介護予防・日常生活支援総合事業とは|対象者・サービス内容・基本チェックリストを解説

目次

介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)とは、要支援1・2の認定を受けた人や、市町村の基本チェックリストで「事業対象者」と判定された人が利用できる、市町村が独自に実施する介護予防・生活支援サービスの仕組みです。従来は予防給付として全国一律だった訪問介護・通所介護が、2015年度の介護保険法改正で市町村実施の地域支援事業へ移行したもので、サービスの内容や単価は市町村ごとに異なります。この記事では対象者の条件、基本チェックリストの仕組み、サービスの種類、費用の目安、利用までの流れを厚生労働省・自治体の公表情報にもとづいて解説します。

介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)とは

介護保険制度では、もともと訪問介護・通所介護を含め、要支援者向けのサービスも全国一律の基準で提供する「予防給付」という仕組みで運営されていました。しかし高齢化の進展にともない、軽度者向けの生活支援は専門職によるサービスだけでなく、住民主体の活動やNPO・民間事業者など地域の多様な担い手を活用したほうが、地域の実情に合った柔軟な支援ができるという考え方が広がり、この考え方にもとづいて創設されたのが総合事業です。厚生労働省の資料では、要支援者等に対して介護予防や日常生活の支援を行うとともに、住民が主体的に取り組める介護予防活動を地域全体で広げていくことを目的とする事業と位置づけられています。以下では、制度上の位置づけと、なぜ市町村が独自に実施する仕組みになったのかを見ていきます。

地域支援事業の一部としての位置づけ

総合事業は、市町村が運営する介護保険の仕組みの一部です。制度上は、介護保険法第115条の45第1項第1号に規定される「地域支援事業」の一部に位置づけられています。地域支援事業は、(1)介護予防・日常生活支援総合事業、(2)包括的支援事業(地域包括支援センターの運営、在宅医療・介護連携推進事業など)、(3)任意事業(家族介護支援事業など)の3本柱で構成されており、総合事業はそのうちの1つにあたります。実施主体は市町村で、財源構成は従来の予防給付と同じく、国・都道府県・市町村の公費と、40歳以上の被保険者が納める第1号保険料・第2号保険料によってまかなわれています。

予防給付との違いと市町村が実施する理由

総合事業の中心となっているのは、もともと介護保険の予防給付(要支援者向けの給付)として全国一律の基準で提供されていた訪問介護・通所介護です。2015年度(平成27年度)の介護保険法改正により、この2つのサービスは予防給付から切り離され、市町村が実施する地域支援事業(総合事業)へ移行しました。予防給付のままだと、サービスの担い手や単価は全国一律の基準に縛られますが、総合事業に移行したことで、市町村は地域の実情や社会資源(NPO・住民ボランティア・民間事業者など)に応じて、サービスの内容や単価を独自に設定できるようになりました。移行の経緯や、移行しなかったサービスについては、後述の「従来の予防給付との違いと移行の経緯」で改めて整理します。

総合事業を利用できる対象者

総合事業を利用できる人は、年齢や認定の有無によって2つの立場に分かれます。以下でそれぞれの条件を見ていきます。

要支援1・2の認定を受けた人

1つ目は、市町村の要介護認定で要支援1または要支援2と認定された人です。要支援認定を受けた人は、これまで通り要介護認定の仕組みを経て総合事業のサービスを利用します。要介護認定の申請方法や認定までの流れは要介護認定とはを解説した記事で詳しく説明しています。

基本チェックリストで事業対象者と判定された人

2つ目は、65歳以上の第1号被保険者のうち、市町村が実施する「基本チェックリスト」(詳しくは次の見出しで説明します)によって心身の状態が一定の基準に該当し、「事業対象者」と判定された人です。事業対象者は、要介護認定を受けていなくても総合事業のサービスを利用できる点が特徴です。国のガイドラインでは、事業対象者は「要支援1に準ずる者」として位置づけられており、利用できるサービスの上限(区分支給限度基準額)も要支援1の内容が適用されます。ここで注意したいのは、もともと要支援2の認定を受けていた人が、更新のタイミングなどで基本チェックリストによる判定に切り替わり事業対象者になると、利用限度額が要支援1相当まで下がる場合があるという点です。費用の目安と限度額の考え方は後述の「総合事業の費用と自己負担」で解説します。

40〜64歳(第2号被保険者)が対象外である理由

基本チェックリストは、65歳以上の第1号被保険者を対象とした仕組みです。八王子市の基本チェックリスト運用マニュアルによれば、40〜64歳の第2号被保険者は基本チェックリストの対象外とされており、総合事業のサービスを利用したい場合は要介護認定(または要支援認定)の申請が必要になります。第2号被保険者は、末期がんや関節リウマチなど介護保険で定められた特定疾病によって要介護・要支援状態になった場合に認定の対象となる仕組みのため、年齢要件と認定手続きの両面で、65歳以上とは異なる扱いになっている点を押さえておく必要があります。

基本チェックリストとは

基本チェックリストは、要介護認定を経ずに総合事業のサービス利用につなげるための簡易な状態把握ツールで、厚生労働省が定めた仕組みです(法令上は介護保険法施行規則第140条の62の4、および平成27年厚生労働省告示第197号に位置づけられています)。

25項目の質問内容

基本チェックリストは、全25項目の質問に「はい」「いいえ」で回答する形式です。八王子市の運用マニュアルによれば、7つの判定領域ごとに、たとえば次のような質問が含まれます(全25項目のうち一部を抜粋しています)。

  • 生活機能全般:バスや電車で1人で外出しているか/日用品の買い物をしているか/預貯金の出し入れを自分で行っているか
  • 栄養状態:この6か月間で2〜3kg以上の体重減少があったか/身長・体重から算出するBMI(体格指数)が基準を下回っていないか
  • 口腔機能:固いものが食べにくくなっていないか
  • 閉じこもり:週に1回以上外出しているか
  • 認知症:物忘れが多いと感じるか
  • うつ:以前はできていたことが億劫に感じられるか

回答は、自己記入または窓口での聞き取りによって行われます。

7領域の判定基準

25項目の質問は、(1)生活機能全般、(2)運動機能、(3)栄養状態、(4)口腔機能、(5)閉じこもり、(6)認知症、(7)うつの7つの領域に対応しており、それぞれの領域ごとに定められた判定基準に照らして、いずれか1つでも該当する項目があれば「事業対象者」と判定されます。すべての項目に該当しなかった場合は、要支援・要介護のリスクが低いと判断され、後述する「一般介護予防事業」の対象として案内されます。

実施窓口と申込み方法

基本チェックリストは、地域包括支援センター、またはその委託を受けた居宅介護支援事業所(ケアマネジャーが所属する事業所)で実施されます。八王子市の例では、基本チェックリストを提出してから、総合事業の利用に必要な「第一号事業対象者」としての被保険者証が発行されるまでの期間は概ね2週間程度とされています。要介護認定の申請から結果が出るまでには一定の日数を要しますが、基本チェックリストのルートを選べば、比較的短期間でサービス利用につなげられる点が特徴です。地域包括支援センターの役割や相談方法については地域包括支援センターとはを解説した記事で詳しく説明しています。

総合事業で使えるサービスの種類

総合事業のサービスは、大きく「訪問型サービス」「通所型サービス」「その他の生活支援サービス」に分かれます。いずれも、従来の予防給付と同水準の「従前相当」サービスと、基準を緩和したり住民主体の活動を活用したりする多様なサービス類型(サービスA〜D)が用意されているのが特徴です。ただし、どの類型を実施するかは市町村の判断に委ねられており、すべての市町村ですべての類型が使えるわけではありません。

訪問型サービス(従前相当・サービスA〜D)

訪問型サービスには、次のような類型があります。

  • 従前相当サービス:訪問介護員(ホームヘルパー)による身体介護・生活援助。予防給付時代の基準をおおむね引き継いだサービスです
  • サービスA:人員基準等を緩和したサービスで、主に雇用されたスタッフが担い手となります
  • サービスB:住民主体の自主活動として行われる生活援助等のサービスです
  • サービスC:保健師等の専門職が関わる、短期集中型の予防サービスです(3〜6か月程度の期間で行われます)
  • サービスD:通院や通所などの移送前後に伴う生活支援サービスです

通所型サービス(従前相当・サービスA〜C)

通所型サービスには、次のような類型があります。

  • 従前相当サービス:デイサービス事業所などで行う通所介護に相当するサービスです
  • サービスA:人員基準等を緩和した、いわゆるミニデイサービス形式のサービスです
  • サービスB:体操や交流を目的とした、住民主体の通いの場としてのサービスです
  • サービスC:運動器の機能向上や栄養改善を目的とした短期集中型のプログラムです

その他の生活支援サービス

訪問型・通所型のサービスに加えて、配食サービスや見守りサービスなど、訪問型・通所型に準じる生活支援サービスも総合事業に含まれます。実際にサービスを利用する際に挟まる「介護予防ケアマネジメント」の手続きについては、後述の「総合事業を利用するまでの流れ」で説明します。なお、訪問看護や福祉用具貸与など、訪問介護・通所介護以外の予防給付サービスは総合事業には含まれず、引き続き介護予防給付として提供されています(詳しくは後述の「総合事業に移らなかったサービス」で説明します)。

一般介護予防事業とは

総合事業には、要支援認定や事業対象者の判定を受けた人向けのサービスだけでなく、要介護状態になる前からすべての高齢者を対象とした「一般介護予防事業」も含まれています。

5つの事業内容

一般介護予防事業は、要支援認定の有無にかかわらず、すべての高齢者を対象とした事業です。厚生労働省の資料によれば、次の5つの事業で構成されています。

  • 介護予防把握事業:収集した情報等の活用により、閉じこもりなど何らかの支援を要する高齢者を把握し、介護予防活動へつなげる事業
  • 介護予防普及啓発事業:介護予防活動の普及・啓発を行う事業
  • 地域介護予防活動支援事業:住民主体の介護予防活動の育成・支援を行う事業(次に説明する「通いの場」はこの事業の中心的な取り組みです)
  • 一般介護予防事業評価事業:介護保険事業計画に定める目標値の達成状況等を検証し、一般介護予防事業の効果を評価する事業
  • 地域リハビリテーション活動支援事業:リハビリテーション専門職等を活用し、地域における介護予防の取り組みを機能強化する事業

厚生労働省の令和5年度実施分の調査によれば、地域リハビリテーション活動支援事業を実施した市町村は1,302(全体の74.8%)にのぼり、派遣される専門職の内訳では理学療法士が1,174市町村(67.4%)と最も多くなっています。この実施率の高さは、通いの場などの介護予防活動において、理学療法士をはじめとするリハビリ専門職の指導や助言を受けられる地域が多いことを示しています。

「通いの場」の広がり

地域介護予防活動支援事業の中心的な取り組みが、体操や交流を目的として住民が主体的に運営する「通いの場」です。厚生労働省の令和5年度実施分の調査によれば、通いの場の箇所数は平成25年度の43,154箇所から令和5年度には157,638箇所まで増加しており、高齢者人口に対する参加率も平成25年度の2.7%から令和5年度には6.7%まで上昇しています。

0 50,000 100,000 150,000(箇所) 平成25年度 43,154箇所 令和5年度 157,638箇所

住民主体で運営される「通いの場」の箇所数は、平成25年度の43,154箇所から令和5年度には157,638箇所まで増加しました(約3.7倍、厚生労働省・令和5年度実施分の調査)。高齢者人口に対する参加率も同じ期間に2.7%から6.7%へ上昇しています。

通いの場は、体操教室やサロン活動など、市町村や地域によって多様な形で運営されており、要支援認定や基本チェックリストの判定を受けていない高齢者でも参加できる点が特徴です。お住まいの地域でどのような通いの場があるかは、地域包括支援センターや市町村の高齢福祉担当窓口に問い合わせると案内を受けられます。

総合事業を利用するまでの流れ

地域包括支援センターへの相談を起点に、総合事業のサービス利用が始まるまでには3つの段階を踏みます。

地域包括支援センターへの相談

まずは、お住まいの地域を担当する地域包括支援センター(自治体によっては「高齢者あんしん相談センター」など別の呼称を用いている場合があります)、またはすでに担当のケアマネジャーがいる場合はそのケアマネジャーに相談することから始まります。地域包括支援センターの役割や相談の仕方は地域包括支援センターとはを解説した記事で詳しく説明しています。

地域包括支援センターへの相談 まずはここに相談 要介護認定の申請 市町村へ申請 基本チェックリスト 地域包括支援センター等で実施 介護予防ケアマネジメント ケアプランの作成 サービス利用開始

相談のあと、要介護認定の申請か基本チェックリストのいずれかを選び、どちらのルートも介護予防ケアマネジメントを経てサービス利用の開始に至ります。

要介護認定申請か基本チェックリストかの選択

相談の際には、本人の状態や希望に応じて「要介護認定(要支援認定を含む)の申請・更新」を行うか、「基本チェックリスト」を実施するかを選ぶことになります。両方を同時に行うことはできません。要介護認定の申請ルートを選んだ場合は、認定結果が要支援1・2であれば介護予防サービス(予防給付および総合事業)の対象に、非該当であれば一般介護予防事業の対象に振り分けられます。要介護認定の申請方法や結果が出るまでの流れは要介護認定とはを解説した記事で確認できます。

介護予防ケアマネジメントとサービス利用開始

基本チェックリストのルートを選び、事業対象者と判定された場合は、市町村へ「第一号事業対象者」としての認定・更新の申請を行います。その後、地域包括支援センター(または委託を受けた居宅介護支援事業所)によるアセスメントを経て「介護予防ケアマネジメント」と呼ばれるケアプラン作成の手続きが行われ、総合事業のサービス利用が始まります。要支援認定を受けた人も、認定後に同様の手続きを経てサービス利用に進みます。介護予防ケアマネジメントには、従来の予防給付と同様に月1回以上のモニタリングを行うA類型、サービス担当者会議等の手続きを簡略化したB類型、初回のみ簡略化した手続きで行うC類型の3つの類型があり、利用者の状態やサービス内容に応じて選択されます。

総合事業の費用と自己負担

総合事業のサービスを利用する際の費用は、自己負担割合の考え方と、市町村ごとに設定される単価の2つの要素で決まります。

自己負担割合の考え方

介護保険サービスの利用者負担は、所得に応じて1割・2割・3割のいずれかになる仕組みが用いられています。岡山市が公表している判定基準は次のとおりです。

負担割合合計所得金額年金収入等の合計(単身世帯/2人以上世帯)
3割220万円以上340万円以上/463万円以上
2割160万円以上280万円以上/346万円以上
1割上記以外上記以外

所得に応じて1〜3割負担になるこの仕組みは、総合事業に限らず介護保険サービス全般に共通するものです。岡山市の案内ページ自体は総合事業に特化した記載ではありませんが、総合事業のサービスも要支援・要介護の認定を受けた被保険者を対象とする仕組みである以上、同じ考え方にもとづいて負担割合が決まると考えられます。ただし、後述するようにサービスの単価自体は市町村や事業者によって異なるため、実際の負担額は利用するサービスの種類や事業所によって差が生じます。

市町村によって単価・サービス内容が異なる理由

総合事業は、市町村が地域の実情に応じて単価やサービス内容を設定できる仕組みであるため、同じ「訪問型サービス」「通所型サービス」であっても、名称や料金は市町村ごとに異なります。代表的な例を挙げると、次のとおりです。

市町村訪問型サービスの区分・名称通所型サービスの区分・名称料金の例
札幌市訪問介護相当型/短期集中予防型通所介護相当型/時間短縮型短期集中予防型は無料、時間短縮型は500円
大阪市介護予防型/生活援助型/サポート型介護予防型/短時間型/選択型市町村窓口で要確認
八王子市訪問型サービスC「食楽訪問」など通所型サービスB「わくわく」、通所型サービスC「ハチプロ」など市町村窓口で要確認

こうした名称・単価・サービス内容の違いは、厚生労働省の資料でも「地域の実情に応じた取組」として制度上前提とされているものです。そのため、実際に利用できるサービスの種類や料金は、お住まいの市町村の窓口で確認する必要があります。

支給限度額と自己負担額の目安(具体例)

甲府市が公表している例を見ると、月あたりの支給限度額(1か月に利用できるサービスの上限額)は、要支援2が105,310円、要支援1・事業対象者が50,320円とされています。要支援2から要支援1相当の限度額に区分が変わると、利用できるサービスの上限が大きく下がる点は、前述の「基本チェックリストで事業対象者と判定された人」でも触れたとおりです。支給限度額の考え方や超過した場合の扱いについては区分支給限度基準額とはを解説した記事で詳しく説明しています。

0円 50,000円 100,000円 要支援1・事業対象者 50,320円 要支援2 105,310円

甲府市の例では、月あたりの支給限度額は要支援1・事業対象者で50,320円、要支援2で105,310円です。事業対象者は要支援1相当の限度額が適用されるため、要支援2からチェックリスト判定に切り替わると上限が下がる場合があります。

同じ甲府市の例では、1割負担の場合の利用料の目安として次の金額が示されています(いずれも週1回程度利用した場合)。

  • 訪問介護(従前相当):月額1,201円程度
  • 通所介護(従前相当・要支援1の場合):月額1,824円程度

これらはあくまで甲府市における一例であり、前述のとおり単価は市町村ごとに異なるため、正確な金額はお住まいの市町村の窓口や、利用を検討している事業所に確認してください。

従来の予防給付との違いと移行の経緯

総合事業は、2015年度の介護保険法改正をきっかけに生まれた仕組みです。ここでは移行の経緯と、実際にどの程度の市町村で移行が進んでいるかを見ていきます。

2015年度介護保険法改正からの移行

前述のとおり、訪問介護・通所介護は2015年度の介護保険法改正で総合事業へ移行することとされ、制度上、各市町村が順次移行を進めるための経過措置期間が設けられていました。厚生労働省が実施した令和5年度実施分の調査(令和6年3月末時点、全国1,741市町村が対象)によれば、従来の予防給付と同水準の「従前相当サービス」を実施している市町村は、訪問型で1,593(91.5%)、通所型で1,582(90.9%)にのぼり、大半の市町村で従前相当サービスが継続提供されています。一方、基準を緩和した「サービスA」を実施している市町村は、訪問型で887(50.9%)、通所型で926(53.2%)と、従前相当サービスに比べると実施率はやや低くなっています。同じ調査によるサービス利用者数(実人数)は次のとおりです。

  • 訪問型サービス:413,478人
  • 通所型サービス:750,664人
  • 生活支援サービス:47,771人
0% 50% 100% 訪問型・従前相当 91.5% 通所型・従前相当 90.9% 訪問型・サービスA 50.9% 通所型・サービスA 53.2%

令和5年度実施分の厚生労働省調査(全国1,741市町村が対象)によると、従来の予防給付と同水準の「従前相当サービス」は訪問型91.5%・通所型90.9%の市町村で実施されている一方、基準を緩和した「サービスA」の実施率は訪問型50.9%・通所型53.2%にとどまります。

総合事業に移らなかったサービス

訪問介護・通所介護以外の予防給付サービス、たとえば訪問看護や福祉用具貸与などは、総合事業には移行せず、引き続き介護保険の予防給付として提供されています。つまり、要支援認定を受けた人が利用するサービスのすべてが総合事業に含まれるわけではなく、訪問介護・通所介護に相当する部分だけが市町村独自の仕組みに切り替わった、という理解が正確です。

総合事業の利用にあたっては、状態の変化や転居に関わる制度上の疑問が生じやすいポイントがあります。

要介護に変わった場合の「継続利用要介護者」制度

住民主体の訪問型サービスB・D、通所型サービスBなど、住民主体型のサービスを利用していた人が、その後の状態変化により要介護認定を受けることがあります。従来は要介護認定を受けると総合事業のサービスは利用できなくなる扱いでしたが、令和3年4月1日以降の制度改正により「継続利用要介護者」という仕組みが創設されました。世田谷区の資料によれば、要支援者等として住民主体サービスを利用していた人が要介護認定を受けた場合でも、担当のケアマネジャーがケアプランにそのサービスを位置づければ、要介護認定後も引き続き同じサービスを利用できます。なお、要介護認定後のケアマネジメントは一般に居宅介護支援事業所が担当する形になります。

他の市町村に引っ越した場合の手続き

要支援・要介護の認定は、住所地の市町村が行うものであり、他の市町村に転居しても自動的に引き継がれるわけではありません。吹田市の案内によれば、転居する際は、転出元の市町村で「介護保険受給資格証明書」の交付を受け、転入日から14日以内に転入先の市町村で認定申請の手続きを行うことで、原則として一定期間、転出元での認定結果を引き継ぐことができます。この14日を過ぎてしまうと、転入先で改めて新規の認定申請を行う扱いになります。また、総合事業は市町村ごとに独自に運営されている制度のため、認定結果が引き継がれた場合でも、利用できるサービスの種類や単価は転居先の市町村で改めて確認する必要があります。

利用時の注意点

総合事業を利用するにあたっては、次の2点を押さえておくと安心です。

お住まいの市町村の窓口で内容を事前に確認する

これまで見てきたとおり、総合事業のサービス名称・単価・利用できる類型(サービスA〜Dなど)は市町村によって大きく異なります。インターネット上の情報や他の市町村の事例をそのまま自分の地域に当てはめてしまうと、実際に利用できるサービスや費用の見込みが食い違うことがあります。利用を検討する際は、お住まいの市町村の高齢福祉担当窓口や地域包括支援センターに、現在利用できるサービスの一覧と料金を事前に確認してください。

状態が変わったら地域包括支援センターに再度相談する

基本チェックリストによる事業対象者の判定や、要支援認定の結果は、あくまでその時点での心身の状態にもとづくものです。心身の状態は時間の経過とともに変化することがあるため、利用しているサービスが合わなくなってきたと感じる場合や、体調・生活状況に大きな変化があった場合は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに早めに相談し、必要に応じて認定の更新やサービス内容の見直しを行うことが重要です。基本チェックリストの判定結果に疑問がある場合も、同様に地域包括支援センターに相談することで、状況に応じて要介護認定の申請へ切り替えられる場合があります。なお、介護保険制度は3年ごとに見直しが行われており、総合事業の基準や単価も改定によって変更される可能性がある点にも留意してください。

まとめ

  • 総合事業は、要支援1・2の認定を受けた人と、基本チェックリストで事業対象者と判定された65歳以上の人が利用できる、市町村主体の介護予防・生活支援サービスです
  • 基本チェックリストは25項目の質問と7領域の判定基準にもとづき、地域包括支援センター等で実施され、要介護認定を経ずにサービス利用につなげられます
  • サービスには訪問型・通所型それぞれに従前相当サービスとサービスA〜Dがあり、名称・単価・実施の有無は市町村によって異なります
  • 費用は所得に応じた1〜3割の利用者負担が基本ですが、支給限度額や具体的な料金は市町村・要介護度によって差があります
  • 要介護に変わっても「継続利用要介護者」制度で住民主体サービスを継続できる場合があるなど、制度の細部は年々見直されているため、最新情報はお住まいの市町村や地域包括支援センターに確認してください

総合事業は制度改定によって基準や単価が見直されることがあるため、実際に利用を検討する際は、最新の情報を担当のケアマネジャーやお住まいの市町村窓口に確認してください。このサイトは特定の施設・事業者の評価や推奨は行わず、公的データにもとづく中立的な情報提供に努めています。運営方針の詳細はこのサイトの立ち位置をご覧ください。

よくある質問

総合事業と介護予防給付(要支援のサービス)は何が違いますか?

総合事業のうち訪問型・通所型サービスは、市町村が独自に単価やサービス内容を設定できる地域支援事業です。一方、訪問看護や福祉用具貸与などは総合事業に移行せず、引き続き全国一律の基準の介護予防給付として提供されています。

要支援2でも基本チェックリストで事業対象者になれますか?

基本チェックリストは主に要介護認定を受けていない人向けの仕組みですが、更新等のタイミングで要支援2から基本チェックリストの判定に切り替わることがあります。その場合、事業対象者は「要支援1に準ずる者」として扱われるため、利用できるサービスの上限額が要支援1相当まで下がる点に注意が必要です。

総合事業のサービス内容・料金は全国どこでも同じですか?

同じではありません。総合事業は市町村が地域の実情に応じてサービスの名称・単価・実施する類型を独自に設定する仕組みです。札幌市や大阪市、八王子市など、市町村ごとに名称や料金設定が異なるため、お住まいの市町村の窓口で内容を確認する必要があります。

要介護になったら、それまで使っていた総合事業のサービスは使えなくなりますか?

住民主体の訪問型サービスB・D、通所型サービスBなどを利用していた人が要介護認定を受けた場合、令和3年4月以降に創設された「継続利用要介護者」の仕組みにより、ケアプランに位置づければ要介護認定後もそのサービスを継続利用できる場合があります。

基本チェックリストの結果に納得できない場合はどうすればよいですか?

基本チェックリストはあくまで簡易な状態把握のためのツールです。結果に疑問がある場合や、実際の心身の状態と異なると感じる場合は、地域包括支援センターに相談のうえ、改めて要介護認定の申請を行うことができます。

総合事業の利用料はいくらですか?

甲府市の例では、1割負担の場合の利用料の目安は訪問介護(従前相当・週1回程度利用)で月額1,201円程度、通所介護(従前相当・要支援1)で月額1,824円程度です。ただし単価は市町村ごとに異なるため、正確な金額はお住まいの市町村の窓口で確認してください。

参考・出典

  1. 介護予防・日常生活支援総合事業の基本的な考え方 (厚生労働省老健局振興課)
  2. 介護予防・日常生活支援総合事業等(地域支援事業)の実施状況(令和5年度実施分)に関する調査結果(概要) (厚生労働省老健局老人保健課)
  3. 基本チェックリスト運用マニュアル (八王子市福祉部高齢者福祉課)
  4. 介護予防・日常生活支援総合事業|八王子市公式ホームページ (八王子市)
  5. 介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業) (札幌市)
  6. 介護予防・日常生活支援総合事業 (大阪市)
  7. 介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業) (甲府市)
  8. 総合事業の対象者の弾力化に関するQ&A (世田谷区)
  9. 引っ越しするときの手続き(介護保険) (吹田市)
  10. 地域包括ケアシステムの更なる深化・推進②(社会保障審議会介護保険部会第97回資料1) (厚生労働省老健局・社会援護局)
  11. 介護保険サービス利用時の負担割合について (岡山市)