特定施設入居者生活介護とは、介護付き有料老人ホームなどの「特定施設」に入居する要介護者・要支援者に対して提供される介護保険サービスです。この指定の有無が「介護付き」と表示できるかどうかの分かれ目にもなります。本記事では、一般型と外部サービス利用型の違い、地域密着型特定施設入居者生活介護との違い、指定基準、費用の仕組み、2024年度介護報酬改定の内容を、厚生労働省・自治体の公式資料にもとづいて解説します。
特定施設入居者生活介護とは何か
「特定施設入居者生活介護」という言葉は、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を探すときによく目にしますが、正確にどのようなサービスを指すのかは分かりにくい制度です。まずは法律上の位置づけと、対象となる施設の範囲を整理します。
介護保険法上の位置づけ
特定施設入居者生活介護は、介護保険法に定められた居宅サービスの一つです(第8条第11項等)。要支援者を対象とする場合は「介護予防特定施設入居者生活介護」と呼ばれます。
いずれのサービスも、特定施設に入居する高齢者一人ひとりについて、あらかじめ「特定施設サービス計画」を作成します。この計画に基づいて、入浴・排せつ・食事等の介護、日常生活上の世話、機能訓練、療養上の世話を提供します。
サービスを提供する事業者は、都道府県知事(政令指定都市・中核市の場合はその長)の指定を受ける必要があります。指定を受けるには法人格を持っていることが要件の一つです。こうした指定の具体的な考え方は、東京都福祉局の手引きに整理されています。
対象となる「特定施設」の3類型
介護保険法上の「特定施設」とは、有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホームの3類型を指します(介護保険法第8条第11項、施行規則第15条)。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のうち、老人福祉法上の有料老人ホームに該当するものも、この「特定施設」に含まれます。
つまり「特定施設入居者生活介護」は施設の種類そのものの名前ではなく、これらの施設が都道府県等から受ける「指定」の名称です。同じ有料老人ホームでも、この指定を受けているかどうかで提供されるサービスの仕組みや費用の負担方法が大きく変わります。次の章では、この指定を受けた施設が「介護付き」と表示できる仕組みを見ていきます。
「介護付き」と表示できる根拠
有料老人ホームの広告やパンフレットで見かける「介護付き」という表示には、根拠となる制度上の裏付けがあります。
老人福祉法上の表示規制
厚生労働省が示す「有料老人ホームの類型」では、特定施設入居者生活介護の指定を受けていない有料老人ホームは「介護付」と表示できないと明記されています。広告やパンフレット等で「介護付き」「ケア付き」等の表示を行うことは、指定を受けていない施設には認められていません。
これは、老人福祉法にもとづく行政指導(平成4年老振第24号通知「有料老人ホームの設置運営に対する指導の徹底について」)の一部として整理されているものです。この通知では、次のような表現も禁止されています。
- 「完全」「万全」「絶対」「業界唯一」といった断定的・最上級の表現
- 医療機関と誤認させるような表現
有料老人ホームの広告表示には、こうした一定のルールが設けられています。
住宅型有料老人ホームとの違い
「介護付き有料老人ホーム」と呼ばれるのは、特定施設入居者生活介護の指定を受けた有料老人ホームです。これに対し、指定を受けていない有料老人ホームは「住宅型有料老人ホーム」と呼ばれ、入居者自身が地域の訪問介護等の居宅サービス事業者と個別に契約してサービスを利用する仕組みになっています。
| 項目 | 介護付き有料老人ホーム(特定施設) | 住宅型有料老人ホーム(非特定施設) |
|---|---|---|
| 特定施設入居者生活介護の指定 | あり | なし |
| 介護サービスの利用方法 | 施設職員(または委託先)が包括的に提供、施設サービス費として1日単位で給付 | 入居者自身が地域の訪問介護等の居宅サービス事業者と個別契約 |
| 区分支給限度基準額 | 対象外(外部サービス利用型・短期利用を除く) | 通常の居宅サービスと同様に対象 |
| 「介護付き」の表示 | 可能 | 不可 |
| 全国の施設数(令和6年6月時点) | 4,559棟・定員280,801人 | 12,668棟・定員392,346人 |
※区分支給限度基準額とは、1か月に利用できる介護保険サービスの上限額のことです。詳しくは後述の「区分支給限度基準額の対象外という特徴」で解説します。
出典:厚生労働省・社会保障審議会介護給付費分科会資料。「介護付き」は特定施設入居者生活介護の指定を受けた有料老人ホーム、「住宅型」は指定を受けていない有料老人ホーム。
厚生労働省・社会保障審議会介護給付費分科会の資料(令和6年6月30日時点)によると、有料老人ホーム全体は25,198棟・定員951,236人です。このうち介護付きは4,559棟・定員280,801人、住宅型は12,668棟・定員392,346人となっています。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)についても、特定施設の指定の有無で内訳が分かれます。
- サ高住全体: 8,301棟・287,687戸
- うち特定施設の指定を受けたもの: 817棟・38,379戸
サ高住を選ぶ際も、特定施設の指定を受けているかどうかで、介護サービスの利用方法が変わる点に注意が必要です。
有料老人ホーム全般の類型については有料老人ホームとは何かを解説した記事で、サービス付き高齢者向け住宅の仕組みについてはサービス付き高齢者向け住宅とはを解説した記事で詳しく取り上げています。
一般型と外部サービス利用型の違い
特定施設入居者生活介護には「一般型(包括型)」と「外部サービス利用型」の2種類があります。どちらも特定施設としての指定を受けている点は共通ですが、介護サービスの提供方法や人員配置、算定できる加算が異なります。
| 項目 | 一般型(包括型) | 外部サービス利用型 |
|---|---|---|
| 介護サービスの提供者 | 特定施設の従業者が包括的に提供 | 施設職員が計画作成・安否確認・生活相談を担当し、介護は委託先の指定居宅サービス事業者が提供 |
| 看護・介護職員の配置 | 要支援者10:1、要介護者3:1(看護職員は要介護者等30人まで1人、以降50人ごとに1人) | 看護職員・機能訓練指導員の配置基準なし。介護職員のみ配置(要支援者30:1、要介護者10:1) |
| 一時介護室 | 必須 | 不要(食堂も居室25平方メートル以上なら設置不要) |
| 委託契約 | ― | 開始時に訪問介護・訪問看護・通所介護など少なくとも3事業者と委託契約が必要 |
| 報酬の仕組み | 要介護度別の包括報酬(1日単位) | 定額報酬(生活相談・安否確認・計画作成等)+出来高報酬(委託サービス分) |
| 算定できる加算 | 後述する加算全般 | 協力医療機関連携加算、障害者等支援加算のみ |
| 短期利用 | 可能 | 対象外 |
※一時介護室とは、体調が悪化した入居者を一時的に移して手厚く介護するための部屋です。詳しくは後述の「個室・一時介護室などの設備基準」で解説します。
人員配置の違い
人員配置の基準が一般型と外部サービス利用型で異なるのは、介護サービスの提供主体そのものが違うためです。一般型は特定施設の従業者が介護を担うのに対し、外部サービス利用型は実際の介護を外部の委託事業者に任せる仕組みのため、看護職員や機能訓練指導員を施設側に配置する基準自体が設けられていません。
入居者にとっては、一般型は同じ施設のスタッフが継続的に対応してくれる点、外部サービス利用型は委託先によって介護の担当者が変わりうる点が、実際の暮らし方の違いにつながります。
サービス提供方法・委託契約の違い
外部サービス利用型では、施設が生活相談・安否確認・計画作成を担い、介護そのものは委託先の事業者が提供するため、連絡や相談の窓口が施設側と委託事業者側の2つに分かれます。日々の暮らしに関する相談は施設に、介護の内容に関する相談は委託事業者にと、問い合わせ先を使い分ける場面が出てくる点が、一般型との実務上の違いです。
算定できる加算の違い
算定できる加算が限られるということは、外部サービス利用型では看取り介護加算や個別機能訓練加算といった加算を施設の報酬に組み込めないことを意味します。入居後に手厚い医療的ケアや機能訓練を重視したい場合は、一般型か外部サービス利用型かによって施設側が対応できる範囲に違いが出ることもあるため、契約前に確認しておくとよいでしょう。
地域密着型特定施設入居者生活介護との違い
特定施設入居者生活介護には、定員が小さい施設向けの「地域密着型特定施設入居者生活介護」という区分もあります。
定員29人以下の小規模施設
入居定員29人以下の小規模な「介護専用型特定施設」は、地域密着型サービスの一つである「地域密着型特定施設入居者生活介護」として、事業所が所在する区市町村(中核市の場合は市)の指定を受けます(介護保険法第78条の2第1項)。都道府県が指定する通常の(広域型の)特定施設とは、指定を行う自治体が異なる点がポイントです。
「介護専用型」と「混合型」の違い
特定施設は「介護専用型特定施設」と「混合型特定施設」に分かれます。介護専用型特定施設は、入居者を要介護者とその配偶者等に限定した施設で、要支援者や自立している人は入居できません。地域密着型特定施設入居者生活介護は、すべてこの介護専用型特定施設が対象です。
これに対し、通常の(広域型の)特定施設には、要介護者に限定しない「混合型特定施設」も含まれます。混合型特定施設では、要介護者だけでなく要支援者や、要介護認定を受けていない自立した人も入居できます。同じ「介護付き有料老人ホーム」でも、専用型か混合型かによって入居できる人の範囲が異なるため、確認が必要です。
全国の事業所数
介護サービス情報公表システムに掲載された請求事業所数(令和7年)は次のとおりです。
- 広域型(一般型): 6,017事業所
- 地域密着型: 366事業所
- 介護予防: 4,669事業所
地域密着型は、広域型に比べて事業所数がかなり少ないことが分かります。そのため、希望する地域に地域密着型の施設が見つからない場合もあります。
入居条件・対象者
特定施設入居者生活介護を利用できるのは、どのような人なのでしょうか。施設の種類によって対象範囲が異なる点に注意が必要です。
要介護1〜5・要支援1、2・自立でも入居できるケース
一般の広域型特定施設の多くが該当する「混合型特定施設」では、要介護1〜5の認定を受けた人に加え、要支援1・2の人(この場合は「介護予防特定施設入居者生活介護」の対象)、さらに要介護認定を受けていない自立した人も、いずれも入居の対象となります。
地域密着型は要介護者に限定される
地域密着型特定施設入居者生活介護の対象は、前述の「介護専用型特定施設」に限られるため、要支援者や自立した人は入居できません。
なお、特定施設入居者生活介護の利用者は、他の居宅サービス・地域密着型サービスとの併用に制限があります(詳しくは後述の「併用できるサービスの制限」で解説します)。すでに他の在宅サービスを利用している人が特定施設に入居する場合は、サービスの利用方法が変わる点に注意してください。
指定基準(人員・設備)
特定施設入居者生活介護の指定を受けるには、人員配置と設備の両面で基準を満たす必要があります。ここでは一般型の基準を中心に確認します。
生活相談員・看護職員・介護職員の配置基準
一般型の主な人員配置基準は次のとおりです。
- 管理者: 1人(他の職務との兼務可)
- 生活相談員: 常勤で1人以上(要介護者等100人に対して1人以上が目安)
- 看護・介護職員: 要支援者10人に対して1人以上、要介護者3人に対して1人以上。看護職員は要介護者等30人まで1人、以降50人ごとに1人以上(夜間帯も1人以上の職員配置が必要)
- 機能訓練指導員: 1人以上(兼務可)
- 計画作成担当者: 介護支援専門員を1人以上配置(兼務可。要介護者等100人に対して1人以上が標準)
これらの基準は東京都福祉局の手引きや社会保障審議会介護給付費分科会の資料に整理されています。
個室・一時介護室などの設備基準
設備面の主な基準は次のとおりです。
- 居室: 原則として個室とし、地階に設けることはできない
- 一時介護室: 体調が悪化した入居者を一時的に移し、手厚く介護するための専用スペース。一般型では設置が必須
- 浴室・便所: 便所は各階に設置
- 食堂・機能訓練室: 車椅子でも移動できる空間構造にすることが求められる
外部サービス利用型では、一時介護室の設置が不要とされ、食堂も居室の面積が25平方メートル以上であれば設置を省略できるなど、一般型より基準が緩和されています。
費用の仕組みと目安
特定施設入居者生活介護の費用は、他の居宅サービスとは異なる独特の仕組みで計算されます。ここでは、その仕組みと、要介護度別の1日あたりの費用の目安を確認します。
区分支給限度基準額の対象外という特徴
区分支給限度基準額とは、要介護度に応じて1か月に利用できる介護保険サービスの上限額のことです。訪問介護や通所介護など通常の居宅サービスは、この上限額の範囲内で利用します。しかし一般型特定施設入居者生活介護(短期利用を除く)と地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用を除く)は、この区分支給限度基準額の対象外です。1日単位の包括的な施設サービス費として算定され、他の居宅サービスのように「限度額の中でどのサービスをどれだけ使うか」を組み合わせる必要がありません。
これに対し、外部サービス利用型特定施設入居者生活介護は区分支給限度基準額の対象です。委託先の訪問介護等のサービス費用が、限度額の範囲内で出来高として積み上がっていく仕組みになります。
要介護度別の1日あたり費用
一般型特定施設入居者生活介護の基本サービス費(1割負担の場合の1日あたりの目安、令和6年度介護報酬改定後の単位数、1単位10円で換算)は次のとおりです。
- 要支援1: 183単位(約183円)
- 要支援2: 313単位(約313円)
- 要介護1: 542単位(約542円)
- 要介護2: 609単位(約609円)
- 要介護3: 679単位(約679円)
- 要介護4: 744単位(約744円)
- 要介護5: 813単位(約813円)
出典:社会保障審議会介護給付費分科会資料(厚生労働省老健局)、介護サービス情報公表システム。要支援は「介護予防特定施設入居者生活介護」の単位数。
これらはあくまで基本サービス費の目安であり、実際の請求額はこれに看取り介護加算などの各種加算や、居住費・食費、日常生活費などが加わります。1単位あたりの単価も地域やサービスの種類によって異なるため、正確な金額は入居予定の施設や自治体に確認する必要があります。たとえば要介護3の場合、1日679円(1割負担)が30日続くと仮定すると、月額では約20,370円になる計算です(実際には月の日数や各種加算、居住費・食費等により変動します)。
地域密着型特定施設入居者生活介護の基本サービス費(1割負担、令和6年6月以降の単位数)の目安は次のとおりです(要支援者は地域密着型の対象外です)。
- 要介護1: 546円
- 要介護2: 614円
- 要介護3: 685円
- 要介護4: 750円
- 要介護5: 820円
外部サービス利用型の費用の仕組み
外部サービス利用型は、基本部分84単位に加えて、委託した訪問介護等のサービス提供実績に応じた出来高部分を合算する仕組みです。区分支給限度基準額の対象となるため、要介護度別の支給限度単位数の範囲内で、委託サービスの利用量が決まります。平成18年厚生労働省告示第165号による限度単位数の目安は次のとおりです。
- 要介護1: 16,355単位
- 要介護2: 18,362単位
- 要介護3: 20,490単位
- 要介護4: 22,435単位
- 要介護5: 24,533単位
一般型が「使った量にかかわらず要介護度別の定額」であるのに対し、外部サービス利用型は「限度額の範囲内で実際に使った分だけ費用がかかる」という点で、費用の考え方が大きく異なります。
2024年度介護報酬改定と主な加算
令和6年度(2024年度)の介護報酬改定では、特定施設入居者生活介護についてもいくつかの加算が新設・見直しされました。
協力医療機関連携加算
令和6年度介護報酬改定で新設された加算の一つが「協力医療機関連携加算」です(月100単位)。これは、施設と協力医療機関が定期的な会議を開き、入居者の現病歴等の情報を共有することを評価する加算です。
特別養護老人ホームなど介護保険施設では協力医療機関の指定が義務化される一方、特定施設については協力医療機関の指定はあくまで努力義務にとどまり、施設類型によって位置づけに違いがあります。
その他の主な加算(看取り介護加算・入居継続支援加算等)
このほか、特定施設入居者生活介護で算定できる主な加算には次のようなものがあります。
- 看取り介護加算(人生の最終段階にある入居者に対し、本人・家族の意向を踏まえた看取りの体制を整えている場合の加算)
- 入居継続支援加算(喀痰吸引や経管栄養など医療的ケアが必要な人が増えても、介護福祉士等を手厚く配置して入居を継続できる体制を評価する加算)
- 夜間看護体制加算
- 生活機能向上連携加算
- 個別機能訓練加算
- ADL(日常生活動作)維持等加算
- 科学的介護推進体制加算
- サービス提供体制強化加算
- 介護職員等処遇改善加算
このほかにも複数の加算があり、それぞれ算定するための人員体制や実績報告など細かな要件が定められています。個別の加算の算定状況は施設によって異なるため、具体的な内容は入居を検討する施設に直接確認するのがよいでしょう。加算の名称や単位数は今後の介護報酬改定でも見直される可能性があるため、最新の情報を確認することが大切です。
全国の利用状況と今後の見通し
特定施設入居者生活介護は、全国でどの程度利用されているのでしょうか。厚生労働省の資料から、利用状況と今後の見通しを確認します。施設の利用状況や今後の見通しを知っておくと、長く利用できる施設かどうかを見極める材料になります。
利用者数・平均要介護度
社会保障審議会介護給付費分科会の資料によると、特定施設入居者生活介護と地域密着型特定施設入居者生活介護の主な指標は次のとおりです(令和6年度決算・給付実績)。
| 項目 | 特定施設入居者生活介護(広域型) | 地域密着型特定施設入居者生活介護 |
|---|---|---|
| 費用額 | 694,137百万円(約6,941億円) | 23,366百万円(約234億円) |
| 事業所数 | 6,251 | 385 |
| 介護保険給付全体に占める割合 | 6.0% | 0.2% |
| 平均要介護度 | 2.70 | 2.81 |
| 収支差率(税引前、補助金含まず) | 5.3% | 0.4% |
※収支差率とは、収入に対する利益の割合を示す指標で、企業でいう営業利益率に近いものです。
要介護度別の受給者数(令和7年)は、特定施設・地域密着型を合わせて263.2千人、介護予防(要支援1・2)は合わせて34.0千人です。要介護度の分布では、特定施設で要介護1が26.0%と最も多くなっています。収支差率が低い施設運営は、将来的な人員体制の維持や設備投資に影響しうるため、入居を検討する際は費用や人員体制だけでなく、施設の経営状況についても確認できると安心です。
第9期介護保険事業計画の推計
市区町村・都道府県が3年ごとに策定する「第9期介護保険事業計画」の推計によると、特定施設入居者生活介護の利用者数は今後も増加が見込まれています。
- 令和5年度実績: 28万人
- 令和8年度: 31万人(約11%増)
- 令和22年度: 36万人(約30%増)
高齢化の進展にともない、今後も一定の需要増が見込まれる分野といえます。需要が増えることで、希望する施設への入居までに時間がかかる可能性もあります。
注意点・よくある誤解
最後に、特定施設入居者生活介護を検討するうえで誤解しやすい点や、注意しておきたい点を整理します。
特定施設だから安心とは限らない
特定施設入居者生活介護の指定を受けているからといって、その施設のケアの内容や体制が他の施設より優れていることを意味するわけではありません。指定はあくまで人員配置や設備の最低基準を満たしていることを示すものであり、日々のケアの質やスタッフとの相性は、施設ごとに個別に確認する必要があります。
特別養護老人ホームと有料老人ホームの違いを解説した記事でも触れているとおり、施設の種類が同じでも、実際の運営状況は施設によって異なります。見学や説明の際に、人員体制や日々の生活の様子を具体的に確認することが大切です。
入居を検討する際は、重要事項説明書で特定施設入居者生活介護の指定の有無や、一般型か外部サービス利用型かを確認するとよいでしょう。判断に迷う場合は、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談することもできます。
併用できるサービスの制限
特定施設入居者生活介護の利用者は、他の居宅サービス・地域密着型サービスを原則として併用できません(外部サービス利用型を除く)。ただし、かかりつけ医や薬剤師等が居宅を訪問して行う「居宅療養管理指導」は例外的に併用できます。すでに訪問介護やデイサービスなどを利用している人が特定施設に入居する場合、それまで利用していたサービスの契約を見直す必要が生じることがあります。
また、外部サービス利用型は区分支給限度基準額の対象になるため、限度額を超えて委託サービスを利用した場合は超過分が全額自己負担になる点にも注意が必要です。
まとめ
ここまでの内容を整理します。
- 特定施設入居者生活介護とは、有料老人ホーム・養護老人ホーム・軽費老人ホーム等の「特定施設」に入居する要介護者・要支援者に、入浴・排せつ・食事等の介護や機能訓練等を提供する介護保険サービスである
- 提供方法によって「一般型(包括型)」と「外部サービス利用型」に分かれ、人員配置・費用の計算方法・算定できる加算が異なる
- 定員29人以下の「介護専用型特定施設」は、市区町村が指定する「地域密着型特定施設入居者生活介護」となり、要支援者・自立者は対象外である
- 特定施設入居者生活介護(短期利用を除く一般型・地域密着型)は区分支給限度基準額の対象外で、要介護度別の1日単位の費用(令和6年度改定後で要介護1は542単位、要介護5は813単位)として算定される
- 特定施設入居者生活介護の指定を受けた有料老人ホームだけが「介護付き」と表示でき、指定を受けていない住宅型有料老人ホームはこの表示ができない
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