入院中でも要介護認定は申請できます。申請先は住民票のある市区町村で、本人・家族のほか、地域包括支援センターなどに代行を頼めます。ただし入院直後に急いで出せばよいとは限らず、ひたちなか市や神戸市は、状態が安定し退院の見通しがついた頃の申請を案内しています。この記事では、時期・認定調査・主治医意見書・結果までの流れを、厚生労働省や自治体の公開情報から整理します。
- 申請先と代行の仕組み(「申請先・申請できる人・代行の仕組み」)
- 申請の時期、病院での認定調査、主治医意見書(「申請のタイミング:退院の見通しと自治体の運用例」〜「主治医意見書:入院中は誰に依頼されるのか」)
- 結果が出るまでの期間と、結果前のサービス利用(「結果が出るまでの期間・申請日へのさかのぼり・有効期間」・「入院中の介護サービスと医療保険、結果前の暫定ケアプラン」)
入院中でも要介護認定は申請できる
はじめに、入院中の申請が可能かどうかと、対象になる人・必要なものを確認します。新規申請と区分変更の違いも、ここで押さえておきます。
できる根拠と、今出すべきかの違い
入院していることだけを理由に、要介護認定の申請ができなくなることはありません。能代市、中野区、芦屋市などの自治体が、入院中でも申請できる旨を案内しています。
ただし「申請できること」と「今出すべきかどうか」は別の問題です。いつ出すかについては自治体の案内に幅があり、「申請のタイミング:退院の見通しと自治体の運用例」で取り上げます。
対象になる人と必要なもの
申請の対象は、介護保険の被保険者です。65歳以上の第1号被保険者と、40〜64歳の第2号被保険者で、申請時に添えるものが異なります(厚生労働省の介護サービス情報公表システム、名古屋市の案内による)。
| 区分 | 年齢 | 申請時に添えるもの |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 65歳以上 | 介護保険被保険者証 |
| 第2号被保険者 | 40〜64歳 | 医療保険の被保険者証 |
40〜64歳の方は、16の特定疾病によって介護が必要になった場合に限られます(名古屋市の案内による)。被保険者証の所在は、家族で早めに確認しておくとよいでしょう。
新規申請と区分変更の違い
まだ要介護認定を受けていない人が出すのが新規申請です。すでに認定を受けている人が、有効期間の途中で心身の状態が著しく変化したときに出すのが区分変更申請です(埼玉県、名古屋市、船橋市の案内による)。
| 項目 | 新規申請 | 区分変更申請 |
|---|---|---|
| 対象 | まだ認定を受けていない人 | すでに認定を受けていて、有効期間中に心身の状態が著しく変化した人 |
| 入院して状態が変わった場合 | 未認定であれば新規申請 | 認定済みであれば区分変更 |
すでに認定を受けている人が入院して状態が変わった場合は区分変更に当たり、未認定であれば新規申請です。区分変更の流れは区分変更申請の解説記事で確認できます。
よくある誤解
入院中の申請については、次のような点は誤解されやすい部分です。
- 「退院してからでないと申請できない」:入院中でも申請できると、複数の自治体が案内しています。
- 「入院中は病院が手続きを全部してくれる」:病院の相談窓口が助言してくれる場合はありますが、申請書の提出は本人・家族、または代行できる事業者などが行う手続きです。
- 「申請すれば必ず要介護になる」:認定の結果は、認定調査と主治医意見書をもとに審査会などを経て判定され、非該当となる場合もあります。結果が出るまでの間の費用の考え方は「入院中の介護サービスと医療保険、結果前の暫定ケアプラン」で説明します。
申請先・申請できる人・代行の仕組み
申請書をどこに出し、誰が出せるのかを整理します。入院中で本人が動けない場合の代行も含みます。
申請先は住民票のある市区町村
申請先は、被保険者が住民票を置いている市区町村の介護保険担当窓口です(厚生労働省の介護サービス情報公表システムによる)。他市の病院に入院している場合は、他市の病院に入院している場合を参照してください。申請先は住民票のある市区町村が基本とされますが、念のため、入院先と住民票の両方の窓口に電話で確認すると安心です。提出方法や必要書類は窓口に確認してください。
本人・家族のほか、代行できる人
申請は本人や家族が行えるほか、介護保険法第27条第1項により、指定居宅介護支援事業者、介護保険施設、地域包括支援センターに申請の代行を頼めます(厚生労働省 法令データベースによる)。能代市は、本人・家族のほか、ケアマネジャー、施設職員、地域包括支援センターによる代行も可としています。提出方法や必要書類は、窓口や代行の依頼先に確認してください。
病院の相談室や地域包括支援センターへの相談
入院中の申請は、相談先が複数あります。能代市は、急性期で調査が遅れそうな場合などに、病院の医療相談室や地域包括支援センターへの相談を案内しています。
中野区も、入院前後や手術前後、急性期のリハビリ中などは、ケアマネジャー(新規の場合は地域包括支援センター)に申請時期を相談するよう案内しています。
申請のタイミング:退院の見通しと自治体の運用例
入院中の申請は、出せるかどうかよりも、いつ出すかが論点になります。自治体の案内と、函南町の運用例を取り上げます。
入院直後より、状態が安定し退院の見通しがついた頃
ひたちなか市や神戸市などは、入院直後ではなく、病状が安定して退院の見通しがついた頃の申請を案内しています。
一方で、神戸市は、病状が急変して短期間で亡くなる可能性がある場合には、窓口で病状を説明して申請できるとしています。当てはまりそうな場合は、状況を窓口に伝えてください。
自治体の運用例:函南町の「入院状況確認票」
函南町の例を取り上げます。これは1つの町の運用であり、すべての自治体が同じではありません。函南町では、入院中の申請の前に「入院状況確認票」を提出します。次の3点を満たさないと、受付できないことがあるとされています。
- 治療が終わったか、リハビリの目標に近づいて、退院予定がおおむね決まっていること
- 退院予定日が申請日からおおむね1か月以内であること
- 退院後の方向(施設に入るのか、在宅でサービスを使うのか)がおおむね決まっていること
同町は、急性期の病院での調査は状態が重く出やすく、設備の整った環境では軽く出やすいことがあるとして、退院後の調査を勧めています。退院を待って申請する場合は、審査会を優先的に開く配慮があるとのことです。お住まいの自治体の条件は、窓口で確認してください。
申請前に確認しておきたいこと
時期を決めるうえで、次の3点を家族で整理しておくと、窓口や病院への相談が進めやすくなります。
- 主治医から退院の見通しをどう聞いているか
- 退院後は自宅に戻るのか、施設に移るのか
- 退院後すぐにサービスが必要になりそうか
退院後すぐにサービスが必要になりそうな場合は、結果が出るまでの日数(「結果が出るまでの期間・申請日へのさかのぼり・有効期間」)も踏まえて、早めに窓口や地域包括支援センターへ相談しておきましょう。急いで出すか、待って出すかは、病状とあわせて医師や窓口と相談して決めてください。
病院で受ける認定調査の流れ
入院中の認定調査は、病院で行われることがあります。運用の違い、受けられないケース、家族の備えを整理します。
病院での認定調査は可能
認定調査は、市区町村の調査員などが本人と面会して心身の状況を確認する調査です。中野区は、医療機関での認定調査も可能としています。
日程や所要時間は自治体ごとに異なります。調査項目と判断基準自体は全国一律です(昭島市の案内による)。
| 自治体 | 時間帯 | 所要時間 | 調査項目数 |
|---|---|---|---|
| 能代市 | 平日の9時〜15時半 | 約60分 | 74項目 |
| 昭島市 | — | 約30〜60分 | — |
| 神戸市 | 平日の9〜17時ごろで日程調整 | — | — |
調査を受けられないことがあるケース
中野区は、病状が不安定で、3〜6か月以上続く介助量を測れないような場合に、調査を受けられないことがあるとしています。例として挙げているのは次のとおりです。
- 入院前後
- 手術前後
- 急性期のリハビリ中
- 退院の見通しが立っていない場合
- ICU
- 感染性疾患で排菌中の場合
当日の様子と家族の準備
入院中は、日頃の様子を知る病棟の看護師が調査員に説明することが多いとされます(中野区の案内による)。昭島市も、入院中は看護師や担当ケアマネジャーから聞き取る場合があるとしています。看護師や家族が同席できるかどうかは、医療機関が判断します。
病院での調査は、自宅での調査と結果が異なることがあると中野区は述べています。また函南町は、設備の整った環境では軽く出やすいことがあるとしています(函南町の運用例)。
家族は、自宅で本人が困っていたことを日頃からメモしておき、調査員に伝える機会があれば伝えましょう。メモに入れる項目の例は次のとおりです。
- 入浴
- トイレ
- 服薬
- 物忘れ
主治医意見書:入院中は誰に依頼されるのか
主治医意見書は認定の判定に使われる書類で、入院中は誰に依頼されるのかが疑問になりやすい点です。自治体の案内の範囲で整理します。
主治医意見書とは
主治医意見書は、本人の病気やけがの状態、心身の状況について主治医が記す書類です。介護保険法第27条第3項により、市町村が申請者の主治医の意見を求めることになっています(厚生労働省の要介護認定の概要による)。認定調査の結果と合わせて、審査会の判定に使われます。仕組みの詳細は主治医意見書の解説記事にまとめています。
中野区は、意見書は区が医療機関に依頼するもので、本人や家族が医師から受け取って提出するものではないとしています。ひたちなか市は、意見書の作成に費用はかからないとしています。
入院中は誰が書くのか
神戸市では、申請書に記載した主治医に対して市が依頼するとしています。中野区は、申請の前後1〜2週間程度の間に受診して、医師に意見書の件を伝えておくとよいとしています。断られた場合は別の医師に頼むこと、主治医がいない場合は医師会に相談することも案内されています。
入院中に誰が書くかは、窓口で確認するのが確実です。申請の際に、次のように尋ねてみてください。
「入院中ですが、主治医意見書は誰に依頼されますか。申請書には、どの医師を主治医として書けばよいですか。」
意見書が遅れると結果も遅れる
名古屋市は、長く受診していない医師には意見書を書けないことがあり、その場合は結果が遅れる可能性があるとしています。ひたちなか市も、意見書の遅れで30日を超えることがあるとしています。
結果が出るまでの期間・申請日へのさかのぼり・有効期間
申請してから結果が出るまでの日数、認定の効力がいつから生じるか、有効期間の長さを整理します。
結果は原則として申請日から30日以内
介護保険法第27条第11項は、認定の処分を原則として申請日から30日以内に行うと定めています。特別な理由があるときは延期でき、その場合は理由と見込み時期が通知されます。30日を過ぎても処分がなければ、申請者は却下とみなすことができるとされています(法令データベースによる)。
神戸市は、結果まで約30日とし、これを超える見込みなら「延期通知書」を郵送すると案内しています。ひたちなか市は、発熱中や骨折直後など状態が不安定な場合や意見書の遅れで、30日を超えることがあるとしています。
認定の効力は申請日にさかのぼる
介護保険法第27条第8項により、要介護認定の効力は申請日にさかのぼって生じます(法令データベースによる)。埼玉県など複数の自治体も同じ趣旨で案内しています。結果が出る前でも、申請日以降に使ったサービスが、認定後に保険給付の対象となり得るということです。ただし認定されることが前提で、非該当となった場合の扱いは「入院中の介護サービスと医療保険、結果前の暫定ケアプラン」で説明します。
有効期間の考え方
有効期間は介護保険法第28条に基づき、申請の種類によって次のように定められています(広島市の案内による)。
| 申請の種類 | 原則 | 範囲 |
|---|---|---|
| 新規申請・区分変更申請 | 6か月 | 3〜12か月 |
| 更新申請 | 12か月 | 3〜48か月 |
| 区分が変わる更新 | — | 3〜36か月 |
令和3年4月から、同じ区分での更新の上限は48か月になりました(広島市の案内による)。
船橋市は、新規・区分変更の有効期間は申請日が開始日になるとしています。例として、4月15日に申請すると、4月15日から10月31日までという形です。更新申請は満了日の60日前から出せます(埼玉県、名古屋市の案内による)。入院中に認定を受けた方は、有効期間の満了時期をメモしておき、更新の時期を逃さないようにしましょう。
入院中の介護サービスと医療保険、結果前の暫定ケアプラン
入院中に使えるのは医療保険で、在宅の介護サービスとは扱いが分かれます。結果が出る前にサービスを使いたい場合の暫定ケアプランも取り上げます。
入院中は医療保険、在宅の介護サービスは使えない
入院中は医療保険が適用され、在宅の介護サービスは使えません。医療保険が適用される病院からの外泊中も在宅の扱いにはならず、在宅サービスは利用できません。自費であれば可能です(芦屋市の案内による)。
入院中に申請する場合は、認定の手続きを入院中に進め、入院中は医療保険が適用され、在宅の介護サービスは使えません。ただし函南町のように、退院後の調査を勧める自治体もあります(「申請のタイミング:退院の見通しと自治体の運用例」)。退院予定日が分かったら、サービスの開始日から逆算して、窓口やケアマネジャーに相談しておきましょう。
結果が出る前のサービス利用と暫定ケアプラン
中野区は、認定が申請日にさかのぼるため、結果が出る前でもサービスを使えるとしています。ただし、結果が非該当だった場合、使った分の費用は全額自己負担になります。結果が出る前に使うときも、ケアプランが必要です。地域包括支援センターか居宅介護支援事業者に相談し、暫定で作ることになります。詳しくは暫定ケアプランの解説記事をご覧ください。
能代市やひたちなか市は、認定前に使った分も、認定後の区分の支給限度額を超えた部分は全額自己負担になるとしています。結果前に使う量は、認定後の区分によっては自己負担が生じることを念頭に、窓口やケアマネジャーと相談して決めてください。
退院時の病院とケアマネジャーの連携
令和6年度の介護報酬改定では、入院時情報連携加算や退院・退所加算について様式例が示されました(厚生労働省の案内による)。家族としては、次の2点を押さえておきましょう。
- 担当のケアマネジャーがいる場合は、入院したことを早めに伝える
- 担当がいない場合は、地域包括支援センターに相談する
他市の病院に入院した場合・退院後に施設へ移る場合
入院先が住民票のある市区町村と別の場合や、退院後に施設へ入る予定がある場合に、申請先や住所の扱いで迷うことがあります。住所地特例の対象を手がかりに整理します。
他市の病院に入院している場合
申請先は、住民票のある市区町村が基本です。住所地特例は、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などが対象で、病院は対象の一覧に含まれていません(柏市、新潟県の案内による)。
他市の病院に入院しているときは、念のため、入院先の市区町村と住民票のある市区町村の両方の窓口に電話で確認してください。
退院後に施設へ移る場合の注意
退院後に施設へ入る予定の場合は、その施設が住所地特例の対象かどうかが関わります。対象は、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などです(柏市、新潟県の案内による)。対象かどうかは、施設や自治体に確認してください。
結果に納得できないとき:審査請求
認定の結果に納得できない場合の不服申立ての窓口と期限、審査会の役割を整理します。
不服申立ての窓口と期限
認定の結果に納得できない場合は、介護保険法第183条に基づき、都道府県の介護保険審査会に審査請求ができます。期限は、処分があったことを知った日の翌日から3か月以内です(東京都、和歌山県の案内による)。
東京都は、請求書のFAXやメールでの提出は受け付けないとしています。和歌山県は、代理人が請求する場合に委任状が必要だと案内しています。詳細は、お住まいの都道府県の案内で確認してください。
審査会が判断すること
審査請求を受けた審査会は、処分の取消しを判断するもので、審査会自身が認定をやり直すわけではありません。
状態が変わったと感じる場合には、審査請求とは別に、区分変更申請という手続きもあります。
手続き前に確認しておきたいこと
結果通知書が届いたら、認定区分、有効期間、認定日の記載を確認し、通知書の日付や受け取った日をメモしておきましょう。
どの手続きが適しているかは、状況によって異なります。まずは市区町村の窓口、地域包括支援センター、担当のケアマネジャーに、結果の理由や選択肢を相談してみてください。
まとめ:入院中の申請で押さえておきたい点
ここまでの要点を整理し、今日から動ける最初の一歩を示します。
要点の整理
- 入院中でも申請でき、申請先は住民票のある市区町村です。代行も頼めます。
- ひたちなか市や神戸市などは、状態が安定し退院の見通しがついた頃の申請を案内しています。条件や運用は自治体で異なります。
- 結果は原則として申請日から30日以内に出され、効力は申請日にさかのぼります。
- 結果前にサービスを使うときは暫定ケアプランが必要で、非該当なら全額自己負担です。
- 結果に納得できない場合は、都道府県の介護保険審査会へ審査請求ができます(「結果に納得できないとき:審査請求」)。
今日やること
- 病院の医療相談室へ電話し、「要介護認定の申請を考えている。時期と主治医意見書の依頼先を教えてほしい」と伝える
- 介護保険の被保険者証を探す
制度改定について
令和9年度改定に向けた議論が、厚生労働省の分科会で進んでいます。制度の内容は今後変わる可能性があります。最新の情報は、必ずお住まいの市区町村や厚生労働省の公表資料で確認してください。当サイトの編集方針はこのサイトの立ち位置をご覧ください。