有料老人ホームの入居一時金の保全措置とは|倒産時に戻る上限500万円を解説

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有料老人ホームに入居する際に支払う入居一時金は、数百万円から数千万円にのぼることがあります。もし入居後に施設が経営破綻したら、このお金はどうなるのでしょうか。老人福祉法は、前払金を受け取る有料老人ホームに「保全措置」を義務付けていますが、保全される金額には上限500万円というルールがあり、入居一時金の全額が守られるわけではありません。本記事では、保全措置の仕組み、対象施設の条件、5つの保全方法、上限額の考え方、90日ルールとの違いまで、公的資料にもとづいて解説します。

入居一時金の保全措置とは何か

入居一時金の保全措置とは、有料老人ホームが受け取った前払金(入居一時金)について、施設が倒産するなどして返還義務を果たせなくなった場合に備え、あらかじめ銀行や保険会社などの第三者による保証を用意しておく仕組みです。老人福祉法にもとづき、都道府県知事が指導・確認を行います。

保全措置の目的

保全措置の目的は、入居者が前払いした入居一時金を、施設の経営状態に左右されずに保護することです。有料老人ホームは高齢者向け住まいの一形態ですが、運営主体は民間事業者であり、経営破綻のリスクがゼロではありません。前払金は数百万〜数千万円という高額になることが多く、施設が倒産した際に一切戻らないとなれば、入居者やその家族の生活設計に深刻な影響を与えます。そこで老人福祉法は、施設側に対し、前払金の一定額について第三者による保証を講じることを義務付けています。有料老人ホームとは何か、入居一時金がどのような費用として位置づけられているかについては、有料老人ホームの種類を解説した記事もあわせて確認してください。

対象となる有料老人ホームの範囲

では、どの施設が対象になるのでしょうか。保全措置の対象になるのは、入居一時金(前払金)を受け取る有料老人ホームです。介護付き・住宅型・健康型のいずれの類型であっても、前払金という形で一時金を受領する契約方式を採用している施設であれば、保全措置の対象になり得ます。一方、入居一時金を設定せず、月々の家賃のみを支払う「月払い方式」を採用している施設は、そもそも保全すべき前払金が存在しないため、この義務の対象にはなりません。契約方式は施設ごとに異なるため、検討中の施設がどちらの方式か、重要事項説明書(施設が契約前に交付を義務付けられている説明書類)で確認する必要があります。

老人福祉法上の根拠条文

この保全措置には法律上の根拠があります。老人福祉法第29条です。ただし、この条文は複数回の法改正を経ており、保全措置義務を定める項番号は改正のたびに変わってきました(東京都福祉局「有料老人ホーム設置運営指導指針」令和6年〔2024年〕改正版では第9項)。老人福祉法や介護保険制度は社会情勢に応じて改正されることがあり、対象施設の範囲・義務の内容・条項番号が今後変わる可能性があります。正確な条文番号を確認する場合は、厚生労働省や都道府県が公表している最新の指導指針を参照してください。

保全措置が義務付けられる施設の条件

保全措置は、施設がいつ届出を行ったかによって、義務化の時期が異なります(西暦は元号との対応の目安として併記します)。

平成18年4月1日以降に届出した施設

平成18年(2006年)4月1日以降に有料老人ホームとして届出を行った施設は、前払金を受領する場合、原則として保全措置を講じることが法的に義務付けられています。これは、平成18年の老人福祉法改正により、有料老人ホームの規制が強化されたことによるものです。この時期以降に開設された施設を検討している場合、重要事項説明書に保全措置の内容が明記されているはずです。

経過措置だった既存施設も令和3年4月から義務化

平成18年(2006年)3月31日以前から営業していた既存の有料老人ホームについては、当初、保全措置は努力義務にとどまっていました(経過措置)。しかし、この経過措置は令和3年(2021年)4月1日をもって終了し、以降はすべての届出済み有料老人ホームが、前払金を受領する場合に保全措置を講じる法的義務の対象となっています。長年営業している老舗の施設であっても、現在は保全措置の対象になっている点に注意が必要です。

保全措置の5つの方法

保全措置の具体的な方法は、厚生労働大臣が定める告示(平成18年〔2006年〕厚生労働省告示第266号)により、次の5種類に限定されています。

  • ①銀行等との連帯保証委託契約
  • ②指定格付機関の格付を持つ親会社との連帯保証委託契約
  • ③保険事業者との保証保険契約
  • ④信託会社等との信託契約
  • ⑤高齢者福祉の増進を目的とする一般社団法人・一般財団法人等との保全契約(都道府県知事が認めるもの)

銀行等との連帯保証委託契約

最も一般的な方法の一つが、銀行等の金融機関との連帯保証委託契約です。施設の運営事業者が金融機関と契約を結び、万一施設が前払金を返還できなくなった場合に、金融機関が連帯保証人として返還義務を肩代わりする仕組みです。告示では、これに加えて、指定格付機関から一定の格付を取得している親会社が連帯保証を行う方法も認められています。いずれも、金融機関や親会社という第三者の信用力を背景に、返還義務を保証する点が共通しています。

保険事業者との保証保険契約

保険事業者(損害保険会社等)との間で保証保険契約を結ぶ方法です。施設の運営事業者が保険料を支払い、施設が前払金を返還できなくなった事態が生じた場合に、保険会社から保険金という形で入居者に返還相当額が支払われる仕組みです。銀行保証と並んで、実務上よく用いられる方法の一つです。

信託会社等との信託契約

信託会社等との間で、前払金の一定額を信託財産として管理してもらう信託契約です。施設の運営資金とは分別して信託会社が管理するため、施設の経営状態が悪化しても、信託された財産は施設の債権者からの差押え等の影響を受けにくいという特徴があります。

高齢者福祉法人等による保全契約

高齢者福祉の増進を目的とする一般社団法人・一般財団法人等が、都道府県知事の認可を受けたうえで保全契約の相手方となる方法もあります。業界団体がこうした保全契約の担い手となる場合もありますが、運営主体は個々の一般社団法人・一般財団法人であり、その認可や運用の詳細は都道府県ごとに確認する必要があります。なお、独立行政法人福祉医療機構(WAM)は有料老人ホームの建設資金等に対する融資事業を行っていますが、前払金の保全措置そのものを保証する制度ではありません。保全措置の実施主体は、あくまで銀行・保険会社・信託会社、および都道府県知事が認めた高齢者福祉法人等に限られます。

保全される金額はいくらまでか|上限500万円のルール

保全措置が講じられているからといって、入居一時金の全額が保護されるわけではありません。保全される金額には明確な上限があります。

「未償却の前払金」と「500万円」の低い方が保全額

保全措置によって保証される金額は、「予定償却期間のうち残存する期間に係る額(未償却の前払金)」と「500万円」のいずれか低い方です。つまり、500万円はあくまで上限であり、未償却の前払金がこれを下回っていれば、その金額が保全されます。逆に、未償却の前払金が500万円を上回っていても、保全されるのは500万円までです。

入居一時金3,000万円のうち未償却の前払金が2,500万円残っている場合 保全される金額(上限500万円) 500万円 保全されない金額 2,000万円 未償却の前払金合計 2,500万円 = 保全される500万円 + 保全されない2,000万円

入居一時金3,000万円のうち未償却の前払金が2,500万円残っている場合でも、保全措置で保証されるのは上限の500万円までです。残りの2,000万円は保全の対象外になります。

入居一時金が高額な場合に注意すべき点

入居一時金が数千万円規模の施設を検討する場合、保全措置だけでは超過分をカバーしきれない点を理解しておく必要があります。たとえば入居一時金3,000万円のうち、まだ償却されていない額が2,500万円あったとしても、保全措置で保証されるのは上限の500万円までです。残りの2,000万円については、保全措置による保証の対象外となります。入居一時金の金額そのものが月額費用や想定居住期間との兼ね合いでどう設定されているかは、施設によって異なります。老人ホーム全体の費用相場については老人ホームの費用相場を解説した記事で比較しています。

前払金の償却の仕組みと保全対象額の関係

保全対象額は、入居時点で固定されているわけではありません。前払金の「償却」が進むにつれて、保全対象となる未償却額も変化していきます。

初期償却とは

前払金の多くは、「初期償却」と「想定居住期間にわたる償却」の2段階で構成されるのが一般的です。初期償却とは、入居時点であらかじめ一定割合を償却済みとして扱う仕組みで、契約事務手数料的な性格を持つ部分です。初期償却の割合は施設によって異なり、重要事項説明書に記載されています。

想定居住期間にわたって償却が進む

初期償却分を除いた残りの前払金は、施設側があらかじめ設定する「想定居住期間」にわたって、月ごとに一定額ずつ償却されていきます。東京都の指導指針では、この想定居住期間の設定にあたり、客観的な根拠データにもとづくことが求められています。想定居住期間を過ぎた後は、前払金の償却は完了しているものとして扱われるのが一般的な仕組みです。

償却が進むほど保全対象額(未償却額)は減っていく

保全措置で保護される金額は「未償却の前払金」を基準にするため、入居から時間が経ち、償却が進むほど、保全対象となる金額そのものが減っていきます。入居直後で未償却額が大きい時期ほど、500万円という上限の影響を受けやすく、逆に入居から年数が経ち償却が進んだ段階では、未償却額が500万円を下回っている可能性が高くなります。この点は、次に説明する90日ルール(入居からごく短期間での解約・死亡)が問題になりやすい理由とも関係しています。

90日ルール(短期解約特例)との違い

保全措置としばしば混同されるのが、いわゆる「90日ルール」(短期解約特例)です。両者は目的も適用場面も異なる別の制度です。

90日ルールの内容

90日ルール(短期解約特例)とは、入居日から起算して90日以内に入居者側から契約解除の申し入れがあった場合、または入居者の死亡によって契約が終了した場合に、施設側が、実費相当分を除いた前払金の残額を入居者(または遺族)に返還しなければならないというルールです。根拠は老人福祉法(現行の条項番号では第10項)と老人福祉法施行規則第21条です。詳しい記載事項やクーリングオフとの関係は有料老人ホームの重要事項説明書を解説した記事で説明しています。

保全措置との違い

90日ルールは、施設が契約上負っている返還義務そのものを定めたルールです。これに対し保全措置は、その返還義務を施設が自力で果たせなくなった場合、つまり倒産などの事態に備えた、銀行や保険会社といった第三者による保証の仕組みです。両者は連動しています。90日以内に解約や死亡による契約終了があっても、施設に返還する資力があれば、90日ルールにもとづき全額が返還されます。しかし施設が倒産していれば、90日以内の解約であっても、保全措置の上限額(未償却の前払金と500万円のいずれか低い方)までしか実質的に保証されません。

90日ルールと保全措置、それぞれがカバーする範囲 90日ルール 対象:入居90日以内の解約    または入居者の死亡 内容:前払金残額を返還する    施設の契約上の義務 前提:施設に返還する資力が    あること 資力がない場合 保全措置 対象:施設が返還できなく    なった場合(倒産等) 内容:銀行・保険会社・信託    会社等による第三者保証 上限:500万円(未償却額    との低い方)

90日ルールは施設が契約上負う返還義務そのもの、保全措置はその義務を施設が果たせなくなった場合(倒産等)に、銀行や保険会社などの第三者が保証する仕組みです。90日以内の解約であっても、施設が倒産していれば保全措置の上限までしか実質的に保証されません。

施設が倒産した場合に実際に起きたトラブル事例

実際に、保全措置が不十分だったために入居一時金の返還が滞った事例が、消費者庁の資料に記録されています。

返還が遅れた・減額提示された事例

消費者庁が平成22年(2010年)にまとめた資料には、有料老人ホームの入居一時金をめぐる相談事例が紹介されています。個別の施設名は伏せたうえで、パターンとして一般化すると、次のような事例が報告されています(いずれも平成22年時点の消費者庁資料に記載された事例です)。

  • 入居一時金3,000万円を支払い約4年間入居した後に解約。契約上500万円が返還される予定だったが、施設側の資金繰りが悪化し、数か月経っても返金が行われなかった
  • 3年間入居した後に入居者が死亡し、契約上は死亡から3か月後に返金される取り決めだったが、実際には期限が守られず、減額した金額が提示された末にその支払いすら滞った
  • 解約後1年半が経過しても前払金が返還されなかった

保全措置が講じられていなかった施設の実態調査結果

同じ消費者庁資料には、4都県の519施設を対象にした実態調査の結果も掲載されています。それによると、保全措置を講じていないとみられる施設が137施設(全体の26.4%)にのぼり、告示で定められた5つの方法以外の独自の方法(専用の定期預金口座での管理等)で対応している施設も11施設(2.1%)確認されました。

26.4% 137/519施設 保全措置を講じていないとみられる施設 4都県519施設を対象にした調査のうち、 137施設(26.4%)で保全措置を講じて いないとみられる結果になった。 ※平成22年・消費者庁資料による調査結果

平成22年に消費者庁がまとめた資料では、4都県519施設のうち137施設(26.4%)で保全措置を講じていないとみられる結果が確認されました。この調査は平成22年時点のものであり、その後の法改正を経て状況は変化している可能性があります。

この調査は平成22年(2010年)時点のものであり、その後の法改正(令和3年〔2021年〕4月の経過措置終了等)を経て状況は変化している可能性があります。ただし、保全措置の実効性を確認する際には、こうした過去の実態も踏まえたうえで、個々の施設の重要事項説明書を自分の目で確認することが重要です。

重要事項説明書で確認すべきポイント

保全措置の有無や内容は、入居前に施設から交付される重要事項説明書で確認できます。

保全措置の記載欄

老人福祉法施行規則にもとづき、有料老人ホームの重要事項説明書には、前払金の保全措置の有無、講じている場合はその方法(銀行等との連帯保証委託契約、保険契約、信託契約等のいずれか)、保証を行う相手方の名称等を記載することが義務付けられています。東京都・大阪府をはじめ、多くの自治体が重要事項説明書の標準様式を公開しており、記載すべき項目のひな形を確認できます。

契約前にチェックすべき項目

契約前には、少なくとも次の項目を重要事項説明書で確認することが望まれます。

  • 保全措置が講じられているか、講じられている場合はどの方法か
  • 保証を行う相手方(銀行・保険会社・信託会社・高齢者福祉法人等)の名称
  • 入居一時金のうち未償却額が500万円を超える見込みがある場合、その超過分は保全されない点を理解したうえで、想定居住期間や償却スケジュールを確認すること
  • 90日ルールの適用条件と、保全措置との関係を併せて理解しておくこと

なお、重要事項説明書の標準様式は東京都・大阪府などの自治体が公開していますが、お住まいの都道府県のウェブサイトでも同様の指導指針・様式が公開されていることが多いため、あわせて確認してください。

保全措置の限界と注意点

保全措置は入居者を守るための重要な仕組みですが、万能ではありません。

改善命令はあるが実際の処分実績はほぼ無い

保全措置の義務に違反している施設に対しては、都道府県知事が改善命令を出すことが最初の対応となります。改善命令に従わない場合は、老人福祉法第39条により6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

すでに事業を開始している事業者に対して改善命令等の行政処分を実際に行うことは事実上困難である——消費者庁の資料には、こうした意見が複数の都道府県から寄せられていたことが記録されています。

制度上は罰則があるものの、実際の処分実績はほぼないというのが実情であり、行政の監督だけに頼らず、入居者・家族自身が重要事項説明書を確認することが欠かせません。厚生労働省老健局高齢者支援課は、有料老人ホームを対象とした指導状況等のフォローアップ調査を実施し、都道府県ごとの指導実績を取りまとめて公表しています。入居を検討する家族は、施設側の説明だけに頼らず、こうした公表資料も参考にしながら、契約前に保全措置の内容を自分の目で確かめることが望まれます。

500万円を超える部分は保護されないため入居一時金の金額自体も検討材料にする

前述のとおり保全措置には500万円という上限があるため、入居一時金の金額そのものをどう設定するかも、施設選びの検討材料になります。月額費用を高めにして入居一時金を抑える契約プランを選べる施設もあれば、入居一時金を高めに設定して月額費用を抑えるプランの施設もあります。どちらが自分の状況に適しているかは、想定される入居期間や資金計画によって異なるため、契約前に複数のプランを比較検討することが重要です。

まとめ

ここまでの内容を整理します。

  • 入居一時金の保全措置は、施設が倒産等で返還義務を果たせなくなった場合に備え、銀行・保険会社・信託会社等が第三者として保証する仕組み(老人福祉法第29条にもとづく。令和6年版の東京都指導指針では第9項)
  • 平成18年4月1日以降に届出した施設は原則義務、それ以前からの既存施設も令和3年4月1日以降は義務化された
  • 保全措置の方法は告示で定められた5種類(銀行等との連帯保証委託契約、格付を持つ親会社との連帯保証委託契約、保険契約、信託契約、都道府県知事が認めた高齢者福祉法人等との保全契約)に限られる
  • 保全される金額は「未償却の前払金」と「500万円」の低い方が上限で、入居一時金が高額な場合は超過分が保護されない
  • 90日ルールは施設の契約上の返還義務、保全措置はその義務を施設が果たせなくなった場合の第三者保証であり、両者は別の制度である

老人福祉法をはじめとする関連制度は改正されることがあり、保全措置に関する条項番号や運用も今後変わる可能性があります。契約前には、最新の重要事項説明書や都道府県の指導指針で内容を確認してください。このサイトは特定の施設や事業者を評価・推奨するものではなく、公的資料にもとづく中立的な情報提供に努めています。運営方針の詳細はこのサイトの立ち位置をご覧ください。

よくある質問

入居一時金が3,000万円の場合、施設が倒産したらいくら戻ってきますか?

保全措置で保証されるのは「未償却の前払金」と「500万円」のいずれか低い方です。入居一時金3,000万円のうち未償却額が2,500万円残っている段階で施設が倒産した場合、保証されるのは上限の500万円までで、残りの2,000万円は保全の対象外になります。

保全措置と90日ルール(短期解約特例)の違いは何ですか?

90日ルールは、入居から90日以内の解約や入居者の死亡があった場合に、施設が前払金の残額を返還する契約上の義務です。保全措置は、この返還義務を施設が自力で果たせなくなった場合(倒産等)に備え、銀行や保険会社などの第三者が保証する仕組みで、上限は500万円です。

保全措置が講じられているかどうかはどこで確認できますか?

施設から交付される重要事項説明書で確認できます。老人福祉法施行規則にもとづき、保全措置の有無、講じている場合の方法(銀行等との連帯保証、保険契約、信託契約等)、保証を行う相手方の名称が記載されています。

平成18年より前からある古い施設は保全措置の対象外ですか?

対象外ではありません。平成18年3月31日以前から営業していた施設は当初、保全措置が努力義務でしたが、この経過措置は令和3年4月1日に終了し、現在はすべての届出済み有料老人ホームが、前払金を受領する場合に保全措置を講じる法的義務の対象です。

保全措置の方法(銀行保証・保険・信託等)によって安全性に違いはありますか?

厚生労働大臣が定める告示では、銀行等との連帯保証委託契約、保険事業者との保証保険契約、信託会社等との信託契約、都道府県知事が認めた高齢者福祉法人等との保全契約など5種類の方法が認められています。いずれの方法でも保全される金額は「未償却の前払金」と「500万円」の低い方が上限である点は共通です。

保全措置が発動した場合、返還までどのくらいの期間がかかりますか?

法令上、返還までの期間は明確に定められていません。消費者庁の資料に記録された事例では、施設の経営状態によって数か月から1年半程度返還が遅れたケースが報告されています。返還時期は個々の事案によって異なるため、契約前に保全措置の方法や連絡先を重要事項説明書で確認しておくことが重要です。

参考・出典

  1. 東京都有料老人ホーム設置運営指導指針(令和6年改正版) (東京都福祉局)
  2. 有料老人ホーム設置運営指導指針・重要事項説明書様式 (東京都福祉局)
  3. 前払金の保全措置について (消費者庁)
  4. 厚生労働大臣が定める有料老人ホームの設置者等が講ずべき措置(平成18年厚生労働省告示第266号) (厚生労働省)
  5. 老人福祉法(昭和38年法律第133号) (厚生労働省)
  6. 有料老人ホームの現状と課題・論点について (厚生労働省老健局)
  7. 大阪府有料老人ホーム設置運営指導指針・重要事項説明書様式 (大阪府)
  8. 有料老人ホームを対象とした指導状況等のフォローアップ調査結果 (厚生労働省老健局高齢者支援課)
  9. WAM融資対象となる有料老人ホーム (独立行政法人福祉医療機構)