医療的ケアが必要な人の施設選び|胃ろう・吸引の受け入れ条件を厚労省基準で解説

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目次

胃ろうや痰の吸引が必要な家族の施設を探すとき、最初に押さえておきたいのは、受け入れの可否が「制度」ではなく「その施設の体制」で決まるという点です。喀痰吸引等は平成24年(2012年)4月1日施行の法改正により、研修を修了した介護職員等も医師の指示の下で行えるようになりました。しかし厚生労働省が平成28年度(2016年度)に実施した調査では、夜間・休日を通じてたんの吸引ができる体制にある特別養護老人ホームは41.1%にとどまります。この記事では、介護職員が法律上できる医療的ケアの範囲、施設種別ごとの医師・看護職員の配置基準、見学時に確認すべき質問項目を、一次情報にもとづいて整理します。

退院の話が出ている方が、まず取りかかる3つのこと

  • 必要な医療的ケアを書き出す…処置の名称(口腔内の吸引、胃ろうからの注入など)、1日あたりの回数、夜間に必要かどうか、使用している器具、主治医から聞いている今後の見通しを1枚のメモにまとめます。施設との会話は、このメモが土台になります。
  • 入院中なら病院の医療ソーシャルワーカーに相談する…入退院支援・療養支援を業務として担う専門職です。地域で対応できる施設の種別やサービスの組み合わせを一緒に絞り込めます。すでに在宅で暮らしている段階なら、地域包括支援センターと担当のケアマネジャーが窓口になります。
  • 候補施設に確認する質問項目をそろえる…「医療的ケアはできますか」という聞き方では答えが噛み合いません。見学・面談で確認したい質問項目に、そのまま使える形で一覧にしています。

医療的ケアが必要な人の施設選びとは

医療的ケアが必要な人の施設選びとは、「本人に必要な処置を、その施設で・誰が・いつ実施できるのか」を一つずつ突き合わせていく作業です。病院から退院を打診された家族が「胃ろうだから特養は無理」「痰の吸引があるから病院しかない」と考えてしまうことは少なくありませんが、制度上は介護保険施設でも一定の医療的ケアを行える仕組みが整っています。一方で、制度上できることと、目の前の施設が実際にできることは別問題です。まずは「医療的ケア」という言葉が指す範囲を整理し、受け入れ可否を左右する要素を確認します。

「医療的ケア」が指す範囲

介護の現場で「医療的ケア」と呼ばれるものには、制度上の位置づけが異なる行為が混在しています。制度の中心にあるのは、社会福祉士及び介護福祉士法第2条第2項が介護福祉士の業務として定める「喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であつて、医師の指示の下に行われるもの」です。この具体的な内容は同法施行規則第1条で5つの行為に限定されています。

喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であつて、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る)

出典:社会福祉士及び介護福祉士法 第2条第2項

一方で家族が「医療的ケア」として心配する内容には、次のような処置も含まれます。

  • 在宅酸素療法
  • インスリン注射
  • 膀胱留置カテーテルの管理
  • ストーマ(人工肛門・人工膀胱)
  • 褥瘡(じょくそう)の処置
  • 中心静脈栄養
  • 人工呼吸器の管理

これらは法定の5行為には含まれません。行為ごとの位置づけが異なるため、この記事では次の3つに分けて整理します。

  • そもそも医行為に当たらないと整理されているもの
  • 看護職員でなければできないもの
  • 準備や片付けだけなら介護職員も担えるもの

この線引きを知らないまま施設に「医療的ケアはできますか」と尋ねると、双方が違う内容を思い浮かべたまま話が進んでしまいます。そのため、本人に必要な処置の名称を具体的に挙げて確認することが出発点になります。

受け入れ可否は制度ではなく施設の体制で決まる

この記事の芯となる事実は、厚生労働省の調査に示されています。「介護老人福祉施設における医療的ケアの現状についての調査研究事業(結果概要)」という平成28年度(2016年度)の調査で、有効回答は1,502施設です。同じ特別養護老人ホームという種別の中でも、医療的ケアへの対応力は施設ごとに大きく異なります。

表:特別養護老人ホームの医療的ケア体制に関する主な調査結果(平成28年度)
項目(平成28年度調査)割合
常勤の医師がいる施設1.1%
非常勤の配置医がいる施設95.3%
看護職員の夜勤・当直がない施設90.0%
施設内で喀痰吸引に対応できる78.0%
夜間・休日を通じてたんの吸引ができる体制にある41.1%
常時実施できる体制はとっていない35.9%

施設内で喀痰吸引に対応できる施設は78.0%ある一方、夜間・休日を通じて対応できる施設は41.1%です。つまり「この施設は痰の吸引ができますか」という質問には「できます」と答えられても、それが夜間も含むかどうかは別に確認しなければ分かりません。家族が確認すべき問いは「制度上できるか」ではなく「この施設で・誰が・いつ(夜間も)できるのか」だということが、この数字から読み取れます。

よくある誤解

医療的ケアと施設選びについては、次のような誤解が繰り返し生まれています。いずれも一次情報に当てると事実と異なることが分かります。

  • 「介護職員は医療的ケアを一切できない」…平成24年4月1日施行の法改正により、一定の研修を修了し、都道府県から認定を受けた介護職員等は、医師の指示の下で法定の5行為を実施できます。
  • 「特養では胃ろうの人は受け入れてもらえない」…平成28年度調査では、施設内で胃ろう・腸ろうによる経管栄養に対応できる特別養護老人ホームは84.2%でした。受け入れの可否は施設ごとの体制によります。
  • 「看護師がいる施設なら24時間対応してくれる」…同調査では看護職員の夜勤・当直がない施設が90.0%で、そのうち93.0%はオンコール(呼び出し)体制でした。看護職員の配置があることと、夜間に施設内に常駐していることは別です。
  • 「施設に入ったら訪問看護は使えない」…同調査では、訪問看護ステーションが入所者に対応できることを「知らなかった」と回答した施設が47.2%ありました。施設側の認識にも差があるため、外部の医療資源との連携状況は個別に確認する必要があります。さらに施設種別によって扱いが異なり、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅のような住宅系では、そもそも外部の訪問看護や訪問診療との組み合わせが前提になります。どう組み合わせるかは、後半の「施設に入らず在宅で医療的ケアを支える選択肢」で整理します。

介護職員が法律上できる医療的ケア

介護職員等が行える医療的ケアは、法律と省令で明確に限定されています。範囲を知っておくと、施設への質問が具体的になり、「できます」という回答の中身も検証しやすくなります。

喀痰吸引等として認められた5つの行為

社会福祉士及び介護福祉士法施行規則第1条は、介護福祉士が医師の指示の下に行える行為として次の5つを定めています。これらをまとめて「喀痰吸引等」と呼びます。

表:喀痰吸引等として認められた5つの行為
区分行為
喀痰吸引口腔内の喀痰吸引
鼻腔内の喀痰吸引
気管カニューレ内部の喀痰吸引
経管栄養胃ろう又は腸ろうによる経管栄養
経鼻経管栄養

厚生労働省の資料「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度について」では、この制度は平成24年4月1日施行で、介護福祉士については平成27年4月1日施行、ただしそれ以前であっても一定の研修を受ければ実施可能とされています。つまり介護福祉士の資格そのものに喀痰吸引等が自動的に付随するわけではなく、後述する研修と認定の手続が前提になります。

この5行為は、いずれも「喀痰吸引」と「経管栄養」に関するものに限られています。気管カニューレの内部までの吸引は含まれますが、中心静脈栄養の管理や人工呼吸器の管理はこの5行為に入っていません。必要な処置がこの5行為の外にある場合、介護職員の研修体制がどれだけ整っていても、看護職員や医師の対応が前提になります。

第1号・第2号・第3号研修でできる範囲の違い

喀痰吸引等研修は号別に分かれており、修了した号によって実施できる行為と対象者の範囲が変わります。京都府が公表している整理によると次のとおりです。

表:研修の区分ごとに実施できる行為と対象者
研修の区分実施できる行為対象者
第1号研修5行為すべて不特定多数の者
第2号研修5行為のうち任意の行為(1〜4種類を選択)不特定多数の者
第3号研修特定の対象者に必要な行為のみ特定の者

第3号研修は在宅の重度障害者など特定の利用者を想定した仕組みで、基本研修は8時間です。一方、不特定多数の入所者に対応する第1号・第2号研修は、青森県の案内によれば基本研修として講義50時間、その後に演習(2日程度)と筆記試験、さらに実地研修という流れをたどります。研修時間の差は、そのまま施設として担える範囲の差につながります。

施設に確認する際は「喀痰吸引等研修を修了した職員がいますか」で止めず、「第何号研修か」「5行為のうちどの行為について修了しているか」まで踏み込むと精度が上がります。第2号研修は行為を選択して修了する仕組みのため、口腔内の吸引は可能だが気管カニューレ内部の吸引は修了していない、というケースがありえます。

医師の指示と看護職員との連携が前提

喀痰吸引等は、研修修了者が単独の判断で行える行為ではありません。社会福祉士及び介護福祉士法施行規則第26条の3が定める登録特定行為事業者の登録基準では、次のような連携・安全確保の体制が求められています。

  • 医師の文書による指示を受けること
  • 医師または看護職員が対象者の状態を定期的に確認し、情報を共有すること
  • 医師と介護福祉士の役割分担を明確にすること
  • 喀痰吸引等の計画書を作成すること
  • 実施状況の報告書を医師に提出すること
  • 緊急時の連絡方法をあらかじめ定めておくこと
  • 医師・看護職員を含む安全委員会を設置すること
  • 研修体制を整備すること
  • 本人への説明と同意を得ること

この一覧は、そのまま見学時のチェックリストになります。たとえば「緊急時の連絡方法をあらかじめ定めること」は、夜間に吸引中のトラブルが起きたときに誰へどう連絡が行くのかを説明できるかどうかで確認できます。「安全委員会の設置」は、医師・看護職員が参加する形で開催されているか、議題に自分の家族に関わる処置が上がる想定があるかを尋ねれば、体制が形式的なものか実働しているかが見えてきます。

介護職員ができない行為と「医行為でない行為」

この章は、インスリン注射・在宅酸素療法・膀胱留置カテーテル・ストーマなどが必要な場合に関わる内容です。喀痰吸引と経管栄養だけが論点であれば、次の「施設が喀痰吸引等を行うための登録制度」まで読み飛ばしても差し支えありません。医療的ケアの線引きを理解するうえで、もう一つ押さえておきたいのが「そもそも医行為に当たらないと整理されている行為」の存在です。厚生労働省は平成17年と令和4年の2本の通知で、この整理を示しています。

医行為でないと整理されている行為

平成17年(2005年)7月26日の医政発第0726005号(医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について)は、原則として医行為ではないと考えられる行為を列挙しました。主な内容は次のとおりです。

  • 体温測定(腋下・耳式)
  • 自動血圧測定器による血圧測定
  • パルスオキシメータの装着
  • 軽微な切り傷・擦り傷・やけど等の処置
  • 医師の処方と看護職員の指導があり、本人・家族から具体的な依頼がある場合の、軟膏塗布・湿布貼付・点眼・一包化された内用薬の内服・坐薬挿入の介助
  • 爪切り・爪やすり
  • 歯・口腔粘膜・舌の清掃
  • 耳垢の除去(耳垢塞栓の除去を除く)
  • ストーマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てること/自己導尿の補助(カテーテルの準備や体位の保持)/市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器による浣腸

この整理は、家族が抱きやすい不安を和らげる方向にも働きます。たとえばストーマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てることは医行為ではないと整理されているため、ストーマがあること自体が施設入居の絶対的な壁になるわけではありません。ただし内用薬の介助について「一包化された内用薬」という条件が付いているように、いずれも前提条件が細かく設定されています。条件を外れると扱いが変わるため、施設側の説明が通知の枠内にあるかを意識して聞くことが大切です。

インスリン注射・在宅酸素・経管栄養の境界線

令和4年(2022年)12月1日の医政発第1201004号(同解釈についての「その2」)は、平成17年通知より踏み込んで、処置ごとに「できること」と「できないこと」を具体化しました。家族の関心が高い項目を整理します。

表:処置ごとに介護職員が行える工程・行えない工程
処置介護職員が行えると整理されたこと行えないこと
インスリン注射声かけ・見守り、注射器の手渡し、片付け、記録、医師の指示範囲と血糖値が合致しているかの確認、注射器の単位数の確認注射そのもの、針の抜去・処分
経管栄養チューブ固定テープの再貼付、準備、片付けチューブ挿入位置の確認、胃ろうの状態確認、胃内容物の吸引確認の判断
喀痰吸引吸引器の汚水廃棄、水の補充、チューブの洗浄吸引行為そのもの(研修修了者のみ)
在宅酸素療法流量の設定、マスク装着の準備、片付け、加湿瓶の交換開始・停止時の着脱
膀胱留置カテーテル蓄尿バッグの尿の廃棄、尿量・色の確認、テープの再貼付、医師の確認後の陰部洗浄—(通知では可能な行為が列挙されています。それ以外の行為の可否は、通知本文と主治医の指示で確認が必要です)

この表から読み取れるのは、境界線が「処置の種類」ではなく「その処置のどの工程か」で引かれているという点です。インスリンを使っている人であっても、注射そのもの以外の声かけ・確認・片付けは介護職員が担えると整理されています。逆に、経管栄養は法定5行為に含まれる一方で、チューブの挿入位置の確認や胃内容物の吸引確認の「判断」は介護職員に委ねられていません。つまり胃ろうの栄養注入そのものは研修修了者が行えても、注入前の安全確認を誰がするのかという体制が別に必要になるということです。

施設見学では「インスリンがあるので受け入れできません」と言われることがありますが、その理由が注射の実施主体(看護職員の配置時間)にあるのか、血糖値の確認体制にあるのかを聞くと、代替案が見つかることもあります。たとえば注射の時間帯に看護職員が勤務しているか、訪問看護や通院で対応できるかといった検討につながります。

看護職員でなければできない行為

法定5行為の外にある医療的ケアは、看護職員(または医師)による対応が前提になります。平成28年度調査で特別養護老人ホームの対応可能割合を見ると、中心静脈栄養は11.5%、気管切開のケアは10.5%、レスピレータ(人工呼吸器)管理は7.2%と、いずれも1割前後にとどまります。これらは看護職員が日中に配置されているだけでは足りず、24時間の観察と緊急対応が必要になる処置だからです。

また、令和4年通知で介護職員が行えないと整理された「在宅酸素の開始・停止時の着脱」や「胃内容物の吸引確認の判断」も、看護職員の関与が必要な工程です。夜間に看護職員が施設内にいない場合、これらの工程が生じる時間帯をどう設計するのか(日中に集約する、オンコールで指示を受ける、訪問看護と連携する等)が実務上の課題になります。家族としては、必要な処置の一覧を書き出し、それぞれ「誰が」「何時に」行う想定なのかを施設側に説明してもらうことが、最も具体的な確認方法です。

施設が喀痰吸引等を行うための登録制度

介護職員等が実際に喀痰吸引等を行うには、職員個人の研修修了だけでは足りません。東京都福祉局の案内によると、次の3点がそろう必要があります。

  • 喀痰吸引等研修を修了していること
  • 都道府県から「認定特定行為業務従事者認定証」の交付を受けていること
  • 所属する事業者が「登録特定行為事業者」として都道府県に登録されていること

この3点セットが、施設の受け入れ可否を左右する最初のハードルです。研修を修了した職員が在籍していても、事業者としての登録がなければ施設として喀痰吸引等を実施できません。

登録特定行為事業者とは

登録特定行為事業者とは、喀痰吸引等の業務を行う事業者として都道府県の登録を受けた事業者です。登録基準の中身は、前述した「医師の指示と看護職員との連携が前提」で挙げた連携・安全確保の要件です。したがって登録があることは、医師・看護職員と連携する仕組みを備えていることの制度的な裏づけになります。

ただし、登録があっても夜間に実施できるかは別の論点です。登録は事業者単位の仕組みで、「この事業所では喀痰吸引等を業務として行える」ということまでしか意味しません。実際に夜間の吸引が行われるには、認定を受けた職員がその夜のシフトに入っている必要があります。認定職員が日勤帯に集中していれば、登録事業者であっても夜間は実施できないという状態が制度上は成り立ちます。だからこそ確認すべきは「登録していますか」ではなく、「認定を受けた職員が夜勤に入る日は週に何日あるのか」「入らない日の吸引は誰が行うのか」です。ここが冒頭で述べた「制度ではなく体制」という芯にあたります。

認定特定行為業務従事者認定証

認定特定行為業務従事者認定証は、喀痰吸引等研修を修了した者に対して都道府県が交付するものです。研修の号によって実施できる行為が特定されるため、認定証にはその職員が行える行為の範囲が示されます。第2号研修のように5行為のうち一部を選択して修了する仕組みがあることを踏まえると、「認定証を持つ職員が何人いるか」だけでなく「その認定の範囲に本人に必要な行為が含まれているか」が実務的な確認ポイントになります。

なお、喀痰吸引等の全国的な登録事業者数や認定証の交付件数については、本記事では件数を記載していません。制度上の事実として確認できるのは、都道府県が登録・認定を行い、厚生労働省が制度と実施状況を公表しているという枠組みまでです。数字を確認したい場合は、お住まいの都道府県の担当窓口が公表する最新の資料を参照してください。

家族が登録状況を確認する方法

登録特定行為事業者の一覧は、都道府県が公表しています。たとえば東京都は事業者一覧をExcel・PDF形式で公開しています。また東京都では令和7年(2025年)4月から、喀痰吸引等事業者の登録窓口を公益財団法人東京都福祉保健財団に一本化し、介護保険法のみに基づく指定事業所については都福祉局が所管する形になりました。窓口や公表方法は都道府県ごとに異なるため、検討している施設の所在地の自治体サイトで確認するのが確実です。

確認は、次の二段構えで進めると漏れがありません。

  1. 都道府県が公表している登録特定行為事業者の一覧で、その施設が登録されているかを確認する
  2. 施設へ直接、認定を受けた職員の配置状況と夜間の勤務体制を確認する

一覧に載っていない場合は、喀痰吸引等を施設職員が実施する体制ではない可能性があるため、看護職員の勤務時間や外部の訪問看護との連携でどう補うのかを聞くことになります。

施設種別ごとの医師・看護職員の配置基準を比較する

施設の医療対応力の土台になるのは、種別ごとに法令で定められた人員配置基準です。基準は「最低限これだけは置かなければならない」というラインであり、実際の配置がこれを上回ることも珍しくありません。それでも、基準の差はそのまま「医師や看護職員が施設内にいる時間の長さ」の差として現れます。老人ホーム全般の人員配置の考え方は老人ホームの人員配置基準を解説した記事で整理していますので、あわせて確認してください。

特別養護老人ホーム

指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の人員基準は、平成11年厚生省令第39号第2条に定められています。医師については「健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数」とされており、非常勤でも基準を満たします。ここが老健や介護医療院との決定的な違いです。

看護職員は、入所者数に応じて段階的に定められています。

表:特別養護老人ホームの入所者数に応じた看護職員の必要数
入所者数必要な看護職員数
30人以下1人以上
30人超50人以下2人以上
50人超130人以下3人以上
130人超50人又はその端数を増すごとに1人を加えた数以上

このうち1人以上は常勤とされています。また看護・介護職員の総数は入所者3人に対して1人以上(いわゆる3:1。入所者60人なら看護・介護職員は合計20人以上)です。ただしこれは配置すべき職員の総数であり、20人が常に同時に勤務しているという意味ではありません。

注意したいのは、この看護職員の数が「常時施設内にいる人数」ではなく、配置すべき職員数であるという点です。たとえば入所者100人の施設で看護職員3人という基準は、日勤帯を中心にシフトを組むと夜間に看護職員が不在になりやすい構造を意味します。平成28年度調査で看護職員の夜勤・当直がない施設が90.0%に上るのは、この基準構造と整合する結果です。

介護老人保健施設と介護医療院

介護老人保健施設(老健)は平成11年厚生省令第40号第2条により、医師を1以上(入所者100人に1以上)配置することが求められています。看護・介護職員は入所者3人に1人以上で、そのうち看護職員は総数の7分の2程度とされています。特別養護老人ホームとの違いは、医師の配置が必要数という定性的な規定ではなく、人数として明示されている点です。実際の配置を見ると、令和3年の調査では1施設平均で医師1.07人、看護師5.97人、准看護師3.98人、介護職員27.38人となっています。

介護医療院は平成30年厚生労働省令第5号第4条により、I型では入所者48人に1以上(合計が3人未満の場合は3人)の医師を配置し、医師が宿直しない場合は入所者100人に1以上、II型では入所者100人に1以上とされています。看護職員は入所者6人に1以上(6:1。入所者48人なら看護職員は8人以上)です。医療的ケアの必要度が高い人にとっては、この6:1という看護職員配置と医師配置の組み合わせが大きな意味を持ちます。介護医療院の役割や対象となる状態については介護医療院とはを解説した記事で詳しく説明しています。

介護付き有料老人ホーム・グループホーム・サ高住

「特定施設入居者生活介護」は、介護保険上のサービスの名称で、有料老人ホームなどの事業者が入居者に介護サービスを提供する形態を指します。いわゆる「介護付き有料老人ホーム」がこれにあたります。その人員基準は、平成11年厚生省令第37号第175条に定められています。この条文には医師の配置規定がないため、基準上、医師の配置は求められていません。これは「医師がいない」という意味ではなく、法令が求めていないため施設ごとの判断に委ねられているという意味です。協力医療機関や訪問診療との連携で対応している施設もあるため、実際の体制は個別に確認する必要があります。

看護職員は、利用者30人以下で常勤換算1以上とされています。常勤換算とは、パート職員などの勤務時間を常勤職員の人数に換算した数え方で、常勤の半分の時間だけ働く職員が2人いれば1人と数えます。利用者が30人を超える場合は、1に、30を超えて50又はその端数を増すごとに1を加えた数以上です。また看護・介護職員の総数については、条文上「要介護者である利用者の数が3又はその端数を増すごとに1以上」と定められています。よく「入居者3人に職員1人」と説明されますが、条文が基準としているのは要支援者を含む入居者総数ではなく要介護者である利用者の数です。要支援の入居者が多い施設では、同じ「3:1」という表示でも実質的な職員密度が変わりうる点に注意が必要です。

有料老人ホーム設置運営標準指導指針は、看護職員について「看護職員については、入居者の健康管理に必要な数を配置すること。ただし、看護職員として看護師の確保が困難な場合には、准看護師を充てることができる」(7(1)二ロ)としています。さらに7(1)三では「入居者の実態に即し、夜間の介護、緊急時に対応できる数の職員を配置すること」と定めており、夜間体制の確保が指針上も求められています。

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)については、医師・看護職員のいずれも配置義務がありません。そのため医療的ケアが必要な場合は、看護職員がいるかどうかを含めて、施設ごとに個別に確認する必要があります。サービス付き高齢者向け住宅は、国土交通省の制度説明によると登録基準が住宅・サービス(状況把握・生活相談)・契約の3本柱で構成されており、医療・看護は外部サービスの利用が基本です。つまり医療的ケアが必要な場合、住宅そのものの体制ではなく、併設または外部の訪問看護・訪問診療をどう組み合わせるかが実質的な論点になります。

ここまでの配置基準を一覧にまとめます。

表:施設種別ごとの医師・看護職員の配置基準(大枠)
施設種別医師看護職員
特別養護老人ホーム必要な数(非常勤でも可)入所者数に応じて段階的に配置(うち1人以上は常勤)
介護老人保健施設1以上(入所者100人に1以上)看護・介護職員は入所者3人に1人以上(うち看護職員は総数の7分の2程度)
介護医療院 I型入所者48人に1以上(宿直しない場合は100人に1以上)入所者6人に1以上
介護医療院 II型入所者100人に1以上入所者6人に1以上
介護付き有料老人ホーム条文に配置規定がない利用者30人以下は常勤換算1以上(30人超は段階的に加算)
グループホーム配置義務なし配置義務なし
サービス付き高齢者向け住宅規定なし(医療・看護は外部サービスの利用が基本)同左

数字が並ぶと比べにくいため、まず全体像を図で確認します。医師と看護職員の配置がどの種別で手厚く定められているのかを、順に並べたものです。

人員基準で見た医師・看護職員の配置の違いいずれも省令が定める最低基準です。同じ種類の施設でも実際の体制は異なります色は医師・看護職員の配置が基準にあるかの区分で、施設の優劣を示すものではありません医療職の配置基準が手厚い介護医療院医師 入所者48人に1以上(II型は100人に1以上)/看護 6人に1以上介護老人保健施設(老健)医師 入所者100人に1以上/看護・介護3人に1以上(看護は7分の2程度)特別養護老人ホーム医師は「必要な数」で非常勤も可/看護は入所者数に応じ1人以上介護付き有料老人ホーム医師の配置規定はない/看護は利用者30人以下で常勤換算1以上グループホーム医師・看護職員のいずれも配置義務はないサービス付き高齢者向け住宅状況把握と生活相談が中心。医療・看護は外部サービスの利用が基本医師の配置あり看護職員のみ配置義務なし
施設の種類によって、人員基準で求められる医師・看護職員の配置には差があります。ただしこれは省令が定める最低基準にすぎず、同じ種類の施設でも実際に対応できる医療的ケアの範囲は施設ごとに異なります。(出典:指定介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院の各人員基準省令、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第175条、サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム)

厚労省データで見る特養の医療的ケアの実態

ここからは、特別養護老人ホームの医療的ケアの実態を、厚生労働省の平成28年度(2016年度)調査(有効回答1,502施設)から確認します。特別養護老人ホームは、社会保障審議会介護給付費分科会 第143回参考資料2(平成29年7月19日)によると施設数9,726、平均要介護度は3.87です。入所者の要介護度別割合は次のとおりで、要介護4・5の入所者が3分の2を占める一方、医療的ケアの体制には施設間で大きな差があります。

表:特別養護老人ホーム入所者の要介護度別割合(平成29年7月19日 参考資料)
要介護度割合
要介護12.7%
要介護27.7%
要介護322.5%
要介護434.3%
要介護532.7%

なおこの調査は、特別養護老人ホームの医療的ケアについて厚生労働省がまとめた調査としては現時点で参照できる代表的なものですが、調査年次が古い点は留意して読む必要があります。

また、この章で示す数値はすべて特別養護老人ホームのものです。介護老人保健施設・介護医療院・介護付き有料老人ホームについては、同種の公表調査データが確認できなかったため、この記事では数値を示していません。これらの種別の実態は、人員基準の違いを手がかりにしながら、個別に確認するほかありません。何を確認すべきかは、後半の見学・面談で確認したい質問項目に種別ごとに整理しています。

常勤の医師がいる特養は1.1%

平成28年度調査によると、常勤の医師がいる特別養護老人ホームは1.1%にとどまり、非常勤の配置医がいる施設が95.3%でした。さらに非常勤配置医の週平均勤務時間は3.6時間(中央値2.0時間)で、「4時間以下」が71.7%を占めます。週に数時間の勤務が標準的な姿だということです。

この数字は、特別養護老人ホームの人員基準で医師が「必要な数」とされ非常勤でも可であることの実態を示しています。配置医は入所者の健康管理と療養上の指導を担いますが、常時施設にいる存在ではありません。したがって、急変時や夜間の医療判断は「配置医への連絡」または「協力病院への連絡」という形で施設外に依存することになります。

実際に、夜間の緊急時に医師と連携する方法として「配置医に連絡」が54.6%、「協力病院に連絡」が46.7%である一方、「救急車を呼ぶのみ」と回答した施設が16.0%ありました。医療的ケアが必要な人の施設選びでは、夜間に体調が変化したときの連絡経路が具体的に決まっているかを確認することが、この16.0%という数字の意味を踏まえた実務的な確認になります。

施設内で対応できる処置の割合

対応可能と回答した割合は、褥瘡の処置89.5%から人工呼吸器の管理7.2%まで、処置によって10倍以上の開きがあります(平成28年度調査)。まず図で差の大きさを確認し、続く表で処置ごとの内訳を見てください。

施設内で対応が可能な処置の割合(特別養護老人ホーム)厚生労働省「介護老人福祉施設における医療的ケアの現状についての調査研究事業」平成28年度(2016年度)調査・有効回答1,502施設※色は割合の水準を3段階で示したもので、施設や処置の良否を示すものではありません0%25%50%75%100%褥瘡の処置89.5%胃ろう・腸ろう84.2%カテーテル管理80.2%喀痰吸引78.0%点滴60.2%酸素療法57.9%経鼻経管栄養35.6%中心静脈栄養11.5%気管切開のケア10.5%人工呼吸器の管理7.2%
胃ろう・腸ろうは84.2%、喀痰吸引は78.0%の施設が対応できると回答した一方、人工呼吸器の管理は7.2%、中心静脈栄養は11.5%にとどまります(平成28年度(2016年度)調査)。必要な医療的ケアの種類によって、候補となりうる施設の母数が大きく変わります。ただしこれは対応可能と回答した施設の割合であり、実際に空床があるか・受け入れが可能かは別の問題です。
表:特別養護老人ホームが施設内で対応できる処置の割合(平成28年度調査)
処置施設内で対応可能な割合(平成28年度調査)
褥瘡の処置89.5%
胃ろう・腸ろうによる経管栄養84.2%
カテーテル管理80.2%
喀痰吸引78.0%
点滴60.2%
酸素療法57.9%
経鼻経管栄養35.6%
中心静脈栄養11.5%
気管切開のケア10.5%
レスピレータ(人工呼吸器)管理7.2%

同じ経管栄養でも、胃ろう・腸ろうは84.2%、経鼻経管栄養は35.6%で、約2.4倍の差があります。ただしこれは対応可能と回答した施設の割合であり、実際に空床があるか、本人の状態で受け入れが可能かは別の問題です。胃ろうであれば候補となりうる施設の母数は比較的多く、経鼻経管栄養であればその母数が絞られる、という読み方にとどめるのが正確です。中心静脈栄養(11.5%)、気管切開のケア(10.5%)、人工呼吸器管理(7.2%)が1割前後という結果は、これらが必要な場合に介護医療院や医療機関を含めて選択肢を検討する必要があることを示しています。

夜間・休日にたんの吸引ができる施設は41.1%

この記事で最も重要な数字です。平成28年度調査では、夜間・休日を通じてたんの吸引ができる体制にある施設は41.1%でした。残りがどう分かれているのかを、次の図と表で確認してください。

夜間・休日にたんの吸引ができる体制の内訳厚生労働省「介護老人福祉施設における医療的ケアの現状についての調査研究事業」平成28年度(2016年度)調査・有効回答1,502施設(特別養護老人ホーム)41.1%体制がある 41.1%必要になれば整える 8.6%常時実施できる体制はとっていない 35.9%その他 4.0%無回答 10.4%「常時実施できる体制はとっていない」と回答した割合0%25%50%75%100%特別養護老人ホーム全体35.9%入所定員29人以下の施設55.2%
夜間・休日を通じてたんの吸引ができる体制がある特別養護老人ホームは41.1%で、「常時実施できる体制はとっていない」が35.9%を占めます。この「常時実施できる体制はとっていない」と回答した割合は、入所定員29人以下の施設では55.2%に上がります(平成28年度(2016年度)調査)。施設内で喀痰吸引に対応できることと、夜間・休日を通じて対応できることは別の問題だと分かります。
表:夜間・休日のたんの吸引体制の内訳(平成28年度調査)
夜間・休日のたんの吸引体制(平成28年度調査)割合
夜間・休日を通じてできる体制にある41.1%
必要になれば体制を整える8.6%
常時実施できる体制はとっていない35.9%
その他4.0%
無回答10.4%

痰の吸引は、必要になるタイミングを選べない処置です。夜間に対応できない体制の施設では、実質的に受け入れが難しいか、夜間だけ救急搬送などの別の対応になる可能性があります。「常時実施できる体制はとっていない」と回答した35.9%という数字は、この条件にあたる施設が3分の1以上あることを意味します。

体制の有無は、施設の規模や方針とも関係しています。入所定員29人以下の施設では55.2%が体制なしと回答しており、小規模な施設ほど夜間の吸引体制を確保しにくい傾向が見られます。また看取りの方針が「原則、病院等に移す」としている施設では、57.6%が体制なしでした(いずれも平成28年度調査)。看取りの方針と夜間の医療的ケア体制は連動しているため、「最期まで過ごせますか」という質問と「夜間に吸引ができますか」という質問は、実は同じ体制を別の角度から尋ねていることになります。定員の小さい施設や、看取りは病院で行う方針の施設を検討する場合は、夜間の吸引体制を早い段階で確認しておくと、条件が合わないことを後から知る事態を避けられます。

医療対応力を示す加算の見方

施設の医療対応力は、介護報酬の加算からも推し量ることができます。加算は「こういう体制を整えている施設に上乗せの報酬を支払う」という仕組みなので、算定している加算の種類が体制の手がかりになります。ここでは指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)にもとづき、特別養護老人ホーム(介護福祉施設サービス費)の加算を確認します。

看護体制加算(I)と(II)

看護体制加算は、看護職員の配置を手厚くしている施設を評価する加算です。単位数は次のとおりです。なお「単位」は介護報酬を計算するための単位で、1単位あたりの金額は地域区分やサービスの種類によって異なります。加算が算定されると介護報酬の総額が増えるため、自己負担割合に応じて利用者の負担額にも反映されます。

表:看護体制加算(I)(II)の単位数
加算区分単位数
看護体制加算(I)イ6単位/日
看護体制加算(I)ロ4単位/日
看護体制加算(II)イ13単位/日
看護体制加算(II)ロ8単位/日

(I)と(II)で単位数に差があるのは、求められる体制の水準が異なるためです。医療的ケアが必要な人の施設選びという観点では、看護体制加算(II)を算定しているかどうかが一つの目印になります。後述する配置医師緊急時対応加算が看護体制加算(II)の算定を前提としているため、(II)の算定は緊急時対応の土台にもなっています。

ただし、加算の算定は「体制が基準を満たしている」ことを意味するだけで、個々の入所者に必要な処置が必ず提供されることを保証するものではありません。加算の有無は入口の目印として使い、具体的な処置の可否は施設への確認で押さえる、という使い分けが現実的です。

夜勤職員配置加算と配置医師緊急時対応加算

夜間の体制に直接関わるのが夜勤職員配置加算です。同告示では(I)イ22単位/ロ13単位、(II)イ27単位/ロ18単位、(III)イ28単位/ロ16単位、(IV)イ33単位/ロ21単位(いずれも1日あたり)と定められています。区分が細かく分かれているのは、施設類型や配置の手厚さに応じた設定になっているためです。

配置医師緊急時対応加算は、配置医師が通常の勤務時間外等に施設を訪問して診療を行った場合に算定される加算で、単位数は通常の勤務時間外等が325単位/回、早朝・夜間が650単位/回、深夜が1,300単位/回です。この加算は看護体制加算(II)の算定が前提とされています。時間帯によって単位数が4倍まで変わる設計は、夜間・深夜に医師が駆けつける体制を確保することの難しさを反映しています。

表:配置医師緊急時対応加算の単位数
配置医師緊急時対応加算単位数
通常の勤務時間外等325単位/回
早朝・夜間650単位/回
深夜1,300単位/回

見学時には「夜勤職員配置加算を算定していますか」「配置医師緊急時対応加算の算定実績はありますか」と尋ねることができます。とくに後者は実績を伴う加算なので、算定実績があるということは、実際に時間外に配置医が対応した経験があることを意味します。

介護サービス情報公表システムと重要事項説明書での確認

加算や職員体制は、家族が自分で調べることもできます。厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、事業所の職員体制や運営情報を検索できます。有料老人ホームの重要事項説明書についても、有料老人ホーム設置運営標準指導指針2(6)で同システムでの公表が望ましいとされています。

このとき、システムで分かることと分からないことを分けて押さえておくと、時間の使い方を間違えずに済みます。

  • 分かること…事業所の所在地と連絡先、職員数と職種の構成、算定している加算、運営方針、提供しているサービスの内容といった公表情報。
  • 分からないこと…夜間に誰が吸引を実施するのか、認定を受けた職員が夜勤に入る日がどれくらいあるのか、本人に必要な処置に対応できるのか。これらは公表情報からは読み取れないため、施設に直接確認する必要があります。

つまりこのシステムは候補を絞り込むための入口として使い、絞り込んだ先で施設に直接確認する、という順序になります。

重要事項説明書は、同指針の別紙様式に基づいて作成され、別添1「事業者が運営する介護サービス事業一覧表」と別添2「入居者の個別選択によるサービス一覧表」を必ず添付することとされています。医療的ケアに関わる項目としては、指針8(1)が管理規程に「医療を要する場合の対応」を明示することを求めており、9(1)四イでは介護サービスに医療行為は含まれない旨も明記されています。つまり「介護サービスの範囲」と「医療の範囲」がどこで切り替わるのかは、重要事項説明書と管理規程を読めば確認できるように制度が設計されています。

また同指針13(5)では、「1.5:1以上」「2:1以上」「2.5:1以上」といった職員体制の表示は年度ごとに算定し、表示と実態の乖離がないか自ら検証して説明することとされています。パンフレットの職員体制表示を見たら、いつ時点の算定かを尋ねることが正当な確認だということです。なお同指針は、契約締結前に十分な時間的余裕をもって重要事項説明書を交付・説明し署名を得ること、体験入居の機会を確保することも規定しています。医療的ケアが必要な場合、体験入居は実際の対応を見られる貴重な機会になります。

施設に入らず在宅で医療的ケアを支える選択肢

この章は、家族だけで介護を担える人に向けた話ではありません。退院日までに条件の合う施設が決まらないときに、いったん組み立てる「つなぎ」の選択肢としても使えます。施設の受け入れ条件が合わない場合、在宅で医療的ケアを支える介護保険サービスを組み合わせる方法があり、在宅サービスを軸に据えることで施設を選ぶ時間を確保できることがあります。以下の3つは、いずれも看護職員が関わることを前提にしたサービスです。

訪問看護(介護保険と医療保険の使い分け)

訪問看護は、看護師等が居宅を訪問して療養上の世話や診療の補助を行うサービスです。要介護・要支援の認定を受けている人は原則として介護保険の訪問看護を利用しますが、次の場合は医療保険が適用されます。

  • 厚生労働大臣が定める疾病等(特掲診療料の施設基準等 別表第七。ALS・多系統萎縮症等)に該当する場合
  • 急性増悪等により特別訪問看護指示書が交付された期間
  • 認知症以外の精神疾患で精神科訪問看護指示書がある場合

このうち医療的ケアが必要な人の状況を大きく左右するのが特別訪問看護指示書です。診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)別表第一 C007 訪問看護指示料の注2は、特別訪問看護指示加算を定めています。対象は、急性増悪等により一時的に頻回の指定訪問看護を行う必要を主治医が認めた場合です。交付回数・上限日数・点数は次のとおりです(点数は診療報酬を計算するための単位で、この記事では金額への換算は行いません)。

表:特別訪問看護指示書(特別訪問看護指示加算)の交付回数・上限日数・点数
項目内容
交付回数原則月1回(別に厚生労働大臣が定める者は月2回まで)
上限日数交付日から14日
加算の点数100点

このうち「別に厚生労働大臣が定める者」は、次のように定められています。

気管カニューレを使用している状態にある者又は真皮を越える褥瘡の状態にある者

出典:特掲診療料の施設基準等(平成20年厚生労働省告示第63号)第四の四の三

厚生労働省「訪問看護のしくみ」は、訪問看護が週3回まで利用できない方で、急性増悪等で週4日以上の頻回な訪問看護が必要となった場合に、主治医から訪問看護指示書とは別に特別訪問看護指示書で対応できると説明しています。なお同資料でも、特別訪問看護指示書は「交付日から14日を限度(月1回限り)」と示されています。気管カニューレを使用している状態であれば月2回の交付が可能になるため、退院直後で状態が不安定な時期に、週4日以上の頻回な訪問看護を組み込める余地が生まれます。訪問看護の利用の流れや費用の考え方は訪問看護とはを解説した記事で詳しく説明しています。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、平成24年(2012年)4月に創設された地域密着型サービスです。地域密着型サービスに位置づけられているため、原則として事業所がある市町村に住む人が利用の対象になります。日中・夜間を通じて訪問介護と訪問看護を一体的に提供し、あらかじめ決めた時間に訪問する「定期巡回」と、利用者からの連絡に応じて対応する「随時対応」を組み合わせる仕組みになっています。

医療的ケアが必要な人にとって重要なのは、このサービスが夜間も含む時間帯を対象にしている点です。施設の夜間体制が確保できない場合、在宅で夜間の対応を組み込むという発想が成り立ちます。ただし提供事業者の有無は地域によって差があるため、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに、その地域で利用できる事業所があるかを確認する必要があります。

看護小規模多機能型居宅介護

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)は、主治医との密接な連携の下で「通い」「泊まり」「訪問(看護・介護)」を柔軟に組み合わせて提供するサービスです。厚生労働省は、退院直後や看取り期など医療ニーズの高い中重度の要介護者の在宅療養を支えるサービスとして位置づけています。

一つの事業所が通い・泊まり・訪問看護・訪問介護を担うため、複数の事業所と別々に調整する負担が減り、状態の変化に合わせて内容を組み替えやすいという特徴があります。「病院から退院を打診されたが施設が決まらない」という局面では、在宅と泊まりを行き来しながら状態を見て、そのうえで施設を検討するという進め方が可能になります。施設探しと並行して、この選択肢が地域にあるかを確認しておくと、判断の余地が広がります。

相談先と見学時に確認すべきこと

医療的ケアが必要な人の行き先を家族だけで探すのは負担が大きく、また情報にも限りがあります。制度上、相談を担う専門職と窓口が用意されているので、順序立てて使うことが現実的です。

退院前は病院の医療ソーシャルワーカーに相談する

入院中であれば、まず病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)が相談先になります。厚生労働省の「医療ソーシャルワーカー業務指針」は令和8年(2026年)3月13日の医政発0313第4号で全部改正され、平成14年(2002年)の通知は廃止されました。改正後の指針では業務の範囲8項目のうちの一つに「(3)入退院支援・療養支援」が明記されています。

患者のこれまでの生活歴や背景等を理解し、傷病や障害の状況を踏まえ、入退院・入退所等の療養環境の変化や、居宅等における療養生活に伴い生じる心理的・社会的・経済的課題を予測し、その発生を予防するとともに、早期の対応を行うこと

出典:医療ソーシャルワーカー業務指針の全部改正について(令和8年3月13日 医政発0313第4号/厚生労働省)

この指針には「予測し、その発生を予防する」という文言が入っています。退院後に医療的ケアが続くことで生じる課題を、あらかじめ見通して手を打つことが業務として位置づけられています。したがって「退院と言われてから慌てて相談する」のではなく、退院の話が出る前の段階から相談を始めることが、この指針の想定に沿った使い方です。指針では社会福祉士がMSWを担うことが想定されるとも明記されています。相談の際は、必要な処置の一覧、現在の頻度、使用している器具、医師の見通しといった情報を整理して持参すると、話が具体的に進みます。

地域包括支援センターとケアマネジャー

在宅で暮らしている段階、あるいは退院後の生活圏での相談先は地域包括支援センターです。市町村が設置し、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を配置しています。担う包括的支援事業は、介護予防ケアマネジメント、総合相談支援業務、権利擁護業務、包括的・継続的ケアマネジメント支援業務の4つです。医療的ケアが必要な人の行き先の相談は、このうち総合相談支援業務にあたります。

また市町村は、介護保険法第115条の45第2項第4号から第6号に基づく包括的支援事業(社会保障充実分)として、在宅医療・介護連携推進事業を実施しています。根拠となる通知は「地域支援事業の実施について」(平成18年6月9日 老発第0609001号)です。この事業により、地域の医療機関と介護事業所の連携を推進する取組が行われているため、「この地域で医療的ケアに対応できる資源はどこか」という問いを市町村レベルで受け止める体制が制度上存在します。

すでに要介護認定を受けている場合は、担当のケアマネジャー(介護支援専門員)が施設・サービスの調整の中心になります。ケアマネジャーには、必要な処置を具体的に伝えることが重要です。「医療的ケアが必要」という抽象的な伝え方ではなく、「口腔内の吸引が1日に何回、夜間も必要」「胃ろうからの注入が1日3回」といった粒度で共有することで、条件に合う候補の絞り込みが正確になります。

見学・面談で確認したい質問項目

経管栄養と喀痰吸引が必要な場合、施設種別ごとに人員基準の前提が違うため、確認すべき観点も変わります。次の表は、どの種別が良いかを評価するものではなく、種別ごとに「何を確認する必要があるか」を整理したものです。

表:施設種別ごとの配置基準と、見学時に確認したい観点
施設種別人員基準上の医師・看護職員の配置経管栄養・喀痰吸引が必要な場合に確認すべき観点
特別養護老人ホーム医師は「必要な数」で非常勤も可。看護職員は入所者数に応じて段階的に配置(うち1人以上は常勤)看護職員が施設内にいる時間帯。夜間はオンコールか不在か。認定を受けた介護職員が夜勤に入るか。夜間の緊急時の連絡経路
介護老人保健施設医師1以上(入所者100人に1以上)。看護・介護職員の総数のうち看護職員は7分の2程度医師が施設内にいる時間帯。看護職員の夜勤の有無。対応できる処置の範囲と、対応できない場合の連携先
介護医療院I型は入所者48人に1以上の医師(宿直しない場合は100人に1以上)、II型は100人に1以上。看護職員は6:1I型・II型のどちらか。医師の宿直があるか。中心静脈栄養や人工呼吸器の管理など、5行為の外の処置にも対応できるか
介護付き有料老人ホーム条文に医師の配置規定がない。看護職員は利用者30人以下で常勤換算1以上看護職員の勤務時間帯と人数。協力医療機関・訪問診療との連携内容。医療依存度が上がった場合の退去・住み替えの条件
グループホーム医師・看護職員のいずれも配置義務なし看護職員がいるか、いる場合の勤務時間帯。外部の訪問看護との連携があるか。喀痰吸引等の登録事業者になっているか
サービス付き高齢者向け住宅登録基準は住宅・サービス(状況把握・生活相談)・契約の3本柱。医療・看護は外部サービスの利用が基本併設または外部のどの訪問看護・訪問診療と組むのか。夜間の対応をどのサービスで確保するのか。状況把握の方法と時間帯

ここまでの制度と数値を踏まえると、見学・面談で確認すべき質問はかなり具体的になります。いずれも「制度上できるか」ではなく「この施設で・誰が・いつできるか」を問う形になっています。

  • 登録特定行為事業者として都道府県に登録されているか。喀痰吸引等研修を修了し認定証を持つ職員は何人か、第何号研修か
  • 本人に必要な行為(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の吸引、胃ろう・腸ろう、経鼻経管栄養)のうち、どれに対応できるか
  • 看護職員は何時から何時まで施設内にいるか。夜勤・当直があるか、オンコール体制か
  • 夜間・休日に吸引が必要になった場合、誰が実施するのか。実施できない時間帯があるか
  • 配置医は非常勤か常勤か。週に何回、何時間の勤務か。夜間の緊急時の連絡経路はどうなっているか
  • 協力医療機関はどこで、どのような協力内容を取り決めているか。診療科目は何か
  • 看護体制加算(I)(II)、夜勤職員配置加算、配置医師緊急時対応加算のうち算定しているものはあるか
  • 訪問看護や訪問診療など外部の医療サービスとの連携実績があるか
  • 重要事項説明書・管理規程に「医療を要する場合の対応」がどう書かれているか
  • 医療依存度が上がった場合の退去・住み替えの条件はどう定められているか。手続はどう進むか
  • 体験入居や短期間の利用で実際の対応を確認できるか

なお、有料老人ホーム設置運営標準指導指針8(9)は、医療機関等との連携について次の内容を示しています。

  • 入居者の急変等に備え、協力医療機関とあらかじめ協力内容を取り決めること
  • 急変時に相談対応や診療を行う体制を常時確保した協力医療機関を定めるよう努めること
  • 協力医療機関の診療科目等を入居者に周知すること
  • 入院後に病状が軽快して退院可能になったら、速やかに再入居できるよう努めること
  • 入居者が医療機関を自由に選択することを妨げないこと

協力医療機関について質問することは、この指針に沿った正当な確認です。

注意点とよくある失敗

最後に、医療的ケアが必要な人の施設選びで実際に起きやすい行き違いを整理します。いずれも「今」だけを見て決めたときに後から表面化する問題です。

医療依存度が上がったときの退去・住み替え

入居時は対応できていた処置でも、状態が変化して医療依存度が上がると、施設側で対応しきれなくなることがあります。このときの取り扱いは契約で定められているため、入居前に確認しておく必要があります。

有料老人ホーム設置運営標準指導指針12(2)四は、契約解除の条件について「信頼関係を著しく害する場合に限るなど入居者の権利を不当に狭めるものとなっていないこと」としています。また同12(2)六では、一定の要介護状態になったときに一般居室から介護居室や提携ホームへ住み替える契約等について、次の一連の手続を入居契約書又は管理規程上明らかにしておくこととされています。

  • イ 医師の意見を聴く
  • ロ 本人又は身元引受人等の同意を得る
  • ハ 一定の観察期間を設ける
出典:有料老人ホーム設置運営標準指導指針 12(2)六

つまり住み替えは「施設の判断だけで一方的に進められるもの」ではなく、医師の意見、本人・身元引受人等の同意、観察期間という手続を経ることが指針上想定されています。契約書を読むときは、退去や住み替えの条項にこの3つの手続が書かれているかを確認するとよいでしょう。書かれていない場合は、その理由と実際の運用を尋ねることが確認になります。

「できます」の中身を確認しないまま決めてしまう

最も多い失敗は、「痰の吸引はできます」「胃ろうも大丈夫です」という回答をそのまま受け取ってしまうことです。「できます」という言葉には、日中だけなのか夜間も含むのか、実施するのは看護職員なのか認定を受けた介護職員なのかという幅があります。

確認の具体的なやり方は、時間帯と担当者を必ずセットで聞くことです。回答の違いが、そのまま生活の違いになります。見学のメモとして、次の対応表を持っていくと比べやすくなります。

表:「できます」の内容を尋ねたときの回答例と、生活への影響として想定されること
施設からの回答例生活への影響として想定されること
日中は看護職員が、夜間は認定を受けた介護職員が行う夜間も施設内で実施される体制。実施できるかは、認定を受けた介護職員が夜勤に入る日かどうかに左右される
夜間は看護職員のオンコールで指示を受けて対応する夜間は看護職員が施設内にいない前提。実施は電話等で指示を受けてからになるため、その分の時間が生じる
夜間は実施していないため、必要になれば協力病院に搬送する夜間に必要になった場合は施設外での対応になる。入居後に夜間の吸引が必要になった時点で、入院や住み替えの検討が始まる可能性がある

あわせて、必要な処置のうち介護職員が担えない工程があることも思い出してください。令和4年通知では、在宅酸素の開始・停止時の着脱や、経管栄養のチューブ挿入位置・胃内容物の吸引確認の判断は介護職員が行えないと整理されています。これらの工程が生じる時間帯に看護職員がいるかどうかが、実際の運用を左右します。

制度・介護報酬は3年ごとに変わる

介護保険制度と介護報酬は3年ごとに改定されます。直近の改定は令和6年度(2024年度)で、この記事に示した加算の単位数や要件も、今後の改定で見直される可能性があります。また有料老人ホーム設置運営標準指導指針についても、令和6年(2024年)12月6日適用の改正版が最新です(老発第0718003号、最終改正 老発1206第2号)。

さらに、有料老人ホームについては都道府県が別に指導指針を定めている場合はそちらが適用されます(指針5(1))。したがって実際に施設を検討する際は、お住まいの都道府県が公表する指導指針と、施設が交付する最新の重要事項説明書を確認することが正確な方法です。喀痰吸引等の登録事業者の一覧や窓口も都道府県ごとに異なります。

そしてもう一点、本記事は制度と体制の説明に徹しており、どの処置が必要か、どの選択が本人にとって適切かといった個別の医療的判断には踏み込んでいません。医療的ケアの内容と必要性は本人の状態によって変わるため、具体的な判断は主治医や病院の医療チームと相談して進めてください。

まとめ

医療的ケアが必要な人の施設選びは、制度で認められている範囲と、目の前の施設が実際にできることを一つずつ突き合わせる作業です。ここまで確認してきた要点を整理します。

  • 介護職員等が行える医療的ケアは、社会福祉士及び介護福祉士法施行規則第1条が定める5行為(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の喀痰吸引、胃ろう又は腸ろうによる経管栄養、経鼻経管栄養)に限られ、平成24年(2012年)4月1日施行の制度で医師の指示の下に実施できるようになった
  • 実施には、喀痰吸引等研修の修了、都道府県の認定特定行為業務従事者認定証、事業者の登録特定行為事業者としての登録という3点がそろう必要がある
  • 配置基準は種別で大きく異なる。特別養護老人ホームの医師は非常勤でも可、介護老人保健施設は入所者100人に1以上、介護医療院は看護職員6:1、介護付き有料老人ホームは基準上、医師の配置は求められていない
  • 厚生労働省の平成28年度(2016年度)調査では、特別養護老人ホームで常勤の医師がいるのは1.1%、施設内で喀痰吸引に対応できるのは78.0%だが、夜間・休日を通じてたんの吸引ができる体制にあるのは41.1%にとどまる。受け入れ可否は制度ではなくその施設の体制で決まる
  • 家族が確認すべきは「制度上できるか」ではなく「この施設で・誰が・いつ(夜間も)できるのか」。看護体制加算・夜勤職員配置加算・配置医師緊急時対応加算の算定状況、重要事項説明書の記載、退去・住み替えの手続をあわせて確認する
  • 施設の条件が合わないときは、訪問看護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅介護を組み合わせて在宅で支える選択肢がある。退院日までに施設が決まらないときの「つなぎ」としても使える
  • 相談先は、入院中なら病院の医療ソーシャルワーカー、在宅なら地域包括支援センターと担当のケアマネジャー。医療ソーシャルワーカー業務指針には「入退院支援・療養支援」が業務として明記されている

次にすること

  1. 必要な処置の名称と1日あたりの回数、夜間に必要かどうか、使用している器具、主治医から聞いている見通しを書き出す
  2. 入院中なら病院の医療ソーシャルワーカー、在宅なら地域包括支援センターと担当のケアマネジャーに相談し、候補となる施設の種別と地域を絞る
  3. 絞り込んだ候補施設に、見学・面談で確認したい質問項目を使って、時間帯と担当者をセットで確認する

介護保険制度と介護報酬は3年ごとに改定され、直近の改定は令和6年度です。本記事の内容は公的な一次情報にもとづいて整理していますが、制度変更がありうるため、検討の際は厚生労働省・都道府県・市区町村が公表する最新の情報と、施設が交付する重要事項説明書をあわせて確認してください。このサイトは特定の施設・事業者を評価したり順位づけしたりせず、公的資料にもとづいて制度と体制の見方を並列に伝えることを編集方針としています。詳しくはこのサイトの立ち位置をご覧ください。

よくある質問

特別養護老人ホームで痰の吸引はしてもらえますか?

施設によって異なり、とくに夜間に対応できるかどうかは個別に確認する必要があります。厚生労働省の調査では、施設内で喀痰吸引に対応できる特別養護老人ホームは78.0%でしたが、夜間・休日を通じてできる体制にある施設は41.1%、常時実施できる体制はとっていない施設が35.9%でした。時間帯ごとに誰が実施するのかを聞いてください(平成28年度=2016年度調査、有効回答1,502施設)。

胃ろうでも入れる施設はありますか?

胃ろうは研修を修了して認定を受けた介護職員等が医師の指示の下で実施できる行為のため、候補となりうる施設はあります。厚生労働省の調査では、施設内で胃ろう・腸ろうに対応できる特別養護老人ホームは84.2%でした。一方、経鼻経管栄養は35.6%と低く、経管栄養の方法によって候補の数が変わります。ただしこれは対応可能と回答した割合で、空床の有無は別の問題です(社会福祉士及び介護福祉士法施行規則第1条、平成28年度=2016年度調査)。

インスリン注射が必要な場合はどうなりますか?

注射そのものは介護職員が行えないため、注射の時間帯に看護職員が勤務しているか、訪問看護や通院で対応するかが確認点になります。介護職員が行えるのは、声かけ・見守り、注射器の手渡し、片付け、記録、医師の指示範囲と血糖値が合致しているかの確認、注射器の単位数の確認です。針の抜去・処分も行えません(令和4年=2022年12月1日 医政発第1201004号)。

夜間に医療的ケアが必要な場合はどうなりますか?

夜間の連絡経路と実施者を具体的に確認することが必要です。厚生労働省の調査では、特別養護老人ホームで看護職員の夜勤・当直がない施設が90.0%あり、そのうち93.0%はオンコール体制でした。夜間の緊急時に医師と連携する方法は、配置医に連絡が54.6%、協力病院に連絡が46.7%、救急車を呼ぶのみが16.0%です(平成28年度=2016年度調査)。

退院までに施設が決まらない場合はどうすればよいですか?

在宅のサービスを組み合わせて時間を確保しながら、施設探しを続ける方法があります。具体的には、通い・泊まり・訪問(看護・介護)を組み合わせる看護小規模多機能型居宅介護、訪問看護、日中・夜間を通じて対応する定期巡回・随時対応型訪問介護看護の組み合わせが選択肢になります。医師と看護職員の配置が人数で定められている介護老人保健施設や介護医療院も候補です。入院中であれば、病院の医療ソーシャルワーカーに早い段階で相談してください。

医療的ケアが増えたら退去になりますか?

施設の判断だけで一方的に決められるものではなく、契約の定めに沿って手続を経ることが指針上想定されています。一定の要介護状態での住み替えについては、医師の意見を聴く、本人又は身元引受人等の同意を得る、一定の観察期間を設けるという手続を、入居契約書又は管理規程上明らかにしておくこととされています。契約解除の条件も、入居者の権利を不当に狭めないものとすることが求められています(有料老人ホーム設置運営標準指導指針12(2)四・六)。

参考・出典

  1. 喀痰吸引等制度について (厚生労働省)
  2. 介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度について(「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正) (厚生労働省)
  3. 社会福祉士及び介護福祉士法施行規則(昭和62年厚生省令第49号) (厚生労働省)
  4. 喀痰吸引等制度について (京都府)
  5. 喀痰吸引等研修(第一号、第二号研修)について (青森県)
  6. 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(平成17年7月26日 医政発第0726005号) (厚生労働省)
  7. 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(その2)(令和4年12月1日 医政発第1201004号) (厚生労働省)
  8. 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号) (厚生労働省)
  9. 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号) (厚生労働省)
  10. 介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成30年厚生労働省令第5号) (厚生労働省)
  11. 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第175条 (e-Gov法令検索)
  12. 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号) (厚生労働省)
  13. 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について(老発第0718003号/最終改正 老発1206第2号) (厚生労働省)
  14. 介護老人福祉施設における医療的ケアの現状についての調査研究事業(結果概要) (厚生労働省)
  15. 介護老人保健施設(社保審-介護給付費分科会 第221回 資料2) (厚生労働省)
  16. 介護老人福祉施設(参考資料)(社保審-介護給付費分科会 第143回) (厚生労働省)
  17. 医療ソーシャルワーカー業務指針の全部改正について(令和8年3月13日 医政発0313第4号) (厚生労働省)
  18. 地域支援事業の実施について(平成18年6月9日 老発第0609001号) (厚生労働省)
  19. 喀痰吸引等事業者(特定行為事業者)の登録について (東京都福祉局)
  20. 介護サービス情報公表システム (厚生労働省)
  21. 制度について|サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム (国土交通省)
  22. 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 (厚生労働省)
  23. 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス) (厚生労働省)
  24. 診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)C007 訪問看護指示料 (厚生労働省)
  25. 特掲診療料の施設基準等(平成20年厚生労働省告示第63号) (厚生労働省)
  26. 訪問看護のしくみ (厚生労働省)
  27. 令和6年度介護報酬改定について (厚生労働省)