書類にある「A2」「B1」といった記号は、寝たきりの深刻さではなく、いまの移動を中心とした生活の状態を表す記号です。障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)は、J・A・B・Cの4つのランクをそれぞれ1・2に分けたJ1からC2までの8段階(自立を加えると9区分)で、1991年(平成3年)11月18日付の厚生省(当時)通知にもとづく判定基準です。
要介護度とは別の物差しですが、要介護認定の書類に記載されるほか、障害者控除やおむつ代の医療費控除、調査への備えにも関わります。この記事では、各ランクの基準、判定する人、認知症高齢者の自立度との違い、税や施設での使われ方、家族の備えを、厚生労働省・自治体・国税庁の資料にもとづいて整理します。
結論早見:J・A・B・Cをひとことで
- J:外出できる(独力で外出する)
- A:屋内はおおむね自立、外出には介助が要る
- B:日中はベッド中心だが、座った姿勢は保てる
- C:1日中ベッド上で過ごす
それぞれの後ろの1・2は、同じランクの中での程度の違いです。詳しい基準は後の章で説明します。
障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)とは
介護の書類や認定結果で「寝たきり度A2」「J2」といった記号を目にして、戸惑うご家族は少なくありません。まず、この指標が何を示すのかを押さえましょう。
定義と対象範囲
1991年(平成3年)11月18日付の「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準」(老健第102-2号、大臣官房老人保健福祉部長通知)で示された判定基準です。当時の通知名は「障害老人」ですが、現在の厚生労働省の資料では「障害高齢者」と表記されています。この記事も、通知名を指す場面を除き「障害高齢者」と書きます。
判定の目的は、現場で保健師などが客観的かつ短時間に判定できるようにすることです。診断名や病気の重さを示すものではなく、「いまの生活の状態」を段階づけたものです。対象は、疾病・障害・後遺症・老衰などで身体の機能が低下している高齢者で、健常な高齢者は含まれません。
呼び方と「寝たきり者」の意味
通称の「寝たきり度」が広く使われていますが、正式名称は「障害高齢者の日常生活自立度」です。ランクAの人も「寝たきり度A」と呼ばれますが、Aは「準寝たきり」で、屋内ではおおむね自立している状態を含みます。
厚生労働省の統計用語解説では、「寝たきり者」はランクBとCを合わせたものです。「寝たきり度A」と書かれていても、一般にイメージされる「ずっと寝たきり」とは異なります。
要介護度とは別の指標
要介護認定等基準時間は「介護の手間」を時間で表したもの、自立度は「障害の状態」を段階づけたものです。厚生労働省の審査会委員向けテキストでも別の考え方として整理されており、ランクが重いから要介護度も必ず重い、とは単純に対応づけられません。
ランク一覧:J1からC2までの基準
通知に示された基準を順に確認します。表現は硬いですが、判定の拠り所になる文言です。
まず、9区分の早見表です。
| 区分 | 基準の要点 | 呼び方 |
|---|---|---|
| 自立 | 全く障害がない場合に調査票で○をつける | — |
| J1 | 交通機関等を利用して外出する | 生活自立 |
| J2 | 隣近所へなら外出する | 生活自立 |
| A1 | 介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する | 準寝たきり |
| A2 | 外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活 | 準寝たきり |
| B1 | 車椅子に乗り移り、食事・排泄はベッドから離れて行う | 寝たきり |
| B2 | 介助により車椅子に乗り移る | 寝たきり |
| C1 | 自力で寝返りをうつ | 寝たきり |
| C2 | 自力では寝返りもうたない | 寝たきり |
ランクJ(生活自立):J1・J2
何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する
手引きの解説では、J1はバスや電車などでかなり遠くまで、J2は町内程度の範囲で外出できる状態とされています。いずれも外出に他人の介助を必要としない点が共通です。
ランクA(準寝たきり):A1・A2
屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない
Aは「準寝たきり」「寝たきり予防軍」とも呼ばれます。A1の「ベッドから離れて生活する」は、ベッドから起きて過ごすことを指し、ふとんで生活している場合も含みます。A1は介護者の介助で比較的多く外出する状態、A2はまれにしか外出しない状態という整理です。
ランクB(寝たきり):B1・B2
屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが座位を保つ
「座位を保つ」は、座った姿勢を保てるという意味です。B1とB2は、ベッドから車椅子への乗り移りを自力でできるか、介助が必要かで分かれます。ここでの「車椅子」は、椅子やポータブルトイレなどに読み替えてよいとされています。
ランクC(寝たきり):C1・C2
1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する
C1は、ベッド上で自力で寝返りをうって体の向きを変えられる状態、C2は寝返りもうてない状態です。
各ランクの見分け方と判定の留意点
実際の判定では、通知に添えられた留意事項に沿って判断します。
「能力」ではなく「状態」、特に「移動」に着目
留意事項の中心は、「能力」ではなく「状態」で判定する点です。リハビリをすれば歩けるかもしれないという可能性ではなく、いまの生活で実際にどう過ごしているかで判断し、特に「移動」に着目します。あわせて、ADL(移動・食事・排泄・入浴・着替・整容・意思疎通)についても、a(自立)、b(一部介助)、c(全面介助)の3段階で判定するとされています。
ランクを考える順序の目安
次の順序は、記事内で理解しやすくするための整理用の目安で、通知が定めた手順ではありません。外出の様子、屋内の生活、1日の過ごし方の順に見ると、おおまかな位置が分かります。
判定するのは調査員、主治医、審査会であり、ご家族が自分で判定を決めるものではありません。ご家族は、日頃の様子を正確に伝えることに集中してください。
ご家族が確認しておきたい生活場面
基準の言葉は抽象的なので、日常の場面に置き換えて状況を把握しておくと、調査員や主治医に伝えるときの材料になります。
- 外出:一人で電車やバスに乗れるか、近所の買い物や散歩ならできるか、玄関から先は付き添いが必要か。
- 日中の過ごし方:ほとんど起きて過ごしているか、横になる時間が長いか。
- 乗り移り:ベッドから椅子や車椅子に、自分で移れるか、手を貸す必要があるか。
- 食事と排泄:ベッドから離れて行えているか、ベッド上で介助が必要か。
- 寝返り:自分で体の向きを変えられるか。
補装具・自助具を使った状態で判定してよい
杖、歩行器、義肢などの補装具や自助具を使用した状態で判定してよいとされています。杖を使えば一人で近所に出かけられる人は、杖などを使った状態で判定してよいとされています。道具を使うと自立ではない、という考え方ではありません。
迷いやすい場面
- 夜間のみおむつを使用している場合は、排泄の介助とはみなさない。
- 「車椅子」は、椅子やポータブルトイレ等に読み替えてよい。
- 調査員は、調査時の様子を基準にしつつ、概ね過去1週間のより頻回な状況や日頃の状況で選び、具体的な内容を特記事項(調査員のメモ欄にあたる部分)に記載する。
誰が判定するのか:調査員・主治医・審査会
自立度は一人の担当者が決めて終わりではなく、要介護認定の過程で複数の人の目に触れます。
認定調査員が記載する認定調査票
認定調査票は、概況調査、基本調査、特記事項の3つで構成されます。自立度は基本調査の最後の項目で、調査員が調査時の様子などから該当するランクに○をつけ、全く障害がない場合は「自立」に○をつけます。調査票の構成は認定調査票の別記事で詳しく説明しています。
主治医が記載する主治医意見書
主治医意見書では、「4.心身の状態に関する意見(1)日常生活の自立度について」の欄に、障害高齢者と認知症高齢者の両方の自立度を記載します(厚生労働省「主治医意見書記入の手引き」)。意見書の全体像は主治医意見書の記事で解説しています。
最終的な判断は介護認定審査会
最終的な要介護度は、介護認定審査会が決めます。審査会は、特記事項や主治医意見書を加味して審査し、必要があれば一次判定の結果を変更します。理由は、特記事項や意見書の具体的な記載にもとづいて示されます。
主治医の意見のほうが正確であることが明らかな場合は、調査結果を修正したうえで一次判定からやり直す取扱いも、審査会委員向けテキストに示されています。調査票と意見書で自立度が食い違った場合の優先順位を定めた規定は、公表されている範囲では見当たらず、実際にはケースごとに審査会が判断します。
認知症高齢者の日常生活自立度との違い
書類には、障害高齢者の自立度と並んで認知症高齢者の自立度も記載されます。同じ「日常生活自立度」という名前ですが、見ている点が異なります。
着目点の違い
| 区分 | 着目点 | 根拠通知 |
|---|---|---|
| 障害高齢者の自立度(J1〜C2) | 移動を中心とした身体の状態。寝たきり予防の観点 | 平成3年11月18日 老健第102-2号 |
| 認知症高齢者の自立度(Ⅰ、Ⅱa、Ⅱb、Ⅲa、Ⅲb、Ⅳ、M) | 意思疎通や症状・行動 | 平成18年4月3日 老発第0403003号 |
認知症の自立度の詳細は認知症高齢者の日常生活自立度の記事をご覧ください。
組み合わせは人によってさまざま
両者は別の物差しなので、組み合わせも一通りではありません。身体はAの状態に保たれていても認知症の症状が強い人もいれば、その逆の人もいます。どちらか一方だけで暮らしの大変さが決まるわけではなく、ケアプランでは両方の情報に加えて、本人の希望や家族の状況を合わせて見ていきます。
要介護認定での使われ方
一次判定から二次判定まで
一次判定は、基本調査74項目と主治医意見書の情報をもとにコンピュータで行われます。その後、介護認定審査会が特記事項や主治医意見書を加味して二次判定を行い、必要があれば一次判定を変更します。
32分以上50分未満の振り分け
基準時間が32分以上50分未満の場合、要支援2と要介護1の振り分けの判断材料に使われるのは認知症高齢者の自立度などで、審査会委員向けテキストの図に寝たきり度が入っているわけではありません。寝たきり度は要介護度を直接決めるものではない、という点を押さえてください。
主治医意見書の自立度が見られる場面
主治医意見書の自立度の欄は、審査だけでなく、後述の税制度の章のとおり、おむつ代の確認書(世田谷区の例)の交付に主治医意見書の寝たきり度が使われるなど、自治体の手続きでも参照されます。
自立度だけで要介護度は決まらない
自立度は審査で参照される情報の一つで、要介護度は介護の手間を表す基準時間や、審査会の判断を含めて決まります。認定後に状態が変わった場合の対応は、後述の家族の備えで触れます。
税制度での使われ方:障害者控除とおむつ代の医療費控除
寝たきり度は介護保険の外でも使われます。代表的なのが障害者控除と、おむつ代の医療費控除です。自治体や年度で扱いが異なるため、基本部分と自治体の例を分けて見ます。
障害者控除と「認定」の仕組み
国税庁のタックスアンサー(No.1160)によると、所得税の障害者控除の額は、障害者27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円です。65歳以上で、障害の程度が障害者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けた人が対象になる場合があります。住民税は控除額が異なりますので、市区町村や税務署に確認してください。
要介護認定を受けただけでは障害者控除の対象になりません(国税庁No.1185)。要介護認定とは別に、市区町村長等の「認定」が必要です。
自治体ごとの基準の例:大田区・文京区
認定の基準は自治体により異なり、寝たきり度が基準に使われる例があります。
| 自治体 | 特別障害者に準ずる | 障害者に準ずる | 備考 |
|---|---|---|---|
| 大田区 | 寝たきり度B・C(6か月以上)/認知症自立度Ⅲ以上 | A以上相当 | 基準日12月31日、65歳未満は対象外 |
| 文京区 | B・C(6か月以上)/認知症ⅣまたはM | A(6か月以上)/認知症ⅡまたはⅢ | — |
このように基準は自治体で異なります。必ずお住まいの市区町村に確認してください。
おむつ代の医療費控除
国税庁No.1122によると、傷病によりおおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けている場合、おむつが必要と認められるときのおむつ代が医療費控除の対象になることがあります。原則として「おむつ使用証明書」が必要ですが、要介護認定を受けた一定の人は、市町村長等が交付する確認書等で代えられる場合があります。
| 自治体 | 寝たきり度の要件 | その他の要件・案内 |
|---|---|---|
| 世田谷区(令和6年以降の申告) | 主治医意見書でB1〜C2 | 失禁への対応(カテーテル使用、または尿失禁が現在ある・発生する可能性が高い)。手数料無料、事前相談を案内 |
| 新潟市(令和5年度以前の案内) | B1〜C2 | 尿失禁の可能性がある場合 |
自治体や年度で異なるため、最新の取扱いを確認しましょう。控除を受けられるかどうかの最終的な判断は、税務署・税理士・市区町村の窓口に相談してください。
介護医療院など施設での使われ方
介護医療院の特別診療費:褥瘡対策指導管理
介護医療院の特別診療費のうち「褥瘡対策指導管理」は、対象がランクB以上の利用者等と定められています(平成30年4月25日老老発0425第2号)。
入所・入居の判断資料としての主治医意見書
主治医意見書は、特別養護老人ホーム等の入所判定、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の入居要件の確認、加算の算定の場面でも使われます。個別の施設で算定している加算は、事業所や担当のケアマネジャーに確認してください。
家族の備え:調査で伝えること・区分変更
特定のランクに誘導するためではなく、ありのままの状態を正確に伝えるための準備として、次の点を整理しておきます。
調査前に整理しておくこと
調査員は、概ね過去1週間のより頻回な状況や日頃の状況を基準に選びます。当日の調子だけにならないよう、普段の様子を整理しておきましょう。
- 1日の中での移動の様子(寝室からトイレ、居間までなど)
- 外出の頻度と、そのときの手助けの有無
- 夜間の様子(トイレ、寝返り、おむつの使用)
- 体調の波(調子のよい日・悪い日の違い)
- 使っている杖・歩行器・車椅子などの道具
調査に同席して日頃の様子を伝える
可能であれば調査に同席し、日頃の様子を調査員に伝えましょう。具体的な出来事(「先週は2回転びそうになった」など)を伝えると、調査員が特記事項に記載しやすくなります。調査結果の開示請求ができるかどうかは自治体によって異なるため、市区町村に確認してください。
状態が変わったら区分変更申請
認定後に状態が変わり、いまの要介護度が実態に合わないと感じたら、区分変更を申請できます。手順や注意点は区分変更申請の記事と、市区町村の窓口でご確認ください。
統計の一例:福井県のデータから見る分布
福井県が公表している令和6年4月1日時点のデータを一例として見ます。全国の数値ではありません。
福井県の要介護認定者のランク別人数
要介護認定者は41,944人で、うち寝たきり度B〜Cは13,853人(33.0%)です。A1とA2を合わせると20,162人(約48%)で、最も多い区分群です。J1とJ2の合計は7,687人でした。
数字の読み方と注意
年齢構成、サービスの提供状況、認定の運用は地域で異なるため、他の地域や全国にそのまま当てはめることはできません。お住まいの自治体が公表する統計も参考になります。
注意点とよくある誤解
よくある誤解
- ランクが付けば、控除や確認書が自動で受けられるわけではない:市区町村長等の認定や確認書の交付が別に必要で、基準は自治体で異なります。
- 調査当日の調子だけで決まるわけではない:概ね過去1週間のより頻回な状況や日頃の状況で選びます。
制度の改定と自治体差
制度や取扱いは改定されることがあります。障害者控除の認定基準やおむつ代の証明書の取扱いも、自治体ごと・年度ごとに異なります。この記事は公表されている資料にもとづくもので、最新の取扱いは公式の情報や窓口で確認してください。
このサイトの編集方針について
かいごの窓は、特定の施設やサービスを評価・順位づけせず、公的な情報にもとづいて並列に情報を整理しています。詳しくはこのサイトの立ち位置をご覧ください。
まとめ
- 寝たきり度のA2・B1などは、寝たきりの深刻さではなく、移動を中心とした「いまの状態」を表す記号で、要介護度とは別の物差し。
- 判定は調査員(調査票)と主治医(意見書)が記載し、最終的な要介護度は介護認定審査会が決める。
- 認知症高齢者の自立度とは着目点が異なる別の指標。
- 障害者控除は要介護認定だけでは対象外で、市区町村長等の認定が別に必要。おむつ代の確認書なども基準は自治体・年度で異なる。
- 調査前に日頃の様子を整理し、状態が変われば区分変更申請を検討する。
最新の取扱いは、市区町村の窓口、税務署、地域包括支援センター、担当のケアマネジャーにご確認ください。編集方針はこのサイトの立ち位置に記載しています。