離れて暮らす親が毎日きちんと食べているのか、電話で「大丈夫」と言われても確かめようがない——そんなときに検討したいのが配食サービスです。これは、自分で食事を用意することが難しくなった高齢者の自宅へ、栄養に配慮した調理済みの食事を1食分ずつ届ける仕組みです。介護保険の全国一律の保険給付に「配食」というサービス種別はなく、多くは市区町村が地域支援事業(総合事業)や独自の高齢者福祉施策として実施しています。制度上の位置づけ、利用条件、費用の目安、申し込みの流れを公的資料に基づいて整理します。
高齢者の配食サービスとは何か
配食サービスは在宅生活を支える福祉施策です。どんな人が使えるのか、民間の弁当宅配と何が違うのかを押さえます。
どんな人が対象になるのか
市区町村の配食サービスの対象は、おおむね次のような人です。
- 加齢や病気で、買い物や調理が難しくなった高齢者
- ひとり暮らしや高齢者のみの世帯で、食事を用意してくれる同居家族がいない人
- 要支援・要介護の認定を受け、生活支援として食事の確保が必要な人
- 安否の確認を定期的に行う必要があると市区町村が判断した人
「高齢だから誰でも使える」わけではなく、年齢に加えて「世帯の状況」や「調理が困難であること」を条件にしている自治体が見られます。基準は自治体ごとに異なるため、最終的には親の住民登録地の市区町村窓口で確認します。
配食は「見守り」とセットで設計されている
自治体の配食を民間の弁当宅配と分ける最大の違いが、安否確認です。名古屋市や深谷市のように、玄関先に置くのではなく本人に手渡しすることを要件としている自治体があります。確認できた取り決めは次のとおりです。
- 名古屋市:指定配食事業者は必ず手渡しで届け、その際に「特にお変わりありませんか?」などと声をかけて確認することが必須要件です。
- 深谷市(埼玉県):必ず本人が直接受け取ることとし、受け取れない場合は緊急連絡先へ連絡します。
- 大阪市:配達を通じて安否を確認し、再配達時にも確認できない場合は親族等の緊急連絡先へ、異常があれば関係機関へ連絡します。
つまり配食サービスは、食事の確保と同時に「今日もこの人は元気だった」という情報が残る仕組みでもあり、遠方の家族にとっては週に何度か誰かが顔を見てくれる点に意味があります。安否確認そのものを目的とした仕組みについては高齢者見守りサービスの記事で整理していますので、あわせて検討してください。
よくある誤解:介護保険の一般的なサービスではない
「介護保険の認定を受けたから配食も使えるはず」と考えがちですが、正確ではありません。訪問介護や通所介護のように全国共通の枠組みで使える保険給付のメニューに、配食は含まれないからです。配食は市区町村が地域支援事業または独自の福祉施策として実施するもので、制度があるか、いくらで使えるかは住んでいる市区町村によって変わります。ただし例外的に、介護保険のなかに独自のサービスを作って配食を行う自治体もあります(次章)。
平成8年の通知が示した定義
配食サービスの公的な定義は、厚生省(当時)が平成8年5月13日に出した「民間事業者による在宅配食サービスのガイドラインについて」(老振第46号)に残っています。
在宅配食サービスは、加齢に伴う心身の機能の低下等により、自ら食事を用意するのに支障のある特定多数の高齢者に対して、その特性に応じ、かつ、栄養のバランスのとれた調理済の食事を、安全かつ確実にその居宅へ提供することにより、高齢者の自立した生活を支援する
対象は「自ら食事を用意するのに支障のある高齢者」、目的は自立した生活の支援です。単に弁当を届けるのではなく、在宅生活を続けるための支援として位置づけられています。なお、この通知が現在も有効かは公開情報から確認できませんでした。
配食サービスの3つの種類
ひとくちに配食といっても、費用の出どころと申し込み先は3通りです。親が使えるのはどれかを見分けましょう。
市町村の高齢者福祉施策としての配食
もっとも広く見られるのが、市区町村が高齢者福祉の一環として実施する配食サービスです。大阪市の「生活支援型食事サービス事業」、名古屋市の「生活援助型配食サービス」のように名称はさまざまで、名古屋市のように市が指定した事業者が配達する方式をとる自治体もあります。費用の一部を公費が負担するため自己負担は抑えられる一方、利用回数に上限が設けられていることがあり、札幌市は月〜土の週6日の範囲で夕食、名古屋市は1日1食です。申請が必要な自治体もあるため、手続きの要否は窓口で確認してください。
総合事業の「その他の生活支援サービス」としての配食
介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)のなかにも配食は位置づけられています。厚生労働省の「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン」によると、介護予防・生活支援サービス事業は次の4類型で構成されます。
- 訪問型サービス
- 通所型サービス
- その他の生活支援サービス
- 介護予防ケアマネジメント
3番目の「その他の生活支援サービス」の定義は、原文で「要支援者等に対し、栄養改善を目的とした配食や一人暮らし高齢者等への見守りを提供」とされています。配食と見守りが並んで例示されているわけです。
地域支援事業の運用を定めた「地域支援事業の実施について」(平成18年6月9日 老発第0609001号、最終改正 令和7年7月17日 老発0717第5号)には、「食材料費及び調理費相当分については利用者負担とすることを基本とするが、利用料の設定に当たっては、低所得者への配慮を考慮すること」という考え方が示されています。
保険外(民間)の配食サービス
3つ目が、利用者と事業者が直接契約する民間の配食サービスです。全額自己負担ですが、対象要件がないため年齢や世帯の状況にかかわらず申し込めます。安否確認の有無や届け方は事業者ごとに異なります。当サイトでは特定の事業者の比較や評価は行いません。
市町村特別給付として実施する例
例外的に、市区町村が独自に創設する介護保険のサービス「市町村特別給付」を使う例があります。名古屋市の「生活援助型配食サービス」がこれにあたり、在宅の要介護者が対象です。したがって「介護保険では配食は一切使えない」とは言い切れません。全国一律の保険給付にはないが、市区町村が地域支援事業または市町村特別給付として実施する場合がある、というのが正確な理解です。
介護保険との関係はどうなっているか
配食が介護保険制度のどこに置かれ、「ヘルパーに調理してもらう」選択肢とどう使い分けるのかを見ます。
全国一律の保険給付に配食はない
介護保険の給付は「介護給付」と「予防給付」に分かれますが、そのどちらにも配食というサービス種別は設けられていません。配食は地域支援事業側、具体的には総合事業の「その他の生活支援サービス」に位置づけられています。
全国の実施状況は、厚生労働省老健局老人保健課の「介護予防・日常生活支援総合事業等(地域支援事業)の実施状況(令和6年度実施分)に関する調査結果(概要)」で確認できます。全国1,741市町村が回答した令和7年3月末時点の集計は次のとおりです。
| その他の生活支援サービスの内容 | 実施市町村数(割合) | 利用者数 |
|---|---|---|
| 配食 | 382市町村(21.9%) | 41,556人 |
| 見守り | 148市町村(8.5%) | 12,891人 |
| 訪問・通所の複合的提供 | 11市町村(0.6%) | ― |
| その他 | 36市町村(2.1%) | ― |
| その他の生活支援サービス 全体 | ― | 58,255人 |
配食の提供事業所(団体)数は838でした。総合事業としての配食を実施する市町村は2割ほどですが、高齢者福祉施策として別枠で実施している場合もあるため、「総合事業のメニューにない=配食がない」とは限りません。
総合事業の対象者と介護予防ケアマネジメント
総合事業の介護予防・生活支援サービス事業を利用できるのは、①要支援認定を受けた人と②事業対象者です。事業対象者とは、認定は受けていないものの基本チェックリスト(生活や心身の状態をたずねる質問票)に該当して総合事業を使える人を指します。提供は介護予防ケアマネジメントに基づいて行われ、その入り口となる相談先が地域包括支援センターです。総合事業の全体像は介護予防・日常生活支援総合事業の記事で詳しく解説しています。
訪問介護の生活援助(調理)との使い分け
「食事の用意が難しい」という課題には、訪問介護のヘルパーに調理をしてもらう選択肢もあります。老計第10号(平成12年3月17日 老人福祉計画課長通知)の生活援助の項目には「2-5 一般的な調理、配下膳」が挙げられています。いっぽうで嚥下困難者のための流動食など「特段の専門的配慮をもって行う調理」は、生活援助ではなく身体介護に区分されます。訪問介護の仕組みについては訪問介護の記事で整理しています。
生活援助中心型については、平成30年10月から、厚生労働大臣が定める回数以上をケアプランに位置づける場合に市町村への届出が必要になりました。基準回数(1月当たり)は次のとおりです。
| 要介護度 | 届出が必要になる回数(1月当たり) |
|---|---|
| 要介護1 | 27回 |
| 要介護2 | 34回 |
| 要介護3 | 43回 |
| 要介護4 | 38回 |
| 要介護5 | 31回 |
これは上限規制ではなく届出と検証の仕組みですが、毎日の食事をすべてヘルパーの調理でまかなうことには制約があります。配食と組み合わせる場合の配分は、ケアマネジャーや地域包括支援センターと相談しながら決めていくことになります。
自治体の配食サービスを使える条件
使えるかどうかを左右するのは、主に「年齢」「世帯の状況」「要介護認定の有無」の3点です。
年齢要件は自治体によって65歳・70歳・75歳と分かれる
まず年齢です。確認できた自治体を年齢要件で分けると次のようになります。
- おおむね65歳以上:東京都港区、札幌市、埼玉県深谷市、愛知県北名古屋市
- 70歳以上:東京都中央区(要支援・要介護認定者は65歳以上)
- 75歳以上(一部条件):東京都渋谷区、東京都目黒区
同じ「高齢者向けの配食」でも、対象年齢が10歳違うことがあります。
世帯の状況と認定の要否
次に多いのが世帯要件で、ひとり暮らし、高齢者のみの世帯、高齢者と障害者のみの世帯といった条件が見られます。要介護認定の要否も自治体次第で、大阪市や名古屋市の生活援助型のように認定を前提とする例がある一方、港区や札幌市のように認定がなくても条件を満たせば利用できる例もあります。認定の有無だけで自己判断せず、窓口に確認してください。
自治体の実例を比較する
公開情報をもとに整理すると次のとおりです。
| 自治体 | 主な対象条件 | 1食あたりの自己負担 | 回数の上限 |
|---|---|---|---|
| 東京都港区 | 65歳以上のひとり暮らし・高齢者のみの世帯などで、食事の調理が困難な人 | 320〜480円(6事業者による幅) | 昼食・夕食で週7食まで |
| 東京都渋谷区 | 区内在住・在宅で、75歳以上/要支援・要介護認定/事業対象者 などのいずれかに該当 | 1食150円を区が補助し、差引額が利用者負担 | 1日1食まで |
| 東京都目黒区 | 要支援・要介護で買い物・調理が困難/単身で認定がなく近隣に親族のいない75歳以上 | 区が普通食263円・特別食333円を補助し、残額が自己負担 | 記載なし |
| 東京都中央区 | 食事作りが困難な70歳以上(認定者は65歳以上) | 一般食570円/エネルギー調整食640円または710円/たんぱく質調整食640円 | 記載なし |
| 大阪市 | 要支援1・2または要介護1〜5で、単身世帯等 | 食材料費・調理費は利用者負担。軽減対象者(年間総所得150万円以下または市府民税非課税)は1食400円超の部分を150円を上限に軽減 | 週間利用食数を決定 |
| 札幌市 | 原則65歳以上のひとり暮らしで調理が困難 | 1食500円 | 月〜土の週6日の範囲で夕食 |
| 名古屋市 | 生活援助型=在宅の要介護者(市町村特別給付) 自立支援型=在宅の要支援者・事業対象者(総合事業) | 弁当代は全額自己負担。配達経費200円部分は1割負担なら利用者負担20円 | 1日1食(昼食か夕食) |
| 埼玉県深谷市 | 安否確認を必要とする65歳以上のひとり暮らし等 | 非課税世帯(介護保険料の第1〜3段階)300円/課税世帯400円 | 月〜土の希望する曜日 |
| 愛知県北名古屋市 | おおむね65歳以上のひとり暮らし・高齢者のみの世帯(外出ができる方を除く)等 | 配食料金から1食200円を控除した額 | 昼食または夕食のいずれか1食 |
深谷市の「第1〜3段階」は介護保険料の所得段階で、毎年届く介護保険料の決定通知書で確認できます。なお渋谷区・目黒区・北名古屋市のように補助額だけが決まっている方式では、弁当そのものの価格は事業者や献立によって異なるため、実際にいくら払うことになるかは窓口で確認することになります。
自分の親の自治体の制度を調べる方法
表にない自治体でも調べ方は同じで、次の3つを順に試します。
- 親が住民登録をしている市区町村の公式サイトで、高齢者福祉・介護のページを開く。
- そのページ内から「食事」「配食」に関する項目を探す。
- 見つからなければ、親の住所地を担当する地域包括支援センターか市区町村の高齢者福祉担当課に電話で尋ねる。
注意したいのは、配食の事業名が自治体ごとに違うことです。大阪市は「生活支援型食事サービス事業」、名古屋市は「生活援助型配食サービス」という名称のため、「配食サービス」という言葉だけでは検索で見つからないことがあります。行き詰まったら窓口に電話して「食事を届けてもらえる制度はありますか」と聞くのが確実です。
介護保険制度は3年ごとに改定され、地域支援事業の運用や自治体の単独事業も見直されることがあります。ここに挙げた条件や金額は確認時点のものですので、必ず住所地の市区町村で最新の情報を確認してください。
1食あたりの費用の目安と自治体差
親の年金でまかなえるかは、1食あたりの金額と月額の両方で判断します。
自治体別に見た利用者負担額
確認できた自治体の利用者負担額を並べます。グラフのうち橙色で示した港区の320〜480円だけは、区が契約する6事業者による価格の幅であり、他の自治体の「利用者負担額」とは性質が異なります(同じ区内でも選ぶ事業者で支払額が変わります)。その前提で見てください。
グラフの「中央区 調整食」はエネルギー調整食を指し、中央区のエネルギー調整食には640円と710円の2種類があるため、グラフには高い方の710円を示しています。確認できた範囲では、実際に払う額は1食300円から710円程度です。同じ自治体でも課税状況や食種で金額が変わります。
月にいくらかかるかを概算する
1食あたりの金額だけでは家計の見通しが立ちません。その自治体の条件で単純に掛け算した目安も見ておきます。あくまで機械的な計算です。
- 札幌市の条件で計算した場合:1食500円で月〜土の週6日まで夕食を利用すると、500円×6日=週3,000円。これを4週分で約1万2,000円です。
- 深谷市の条件で計算した場合:非課税世帯の1食300円で週6日なら300円×6日=週1,800円、4週分で約7,200円。課税世帯の400円なら4週で約9,600円です。
助成の出し方には2つのパターンがある
公費の入れ方は大きく2通りに分かれます。
- 利用者負担額そのものを固定する:札幌市の1食500円、深谷市の非課税世帯300円・課税世帯400円のように、払う金額があらかじめ決まっている方式です。
- 補助額を固定し、残額を自己負担とする:渋谷区の1食150円補助、目黒区の263円・333円補助、北名古屋市の200円控除のように、弁当の価格から公費分を差し引いた残りを払う方式です。
大阪市のように、軽減対象者には1食400円を超える部分を150円を上限に軽減する例もあります。地域支援事業実施要綱の「低所得者への配慮を考慮すること」を踏まえた設計です。
全国的な相場を示す公的統計は存在しない
「全国の相場はいくらか」という問いに公的な答えはありません。自治体の配食の自己負担額を全国集計した公的統計も、民間配食の価格帯を示す公的統計も確認できませんでした。示せるのは、確認できた自治体のページに基づく「利用者負担で300円〜710円程度、または1食あたり150円〜333円の公費補助」という幅だけで、全国平均ではありません。
民間配食との違い
厚生労働省の事業者向けパンフレットには、配食の市場規模が2009年度の569億円から2016年度に1,190億円へ約2.1倍になったという記載がありますが、これは同資料が矢野経済研究所の民間調査値を引用したもので、公的な統計調査の結果ではありません。
公費の入る自治体の配食は自己負担が軽く、民間の配食は対象要件がなく回数の制約が緩いという違いがあります。どちらが適するかは、必要な食数、予算、安否確認の必要性で変わります。
申し込みの流れと相談窓口
制度があると分かっても、遠方に住む子には「どこに、誰が連絡するのか」が最初の壁になります。
最初の相談先は地域包括支援センターか市区町村の窓口
自治体の配食の相談先は、主に次の2つです。
- 地域包括支援センター:高齢者の総合相談窓口です。介護予防ケアマネジメントを通じて総合事業としての配食につなぐ役割があり、まずはここが相談先になります。
- 市区町村の高齢者福祉担当課:高齢者福祉施策としての配食の申請窓口です。「高齢者支援課」「長寿福祉課」など名称は自治体で異なります。
すでにケアマネジャーが付いているなら、担当者に相談するのが早道です。
離れて暮らす家族が相談する場合
親と別の市区町村に住んでいても、相談は家族から始められます。押さえたいのは3点です。
- 確認先は親が住む市区町村:配食は市区町村ごとの事業なので、制度の有無や条件の確認先は、自分が住む市区町村ではなく親が住む市区町村と、その地域を担当する地域包括支援センターになります。
- まずは電話で問い合わせる:受付方法は自治体によって異なるため、親の年齢・世帯の状況・調理や買い物の困りごとを伝えたうえで、使える制度があるかを電話で問い合わせて確認するとよいでしょう。
- 安否が確認できないときに緊急連絡先へ連絡する仕組みがある:本人が食事を受け取れなかったときに親族等の緊急連絡先へ連絡する自治体があります(深谷市・大阪市など)。遠方の家族が連絡先になっていれば、異変を早く知ることができます。
ただし、家族が代わりに申請書を出せるか、委任状が必要かといった扱いは自治体で異なるため、必ず窓口で確認してください。
申請から利用開始までの流れ
細部は自治体で異なりますが、おおむね次の流れです。
- 相談:地域包括支援センターまたは市区町村の窓口に相談します。
- 申請:申請書を提出します。世帯や課税状況を確認する書類が要る場合もあります。
- 調査・アセスメント(聞き取り):担当者が自宅を訪問するなどして、調理や買い物の困難さ、食事の状況、安否確認の必要性を確認します。
- 決定:利用の可否、食数や曜日が決まります。
- 利用開始:決められた曜日・時間帯に配達が始まります。受け取り方法と、本人が受け取れなかったときにどうなるかを最初に確認しておきましょう。大阪市は再配達しても安否が確認できない場合に親族等の緊急連絡先へ連絡するとしており、深谷市も本人が受け取れない場合は緊急連絡先へ連絡するとしています。ただし扱いは自治体によって異なるため、申し込みのときに確認してください。
厚生労働省の配食ガイドラインは、初回注文時のアセスメントを管理栄養士または栄養士が担当することが望ましいとし、低栄養が疑われる人や在宅療養者等については原則として管理栄養士が担当し、必要に応じてかかりつけ医と連携するとしています。持病や食事制限がある場合は、申し込みの段階で正確に伝えてください。
利用中の見直しと中止
入院した、施設に入った、家族が同居することになった、といった場合は休止や中止の連絡が必要です。食数の増減にも手続きが要る場合があります。
開始後の見直しについても、同ガイドラインはサービス開始後数週間以内に初回のフォローアップを行い、おおむね週2食以上かつ6か月以上利用している人には少なくとも年1〜2回程度行うという目安を示しています。様子が変わったと感じたら、次のフォローアップを待たずに事業者やケアマネジャーへ伝えてください。
国のガイドラインが定める配食の栄養管理
ここからは配食事業者に求められる栄養管理の基準を扱います。利用する側にも使い道があり、事業者を選ぶときに①献立作成に管理栄養士・栄養士が関わっているか ②注文時に本人の状態を聞き取ってくれるか ③開始後に食べ方や体調を見直してくれるかを確認する根拠になるからです。
ガイドラインの位置づけと対象範囲
配食の栄養管理については、厚生労働省健康局が平成29年3月に「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理に関するガイドライン」をまとめています。これは「法的規制を目的とするものではないが、事業者において達成に努めることが求められる」という位置づけで、罰則を伴うものではありません。
ここでの「配食事業」は主食・主菜・副菜の組合せを基本とする1食分単位の調理済み食事を継続的に宅配する事業で、外食や小売の弁当、食材宅配は対象外です。自治体からの委託で行う配食も適用対象となり得ますが、取扱いは各自治体の判断によるとされています。
管理栄養士等の関与と栄養価のばらつき
ガイドラインは献立作成に専門職が関わることを求めています。提供食数がおおむね1回100食以上または1日250食以上の事業者が栄養素等調整食や物性等調整食を扱う場合は、献立作成を管理栄養士または栄養士が担当すること(監修を含む)とし、扱わない場合も担当が望ましいとしています。事業者に「献立は誰が作っていますか」と尋ねる根拠がここにあります。
栄養価は、エネルギー・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の1食当たりの値が献立作成基準として定めた栄養価の±20%以内に収まるよう管理することとされています。毎食同じ数値にするのは現実的でないため、許容される幅を明示したものです。
衛生管理と「作って届けて終わりにしない」考え方
ガイドラインは、注文時のアセスメントと開始後のフォローアップを一連の流れとして求めており(時期は前章のとおり)、事業者が対応しきれない状況を把握した場合は、かかりつけ医療機関・地域包括支援センター・自治体等への相談を提案することとしています。困りごとを事業者に伝えれば、そこから専門機関につながる道があるということです。
衛生面については、食品衛生法および「大量調理施設衛生管理マニュアル」の趣旨を踏まえることとされています。
療養食・やわらかい食事への対応
親が食事中にむせる、飲み込みにくそうにしている——そんなときは、次の順番で動きます。
- かかりつけ医や地域包括支援センターに、食事の様子を伝えて相談する。
- 医師・歯科医師・管理栄養士・言語聴覚士などの専門職に、どの区分の食事が必要かを判断してもらう。
- その区分に対応した配食があるかを、窓口や事業者に確認する。
以下の分類や数値を家族が覚える必要はありません。専門職と事業者が「どの状態に合う食事か」を取り違えないための共通言語だと理解しておけば十分です。
栄養素等調整食と物性等調整食
ガイドラインは特別な食種を2つに整理しています。
- 栄養素等調整食:エネルギー量、たんぱく質量、食塩相当量等を調整した食事です。自治体の配食でも、中央区のエネルギー調整食・たんぱく質調整食、目黒区の特別食(糖尿病食等)のような例があります。
- 物性等調整食:硬さ、付着性、凝集性等に配慮した食事で、噛む力や飲み込む力が落ちた人向けのやわらかい食事です。
物性等調整食について、ガイドラインは日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「学会分類2013」のコード2〜4の取扱いが望ましいとしています。同学会の分類はその後更新され、2021年9月に「嚥下調整食分類2021(JDD2021)」が公表されました。食事はコード0j・0t(嚥下訓練食品)と1j・2-1・2-2・3・4(嚥下調整食)に分かれ、とろみは薄い・中間・濃いの3段階です。
スマイルケア食の青・黄・赤
農林水産省は「スマイルケア食」のマークを整理しています。市販品を買い足すときの目印です。
| マーク | 想定される人 | 条件 |
|---|---|---|
| 青マーク | 栄養補給を必要とする人 | エネルギー・たんぱく質の基準を満たし、自己適合宣言と公表を行ったもの |
| 黄マーク | 噛むことに問題がある人 | そしゃく配慮食品のJAS規格に適合しJASマークが付されたもの(区分2〜5) |
| 赤マーク | 飲み込むことに問題がある人 | 「えん下困難者用食品」の表示許可取得が条件(区分0〜2) |
えん下困難者用食品の許可基準I〜III
「えん下困難者用食品」は健康増進法第43条第1項に基づく特別用途食品の一区分で、消費者庁の許可を受けたものだけが表示できます。許可基準は次の3区分です。
| 区分 | 性状 | 硬さ(N/m²) | 付着性(J/m³) | 凝集性 |
|---|---|---|---|---|
| 許可基準I | そのまま飲み込める均質なゼリー状 | 2.5×10³〜1×10⁴ | 4×10²以下 | 0.2〜0.6 |
| 許可基準II | 少しつぶして飲み込める均質なゼリー・ムース状 | 1×10³〜1.5×10⁴ | 1×10³以下 | 0.2〜0.9 |
| 許可基準III | 少しそしゃくして飲み込めるまとまりの良いおかゆ状 | 3×10²〜2×10⁴ | 1.5×10³以下 | - |
許可を受けた食品には、許可基準区分の図表や成分量に加えて医師等の相談指導を得て使用することが適当である旨の表示が求められます。許可のない食品に「えん下困難者の用に適する旨」や学会分類のコードを表示すると法に抵触する可能性がある、ともガイドラインは指摘しています。
どの区分の食事が適切かは本人の状態によって変わります。自己判断で選ばず、かかりつけ医、歯科医師、管理栄養士、言語聴覚士などの専門職に相談してから決めてください。
低栄養を防ぐという視点
配食が「栄養改善を目的とした」サービスとされる背景には、高齢者の低栄養という課題があります。
65歳以上の19.5%が低栄養傾向
厚生労働省の国民健康・栄養調査(令和6年、全国補正値)によると、低栄養傾向(BMI20kg/m²以下)にある65歳以上の割合は19.5%でした。性別の再掲では男性12.7%、女性25.2%です。健康日本21(第三次)は、この割合を13%とする目標を掲げています。
女性のほうが高く、全体でも目標の13%を上回っています。年齢階級別の傾向は令和5年調査に示されており、男女とも85歳以上が最も高く、男性は年齢が上がるほど高くなります。
| 年齢階級 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 65〜69歳 | 7.8% | 23.5% |
| 70〜74歳 | 8.7% | 22.0% |
| 75〜79歳 | 11.2% | 22.0% |
| 80〜84歳 | 18.2% | 20.5% |
| 85歳以上 | 22.8% | 24.8% |
令和6年調査は4年に1度の拡大調査で令和5年調査とは設計が異なります。増減として比べず、それぞれの数値として読んでください。
必要なエネルギーとたんぱく質の目安
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の推定エネルギー必要量(kcal/日)は次のとおりです。身体活動レベルの「ふつう」は自立している人、「低い」は自宅でほとんど外出しない人を指します。
| 年齢 | 性別 | 低い | ふつう | 高い |
|---|---|---|---|---|
| 65〜74歳 | 男性 | 2,100 | 2,350 | 2,650 |
| 65〜74歳 | 女性 | 1,650 | 1,850 | 2,050 |
| 75歳以上 | 男性 | 1,850 | 2,250 | — |
| 75歳以上 | 女性 | 1,450 | 1,750 | — |
この表は3食に割り戻すと配食の栄養表示と見比べられます。たとえば75歳以上の女性で身体活動レベルが「ふつう」の1日1,750kcalが目安なら、単純に3で割って1食あたりおよそ580kcal。届く食事の表示がこれを大きく下回るなら、ほかの食事や間食で補う必要があると見当がつきます。
たんぱく質は推奨量が男性60g/日・女性50g/日、目標量はエネルギーの15〜20%(1日にとるエネルギーのうち何%をたんぱく質からとるかという割合)です。高齢者のBMIの目標範囲は21.5〜24.9、食塩相当量の目標量は男性7.5g未満・女性6.5g未満です。
これらは集団に対する基準で、持病の有無や体格によって必要な量は変わります。実際の食事の量や内容は、かかりつけ医や管理栄養士に相談してください。
独居・夫婦のみ世帯の増加という背景
低栄養の要因は食欲や病気だけではありません。食事摂取基準2025年版の高齢者分冊の表1「高齢者の様々な低栄養の要因」には、社会的要因として独居、介護力不足、ネグレクト、孤独感、貧困が明記されています。ひとり暮らしや支える人手の不足それ自体が、低栄養の要因に挙げられているということです。
内閣府の令和8年版高齢社会白書によると、令和6年現在、65歳以上の者のいる世帯は全世帯の50.3%を占めます。その内訳は次のとおりです。
- 単独世帯:32.7%
- 夫婦のみの世帯:31.8%
- 親と未婚の子のみの世帯:20.4%
- 三世代世帯:6.3%
昭和55年には三世代世帯が半数を占めていました。誰かが同居して食事を用意するという前提は、成り立ちにくくなっています。
利用する前に確認しておきたい注意点
最後に、使い始めてから「こんなはずでは」となりやすい点を3つ整理します。いずれも公的機関が注意喚起している内容です。
1食を分け合わない・配食だけで安心しない
厚生労働省の配食ガイドラインには、利用者への注意喚起が2点挙げられています。ひとつは「1食を複数回に分けて食べたり、家族で分けたりしないこと」です。配食の1食はその分量で必要な栄養がとれるよう設計されているため、半分残して次の食事に回したり家族と分け合ったりすると、想定された栄養量に届かなくなります。
もうひとつは「配食を利用していれば大丈夫との意識を持たれないよう注意」することです。配食で確保できるのは1日1食か2食で、残りの食事や水分は別の問題として残ります。届いた食事が実際に食べられているか、体重が減っていないかを定期的に確認してください。
受け取り後の保存と温め直し
届いた食事をすぐに食べない場合は、家庭での扱いが重要です。厚生労働省が示す食中毒予防の三原則は「つけない・ふやさない・やっつける」で、予防のポイントは購入・保存・下準備・調理・食事・残った食品の6つの場面に整理されています。配食に関係が深いのは次の点です。
- 冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は−15℃以下を保つ
- 冷蔵庫に詰めすぎない(7割が目安)
- 加熱は中心部を85〜90℃で90秒間以上
- 残った食品は小分けにして冷蔵する
- 温め直すときも中心部までしっかり加熱する
厚生労働省の公表資料によると、令和6年の食中毒は事件数1,037件、患者数14,229人、死者3人でした。
遠方に住んでいると、こうした扱いが守られているかを直接は確かめられません。それでも次のような手は打てます。
- 届いたら食べる習慣にする:届く時間・食べる時間・置く場所を本人と決めておくと、食べ残しを何日も冷蔵庫に置く事態を減らせます。
- 手渡しの仕組みを生かす:名古屋市や深谷市のように本人への手渡しを要件としている自治体では、配達のたびに声かけが入ります。受け取れなかったときの連絡先に家族が入っていれば、異変に早く気づけます。
- 帰省時に冷蔵庫を見る:古い食事や未開封の弁当が残っていないかは、帰省したときに確認するのが現実的です。
- 訪問する専門職と情報を共有する:ケアマネジャーやヘルパーの訪問がある場合は、食べ残しなど気づいたことを伝えてもらえないか相談してみてください(対応の可否は事業所によります)。
民間の定期購入契約で確認すること
民間の配食をインターネットで申し込む場合は、契約面の確認が必要です。国民生活センターが2024年11月6日に公表した「インターネットで注文する食事宅配に関する消費者トラブル」によると、相談は2020年度に急増し、翌年度以降も600件台で推移しています。
同センターの助言は、定期コースを利用する前に1回の配達個数・購入回数・解約条件を確認し、家族にも配達予定を伝えておくことです。とくに冷凍弁当は保管スペースの問題が起きやすいため、申し込み前に冷凍庫の空き容量を確かめてください。
通信販売の定期購入に関する相談件数は2023年度80,315件、2024年度89,401件、2025年度93,065件と増えています。配食を民間で頼むときも、1回に何食届くのか、何回続ける約束なのか、途中でやめられるのか——この3点を契約前に家族と一緒に確認しておけば、使い始めてからのつまずきはかなり避けられます。
まとめ
- 配食サービスは「調理済みの食事を1食分ずつ自宅に届ける仕組み」で、安否確認がセットになっているものが多くあります。名古屋市や深谷市のように本人への手渡しを要件とする自治体もあり、離れて暮らす家族にとっては見守りの機能も持ちます。
- 介護保険の全国一律の保険給付に配食はありません。市区町村が地域支援事業や高齢者福祉施策として実施するほか、名古屋市のように市町村特別給付とする例もあります。
- 利用条件も費用も自治体によって大きく異なります。年齢要件は65歳・70歳・75歳と分かれ、認定の要否も自治体次第です。確認できた範囲の自己負担は1食300円〜710円程度で、全国の相場を示す公的統計はありませんでした。
- 使い始めたあとにも確認事項があります。1食を分け合わない、保存と温め直しに気をつける、民間の定期コースは配達個数・購入回数・解約条件を確認する——この3点は公的機関が注意喚起しています。療養食ややわらかい食事は、かかりつけ医や管理栄養士に相談して選んでください。
- まずは親の住所地の地域包括支援センターか市区町村の高齢者福祉担当に電話してください。介護保険制度は3年ごとに改定され、自治体の事業内容も見直されます。本記事は確認時点の公開情報に基づくものですので、実際の利用にあたっては必ず住所地の市区町村で最新の情報を確認してください。
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