認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、要支援2以上の認定を受け、認知症の診断がある高齢者が、5〜9人ほどの少人数の「ユニット」で家庭的な環境の中、介護職員の支援を受けながら共同生活を送る地域密着型サービス(お住まいの市区町村の住民が中心となって利用するサービス)です。この記事では、入居条件、人員配置基準、費用の内訳、特別養護老人ホームなど他サービスとの違い、直近の介護報酬改定のポイントまで、厚生労働省の資料にもとづいて解説します。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)とは
認知症対応型共同生活介護は、介護保険法にもとづく地域密着型サービスの一類型です。厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会の資料では、「認知症(急性を除く)の高齢者に対して、共同生活住居で、家庭的な環境と地域住民との交流の下、入浴・排せつ・食事等の介護などの日常生活上の世話と機能訓練を行い、能力に応じ自立した日常生活を営むようにするもの」と定義されています。いわゆる「グループホーム」という呼び方が広く使われていますが、正式な介護保険サービス名は認知症対応型共同生活介護です。
制度上の定義と根拠法
根拠となる法令は、介護保険法第8条第20項(認知症対応型共同生活介護)・第8条の2第15項(介護予防認知症対応型共同生活介護)です。具体的な人員・設備・運営の基準は、「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第34号)第89条以下に定められています。地域密着型サービスは、住み慣れた地域で生活を継続できるよう、原則としてその市区町村の住民を対象に、市町村長が指定・監督を行う仕組みが特徴です。
対象となる認知症の状態
対象となるのは、医師の診断によって認知症(急性の状態を除く)があると確認された人です。急性期で症状が不安定な状態は対象から除かれており、症状が比較的落ち着いており、共同生活の中で家庭的な環境や役割を持ちながら過ごせる状態にあることが前提とされています。具体的な入居可否は、後述する要介護度の要件とあわせて、各事業所が本人の状態を確認したうえで判断します。
入居条件
認知症対応型共同生活介護に入居するには、大きく分けて「要介護度・認知症診断」と「住所地」の2つの要件を満たす必要があります。
要介護度・認知症診断の要件
対象となるのは、要介護認定で要支援2から要介護5までのいずれかの認定を受け、かつ医師から認知症の診断を受けている人です。要支援1の認定を受けている人は、この要件を満たさないため利用できません。要支援2の人が利用する場合は「介護予防認知症対応型共同生活介護」という予防給付のサービス区分になります。
地域密着型サービスならではの住所地要件
認知症対応型共同生活介護は地域密着型サービスに分類されており、指定・監督を行うのは都道府県ではなく市町村長です。地域密着型サービスの指定の効力は、原則としてその指定を行った市町村の被保険者にのみ及びます。つまり、住民票がある市区町村内(隣接市区町村等の例外的な広域利用が認められる場合を除く)の事業所を利用するのが原則で、他の市区町村に住民票を置いたまま別の市区町村のグループホームに入居することは、原則としてできません。この点は、後述する「注意点」の章で詳しく解説します。
定員・人員配置基準
認知症対応型共同生活介護は、「ユニット」と呼ばれる少人数の生活単位を基本とする点が大きな特徴です。
1ユニットの定員とユニット数の実態
1つのユニットの入居定員は5人以上9人以下と定められています。1つの事業所が持てるユニット数は、令和3年度の介護報酬改定で「1以上3以下」に弾力化されました(改定前は原則2ユニットまで)。厚生労働省の「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」等をもとにした資料によれば、令和3年10月時点でのユニット数の内訳は、2ユニットの事業所が62.8%と最も多く、1ユニットが31.1%、3ユニットが5.9%となっており、大半の事業所が1〜2ユニット、定員にして5〜18人程度の小規模な運営を行っている実態がうかがえます。
| ユニット数 | 事業所の割合 |
|---|---|
| 1ユニット | 31.1% |
| 2ユニット | 62.8% |
| 3ユニット | 5.9% |
職員の配置基準(日中・夜間)
介護従業者の配置基準は、日中は利用者3人に対して常勤換算で1人以上と定められています。夜間・深夜の時間帯は、ユニットごとに1人以上の従業者を配置することが原則ですが、3ユニットの事業所で一定の要件を満たす場合には、夜勤者を2人以上配置する体制に見直せる緩和規定も設けられています。
管理者・計画作成担当者の要件
管理者は、3年以上認知症の介護に従事した経験があり、厚生労働大臣が定める研修を修了した者が、事業所ごとに常勤専従で配置されます。また、入居者ごとの認知症対応型共同生活介護計画を作成する「計画作成担当者」を事業所ごとに1人以上(ユニットが複数ある場合はユニットごとに1人)配置する必要があり、そのうち最低1人は介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を持つ者でなければなりません。
サービス内容
認知症対応型共同生活介護では、入浴・排せつ・食事などの介護に加え、機能訓練や認知症の特性に配慮したケアが行われます。
日常生活上の介護
入浴、排せつ、食事等の介護を含む日常生活上の世話が中心です。あわせて、洗濯・掃除等の家事、生活相談、健康管理なども行われます。共同生活住居という家庭的な環境の中で、入居者が食事の準備や掃除の一部に関わるなど、役割を持って過ごせるよう配慮されている点が、大規模施設との違いとして挙げられます。
機能訓練と認知症ケアの特徴
能力に応じて自立した日常生活を営めるよう、機能訓練が行われます。認知症の症状は本人の混乱や不安につながりやすいため、少人数の固定した顔ぶれの中で、なじみの人間関係や生活のリズムを保ちながら過ごせるようにすることが、このサービスの大きな特徴です。認知症の方の施設選びの考え方については認知症の方の施設選びに関する記事でも解説しています。
費用の内訳と月額の目安
認知症対応型共同生活介護の費用は、大きく「介護保険の自己負担額」と「家賃・食費等の日常生活費」の2つで構成されます。
介護保険の自己負担額(要介護度別)
介護保険からの給付を受けるサービスのため、費用の一部(原則1割、所得に応じて2割・3割)が利用者の自己負担となります。厚生労働省の令和6年度介護報酬改定に関する資料によれば、1ユニットの事業所を利用した場合の1日あたりの単位数は、要支援2で761単位、要介護1で765単位、要介護2で801単位、要介護3で824単位、要介護4で841単位、要介護5で859単位です(改定前はそれぞれ760・764・800・823・840・858単位で、改定により1単位程度引き上げられました)。2ユニット以上の事業所では、これよりやや低い単位数が設定されています。
出典:厚生労働省 令和6年度介護報酬改定に関する資料をもとに作成(1ユニットの事業所・1割負担の場合の単位数、グラフはゼロを起点に表示。2ユニット以上の事業所はやや低い単位数が設定されています)。要支援2(761単位)と要介護5(859単位)の差は約13%です。
家賃・食費・光熱水費などの日常生活費
介護保険の自己負担額とは別に、家賃・食費・光熱水費・管理費などの日常生活費がかかります。これらは介護保険の給付対象外で、事業所ごとに金額が異なります。厚生労働省の介護サービス情報公表システムに掲載されている個別事業所の公表事例では、家賃が月額52,500〜54,000円、食費が1日あたり1,000〜1,594円、光熱水費が月額15,810〜18,900円、管理費が月額0〜21,000円という例が示されています。これらはあくまで公表されている個別事業所の一例であり、全国一律の相場を示すものではない点に注意してください(詳しくは後述の「注意点」の章で解説します)。
| 項目 | 金額の目安(公表事例) |
|---|---|
| 家賃(月額) | 52,500〜54,000円 |
| 食費(1日) | 1,000〜1,594円 |
| 光熱水費(月額) | 15,810〜18,900円 |
| 管理費(月額) | 0〜21,000円 |
入居一時金・敷金の有無
入居時にまとまった一時金が必要かどうかは事業所によって異なります。前述の公表事例では、敷金が5万〜10万円、保証金(入居一時金に相当するもの)が0〜10万円という例が示されており、一時金を設定していない事業所も見られます。契約前には、重要事項説明書等で敷金・保証金の有無や返還条件を必ず確認することが重要です。
| 項目 | 金額の目安(公表事例) |
|---|---|
| 敷金 | 5万〜10万円 |
| 保証金(入居一時金に相当) | 0〜10万円 |
入居までの流れ・相談窓口
認知症対応型共同生活介護への入居を検討する際は、まず地域の相談窓口に相談するのが一般的な流れです。
地域包括支援センターとケアマネジャーの役割
入居を検討し始めた段階では、まず地域包括支援センターや、要介護認定を受けている場合は担当のケアマネジャーに相談するとよいでしょう。地域包括支援センターは、地域の事業所の情報提供や、要介護認定の手続き、他の介護サービスとの比較検討など、幅広い相談に対応する窓口です。
申込みから入居までの一般的な流れ
入居までは、おおむね次のような流れをたどります。地域密着型サービスであるため、まずは住民票のある市区町村内の事業所を確認することが出発点になります。
- 要介護認定の申請・認定結果の確認
- 事業所への問い合わせ・見学
- 申込み
- 事業所による本人・家族との面談やアセスメント
- 契約
- 入居
他の介護サービスとの違い
認知症対応型共同生活介護と混同されやすい介護サービスとして、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)、認知症対応型通所介護、地域密着型特別養護老人ホームが挙げられます。それぞれの対象者・自己負担の目安を比較します。
| サービス | 対象 | 自己負担の目安(1日・1割) |
|---|---|---|
| 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 要支援2〜要介護5・認知症の診断あり | 761〜859単位 |
| 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) | 原則要介護3〜5 | 589〜955円 |
| 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等) | 要支援1〜要介護5 | 183〜813円 |
| 認知症対応型通所介護 | 要支援1〜要介護5・認知症の診断あり(通い) | 861〜1,427円 |
| 地域密着型特別養護老人ホーム(定員30人未満) | 原則要介護3〜5 | 600〜971円 |
※認知症対応型共同生活介護のみ単位表記です。地域区分により1単位あたりの円換算額が異なるため、他サービスの円表示とは単純比較できません。
特別養護老人ホームとの違い
特別養護老人ホームは原則要介護3以上の人が対象で、終身にわたって利用できる大規模な施設です。1日あたりの自己負担(1割目安)は589〜955円とされています。一方、認知症対応型共同生活介護は要支援2から利用でき、5〜9人の少人数ユニットでの共同生活が中心という点が大きな違いです。認知症の診断があることが前提となる点も、特別養護老人ホームとの違いとして挙げられます。
有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)との違い
特定施設入居者生活介護は、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などで提供される介護サービスで、要支援1から要介護5まで幅広い層が対象です。1日あたりの自己負担(1割目安)は183〜813円とされています。認知症の診断は入居条件として必須ではなく、対象となる要介護度の幅も広い点が、認知症対応型共同生活介護との違いです。
認知症対応型通所介護との違い
認知症対応型通所介護は、要支援1から要介護5までの認知症の診断がある人を対象とした「通い」のサービスで、1日あたりの自己負担(1割目安)は861〜1,427円とされています。自宅で生活しながら日中だけ利用する点が、共同生活を送る認知症対応型共同生活介護との最も大きな違いです。
地域密着型特別養護老人ホームとの違い
地域密着型特別養護老人ホームは、定員30人未満の小規模な特別養護老人ホームで、原則要介護3以上の人が対象です。1日あたりの自己負担(1割目安)は600〜971円とされています。認知症の診断は入居の必須条件ではなく、5〜9人のユニットで共同生活を送る認知症対応型共同生活介護とは異なり、施設全体として生活の場を提供する点が特徴です。市町村が指定・監督を行う地域密着型サービスである点は認知症対応型共同生活介護と共通しています。
最近の制度改定
介護保険制度は3年ごとに見直しが行われており、認知症対応型共同生活介護の基準や報酬もそのたびに改定されています。
令和6年度介護報酬改定のポイント
令和6年度の介護報酬改定で見直された主な項目は、次のとおりです。
- 基本報酬を1単位程度引き上げ
- 「協力医療機関連携加算」を新設(月100単位または月40単位)。協力医療機関との連携体制を評価する加算
- 「退所時情報提供加算」を新設(1回250単位)。退所時に医療機関等へ情報提供を行った場合の加算
- 「高齢者施設等感染対策向上加算」を新設。感染症対策の取り組みを評価する加算
- 医療連携体制加算・夜間支援体制加算の見直し
令和3年度改定からの変化
さかのぼって令和3年度の介護報酬改定では、以下のような見直しが行われました。
- 看取り介護加算に、死亡日以前31日から45日までの区分を新設。医療ニーズへの対応や看取りへの対応を強化
- 緊急時の宿泊ニーズへの対応を評価する仕組みを整備
- 1事業所あたりのユニット数上限を「1以上3以下」に弾力化(改定前は原則2ユニットまで)
- 夜勤職員体制の見直し
全国の事業所数・利用者の実態
認知症対応型共同生活介護は、全国的にどの程度普及しているサービスなのでしょうか。
事業所数の推移
厚生労働省の各種統計から、事業所数や給付費の規模を整理すると次のとおりです。数値を参照する際は、どの調査・どの時点のものかを出典とあわせて確認することが大切です。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 事業所数(令和6年10月1日時点) | 14,341事業所 |
| 前年からの増加数・増加率 | +79事業所(0.6%) |
| 請求事業所数(介護給付費実態統計、令和4〜5年時点) | おおむね14,079〜14,328事業所 |
| 介護保険給付費全体に占める費用額の割合(令和3年度) | 6.8% |
| 費用額(令和3年度) | 7,340億円 |
| 収支差率(経営実態調査、令和3年度決算) | 4.9% |
出典:厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」等(事業所数・増加率)、介護給付費実態統計(請求事業所数)、社会保障審議会介護給付費分科会資料等(給付費割合・費用額・収支差率)。
利用者の要介護度分布
厚生労働省の資料によれば、令和4年4月審査分のサービス受給者数は21.4万人、平均要介護度は2.69です。要介護度別の内訳は、要支援2が0.6%、要介護1が21.5%、要介護2が25.0%、要介護3が25.3%、要介護4が16.7%、要介護5が11.0%となっており、要介護1〜3の利用者が全体の7割以上を占めています。比較的自立度の高い認知症の人が多く利用しているサービスであることがうかがえます。
注意点・よくある誤解
認知症対応型共同生活介護を検討する際、誤解しやすいポイントを2つ整理します。
「相場」と「公表事例」の違いに注意
前述の家賃・食費等の金額は、厚生労働省の介護サービス情報公表システムに掲載されている個別事業所の公表事例であり、全国の事業所を網羅した「相場」の統計データではありません。地域や事業所の設備、サービス内容によって金額は大きく異なります。検討する際は、必ず個々の事業所の重要事項説明書や、お住まいの地域の介護サービス情報公表システムで最新の公表内容を確認してください。
住民票の異動に関する注意点
地域密着型サービスである認知症対応型共同生活介護は、原則として住民票のある市区町村内の事業所を利用するサービスです。京都市の資料では、他の市区町村のグループホームを利用する目的だけで住民票を異動することは、地域密着型サービスの趣旨(住み慣れた地域での生活の継続)に反する行為として注意喚起されています。他の市区町村への入居を検討する場合は、事前に双方の市区町村の窓口に相談することが必要です。
まとめ
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、要支援2以上で認知症の診断がある人が対象の地域密着型サービスで、1ユニット5〜9人の少人数体制が特徴
- 職員は日中利用者3人に1人以上、夜間はユニットごとに1人以上を基本に配置され、管理者・計画作成担当者にも専門的な要件が定められている
- 介護保険の自己負担は要介護度に応じて1日761〜859単位(1ユニット・令和6年度改定後)で、これとは別に家賃・食費等の日常生活費がかかる
- 家賃・食費等の金額は事業所ごとの公表事例であり、全国一律の相場ではない。契約前に個々の事業所の情報を必ず確認する
- 地域密着型サービスのため、原則として住民票のある市区町村内の事業所が利用対象になる
- 入居を具体的に検討する場合は、まず地域包括支援センターや担当のケアマネジャーに相談することから始めましょう
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