訪問介護(ホームヘルプサービス)とは、要介護認定を受けた人の自宅にホームヘルパーが訪問し、入浴・排せつ・食事などの介護や、掃除・洗濯・調理などの生活援助を行う居宅サービスです。サービス内容は「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3つに区分され、利用できるのは原則として要介護1〜5の人です。この記事では、それぞれの内容と単位数、利用開始までの流れ、2024年度介護報酬改定のポイントまで、厚生労働省・自治体の公的資料にもとづいて解説します。
訪問介護とは何か
訪問介護は、居宅で生活する要介護者に対して、介護福祉士などの訪問介護員(ホームヘルパー)が身体介護や生活援助を提供するサービスです。まずは制度上の定義と、サービス内容の分類を確認します。
なお、介護保険サービスの費用は「単位」という共通の物差しで計算されます。1単位=約10円が目安で、これに地域や事業所の体制に応じた単価を掛けた金額のうち、1〜3割を利用者が自己負担します。以下の単位数はこの前提で読んでください。
介護保険法上の位置づけ
介護保険法第8条2項では、訪問介護を次のように定義しています。
要介護者であって、居宅において介護福祉士その他政令で定める者により行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話が行われることをいう
ここでいう「居宅」には有料老人ホームなどの居室も含まれますが、24時間対応の定期巡回・随時対応型訪問介護看護や、夜間対応型訪問介護に該当するサービスは訪問介護には含まれません。
出典:厚生労働省・介護サービス情報公表システム「介護保険の解説」
老計第10号による3つの分類
訪問介護のサービス内容は、平成12年3月17日付の厚生省老人保健福祉局老人福祉計画課長通知(老計第10号)により、「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3類型に整理されています。身体介護は入浴・排せつ・食事の介助や移動・移乗の介護など、利用者の身体に直接触れて行う介護行為が中心です。生活援助は、掃除・洗濯・調理・買い物といった家事援助のうち、利用者本人の生活に関わる範囲に限られます。通院等乗降介助は、通院などの際の車両への乗車・降車の介助を指します。以降の章で、それぞれの内容と単位数を詳しく見ていきます。
出典:厚生労働省・介護サービス情報公表システム「訪問介護(ホームヘルプ)」
身体介護の内容
入浴や食事の介助のように、ヘルパーが利用者の身体に直接触れて行う支援を「身体介護」と呼びます。どこまでが身体介護に含まれるのか、具体的に見ていきます。
主な行為の例
老計第10号に示された身体介護の例としては、入浴介助、排せつ介助、食事介助、移動・移乗の介護、体位変換、更衣介助、健康チェック(体温・血圧などの確認)、通院・外出時の付き添いなどの身体的な支援に加え、利用者と共に行う調理・洗濯などの「自立生活支援のための見守り的援助」も含まれます。単なる家事代行ではなく、利用者本人ができる部分を活かしながら支援する視点が重視されている点が特徴です。
時間区分ごとの単位数
身体介護中心の訪問介護の単位数は、令和6年度介護報酬改定後の現行基準で、提供時間の区分ごとに次のように定められています。
| 提供時間の区分 | 単位数 |
|---|---|
| 20分未満 | 163単位 |
| 20分以上30分未満 | 244単位 |
| 30分以上1時間未満 | 387単位 |
| 1時間以上(以降30分ごとに82単位を加算) | 567単位〜 |
1単位あたりの金額は地域や事業所の体制によって10〜10.7円程度で、そのうち1〜3割が利用者の自己負担となります(負担割合の詳細は後述します)。
出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造(介護サービス)」社保審-介護給付費分科会第239回参考資料2-1
出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造(介護サービス)」社保審-介護給付費分科会第239回参考資料2-1(令和6年度改定後の単位数)。身体介護は提供時間が長くなるほど単位数が上がり、生活援助は身体介護より単位数の伸びが緩やかです。
生活援助の内容と対象条件
生活援助は、家事の負担を軽減するための支援ですが、誰でも無制限に使えるわけではなく、対象となる条件や範囲が定められています。
掃除・洗濯・調理などの家事援助
生活援助として提供されるのは、掃除、洗濯、調理、買い物、ベッドメイキングなど、利用者本人の日常生活に必要な家事援助です。単位数は、令和6年度改定後の現行基準で、20分以上45分未満が179単位、45分以上が220単位と定められています。
出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造(介護サービス)」社保審-介護給付費分科会第239回参考資料2-1
生活援助を利用できる条件
生活援助が算定できるのは、利用者が単身世帯である場合、または同居する家族等が障害・疾病等により家事を行うことが困難な場合など、限定的な条件に該当するときです。「家事をした経験がない」「家族に頼みにくい」といった理由だけでは対象になりません。ただし、厚生労働省老健局の事務連絡(平成19年12月20日)では、こうした条件を一律機械的に不可とするのではなく、個々の状況に応じて判断する旨も示されています。実際に対象になるかどうかは、ケアマネジャーやサービス提供責任者に相談して判断してもらいましょう。
出典:弘前市「生活援助サービスの取扱いに関する留意事項」(老計10号・老振76号等を一次通知として掲載)
生活援助でできないこと
老計第10号・老振第76号にもとづく整理では、生活援助の対象外となる行為が具体的に示されています。
「直接本人の援助」に該当しないもの(利用者以外の人のための行為)は次のとおりです。
- 利用者以外の家族分の洗濯・調理・買い物・布団干し
- 利用者以外が使う居室の掃除
- 来客対応
- 自家用車の洗車
「日常生活の援助」に該当しないもの(家事の範囲を超える行為)は次のとおりです。
- 草むしりや花木の水やり
- ペットの散歩などの世話
- 家具の移動・修繕・模様替え
- 大掃除・窓ガラス磨き・床のワックスがけ
- 家屋の修理やペンキ塗り、植木の剪定
- 正月などの特別な調理
これらはいずれも保険給付の対象外です。
出典:弘前市「生活援助サービスの取扱いに関する留意事項」
通院等乗降介助とは
「通院の送迎をお願いしたい」というとき、訪問介護のどのサービスが該当するのでしょうか。訪問介護員が自ら運転する車両への乗車・降車の介助を中心とする「通院等乗降介助」がこれにあたります。
サービス内容と対象範囲
老計第10号では、通院等乗降介助を、通院などのための車両への乗車・降車の介助、それに伴う乗車前・降車後の屋内外における移動等の介助、通院先での受診手続きなどの介助と整理しています。訪問介護事業所が自ら運送を行う場合に算定されるサービスで、単なる送迎(移送のみ)は対象になりません。
出典:厚生労働省・介護サービス情報公表システム「訪問介護(ホームヘルプ)」
単位数と利用場面
通院等乗降介助の単位数は、令和6年度改定後の現行基準で、片道につき97単位です。通院のほか、預貯金の引き出しなどの官公署への外出、選挙の投票など、一定の外出目的に限って算定できます。
出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造(介護サービス)」社保審-介護給付費分科会第239回参考資料2-1
訪問介護を利用できる人
訪問介護(介護給付)を利用できるのは、要介護認定で要介護1〜5と判定された人です。
要介護1〜5が対象
訪問介護は、介護保険の「介護給付」に位置づけられるサービスであり、対象となるのは要介護1〜5と認定された人です。要介護度が上がるほど、身体介護を必要とする場面が増える傾向にありますが、要介護1の人でも身体介護や生活援助を組み合わせて利用することができます。
出典:厚生労働省・介護サービス情報公表システム
要支援1・2は介護予防・日常生活支援総合事業へ
要支援1・2と認定された人は、訪問介護(介護給付)の対象外です。代わりに、市区町村が実施する介護予防・日常生活支援総合事業の訪問型サービスを利用します。総合事業は市区町村ごとに実施内容が異なり、生活援助に相当する支援のほか、住民主体の支援など多様なサービス類型が用意されている場合があります。
出典:厚生労働省老健局振興課「介護予防・日常生活支援総合事業の基本的な考え方」
訪問介護の費用と自己負担
訪問介護にかかる費用は、単位数に地域ごとの単価を掛けた金額のうち、利用者の負担割合分を窓口で支払う仕組みです。
自己負担割合の仕組み
1単位あたりの金額は地域や事業所の体制によって10〜10.7円程度で、利用者の自己負担割合は所得に応じて次のように決まります。
| 負担割合 | 主な所得要件 |
|---|---|
| 1割 | 上記の2割・3割の要件に該当しない場合(原則) |
| 2割 | 本人の合計所得金額が160万円以上など、一定の所得がある場合 |
| 3割 | 本人の前年の合計所得金額が220万円以上で、かつ年金収入とその他の合計所得金額が単身で340万円以上(世帯で463万円以上)などの要件に該当する場合 |
負担割合を示す「介護保険負担割合証」は毎年7月に更新され、8月1日から翌年7月31日まで適用されます。
詳しい判定基準は介護保険の自己負担割合とはで解説しています。
出典:多摩市「介護保険の自己負担は所得に応じて1割から3割まで」
区分支給限度基準額との関係
訪問介護を含む居宅サービスは、要介護度ごとに1か月あたり利用できる単位数の上限(区分支給限度基準額)が定められています。この上限を超えてサービスを利用した場合、超えた分は全額自己負担となります。
| 要介護度 | 区分支給限度基準額(月額) |
|---|---|
| 要支援1 | 5,032単位 |
| 要支援2 | 10,531単位 |
| 要介護1 | 16,765単位 |
| 要介護2 | 19,705単位 |
| 要介護3 | 27,048単位 |
| 要介護4 | 30,938単位 |
| 要介護5 | 36,217単位 |
出典:堺市「要介護度別・区分支給限度基準額」
出典:堺市「要介護度別・区分支給限度基準額」。単位は「単位」。要介護度が上がるほど1か月に利用できるサービス量の上限が大きくなります。
区分支給限度基準額の考え方は介護保険の区分支給限度基準額とはで詳しく解説しています。要介護認定の仕組みそのものについては要介護認定とはをあわせてご確認ください。
利用開始までの流れ
訪問介護を利用するには、まず要介護認定を受け、ケアプランに位置づけたうえで事業所と契約する必要があります。まずはお住まいの市区町村に設置されている地域包括支援センターに相談するのが最初の一歩です。
要介護認定の申請から結果通知まで
利用開始までの一般的な流れは次のとおりです。
- 市区町村の窓口へ要介護・要支援認定申請書を提出する
- 認定調査員による訪問調査と、主治医による意見書の作成が行われる
- 訪問調査の結果をもとにコンピュータによる一次判定が行われ、介護認定審査会による二次判定を経て要介護度が決定する
- 申請から原則30日以内に結果が通知される
出典:奈良市「要介護認定申請の流れ」
ケアプラン作成と事業所との契約
要介護1〜5と認定されたら、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に相談してケアプランを作成します(利用者負担はありません)。ケアプランに訪問介護を位置づけたうえで、訪問介護事業所と契約し、サービス提供責任者との打ち合わせを経てサービスが開始されます。ケアプランの作成手順についてはケアプランとはで詳しく解説しています。
出典:奈良市「要介護認定申請の流れ」
サービス提供責任者の役割
訪問介護事業所には、サービス全体の調整役として「サービス提供責任者(サ責)」の配置が義務付けられています。
主な職務内容
サービス提供責任者(サ責)は、利用者・家族が困ったときの窓口になる人です。主な職務は次のとおりです。
- 訪問介護計画の作成
- サービス申し込みに関する調整
- 利用者の心身の状態や意向の定期的な把握
- 居宅介護支援事業者(ケアマネジャー)への情報提供・連携
- 訪問介護員への具体的な指示
- 業務の実施状況の把握
利用者・家族と訪問介護員、ケアマネジャーをつなぐ実務上の要となる役職といえます。
出典:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(厚生労働省令第37号)
配置基準
サービス提供責任者の配置基準は、利用者おおむね40人に対して常勤1人以上とされています。一定の要件を満たす場合は、利用者50人に対して1人までの配置とすることも認められています。
出典:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(厚生労働省令第37号)
2024年度介護報酬改定のポイント
訪問介護は、2024年度(令和6年度)の介護報酬改定で大きな制度変更があった分野です。
基本報酬の見直し
令和6年度の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬(身体介護・生活援助・通院等乗降介助それぞれの単位数)が引き下げられました。本記事に掲載した単位数は、この改定後の現行の水準です。
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
介護職員等処遇改善加算の一本化
基本報酬が引き下げられる一方で、介護職員の賃金水準を確保するための「介護職員等処遇改善加算」が新設・一本化され、加算率はサービス種別によっておおむね14.5〜24.5%程度の高水準に設定されました。基本報酬と加算を合わせた事業所全体の収支は、事業所ごとの加算取得状況によって異なります。
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
訪問介護を利用するときの注意点
訪問介護を上手に活用するために、事前に知っておきたい注意点をまとめます。
生活援助の範囲外行為に注意する
すでに説明したとおり、生活援助には対象外となる行為があります。「これくらいなら頼めるだろう」と思っていたことが保険給付の対象外だったというトラブルは少なくありません。依頼したい内容が範囲内かどうかは、事前にケアマネジャーやサービス提供責任者に確認しておくと安心です。
区分支給限度基準額を超えると全額自己負担になる
区分支給限度基準額を超えてサービスを利用した分は、1〜3割の自己負担ではなく全額が利用者負担になります。複数のサービスを組み合わせて利用する場合は、月ごとの利用単位数がどのくらいになるかをケアプラン作成時にケアマネジャーと確認しておくことが大切です。
事業所選びで確認しておきたいこと
訪問介護事業所は地域によって複数存在し、対応可能なサービス内容や訪問可能な時間帯、担当できるヘルパーの体制は事業所ごとに異なります。契約前に、希望するサービス内容が提供可能か、緊急時の連絡体制はどうなっているかなどを、サービス提供責任者に確認しておくとよいでしょう。
訪問介護の事業所数の現状
厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」によると、訪問介護事業所数は令和6年10月1日時点で37,264事業所です。在宅での介護サービスを支える基盤の一つとして、全国的に広く整備が進んでいる状況がうかがえます。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」
まとめ
- 訪問介護は、要介護1〜5の人を対象に、ホームヘルパーが身体介護・生活援助・通院等乗降介助を提供する居宅サービス
- 身体介護は入浴・排せつ・食事介助など、生活援助は掃除・洗濯・調理などの家事援助で、対象者や範囲には条件がある
- 費用は時間区分ごとの単位数に応じて決まり、自己負担は所得に応じて1〜3割。区分支給限度基準額を超えた分は全額自己負担になる
- 要支援1・2の人は訪問介護の対象外で、市区町村の介護予防・日常生活支援総合事業を利用する
- 2024年度の介護報酬改定で基本報酬は引き下げられたが、介護職員等処遇改善加算が新設・一本化された
介護保険制度は3年ごとに見直しが行われるため、単位数や自己負担の基準は将来変更される可能性があります。最新情報は厚生労働省や自治体の公表資料でご確認ください。このサイトは特定の事業所や制度を評価・推奨するものではなく、公的データにもとづく中立的な情報提供に努めています。運営方針の詳細はこのサイトの立ち位置をご覧ください。