすくなります。

  • 基本報酬の類型は超強化型・在宅強化型・加算型・基本型・その他型のどれに該当するか
  • 在宅復帰・在宅療養支援機能加算ⅠとⅡのどちらを算定しているか
  • 入所前後・退所前後の訪問指導は具体的にどのようなタイミングで実施されるか
  • リハビリ専門職(PT・OT・ST)は何名配置されているか
  • 支援相談員は何名配置され、社会福祉士資格を持つ職員は在籍しているか
  • 短期集中リハビリテーション実施加算(入所後3か月以内、週3日以上の個別リハ)は算定されているか

老健を検討する際の注意点とよくある誤解

平均在所日数などの数値の扱い方

老健の平均在所日数については、公開されている資料によって異なる数値が見られ、一次情報での確定的な数値の確認には至っていません。この記事では平均在所日数の具体的な日数を断定的には示さず、施設ごとに個別に確認することを推奨します。数値を比較する際は、出典と調査時点が明確なデータかどうかを確認する姿勢が重要です。

類型の違いは優劣ではない

在宅復帰・在宅療養支援等指標の点数や在宅復帰率は、あくまで人員配置や支援プロセスといった体制面の違いを反映した制度上の区分です。入所を検討する高齢者本人の状態や希望する生活の形は一人ひとり異なるため、指標の点数だけで施設の適否を判断するのではなく、リハビリ内容や在宅復帰に向けた支援プロセス、家族との連携体制などを総合的に確認することが大切です。施設選び全般の考え方は老人ホームの選び方を解説した記事もあわせて参考にしてください。

制度は3年ごとに改定される

介護報酬は原則3年ごとに改定されるため、在宅復帰・在宅療養支援等指標の基準値や算定要件も今後変更される可能性があります。本記事の内容は令和6年度改定時点の情報にもとづいており、実際に施設を検討する際は最新の告示・施設からの説明を確認するようにしてください。

まとめ

  • 在宅復帰率は、老健の介護報酬区分を決める在宅復帰・在宅療養支援等指標(最高値90点)10項目のうちの1項目で、告示上「50%超20点」「30%超50%以下10点」「30%以下0点」の3段階で評価される。
  • 施設類型は指標の合計点数により超強化型(70点以上)・在宅強化型(60点以上)・加算型(40点以上)・基本型(20点以上)・その他型(要件未達)の5区分に分かれる。
  • 令和5年2月時点で超強化型が28.6%(平成30年5月時点7.8%)に増加する一方、基本型は24.1%(同51.1%)に減少するなど、類型分布は近年大きく変化している。
  • 令和6年度改定では在宅復帰率自体の基準は据え置かれたが、入所前後・退所前後訪問指導の基準引き上げや支援相談員の社会福祉士配置評価など、周辺項目の見直しが行われた。
  • 具体的な在宅復帰率の数値や施設類型は、施設への直接確認・重要事項説明書での確認がより確実であり、点数の高さだけで施設の優劣を判断しないことが大切である。

本記事で取り上げた制度・数値は執筆時点の公開情報にもとづくものであり、介護保険制度は3年ごとに改定が行われます。最新の内容は厚生労働省や施設への確認をお願いします。当サイトの編集方針についてはこのサイトの立ち位置もご覧ください。

よくある質問

在宅復帰率とはどういう意味ですか。

老健の介護報酬区分を決める「在宅復帰・在宅療養支援等指標」10項目のうち1項目で、一定期間の退所者のうち自宅・軽費老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅等の在宅に戻った人の割合を示す考え方の指標です。告示上「50%超20点」「30%超50%以下10点」「30%以下0点」の3段階で評価されます。

超強化型・在宅強化型・加算型・基本型・その他型の違いは何ですか。

在宅復帰・在宅療養支援等指標の合計点数(最高値90点)による区分です。超強化型は70点以上、在宅強化型は60点以上、加算型は40点以上、基本型は20点以上で、これらの要件を満たさない場合はその他型となります。点数は在宅復帰率のほか訪問指導の実施状況や人員配置など複数項目の合計で決まります。

自分が検討している施設の在宅復帰率や類型は自分で調べられますか。

厚生労働省の介護サービス情報公表システムで施設の基本情報や制度概要を確認できますが、在宅復帰率の具体的な数値が個別事業所ページで必ず公表されているとは限りません。より確実な方法は、施設への直接確認や重要事項説明書、パンフレットでの確認です。

在宅復帰率が高い施設ほど良い施設と言えますか。

在宅復帰率の点数の高さは、訪問指導の実施体制やリハビリ専門職・支援相談員の配置状況など、体制面の違いを反映した制度上の区分であり、一律に施設の優劣を示すものではありません。入所を検討する本人の状態や希望する生活に合わせて、リハビリ内容や支援体制を総合的に確認することが大切です。

特別養護老人ホームにも在宅復帰率の区分はありますか。

特養(介護老人福祉施設)の基本報酬体系には、老健のような在宅復帰率の指標区分(超強化型等)は存在しません。特養にも在宅復帰支援機能加算はありますが、算定率は事業所ベースで0.02%と低く、基本報酬区分を左右する仕組みではありません。

参考・出典

  1. 介護老人保健施設 社保審-介護給付費分科会(第221回)資料2(令和5年8月7日) (厚生労働省)
  2. 介護老人保健施設(改定の方向性) 社保審-介護給付費分科会(第231回)資料2(令和5年11月16日) (厚生労働省)
  3. 令和6年度介護報酬改定の主な事項について 社保審-介護給付費分科会(第239回)資料1(令和6年1月22日) (厚生労働省)
  4. 介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 社保審-介護給付費分科会(第221回)資料1(令和5年8月7日) (厚生労働省)
  5. 令和4年介護サービス施設・事業所調査の概況 (厚生労働省)
  6. 介護サービス情報公表システム 18.介護老人保健施設(老健) (厚生労働省)
  7. 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 高齢・介護ハンドブック (独立行政法人福祉医療機構(WAM NET))