緊急時訪問看護加算とは、訪問看護ステーションなどが利用者・家族からの24時間連絡体制をとり、必要に応じて計画外の緊急訪問を行う体制にあることを評価する介護報酬の加算です。訪問看護ステーションの場合、(I)が月600単位、(II)が月574単位で、1か月に1回、当月の最初の訪問看護の日に算定されます。この記事では、算定要件、(I)と(II)の違い、自己負担額の目安、医療保険との関係、利用前に確認したい点を、兵庫県の手引きと厚生労働省の資料にもとづいて整理します。
「単位」は介護報酬の計算に使う単位で、1単位はおよそ10円です(地域で異なります)。たとえば600単位なら、1割負担で約600円前後が目安です。
なお、介護報酬は3年ごとの改定に加え、期中に見直されることもあります。単位数や要件は変わる可能性があるため、実際の利用時は最新の情報を事業所や市町村で確認してください。
緊急時訪問看護加算とは
定義と加算の位置づけ
緊急時訪問看護加算は、介護保険の訪問看護の費用に上乗せされる加算の1つです。届出をした訪問看護ステーション等が、利用者の同意を得たうえで、利用者や家族からの24時間の連絡体制を整え、計画にない緊急時の訪問を必要に応じて行う体制にある場合に算定されます(兵庫県「訪問看護・介護予防訪問看護の手引き」令和6年6月)。
ポイントは、実際に緊急訪問があった月だけでなく、体制があることに対して算定される点です。24時間の連絡体制と緊急訪問の体制を、毎月の加算として評価する仕組みと考えると分かりやすいでしょう。
対象となる事業所と利用者
算定できるのは、届出を行った訪問看護ステーションと、病院・診療所です。単位数は事業所の種類で異なります(後述)。利用者側は、介護保険の訪問看護を利用する要介護の方に加え、要支援の方が使う介護予防訪問看護も対象です(手引きの加算一覧)。
よくある誤解
誤解されやすい点を3つ挙げます。
- 「緊急で来てもらったときだけ払う料金」ではありません。体制への加算なので、緊急訪問がなかった月も算定されます。
- 緊急訪問をした場合の訪問看護費は、加算とは別に、訪問の所要時間に応じて算定されます。
- 訪問介護の緊急時の加算については、緊急時訪問介護加算とはの記事をご覧ください。
算定要件の詳細
24時間連絡体制と緊急訪問の体制
手引きによると、算定には「利用者・家族からの24時間の連絡体制があること」と「計画外の緊急時訪問を必要に応じて行う体制にあること」が必要です。届出も必要で、ステーションの場合は届出の受理日から算定できます。
連絡体制として認められない形
手引きでは、次のような形は認められないとされています。
- 他の事業所や他の従事者を経由して連絡がつく体制
- 事業所以外の者が所有する電話を連絡先とすること
利用者から見れば、教えられた連絡先が事業所の電話か、連絡が看護師につながるかが確認点です。連絡を受ける担当者は、原則として保健師または看護師とされています(一定の要件を満たせば看護師以外も可。詳しい条件は事業所に確認してください)。
説明と同意
算定にあたっては、事前に利用者へ「24時間の連絡体制があること」と「計画外の緊急訪問を行えば加算を算定すること」を説明し、同意を得る必要があります。重要事項説明書は契約書とは別の文書として交付します。同意がなければ算定できません。
同意しなかった場合に通常の訪問看護が受けられるかどうかについては、今回確認できた資料に記載がありません。迷う場合は、担当のケアマネジャーや事業所に確認してください。
(I)と(II)の違いと単位数
事業所の種類別の単位数
単位数は次のとおりです(兵庫県の手引きと、厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第259回資料で一致を確認)。
| 事業所の種類 | 緊急時訪問看護加算(I) | 緊急時訪問看護加算(II) |
|---|---|---|
| 訪問看護ステーション | 600単位/月 | 574単位/月 |
| 病院・診療所 | 325単位/月 | 315単位/月 |
(I)と(II)はどちらか一方のみの算定で、両方は算定できません。
(I)と(II)の違い
| 要件 | (I) | (II) |
|---|---|---|
| 電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制 | 必要 | 必要 |
| 緊急時訪問における看護業務の負担の軽減に資する十分な業務管理等の体制整備 | 必要 | 不要 |
つまり(I)は(II)の要件をすべて含んだうえで、職員の負担軽減の体制を上乗せした区分です。
利用者から見ると、24時間の連絡体制は(I)でも(II)でも変わりません。違いは事業所側の負担軽減体制で、費用の差はステーションで月26単位です。単価10円の地域なら10割で約260円、1割負担で約26円と、月数十円程度の差にとどまります。
負担軽減の取組例として、資料には夜間対応した翌日の勤務間隔の確保、夜勤の交代制や早出・遅出の工夫、担当者への支援体制の確保などが挙げられています。
改定の経緯と最新の動向
令和8年6月1日の期中改定(改定率+2.03%)について、確認した資料の範囲では、緊急時訪問看護加算の単位数が変わったという記載は見当たりません(告示全文までは確認できていません)。この改定では訪問看護に処遇改善加算(加算率1.8%)が新設されました(厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」)。
経緯としては、令和6年6月1日施行の改定で(I)が新設され、従来の区分(ステーション574単位、病院・診療所315単位)は(II)となりました。夜間に対応する看護師の勤務環境に配慮する趣旨です。次期改定に向けた議論も進んでいるため、単位数・要件は今後変わる可能性があります。
算定のルールと数え方
月1回、最初の訪問日に算定
加算は月1回、その月の最初の介護保険の訪問看護を行った日に算定されます。1か月に何度緊急訪問があっても、加算自体は1回です。
1人の利用者につき1事業所のみ
この加算は1人の利用者につき1事業所に限り算定できます。2つの事業所の訪問看護を利用している場合でも、加算を算定できるのはどちらか1つの事業所だけです。どちらが算定するかは、利用開始時に確認しておくと安心です。
加算だけの利用はできない
緊急時訪問看護加算だけをケアプランに組み込むことはできません。また、その月に介護保険の訪問看護を1度も受けていない場合、加算のみを算定することもできません。
ケアプランの作成や変更を担うケアマネジャーが、訪問看護の計画と合わせて調整します。
自己負担額の目安
計算の考え方
自己負担額は「単位数×地域ごとの1単位の単価」で費用全体(10割)を求め、そこに負担割合(1〜3割)を掛けて計算します。訪問看護の1単位の単価は、兵庫県の手引きの表では次の区分があり、その他の地域は10.00円です。お住まいの地域の区分は市町村や事業所で確認してください。
| 1単位の単価 | (I)600単位の10割 |
|---|---|
| 11.05円 | 6,630円 |
| 10.84円 | 6,504円 |
| 10.70円 | 6,420円 |
| 10.42円 | 6,252円 |
| 10.21円 | 6,126円 |
| 10.00円 | 6,000円 |
負担割合の判定基準は介護保険の自己負担割合の記事で解説しています。
試算の例
単価が10.00円の地域で、ステーションが算定する場合の試算です(端数処理は事業所の請求方法によって異なります)。
| 区分 | 10割 | 1割 | 2割 | 3割 |
|---|---|---|---|---|
| (I) 600単位 | 6,000円 | 約600円 | 約1,200円 | 約1,800円 |
| (II) 574単位 | 5,740円 | 約574円 | 約1,148円 | 約1,722円 |
自治体の例
新城市の案内には、単価10.21円・1割負担の例が掲載されています。緊急時訪問看護加算1(月1回600単位)を含む月4,466単位の場合、合計は4,560円(令和6年7月現在)です。実際の金額は、訪問看護費本体、他の加算、地域の単価で変わります。
高額介護サービス費との関係
高額介護サービス費という制度があるため、実際の負担は単純な掛け算と一致しない場合があります(武蔵野市の案内)。仕組みは高額介護サービス費とはで整理しています。
緊急訪問をしたときの費用
訪問の所要時間に応じた訪問看護費
計画にない緊急時訪問を行った場合は、その訪問の所要時間に応じた訪問看護費が、加算とは別にかかります(准看護師が訪問した場合は所定単位数の90%)。金額は訪問の長さなどで変わるため、事前に事業所へ見積りや目安を確認しておくと安心です。緊急訪問に伴い、ケアプランの変更も必要になります。
早朝・夜間・深夜加算との関係
緊急時訪問を行った月は、早朝・夜間・深夜の加算を算定できません。ただし、1か月以内の2回目以降の緊急時訪問では算定できます。
- ある月に夜間に初めて緊急訪問を受けた場合は、夜間加算なし
- 同じ月に夜間の2回目の緊急訪問があった場合は、夜間加算あり
- 当初から計画されていた夜間・早朝・深夜の訪問は、それぞれの加算あり(手引き)
20分未満の訪問との関係
この加算の届出は、20分未満の訪問看護費を算定する際の要件の1つです。20分未満の訪問を利用する予定がある場合は、事業所に確認してください。
医療保険との違い
介護保険と医療保険の使い分け
要介護・要支援の方の訪問看護は、原則として介護保険で行われます。
| 場面 | 使う保険 |
|---|---|
| 通常(要介護・要支援) | 介護保険 |
| がんの末期など、厚生労働大臣が定める疾病等の場合 | 医療保険 |
| 特別訪問看護指示書が交付された短期間(月1回、連続14日まで) | 医療保険 |
医療保険の場合の金額は事業所に確認してください。指示書の仕組みは特別訪問看護指示書とはの記事で説明しています。
24時間対応体制加算との関係
介護保険で緊急時訪問看護加算を請求した月は、同じ月に利用した医療保険の訪問看護について、24時間対応体制加算を算定できません(手引き)。
要支援の方の場合
介護予防訪問看護でも算定対象
要支援の方が使う介護予防訪問看護でも、緊急時訪問看護加算は算定対象です(手引きの加算一覧)。
算定状況のデータ
算定している事業所の割合
厚生労働省の第259回分科会資料(介護DBから抽出した各年4月審査分)によると、算定している事業所の割合は次のとおり上がっています。令和7年4月の内訳は(I)が8,692か所、(II)が6,135か所です。
| 年月 | 算定事業所数 | 算定割合 |
|---|---|---|
| 平成28年4月 | 7,771か所 | 77% |
| 令和7年4月 | 14,827か所 | 約88% |
多くのステーションが算定しているため、契約先でも算定されるかどうか、(I)か(II)かを確認する意味があります。
利用前に確認したいこと
契約時のチェックポイント
利用前に、事業所へ次の点を確認しておくと食い違いを防げます。
- 24時間の連絡先が事業所の電話か、連絡が看護師につながるか
- 算定する加算が(I)か(II)か、月額の自己負担の目安
- 緊急訪問をした場合の訪問看護費の目安
- 他の事業所で、すでにこの加算を受けていないか
- 2事業所を利用する場合、どちらが算定するか
- 加算の説明を受け、重要事項説明書で内容を確認したか
相談先
担当のケアマネジャーが最初の窓口です。要支援の方は地域包括支援センター、制度全般や地域の単価は市町村の介護保険担当課に相談できます。
制度改定と最新情報の確認
介護報酬は3年ごとの改定があり、期中に見直されることもあります。この記事の内容は令和8年11月時点で確認できた資料にもとづきます。実際の算定は事業所が行うため、最新の告示や厚生労働省の資料で確認してください。
まとめ
この記事のポイント
- 緊急時訪問看護加算は、24時間連絡体制と緊急訪問の体制を評価する加算で、事前の説明と同意が必要です(同意がなければ算定できません)。
- ステーションは(I)600単位・(II)574単位で、月1回、1人の利用者につき1事業所のみ算定されます。
- 単価10.00円・1割負担なら(I)で約600円が目安です。実際は地域の単価と負担割合で変わります。
- 緊急訪問をした場合の訪問看護費は、加算とは別に所要時間に応じてかかります。
- 介護保険で請求した月は、医療保険の24時間対応体制加算とは重複して算定できません。
- 要支援の方が使う介護予防訪問看護でも対象です。
- 単位数や要件は今後の改定で変わる可能性があるため、利用前に事業所とケアマネジャーに確認してください。
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