介護を仕事にする場合に関わる資格・研修には、訪問介護を含む全サービスで従事できる130時間の初任者研修があり、その先に450時間の実務者研修、国家資格の介護福祉士、相談業務のケアマネジャーなどがあります。この記事では、無資格から介護福祉士・ケアマネまでの取得ルートと費用を支える制度を、厚生労働省などの公的資料にもとづいて整理します。
介護の資格・研修の全体像
無資格・研修・国家資格という3つの段階
介護の仕事に関わる資格は、大きく分けると「無資格(資格を持たない状態)」「研修の修了(入門的研修・生活援助従事者研修・初任者研修・実務者研修)」「国家資格(介護福祉士など)」の段階で整理できます。時間数と従事できる範囲は資格ごとに異なります。
主な研修・資格の時間数と働ける範囲
時間数と従事できる範囲は、資格ごとに次のとおりです(いずれも厚生労働省の資料にもとづく整理です)。
| 区分 | 時間数など | 働ける範囲の目安 |
|---|---|---|
| 無資格 | なし | 通所・施設系の介護職員として働ける |
| 介護に関する入門的研修 | 21時間 | 通所・施設系(訪問介護員としては不可) |
| 生活援助従事者研修 | 59時間 | 訪問介護の生活援助中心型のみ |
| 介護職員初任者研修 | 130時間 | 訪問介護を含む全サービス |
| 実務者研修 | 450時間(初任者研修修了者は残り320時間) | 全サービス。介護福祉士の受験に必須 |
| 介護福祉士 | 国家資格 | 全サービス |
この表の時間数は研修の「カリキュラム上の時間」で、実際に修了までにかかる期間は実施する事業者や通学・通信の別によって異なります。
家族の介護で知っておきたい資格の見方
介護サービスを使う場面で目にする訪問介護員(ヘルパー)の資格は、身体介護と生活援助で異なります。生活援助従事者研修の修了者は生活援助中心型のみ、初任者研修以上は身体介護も担えます(詳しくは訪問介護の章)。
ケアマネジャーについてはケアマネジャーの解説記事、地域包括支援センターについては地域包括支援センターの解説記事で詳しく解説しています。
制度は変わりうる点に注意
介護保険制度は3年ごとに改定され、資格・研修の制度も法改正で変わることがあります。令和8年6月公布の法改正の内容は、介護福祉士の章の表にまとめています。本記事は令和8年10月時点で確認できた公的資料にもとづきます。
資格がなくてもできる介護の仕事と認知症介護基礎研修
通所・施設系は無資格でも働ける
厚生労働省の整理では、無資格の方も通所・施設系の介護職員として働くことができます。
一方で、資格がない場合に担える業務の範囲や、事業所ごとの任せ方は施設によって異なります。入職前に、どのような業務から始まるかを確認しておくと安心です。
新規採用者に義務づけられた認知症介護基礎研修
令和6年4月1日から、医療・福祉関係の資格を持たない新規採用者には、認知症介護基礎研修の受講が義務づけられています。受講の期限は採用後1年以内です。
すでに医療・福祉関係の資格を持つ方は対象外という整理になっています。研修の時間数や受講方法は、実施する団体や都道府県により異なるため、案内で確認してください。
訪問介護員として働くには研修の修了が必要
訪問介護の仕事は、無資格のままでは担えません。訪問介護員になるには、後述する生活援助従事者研修・初任者研修・実務者研修・介護福祉士などのいずれかが必要です。
入門的研修と生活援助従事者研修
介護に関する入門的研修の内容(21時間)
介護に関する入門的研修は、全体で21時間のカリキュラムです。内訳は次のとおりです。
| 区分 | 内容と時間 | 時間 |
|---|---|---|
| 基礎講座 | 基礎知識1.5時間、介護の基本1.5時間 | 3時間 |
| 入門講座 | 基本的な介護の方法10時間、認知症の理解4時間、障害の理解2時間、安全確保2時間 | 18時間 |
通所・施設系の現場で働くことはできますが、訪問介護員としては従事できません。詳しくは入門的研修の解説記事も参考になります。
主な対象者と実施主体、修了後の扱い
主な対象として想定されているのは、定年退職予定の方、中高年の方、子育てが一段落した方などです。実施主体は都道府県や市区町村で、民間への委託も可能とされています。
修了者については、都道府県の判断で、介護職員初任者研修や生活援助従事者研修の一部が免除される場合があります。免除の有無や範囲は自治体によって異なるため、受講を検討する際は実施主体に確認が必要です。
生活援助従事者研修(59時間)
生活援助従事者研修は59時間の研修で、平成30年度の介護報酬改定で創設されました。修了すると、訪問介護のうち「生活援助中心型」のサービスに限って従事できます。
身体に直接触れる身体介護は担えない点が、初任者研修との違いです。身体介護と生活援助の区分は、後半の訪問介護の章で整理します。研修の詳細は生活援助従事者研修の解説記事をご覧ください。
介護職員初任者研修(130時間)
研修の内容と位置づけ
介護職員初任者研修は130時間の研修で、10科目で構成されています。最も時間数が多い科目は「こころとからだのしくみと生活支援技術」の75時間で、これとは別に約1時間の修了評価があります。旧ヘルパー2級に相当する研修です。
訪問介護を含むすべてのサービスで従事できる研修です。詳しい受講の流れは、介護職員初任者研修の解説記事で解説しています。
旧制度の修了者の扱い
旧介護職員基礎研修、旧訪問介護員1級、旧訪問介護員2級の修了者は、初任者研修の修了要件を満たすものとして扱われます。古い名称の修了証を持っている方は、改めて初任者研修を受講しなくてよい場合があります。
ご自身の修了証がどの扱いになるかは、都道府県などに確認すると確実です。
初任者研修の次のステップ
初任者研修を修了した方が実務者研修へ進む場合は、受講時間の一部が免除されます。時間数は次の章で整理します。介護福祉士国家試験を目指す場合は、実務経験などの要件も関わります。
実務者研修(450時間)
介護福祉士の受験に必要な研修
実務者研修は450時間の研修で、都道府県が指定した事業者が実施します。修了すると全サービスで従事でき、介護福祉士国家試験の受験にも必須とされています。
詳しい内容は実務者研修の解説記事にまとめています。
初任者研修修了者は320時間
初任者研修を修了している場合は、130時間が免除されて残り320時間の受講となります。無資格から受講する場合との差は、免除分の130時間です。免除の扱いは修了証の内容によって確認が必要になることがあります。
今後の議論
令和7年11月の福祉人材確保専門委員会の「議論の整理」では、実務者研修の科目免除や養成施設への単位制の導入などが議論の対象として挙げられています。議論の段階の内容を含むため、受講時期によって扱いが変わる可能性があります。
介護福祉士(国家資格)の取得ルートと試験
4つの受験資格ルート
介護福祉士の受験資格には、次の4つのルートがあります。
- 養成施設ルート:第1号養成施設で2年以上学ぶ。課程は1,850時間(人間と社会240時間、介護1,260時間、こころとからだのしくみ300時間、医療的ケア50時間)
- 実務経験ルート:実務経験3年以上と、実務者研修(6か月以上)の修了
- 福祉系高校ルート:特例高校の卒業者は、卒業後に実務9か月以上(従事日数135日以上)
- EPAルート:インドネシア・フィリピン・ベトナムからの候補者で、実務経験3年以上
特定技能1号や技能実習で働く外国人の方は、実務経験ルートの扱いとなります(試験センターの整理)。
試験の概要とパート合格
試験は年1回の筆記試験で、領域は「人間と社会」「介護」「こころとからだのしくみ」「医療的ケア」「総合問題」です。第38回から、合格したパートについて受験が免除される「パート合格」の仕組みが導入されました。
第39回の試験は令和9年1月31日(日)、合格発表は令和9年3月23日の予定で、受験手数料は20,510円です(第38回は18,380円)。詳しい対策や申込みの流れは介護福祉士国家試験の解説記事をご覧ください。
直近の合格率と登録者数
直近2回の合格率は次のとおりです。
| 回(実施日) | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 第37回(令和7年1月26日) | 75,387人 | 58,992人 | 78.3% |
| 第38回(令和8年1月25日) | 78,469人 | 54,987人 | 70.1% |
第38回の発表は3月16日で、そのうちEPA候補者(380名)の合格率は31.8%でした。合格率は年ごとに変動します。介護福祉士の登録者数は、令和7年3月末時点で2,004,027人です(厚生労働省 福祉人材確保専門委員会 資料)。
令和8年の法改正(経過措置・准介護福祉士・ケアマネ更新制)
令和8年6月25日に公布された「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)により、介護福祉士とケアマネジャーの制度が見直されます。主な内容は次のとおりです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 令和8年6月25日 | 社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)の公布 |
| 令和9年4月1日(原則) | 准介護福祉士の廃止 |
| 公布から1年6か月以内に政令で定める日(原則令和9年4月1日) | ケアマネジャーの介護支援専門員証の更新制と更新研修の廃止 |
| 令和9年度以降の卒業者 | 養成施設の卒業者は、5年以内に国家試験に合格する必要がある |
| 令和13年度の卒業分まで | 養成施設卒業者の経過措置の延長(試験センターは「令和14年3月31日までの卒業者」と案内) |
施行時期や経過的な扱いの細部は今後の通知で変わる可能性があるため、該当する方は厚生労働省と試験センターの案内を確認してください。
関連する資格(ケアマネ・社会福祉士・社会福祉主事)
介護支援専門員(ケアマネジャー)
ケアマネジャーの受験資格は、保健・医療・福祉分野の法定資格に基づく業務、または相談援助業務(福祉の相談に応じて助言や調整をする業務)に通算5年以上かつ900日以上従事した方とされています(三重県の案内)。平成30年度(第21回)の試験から、介護等の実務経験のみの区分は対象から除かれました(大阪府の案内)。
第28回(令和7年10月12日)の結果は、受験者50,601人、合格者12,961人でした。合格率の推移は次のとおりです。
| 回 | 合格率 |
|---|---|
| 第24回 | 23.3% |
| 第25回 | 19.0% |
| 第26回 | 21.0% |
| 第27回 | 32.1% |
| 第28回(令和7年10月12日) | 25.6% |
試験の内容はケアマネジャー試験の解説記事で解説しています。
社会福祉士
社会福祉士は相談援助を担う国家資格です。第38回(令和8年2月1日実施)の結果は、受験者25,430人、合格者15,438人、合格率60.7%でした。受験資格の細部は経路によって異なるため、詳しくは社会福祉士の解説記事をご覧ください。
社会福祉主事任用資格
社会福祉主事任用資格は、大学または短期大学で、厚生労働大臣が指定する科目を3科目以上履修して卒業すると得られる任用資格(特定の職に就くための要件となる資格)です。専門学校は対象外で、複数の大学での科目の合算や、科目等履修生としての履修も認められていません。
資格の証明書は発行されず、成績証明書と卒業証明書で証明する扱いです(令和2年4月1日現在の厚生労働省の記載)。
訪問介護で必要な資格と身体介護・生活援助
訪問介護員等になれる資格
訪問介護員等として認められるのは、前述の介護福祉士、実務者研修、初任者研修、生活援助従事者研修(生活援助中心型のみ)です。このほか、旧介護職員基礎研修(500時間)、旧訪問介護員1級(230時間)、旧訪問介護員2級(130時間)も含まれます。
人員配置とサービス提供責任者の要件
訪問介護事業所では、訪問介護員等を常勤換算(常勤職員の勤務時間に置き換えた人数)で2.5以上配置する必要があります。サービス提供責任者(サ責)は、利用者40人に1人以上が配置されます。
資料に挙げられているサ責の要件は、介護福祉士、実務者研修修了者、旧介護職員基礎研修修了者、旧訪問介護員1級課程修了者です(初任者研修修了者は含まれていません)。
身体介護と生活援助の違い
身体介護は、排せつ・食事・入浴・移乗など、利用者の身体に直接接触して行う介助です。生活援助は、身体介護以外の掃除・洗濯・調理・買い物などを指します。
保有資格別の平均給与の統計
調査の対象と平均給与額の定義
厚生労働省の「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」(令和6年9月分)は、処遇改善加算I〜Vを取得している事業所に勤める、月給・常勤の介護職員が対象です。平均給与額は、基本給、手当、一時金(4〜9月支給分の6分の1)を合算した額で、回答は8,180事業所(有効回答率59.3%)でした。
介護職員全体の平均給与額は338,200円で、前年から13,960円増えています。平均勤続年数は9.5年、平均年齢は45.7歳です。
保有資格別の平均給与額
資格別の平均給与額(複数回答)は次のとおりです。勤続年数が異なるため、資格だけの差とは読み取れません。
| 保有資格 | 平均給与額(月) | 平均勤続年数 |
|---|---|---|
| 社会福祉士 | 397,620円 | 9.3年 |
| 介護支援専門員 | 388,080円 | 14.0年 |
| 介護福祉士 | 350,050円 | 10.4年 |
| 実務者研修(旧基礎研修・旧ヘルパー1級含む) | 327,260円 | 6.9年 |
| 初任者研修(旧ヘルパー2級含む) | 324,830円 | 8.8年 |
| 保有資格なし | 290,620円 | 5.8年 |
保有資格がある方全体の平均は339,960円(平均勤続年数9.6年)です。
数字を読むときの注意
この表は複数回答の集計です。たとえば保有資格なしの勤続年数は5.8年、介護支援専門員は14.0年と開きがあり、資格の違いだけで給与差が生じたと読み取ることはできません。
また、調査の対象は処遇改善加算を取得している事業所の常勤職員に限られます。実際の給与は、地域、事業所の種類、役職、夜勤の有無などによっても変わります。
取得費用を支える制度
教育訓練給付制度
雇用保険の教育訓練給付には、専門実践・特定一般・一般の3種類があり、給付率と上限額は下の図のとおりです。専門実践は最大3年、総額192万円までです。主な条件は次の3点です。
- 70%と80%は、令和6年10月1日以降の受講開始分が対象
- 雇用保険の加入期間は原則3年以上。初めて利用する場合は、専門実践が2年以上、特定一般・一般が1年以上
- 実務者研修が対象かどうかは講座ごとに異なる
詳しくは教育訓練給付の解説記事をご覧ください。
介護福祉士修学資金の貸付
千葉県の例では、介護福祉士修学資金として月5万円以内の貸付に加え、入学準備金20万円以内、就職準備金20万円以内、国家試験受験対策費用4万円以内が設けられています。
卒業後1年以内に登録し、県内で5年間従事すると返還が免除されます。再就職準備金は40万円以内で、2年間従事すると免除されます。額や条件は都道府県や年度によって異なるため、お住まいの地域の案内で確認してください。制度の全体像は介護福祉士修学資金の解説記事で解説しています。
費用の確認先
研修の受講料は、実施する団体や都道府県により異なるため、案内で確認してください。あわせて、給付や貸付の対象かどうかも事前に確認しておくと安心です。
目的別の考え方と注意点
目的に応じた道筋の整理
資格を選ぶ際は、「何をしたいか」から考えると整理しやすくなります。
- まず介護の現場を知りたい:無資格(認知症介護基礎研修を含む)や入門的研修
- 訪問介護の生活援助を担いたい:生活援助従事者研修
- 訪問介護を含めて幅広く働きたい:初任者研修
- 国家資格を目指したい:実務者研修を経て介護福祉士国家試験、または養成施設
- 相談業務に進みたい:介護支援専門員、社会福祉士など
これは優劣をつけるものではなく、働く場所や担う業務で必要な資格が異なることを整理したものです。
受講前に確認したい注意点
受講の前には、①研修が都道府県の指定を受けた事業者の実施か、②修了後に従事できるサービス、③免除の有無、④費用を支える制度の対象か、を確認しておくと食い違いを減らせます。
このサイトの立ち位置
かいごの窓は、特定の資格や事業者の評価・順位づけを行わず、公的資料にもとづく情報を並列に整理しています。詳しくはこのサイトの立ち位置をご覧ください。
まとめ
この記事のポイント
- 初任者研修(130時間)は訪問介護を含む全サービスで従事できる研修です。入門的研修(21時間)は通所・施設系、生活援助従事者研修(59時間)は訪問介護の生活援助中心型のみ、実務者研修(450時間)と介護福祉士は全サービスで従事できます
- 介護福祉士には4つの受験ルートがあり、第38回の合格率は70.1%、登録者数は2,004,027人(令和7年3月末)です
- ケアマネジャーは保健・医療・福祉分野の業務などに通算5年以上かつ900日以上従事した方が受験でき、第28回の合格率は25.6%です。社会福祉士の第38回の合格率は60.7%でした
- 訪問介護では、生活援助従事者研修の修了者は生活援助のみを担い、サービス提供責任者には実務者研修以上が必要です
- 保有資格別の平均給与は、勤続年数が異なるため資格だけの差とは言えません。費用面では教育訓練給付や修学資金があります
最新情報の確認について
令和8年6月公布の改正で、准介護福祉士の廃止や准介護福祉士は令和9年4月1日に廃止され、ケアマネジャーの更新制廃止は公布から1年6か月以内に政令で定める日(原則令和9年4月1日施行の法改正の一部)とされています。資格や研修の制度は3年ごとの制度改定でも変わることがあるため、申込みや受講の前に、厚生労働省、都道府県、試験実施機関の最新の案内をご確認ください。