緊急時訪問介護加算とは、ケアマネジャーが必要と認めたうえで、居宅サービス計画(ケアプラン)に位置づけられていない身体介護中心(入浴・排せつ等の介助が中心)の訪問介護を、要請から24時間以内に行ったときに算定される加算です。1回につき100単位(1単位は約10円、つまり約1,000円)で、令和6年度の改定後も単位数は据え置かれています。自己負担1割なら100円が目安です。
夜中に親がベッドから落ちた、朝になって急にトイレの介助が必要になった、といった場面で「いつもの時間以外に来てもらえるのか」「いくら余分にかかるのか」と不安になる方は多いはずです。この記事では、算定要件、24時間以内ルール、料金の計算例、算定できない場面、家族が事前に確認しておきたい点を、公的資料にもとづいて整理します。
先に知っておくこと
- 対象は「計画に入っていない時間帯の身体介護中心型の訪問」で、要請から24時間以内に行ったものです。
- 1回の要請につき1回が限度で、加算は100単位です。訪問介護そのものの基本単位は別に算定されます。
- 家族が「緊急だから」と決めて呼べば自動的に付く加算ではなく、ケアマネジャーの判断が前提になります。
介護保険は3年ごとの報酬改定などで制度が見直されることがあり、単位数や要件が変わる可能性があります。本記事は2026年10月時点で確認できた公的資料にもとづいています。実際の算定の可否や金額は、担当のケアマネジャーや訪問介護事業所、お住まいの市町村にご確認ください。
緊急時訪問介護加算とは何か
まず、この加算の定義、単位数、起きやすい誤解を順に確認します。
定義と告示の趣旨
この加算は、訪問介護の報酬に上乗せされる加算のひとつです。告示の趣旨を平たく言うと、次の流れが揃ったときに算定できます。
- 利用者またはその家族等から、訪問の要請がある
- 訪問介護事業所のサービス提供責任者が、居宅介護支援事業所のケアマネジャーと連携する
- ケアマネジャーが「必要」と認める
- 訪問介護員等が、ケアプランで計画的に訪問することになっていない訪問介護(身体介護)を、緊急に行う
サービス提供責任者は、訪問介護事業所で利用者ごとの訪問介護計画の作成や、ヘルパーとの連絡調整などを担う職種です。ここでのポイントは、「緊急かどうか」を家族や事業所だけで決めるのではなく、ケアマネジャーが関与する点です。
単位数と改定の状況
加算は1回につき100単位です。この単位数は令和6年度の介護報酬改定後も据え置きでした。また、令和8年(2026年)の臨時改定(プラス2.03%、処遇改善が中心、令和8年6月施行)についても、厚生労働省の資料等で確認した範囲では、この加算の変更は見当たりませんでした。
令和9年度の改定に向けて、介護給付費分科会では訪問介護が議題に上がっていますが、この加算に直接触れる記述は確認できていません。今後の改定で単位数や要件が変わる可能性はあるため、最新の内容は事業所やケアマネジャーを通じて確認してください。
よくある誤解
この加算については、次のような誤解が起きやすいので整理しておきます。
- 「夜間・休日に呼べば必ず付く」わけではありません。基準になるのは時間帯ではなく、「ケアプランに位置づけられていない身体介護中心型の訪問」で、要請から24時間以内かどうかです。
- 「生活援助だけの依頼」は、この加算の対象の中心ではありません。加算の対象は身体介護中心型の訪問です(生活援助が一緒に行える特例は後述します)。
- 「訪問の途中で状態が急変した」場合は別の扱いです。訪問時に急変して行う緊急対応は対象外とされています。詳しくは算定できない例の章で説明します。
- 「定期巡回・随時対応型」とは別の仕組みです。こちらは月額包括報酬で、混同しやすい点は後の章で比較します。
算定要件と24時間以内ルール
ここでは、算定のカギになる「24時間以内」の意味、回数の上限、ケアマネジャーとの連携、記録を整理します。
「緊急に行った場合」の意味
算定要件のうち、いちばん誤解が多いのが「緊急に行った場合」の意味です。厚生労働省の算定の留意事項通知(老企第36号)では、これを「居宅サービス計画に位置づけられていない時間帯の身体介護中心型の訪問介護を、要請から24時間以内に行った場合」と整理しています。
つまり、「今すぐ」でなくても、要請から24時間以内であれば緊急時の訪問として扱われる余地があります。たとえば(例)夕方に「母が転んで起き上がれない。今夜のうちに介助に来てほしい」と連絡し、同じ夜のうちに計画外の身体介護中心の訪問が行われる、といったケースです。ただし、24時間以内であっても、ケアマネジャーが必要と認めることが前提です。
このように、時間の目安は「要請から24時間以内」ですが、次に回数の考え方を見ておきます。
1回の要請につき1回が限度
この加算は、1回の要請につき1回が限度です。同じ要請に対して複数回の訪問を行っても、加算は1回分です。別の新しい要請があれば、そこで改めて要件を確認する形になります。
ケアマネジャーとの連携(事前が原則、事後も可)
サービス提供責任者は、事前にケアマネジャーと連携するのが原則です。そして、要請のあった日時・時間帯に身体介護中心型の訪問が必要だと、ケアマネジャーが判断した場合に算定します。
夜間や急ぎの場面では、事前に連絡がつかないこともあります。そのような「やむを得ず事前連携できなかった」場合でも、事後にケアマネジャーが「必要だった」と判断すれば算定できる取り扱いです。事前連携が原則で、事後の判断は例外的な位置づけと理解しておくとよいでしょう。
提供時に残す記録
提供時には、次の4項目を記録することが求められます。
- 要請のあった時間
- 要請の内容
- 提供した時刻
- 加算の対象である旨
家族の立場では、「いつ、何を頼んで、いつ来てもらったか」が事業所の記録に残るため、後から請求内容を確認するときの手がかりになります。記録の保存期間は自治体の条例で定められています(例として、和歌山県は5年)。お住まいの地域の取り扱いは、市町村や都道府県の資料でご確認ください。
家族が急に訪問を頼みたいときの流れ
要件を踏まえて、実際に家族が急に頼みたくなったときの流れと、平時に確認しておきたい点をまとめます。
一般的な流れ
以下は、算定要件から導いた一般的な流れの整理です(制度上、この順序が義務づけられているわけではありません)。
- 要請:まず担当のケアマネジャーに連絡するのが基本です。つながらない場合は訪問介護事業所(サービス提供責任者)に連絡し、その場合も、あとでケアマネジャーに伝わるようにします。
- 必要性の判断:ケアマネジャーが必要かどうかを判断する。事前が原則で、連絡がつかない場合は事後でも可。
- 訪問:要請から24時間以内に、計画外の身体介護中心の訪問を行う。
- 記録と計画の修正:事業所が記録を残し、ケアマネジャーがケアプランを最小限で修正する。
(例)夜間に母親が転んで起き上がれなくなり、ケアマネジャーの時間外の連絡先に電話をかけた、という場面を考えます。ケアマネジャーが必要と判断し、事業所に連絡して訪問が行われれば、この流れに沿った形になります。
けがの程度によっては救急要請が必要で、訪問介護で対応できる範囲を超える場合もあります。命に関わると感じたときは、迷わず119番通報してください。
流れは以上ですが、緊急の場面で慌てないよう、平時の確認事項も押さえておきましょう。
事前に確認しておきたいこと
緊急の場面では、落ち着いて確認する余裕がありません。次の点は、平時のうちに担当のケアマネジャーや事業所に聞いておくと安心です。
- 重要事項説明書に、この加算の記載と説明があるか。
- 夜間・休日の連絡先はどこか(事業所とケアマネジャーのそれぞれ)。
- ご自身の負担割合は何割か。
- 月の利用額が限度額に近いとき、追加の訪問で超過分が出ないか。
- 急変した場合は、この加算ではなく計画の変更などになるケースがあること。
所要時間と基本報酬の考え方
緊急時の訪問で、所要時間の区分がどう決まり、通常のルールとどこが違うのかを説明します。
所要時間はどう決まるか
通常の訪問介護では、計画で決めた内容に応じて所要時間の区分が決まります。緊急時の訪問では、サービス提供責任者とケアマネジャーが連携し、要請の内容から想定される標準的な時間をケアマネジャーが判断します。実際に訪問してみて内容が違っていた場合は、ケアマネジャーが実際の内容を見て変更することも可能です。
事後に、ケアマネジャーが「当初の要請からは想定しがたい内容が必要だった」と判断した場合は、実際に提供した内容に応じた標準的な時間とします。「現に要した時間」そのままではない点に注意が必要です。
2時間ルールと20分未満の要件は適用されない
通常、前後の訪問の間隔が概ね2時間未満なら、所要時間を合算して算定します。また、身体介護が20分未満の場合には算定要件が設けられています。しかし、緊急時訪問介護加算の対象となる訪問には、この2つのルールは適用されません。家族の立場で言えば、短時間の訪問や、直前の訪問から間もない訪問でも、緊急の訪問として別に算定される、と理解しておけば十分です。
この結果として、実際の算定は次のようになります。
- 身体介護が20分未満でも、「20分未満の身体介護」の単位を算定できます。
- 前後の間隔が2時間未満でも、合算せず、それぞれの所要時間で算定します。
2時間ルールそのものの仕組みは、訪問介護の2時間ルールを解説した記事で詳しくまとめています。
生活援助を続けて行える特例と対象外のケース
緊急時訪問介護加算を算定する場合に限り、身体介護(1)の20分未満に引き続いて、生活援助(掃除や調理などの家事の援助)を行うことも可能です。たとえば(例)転倒後の介助を短時間で行ったあと、散らかった室内の片づけを続けて行う、といった形です。
一方で、安否確認や健康チェックだけを行った場合は、訪問介護費の算定対象外とされています。「顔を見に行く」だけの訪問は、この加算を含めて介護報酬の対象にはならない点に注意してください。
料金と自己負担の計算例
加算の100単位が実際にいくらになるのか、基本単位と合わせた計算例で確認します。
基本単位と加算
加算の100単位は、訪問介護の基本単位に上乗せされます。令和8年6月改定後の厚生労働省「介護報酬の算定構造」に基づく主な基本単位は次のとおりです。
- 身体介護 20分未満:163単位
- 身体介護 20分以上30分未満:244単位
- 身体介護 30分以上1時間未満:387単位
- 身体介護 1時間以上:567単位(30分増すごとに82単位を加算)
- 生活援助 20分以上45分未満:179単位
- 生活援助 45分以上:220単位
緊急時訪問介護加算は、この基本単位とは別に、1回につき100単位が加わります。
自己負担割合と計算の考え方
利用者負担は費用の1割で、一定以上の所得がある方は2割または3割になります。どの割合になるかは所得に応じて決まるため、ご自身やご家族の負担割合は、お手元の介護保険負担割合証でご確認ください。
1単位が10円の地域の場合、加算100単位は1,000円です。自己負担は次のようになります。
- 1割負担:100円
- 2割負担:200円
- 3割負担:300円
地域によって1単位の単価は異なります。たとえば1単位11.40円なら、100単位は1,140円で、1割負担は約114円です(筆者計算)。
地域区分による単価の違い
1単位の単価は、おおむね10円〜11.40円で、地域区分により異なります。お住まいの区分は、市区町村でご確認ください。
合計額の計算例
基本単位とあわせた合計の例を、1単位10円・1割負担で計算してみます(以下は筆者の試算で、他の加算や処遇改善加算などは含みません)。
数字を表にまとめると、次のとおりです。
| 例 | 基本単位+加算 | 合計単位 | 費用の総額 | 自己負担(1割) |
|---|---|---|---|---|
| 身体介護20分未満 | 163+100 | 263単位 | 2,630円 | 263円 |
| 身体介護30分以上1時間未満 | 387+100 | 487単位 | 4,870円 | 487円 |
実際の請求額には、時間帯や事業所の体制に応じた加算が加わることがあります。時間帯による加算は早朝・夜間・深夜加算を扱った記事で別に解説していますが、緊急時の訪問にどう重なるかは、事業所やケアマネジャーにご確認ください。
区分支給限度基準額との関係
在宅サービスには月の利用上限があるため、この加算が限度額にどう影響するかを整理します。
限度額とは
在宅の介護保険サービスには、要介護度ごとに1か月に使える上限があり、これを区分支給限度基準額といいます。限度額を超えた分は全額が自己負担になります(介護サービス情報公表システム)。月額の限度額は次のとおりです(1単位10円で換算した月額の目安で、地域区分で変わります)。
| 要介護度 | 月額の限度額の目安 |
|---|---|
| 要介護1 | 167,650円 |
| 要介護2 | 197,050円 |
| 要介護3 | 270,480円 |
| 要介護4 | 309,380円 |
| 要介護5 | 362,170円 |
この加算は限度額の枠内で管理されるのか
結論として、この加算は限度額の枠内で管理されると考えられます。訪問介護で限度額管理の対象外とされている加算は、特別地域訪問介護加算、中山間地域等小規模事業所加算、中山間地域等居住者サービス提供加算、介護職員等処遇改善加算の4つで、緊急時訪問介護加算はこの一覧に入っていないためです。
ただし、本記事の作成時点では「限度額に算入する」と明記した文言までは確認できていません。そのため、限度額に近い月に緊急の訪問を依頼する場合は、ケアマネジャーや自治体に取り扱いを確認してください。超過分が出るかどうかは、給付管理(月の利用額の集計・管理)を行うケアマネジャーが把握しています。
算定できない例とQ&Aの考え方
ここでいう「対象外」は、ヘルパーが対応しないという意味ではなく、この加算が付かないという意味です。対応そのものは、ケアプランの変更など別の形で行われることがあります。
予定された訪問内容の変更
あらかじめ計画された日時に訪問し、急にサービス内容を変更した場合は、この加算の対象外です。たとえば(例)毎週火曜の朝にある生活援助の訪問で、急に入浴の介助に切り替えた、というケースです。このような場合は、ケアプランの変更で対応します。
訪問時に状態が急変した場合
訪問に行った際に利用者の状態が急変し、その場で緊急対応をした場合なども、対象外とされています。この加算は、「要請を受けて、計画外の訪問を行う」ことに対する加算であり、計画どおりの訪問中に起きた事態への対応は含まれないためです。
では、どこからが「計画に位置づけられていない」のか、公表されているQ&Aの考え方を見ておきます。
「計画に位置づけられていない」の判断(令和6年度Q&A)
令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(vol.4)の問4では、「計画に位置づけられていない」の考え方が示されています。要請の時点で、ケアプランの週間計画表やサービス利用票(第3表・第6表)に具体的な時間帯として記載されていない身体介護が、「計画に位置づけられていない」ものとされます。
また、単に「計画外の訪問を行う可能性がある」旨が、時間を明示しない形で書かれているだけであれば、加算を算定してもよいとされています。ケアプランに「必要時は臨時で訪問する」といった備考があっても、それだけで加算が使えなくなるわけではありません。
事業所・ケアマネジャー側の事務と同意
家族が直接行う手続きは多くありませんが、裏側で何が行われるかを短く説明します。
緊急の訪問後、事業所は訪問介護計画を必要に応じて修正し、ケアマネジャーもケアプランを変更しますが、変更はサービス利用票の変更など必要最小限で足りる取り扱いです。また、訪問の都度の同意は不要ですが、事前に算定要件とその趣旨を重要事項説明書等で説明し、同意を得ておく必要があります。契約時の重要事項説明書にこの加算の記載があるかは、確認しておきたい点です。
他の制度・加算との違い
名前が似た制度や加算と混同しないよう、違いを整理します。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護との違い
名前が似ていて混同されやすいのが、定期巡回・随時対応型訪問介護看護です。こちらは、日中・夜間を通じて定期巡回と随時対応を行う、月額包括報酬の仕組みです。一方、緊急時訪問介護加算は、通常の訪問介護で、計画外の訪問1回に100単位が加わる仕組みです。報酬の考え方が根本から異なります。
定期巡回・随時対応型については、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の解説記事で、仕組みや料金を詳しくまとめています。
ほかの「緊急時」の加算との混同に注意
居宅介護支援の緊急時等居宅カンファレンス加算は、医療機関の求めで医師・看護師と居宅を訪問し、サービス調整をしたときに居宅介護支援事業所が算定するもので、訪問介護の本加算とは別物です。障害福祉サービスの「緊急時対応加算」も別の制度なので、混ぜずにそれぞれの窓口に確認してください。
注意点とよくある失敗
制度の趣旨を踏まえ、家族がつまずきやすい点と改定の見通しをまとめます。
家族がつまずきやすい点
次のような場面でつまずきやすいと考えられます(一般論としての整理です)。
- 事業所に直接頼んで、ケアマネジャーへの連絡が後回しになる:事前連携が原則なので、できるだけ早くケアマネジャーにも情報が届くようにしておくと、算定の可否で行き違いが起きにくくなります。
- 「安否確認だけ」を頼んでしまう:安否確認や健康チェックだけでは、訪問介護費の算定対象外です。身体介護が必要な状況を具体的に伝えることが大切です。
- 予定の訪問を急に変えたい:これは緊急時の加算ではなく、計画の変更で対応するのが基本です。
制度改定の可能性
介護報酬は、3年ごとの改定のほか、令和8年のような臨時の改定が行われることもあります。この記事の100単位という数字や要件も、今後見直される可能性があります。申請や相談の前に、厚生労働省や自治体の最新資料、ケアマネジャー・事業所の説明で、現在の内容を確認してください。
まとめ
最後に、要点を振り返ります。
- 緊急時訪問介護加算は、計画外の身体介護中心型の訪問を要請から24時間以内に行ったときの加算で、1回の要請につき1回、100単位です。
- 算定にはケアマネジャーの判断(事前が原則、やむを得ない場合は事後も可)が必要で、家族の判断だけでは決まりません。
- 予定された訪問の内容変更、訪問時の急変対応、安否確認だけの訪問は対象外です。対象外は「この加算が付かない」という意味で、ヘルパーが対応しないという意味ではありません。
- 平時のうちに、重要事項説明書の記載、夜間の連絡先、自己負担の割合、月の限度額に近いときの扱いを確認しておくと安心です。
制度は改定で変わる可能性があります。この記事の考え方や運営方針はサイトの立ち位置もご覧ください。