介護福祉士国家試験は、介護福祉士として登録するために必ず合格しなければならない唯一の国家試験です。受験資格には実務経験ルート・養成施設ルート・福祉系高校ルート・EPAルートの4つがあり、どのルートを通っても最終的にはこの試験に合格する必要があります(養成施設ルートには経過措置があります)。試験は年1回・全国一斉・筆記のみで実施され、合格しただけでは介護福祉士を名乗れず、別途登録手続きが必要になる点も見落とされがちなポイントです。この記事では、公益財団法人社会福祉振興・試験センターと厚生労働省の一次情報にもとづき、受験資格・出題形式・合格率の推移・2026年から導入されたパート合格制度・合格後の登録手続きまでを解説します。
介護福祉士国家試験とは
介護福祉士国家試験は、社会福祉士及び介護福祉士法にもとづき実施される国家試験で、これに合格し登録することではじめて「介護福祉士」を名乗ることができます。介護福祉士とは何かを解説した記事で取得ルート全体の概要を紹介していますが、この記事では試験制度そのものに絞って詳しく説明します。
介護福祉士になるための唯一の国家試験
介護福祉士は名称独占資格であり、無資格でも介護の仕事自体は行えますが、「介護福祉士」という名称を用いるにはこの国家試験に合格し、都道府県ではなく試験センターを通じた登録手続きを完了する必要があります。試験は年1回、全国一斉に実施される筆記試験のみで構成されており、都道府県ごとに実施される介護支援専門員実務研修受講試験とは実施主体が異なります。
実施主体は社会福祉振興・試験センター
試験の実施主体は、厚生労働大臣の指定試験機関である公益財団法人社会福祉振興・試験センターです。試験問題の作成、実施、合格発表、合格後の登録事務までを一貫してこのセンターが担っています。受験資格の詳細や年度ごとの試験日程・手続きは、必ずセンターが毎年公表する「受験の手引」で最新情報を確認してください。
4つの受験資格ルート
介護福祉士国家試験の受験資格は、大きく分けて4つのルートに整理されています。自分がどのルートに該当するかによって、必要な実務経験年数や研修の有無が変わります。
| ルート | 主な要件 | 備考 |
|---|---|---|
| 実務経験ルート | 実務経験3年以上(従業期間3年かつ従業日数540日以上)+実務者研修修了 | 最も受験者数が多いルート |
| 養成施設ルート | 介護福祉士養成施設を卒業 | 卒業後5年間は国家試験不合格でも介護福祉士とみなす経過措置あり(選択制) |
| 福祉系高校ルート | 福祉系高校・特例高校等を卒業 | 入学年度により必要単位・経過措置が異なる |
| EPAルート | 経済連携協定にもとづく介護福祉士候補者としての要件を満たす | インドネシア・フィリピン・ベトナムが対象 |
実務経験ルート(実務経験3年以上+実務者研修修了)
実務者研修を修了していなければ、実務経験が3年以上あってもこのルートでは受験できません。もっとも多くの受験者がこのルートを利用していますが、かつては実務経験3年以上のみで受験できたところ、平成28年度(第29回)試験から介護福祉士実務者研修の修了が必須化されました。実務経験の年数だけでなく、従業期間3年以上かつ従業日数540日以上という要件も定められているため、勤務日数が少ない働き方をしている場合は年数だけで判断しないよう注意が必要です。パート・非常勤として働いている場合や、複数の事業所を掛け持ちしている場合は、在職期間の合算方法が個別のケースによって変わることがあるため、勤務先の事業所やハローワーク等を通じて実務経験証明書の発行を早めに依頼しておくと、申込み直前になって慌てずに済みます。
養成施設ルート(卒業後5年間の経過措置あり)
介護福祉士養成施設(専門学校・大学等)を卒業するルートです。平成29年度(第30回)試験から養成施設卒業者にも国家試験の受験が求められるようになりましたが、令和8年度末までに卒業する人については、卒業後5年間は国家試験に不合格でも介護福祉士として就業できる経過措置(卒業時登録との選択制)が続いています。この経過措置がいつまで延長されるかは法改正の動向によって変わるため、養成施設在学中の人は学校を通じて最新情報を確認してください。
福祉系高校ルート
福祉系高校や特例高校等で所定の科目を履修して卒業するルートです。平成20年度以前の入学者には別区分の経過措置(介護過程IIIの受講等)が設けられているなど、入学年度によって要件が異なります。該当する可能性がある人は、卒業した学校または試験センターに直接問い合わせて自分の入学年度に対応する要件を確認することをおすすめします。
EPAルート
経済連携協定(EPA)にもとづき来日したインドネシア・フィリピン・ベトナムの介護福祉士候補者が対象のルートです。一定期間の研修・就労を経て受験資格を得ます。試験問題そのものは他のルートの受験者と共通ですが、後述するふりがな対応などの配慮措置が講じられています。
試験の実施時期・申込方法・受験手数料
試験の実施時期・申込期間・受験手数料は年度によって見直されることがあるため、以下は直近で公表されている内容です。必ず受験する年度のセンター発表を確認してください。
例年1月下旬に実施
筆記試験は例年1月下旬の日曜日に全国一斉に実施されます。たとえば令和8年度第39回試験は令和9年1月31日(日)に実施予定で、申込期間は令和8年7月22日から9月2日とされていました。申込みはインターネットを通じて行います。試験地は全都道府県ではなく、年度によって設定される都道府県が異なります(第37回実績では35都道府県)。申込期間や試験日は年度ごとに変わるため、これから受験を予定している人は、試験センターが毎年公表する最新の受験の手引で該当回の日程を確認してください。
受験手数料は20,510円
令和8年度第39回試験の受験手数料は20,510円です。手数料は改定されることがあるため、申込み時点でのセンター発表額を確認してください。試験地は年度・地域によって設定される会場数が変わることがあり、必ずしも自宅から近い都道府県で受験できるとは限りません。受験票が届いたら、試験会場までの交通手段や所要時間を事前に確認しておくと安心です。
出題形式・出題科目
5肢択一のマークシート方式・125問
出題形式は五肢択一を基本とする多肢選択式で、マークシート方式により解答します。出題数は125問で、図・表・イラスト・グラフ・写真などを用いた問題が出されることもあります。
全13科目は4領域と総合問題で構成
出題科目は、人間の尊厳と自立、人間関係とコミュニケーション、社会の理解、こころとからだのしくみ、発達と老化の理解、認知症の理解、障害の理解、医療的ケア、介護の基本、コミュニケーション技術、生活支援技術、介護過程の12科目に、複数科目にまたがる知識を問う総合問題を加えた13科目で構成されます。特定の科目に偏らず幅広い知識が問われる設計です。「医療的ケア」は喀痰吸引や経管栄養など医行為に近い内容を含むため、実務経験だけでは触れる機会が少ない受験者もおり、他の科目とは別に基礎知識を体系的に学び直す必要があると言われることがあります。
実技試験は第37回から廃止され筆記試験のみに
以前は実技試験も実施されていましたが、令和6年度(2025年1月実施)の第37回試験から実技試験は廃止され、現在は筆記試験のみで合否が判定されています。受験対策を考える際は、実技の練習ではなく筆記試験の学習に集中して問題ありません。
上図は出題科目13科目を4つの領域と総合問題に分けて示したものです。総合問題は特定の1科目ではなく、複数の領域の知識を組み合わせて解く事例形式の問題として出題されます。
2026年導入のパート合格制度
3パートに分けて合否判定
令和7年度に実施された第38回試験(2026年1月実施)から、「パート合格(合格パートの受験免除)」制度が導入されました。出題科目を3つのパートに区分し、各パートごとに一定の基準を満たしているかどうかで合否を判定します。第38回試験は制度導入初年度のため、受験者は全員が全125問を受験しました。
合格パートは翌年・翌々年の受験が免除
いずれかのパートで基準を満たした場合、そのパートは「合格パート」として扱われ、翌年度・翌々年度の試験では該当パートの受験が免除されます。この選択制の運用は第39回(令和8年度)試験から本格的に始まり、第38回試験でパートごとに合格した人は、第39回受験時に「全パートを受験するか」「不合格だったパートのみ受験するか」を選ぶことができます。全科目を一度に合格できなかった場合でも、合格したパートの知識を再度ゼロから証明し直す必要がなくなる点が、この制度の主な狙いです。
合格率の推移
直近5回は70〜84%台で推移
試験センターが公表している第33回から第37回までの合格率は、次のとおりです。
| 回 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 第33回 | 84,483人 | 59,975人 | 71.0% |
| 第34回 | 83,082人 | 60,099人 | 72.3% |
| 第35回(令和4年度) | 79,151人 | 66,711人 | 84.3% |
| 第36回(令和5年度) | 74,595人 | 61,747人 | 82.8% |
| 第37回(令和6年度) | 75,387人 | 58,992人 | 78.3% |
なお、第38回(令和7年度、2026年1月実施)試験の全受験者の合格率は70.1%であったことが厚生労働省の公表資料で確認できます。合格率は年度によって70%台から84%台まで幅があり、年ごとの変動が比較的大きい試験だといえます。
直近の第38回でやや合格率が下がっていますが、これは出題内容の難化やパート合格制度の導入初年度という変化が影響した可能性があり、単年の数値だけで一喜一憂する必要はありません。
受験資格別に見ると養成施設ルートが最も低い
第37回試験の受験資格別合格率を見ると、総数は78.3%でした。ルート別では福祉系高等学校が90.3%、訪問介護員等が87.5%と高く、社会福祉施設の介護職員等は78.5%(老人福祉施設76.7%、障害者福祉施設89.3%)でした。一方、介護福祉士養成施設ルートは66.7%と、他のルートに比べて低い水準にとどまっています。養成施設ルートは在学中に実務経験を積む機会が相対的に少ないことなどが背景として考えられますが、正式な要因分析は試験センターの公表資料には記載がないため、断定的な原因は書けません。
合格発表と登録手続き
合格発表はホームページ掲載と結果通知の発送
合格発表は試験センターのホームページに合格者の受験番号が掲載されるとともに、受験者全員に結果通知が発送される形で行われます。令和8年度第39回試験では、合格発表が令和9年3月23日(火)、結果通知の発送が同年3月26日(金)に予定されています。第37回試験では令和7年3月24日に合格発表が行われ、58,992人が合格しました。
登録手数料3,320円と収入印紙9,000円が必要
試験に合格しただけでは介護福祉士を名乗ることはできず、試験センターへの登録申請が必要です。新規登録の手数料は3,320円で、これとは別に登録申請書に貼付する収入印紙9,000円、振替払込受付証明書の原本、戸籍関係書類1通の提出が必要です。手数料や必要書類は改定されることがあるため、申請時点の最新の案内を確認してください。
登録証の交付まで1か月半程度
登録申請書類を試験センターが受け付けてから、登録証(介護福祉士登録証)が交付されるまではおおむね1か月半程度が目安とされています。書類に不備があった場合は、不備が解消してから改めて約1か月程度かかります。登録証はレターパックプラスで発送されます。参考までに、試験センターの公表資料によると令和7年1月末時点で介護福祉士の登録者数は200万人を超えています。
過去問の入手方法と学習の進め方
試験センターが過去3年分の問題を無料公開
試験センターは過去3年分程度の試験問題と正答一覧をホームページ上でPDF等の形式で無料公開しています。音声読み上げ用のHTML版や、EPA介護福祉士候補者向けにすべての漢字にふりがなを付けた版も用意されています。なお、試験センターは「試験問題の内容等に関する個別の照会には一切お答えできません」としているため、出題の趣旨について問い合わせても回答は得られない点に留意してください。
出題基準・合格基準の冊子
試験センターは、出題の考え方を示す「出題基準」と、合否判定の考え方を示す「合格基準」をまとめた冊子を頒布しています。過去問と合わせてこれらの基準を確認することで、どの範囲がどの程度の深さで問われるのかを把握しやすくなります。実務者研修や養成施設のカリキュラムは、この出題基準に沿って組み立てられていることが多いため、研修で使ったテキストを見直すことも過去問演習と並行して有効な学習方法の一つです。民間の資格スクールや通信講座を利用する人もいますが、このサイトでは特定の教材・スクールをおすすめすることはせず、公的機関が公表している一次情報の活用方法として過去問と出題基準の存在を紹介するにとどめます。
EPA介護福祉士候補者への配慮措置
すべての漢字にふりがなが付いた試験問題
EPA(経済連携協定)にもとづき来日した介護福祉士候補者に対しては、日本語を母語としない受験者への配慮として、すべての漢字にふりがなが付いた試験問題が用意されています。この配慮措置は過去問としても公開されており、候補者本人だけでなく、受け入れ施設の担当者が学習支援の参考にすることもできます。
試験問題自体は他の受験者と共通
ふりがなが付く点は配慮措置ですが、出題される問題の内容そのものは実務経験ルートなど他の受験資格の受験者と共通です。日本語の読解の負担を軽減する目的の配慮であり、専門知識の難易度自体が下がるわけではない点は理解しておく必要があります。EPA介護福祉士候補者を受け入れている施設では、この点を踏まえて日本語学習と専門知識の学習の両方を計画的に進める支援体制を整えているところもあります。
受験にあたっての注意点
実務者研修の修了見込みだけでは受験できない
実務経験ルートで受験する場合、実務者研修は受験申込みの時点までに修了している必要があります(研修の実施期間や修了証明書の発行タイミングによっては、余裕をもったスケジュールで受講しないと申込みに間に合わないことがあります)。研修のカリキュラムや期間については前述の介護福祉士実務者研修についての記事で詳しく解説しています。
制度は変わりうる。必ず最新の受験の手引を確認する
介護福祉士国家試験の制度は、実務者研修の義務化やパート合格制度の導入のように、数年単位で見直しが行われてきました。養成施設ルートの経過措置についても、延長するかどうかが法改正の議論の対象になることがあります。この記事の内容は執筆時点で確認できた一次情報にもとづいていますが、受験を予定している人は、試験センターが毎年公表する最新の「受験の手引」と、厚生労働省の最新の発表を必ず確認したうえで手続きを進めてください。特に受験資格ルートの区分や必要書類は、自分が入学・就業した年度によって細かく異なることがあるため、「知り合いが受かった年の情報」をそのまま自分に当てはめないよう注意が必要です。
申込みから試験当日までのスケジュールに余裕を持つ
受験申込みはインターネットを通じて行いますが、実務経験証明書や実務者研修修了証明書など、勤務先や研修実施機関に発行を依頼する書類が必要になります。これらの書類は依頼してから手元に届くまで時間がかかることがあるため、申込期間の締切間際に慌てて依頼するのではなく、申込期間が始まる前の段階で早めに準備を進めておくことをおすすめします。
他の介護系資格・試験との違い
介護支援専門員実務研修受講試験との違い
介護福祉士国家試験としばしば混同されるのが、ケアマネジャー(介護支援専門員)になるための介護支援専門員実務研修受講試験です。介護福祉士国家試験は全国一斉に社会福祉振興・試験センターが実施するのに対し、介護支援専門員実務研修受講試験は都道府県ごとに実施主体・試験日・受験手数料が異なります。また、介護支援専門員実務研修受講試験を受けるには、原則として介護福祉士等の国家資格にもとづく実務経験が必要になるため、介護福祉士国家試験に合格し実務経験を積んだ先にケアマネジャーを目指すという段階を踏む人が多くなっています。
認定介護福祉士との違い
介護福祉士として登録したあと、さらに専門性を高めるための仕組みとして認定介護福祉士という民間の研修制度があります。認定介護福祉士は国家資格ではなく、介護福祉士としての実務経験と一定の研修修了を条件に認定される仕組みで、介護福祉士国家試験とは別の枠組みです。まずは介護福祉士国家試験に合格して登録することが前提になる点は共通しています。
まとめ
- 介護福祉士国家試験の受験資格には実務経験ルート・養成施設ルート・福祉系高校ルート・EPAルートの4つがある
- 試験は5肢択一・125問のマークシート方式で、実技試験は第37回から廃止され筆記試験のみになっている
- 直近5回の合格率は70〜84%台で推移しており、第38回(令和7年度)は70.1%だった
- 令和7年度の第38回試験(2026年1月実施)からパート合格制度が導入され、合格したパートは翌年・翌々年の受験が免除される
- 合格後は登録手数料3,320円等を納めて登録申請を行い、登録証の交付まで1か月半程度かかる
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