定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、訪問介護と訪問看護を組み合わせ、日中・夜間を通じて定期的な巡回と随時の呼び出し対応を行う地域密着型の介護保険サービスです。24時間365日体制で在宅生活を支える仕組みとして、在宅介護を続けるための選択肢の一つに位置づけられています。この記事では、サービス内容や一体型・連携型の違い、要介護度別の料金の目安、利用開始までの流れを厚生労働省の資料にもとづいて解説します。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは
定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは、訪問介護員(ホームヘルパー)による身体介護と、看護師等による療養上の世話や診療の補助を、日中・夜間を通じて定期的な巡回と随時のコール対応を組み合わせて提供する介護保険サービスです。平成24年度(2012年度)の介護保険制度改正で新設された地域密着型サービスの一類型で、在宅で暮らす要介護者が、施設に入らずに24時間365日の見守りと介護・看護を受けられる仕組みとして位置づけられています。
介護保険法上の定義と創設の経緯
介護保険法第8条15項では、このサービスを「居宅要介護者について、心身の状況に応じて、その者の居宅において、または随時通報を受けて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって、定期的な巡回訪問により、または随時の通報を受けて行うもの、および看護師等による療養上の世話または必要な診療の補助を行うこと」と定めています。厚生労働省の資料によれば、制度創設の背景には、従来の訪問介護・訪問看護だけでは24時間を通じて在宅の高齢者を支える体制が不十分であったこと、医療ニーズの高い高齢者を介護と医療の両面から継続的に支える連携が弱かったことがあり、これらの課題に対応するために平成24年度に新設されました。
地域密着型サービスとしての位置づけ
このサービスは「地域密着型サービス」の一類型であり、都道府県ではなく市区町村が事業者を指定・監督します。そのため、原則としてサービスを提供する事業所が所在する市区町村に住民票がある方が利用対象となり、他の市区町村に住む人が広域的に利用することは基本的にできません(市区町村間の協議により例外的に認められる場合はあります)。事業所を探す際は、まず自分が住んでいる市区町村内に指定事業所があるかどうかを確認する必要があります。
サービス開始後の主な改定
創設後の主な改定として、令和3年度介護報酬改定では緊急時訪問看護加算やターミナルケア加算などが整理され、看取り期にある利用者への対応が評価されるようになりました。令和6年度介護報酬改定では、基本サービス費の単位数が見直されています。介護保険制度は3年ごとに見直される仕組みのため、今後もサービス内容や単位数が変わる可能性があります。最新の内容は、利用時にケアマネジャーや事業所に確認することが大切です。
サービス内容を構成する4つの要素
定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービス内容は、厚生労働省や独立行政法人福祉医療機構(WAM NET)の解説によると、大きく分けて次の4つの要素で構成されます。
①定期巡回サービス
あらかじめ決めた時間に、訪問介護員が短時間(20分未満が中心)の訪問を1日複数回行い、排せつ介助や安否確認、服薬確認などを行います。平成23年度に実施された厚生労働省のモデル事業では、1日あたりの平均訪問回数は要介護1で2.0回、要介護5で3.1回、全体平均で2.6回、1回あたりの平均移動時間は15.7分という実証データが示されており、20分未満の訪問のうち32.3%は排せつ介助が中心(50.5%)であったと報告されています。
②随時対応サービス(オペレーションセンター)
利用者からのコールを24時間365日受け付ける「オペレーションセンター」を設置し、看護師等のオペレーターが状況を聞き取り、訪問の要否や内容を判断します。人員基準では、看護職員を常勤換算2.5以上配置し、そのうち1名以上は常勤の保健師または看護師とすることが求められています。
③随時訪問サービス
オペレーターの判断にもとづき、必要に応じて訪問介護員または看護師等が利用者の自宅を訪問します。転倒時の対応や体調急変時の様子確認など、あらかじめ決められた時間以外に発生する突発的なニーズに対応する仕組みです。
④訪問看護サービス
看護師等が定期的に訪問し、療養上の世話(清拭、褥瘡の処置等)や医師の指示にもとづく診療の補助を行います。この訪問看護の部分をどのように提供するかによって、後述する「一体型」と「連携型」の違いが生まれます。
コール(随時通報)の方法
随時対応サービスへの通報は、事業所から貸与される専用の通信端末や、あらかじめ登録した電話番号からのコールで行うのが一般的です。オペレーターは通報内容を聞き取り、電話や訪問での対応が必要かどうか、必要であれば訪問介護員と看護師のどちらが対応すべきかを判断します。夜間に体調の変化を感じたときや、転倒後にすぐ助けが必要なときなど、あらかじめ決められた時間以外に発生する不安に、日中・夜間を問わず対応できる体制であることがこのサービスの特徴です。
一体型と連携型の違い
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、訪問看護の提供体制によって「一体型」と「連携型」の2つの類型に分かれます。どちらも定期巡回・随時対応・随時訪問の3つのサービスは自事業所で提供しますが、訪問看護の提供方法が異なります。
一体型の特徴
一体型は、1つの事業所が訪問介護と訪問看護の両方の機能を備え、定期巡回・随時対応・随時訪問・訪問看護のすべてを自ら一体的に提供する形態です。介護と看護のスタッフが同じ事業所に所属するため、情報共有や連携を行いやすいとされています。なお、事業所の実情に応じて、訪問看護の一部を他の訪問看護事業所に委託することも認められています。
連携型の特徴
連携型は、定期巡回・随時対応・随時訪問を行う事業所が、別に契約した訪問看護事業所と連携しながらサービス全体を提供する形態です。すでにかかりつけの訪問看護ステーションを利用している場合、そのまま同じ訪問看護事業所との関係を続けながら定期巡回サービスを利用できるという利点があります。
実際に選ばれている割合
厚生労働省の資料(平成26年6月時点、498事業所を対象とした調査)によると、実施形態別の事業所割合は連携型が65.5%、一体型が36.1%となっており、連携型を選ぶ事業所の方が多くなっています。連携型が選ばれる理由として「利用者がすでに利用している訪問看護事業所がある場合、事業所を変更すると利用者の支障になる」といった点が挙げられています。
どちらを選ぶかの目安
すでに利用している訪問看護ステーションがあり、そのまま担当を続けてほしい場合は連携型を選ぶケースが多くなります。一方、新たにサービスを利用開始する場合や、医療的なケアの必要性が高く介護と看護のスタッフがより密に連携する必要がある場合には、一体型が選ばれる傾向があります。どちらの類型を選べるかは、地域内にある事業所の実施形態によっても左右されるため、担当のケアマネジャーに相談しながら検討するとよいでしょう。
対象者となる要介護度の条件
定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用できるのは、要介護1以上の認定を受けた方です。介護保険法上、このサービスは「居宅要介護者」を対象と規定しており、要支援1・2の方が利用する介護予防サービスとしては設定されていないため、要支援認定の方は対象外となります。
要介護1以上が対象、要支援は対象外
要支援の方が同様の見守りニーズを持つ場合は、訪問介護や訪問看護など、介護予防サービスの枠組みの中で個別にサービスを組み合わせて利用することになります。
医療的ケアが必要な方への対応
経管栄養、中心静脈栄養、人工呼吸療法、在宅酸素療法といった医療的ケアへの対応可否は事業所によって異なります。厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、事業所ごとに対応可能な医療処置の範囲を確認できるようになっており、利用を検討する際はケアマネジャーを通じて、必要な医療的ケアに対応できる事業所かどうかを事前に確認することが重要です。
利用場面の傾向
要介護度別の基本サービス費の単位数は要介護度が上がるほど高く設定されており、これは要介護度が高い利用者ほど定期巡回の回数や随時対応の頻度、訪問看護の必要性が増える傾向を反映したものです。要介護1・2では安否確認や排せつ介助を中心とした短時間の定期巡回が中心になりやすく、要介護4・5では体位交換や医療的な処置を伴う訪問看護の比重が高くなりやすいなど、実際に必要となる支援の内容は要介護度によって変わってきます。
利用できる料金・自己負担額の目安
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用料金は、通常の訪問介護のように1回ごとの出来高払いではなく、要介護度に応じた月額の包括報酬という仕組みで計算されます。
月額包括報酬という仕組み
1か月あたりの利用回数にかかわらず、要介護度別に定められた単位数にもとづいて月額の報酬が決まります。そのため、訪問回数を気にせず必要な時にコールできる一方、逆に利用が少ない月であっても料金は変わりません。なお、1か月まるまる入院するなど自宅にいない期間がある場合、その月の費用は日割りではなく算定されない(0円になる)扱いとなる点に注意が必要です。
要介護度別の自己負担額の目安
独立行政法人福祉医療機構(WAM NET)が公表する令和6年度介護報酬改定後のサービスコード表によると、1か月あたりの基本サービス費の単位数は、連携型(訪問看護なし)で要介護1が5,446単位、要介護5が24,692単位、一体型(訪問看護あり)で要介護1が7,946単位、要介護5が28,298単位です。1単位10円、自己負担割合1割として計算した場合の目安額は次のとおりです(実際の単価は地域区分によって10.00〜11.40円程度で異なり、自己負担割合も所得に応じて1〜3割になります)。
要介護度が上がるほど、また訪問看護を組み合わせるほど月額の自己負担額は大きくなりますが、通常の訪問介護を1日に複数回利用し、これに訪問看護を別契約で組み合わせる場合と比べると、包括報酬のため利用回数が多くなるケースではかえって割安になることもあります。
主な加算
基本サービス費に加えて、状態に応じた加算が設定されています。たとえば、病状の急変等に対応して緊急の訪問看護を行った場合の緊急時訪問看護加算(月315単位)、終末期にあるがん末期の利用者等に対してターミナルケアを行った場合のターミナルケア加算(死亡月に2,000単位)などがあります。
地域区分による単価の違い
介護保険サービスの1単位あたりの単価は全国一律10円ではなく、人件費等の地域差を踏まえて「地域区分」ごとに細かく設定されています。東京23区など都市部では1単位あたりの単価が高く設定される一方、それ以外の多くの地域では1単位10円が基準となります。そのため、同じ要介護度・同じ利用状況であっても、居住する地域によって実際の自己負担額は変わります。正確な金額は、担当のケアマネジャーや利用を検討している事業所に確認するとよいでしょう。
通常の訪問介護・訪問看護との違いと併用
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、通常の訪問介護・訪問看護とは料金体系だけでなく、ケアプラン上の位置づけも異なります。
区分支給限度基準額との関係
介護保険で利用できるサービスには、要介護度ごとに1か月あたりの上限となる区分支給限度基準額が設定されています。定期巡回・随時対応型訪問介護看護もこの支給限度額の対象に含まれるため、他のサービスと組み合わせて利用する場合は、月々の合計単位数が上限を超えないように、ケアマネジャーがケアプラン全体を調整します。
通所系サービスと併用する場合の目安
埼玉県が公表する普及マニュアルでは、デイサービスなどの通所系サービスと併用する場合の目安として、訪問介護サービスを利用しない場合は週2回・月10回程度、訪問介護サービスを利用する場合は週1回程度が一つの目安として示されています。実際の利用回数は、本人の心身の状態や生活状況に応じてケアプランで個別に検討されます。
夜間対応型訪問介護との違い
似た名称のサービスに「夜間対応型訪問介護」があります。夜間対応型訪問介護は、夜間の時間帯に限定して定期巡回と随時訪問を行うサービスで、訪問看護は含まれず、日中の対応もありません。これに対し定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、日中・夜間を通じて24時間365日対応し、訪問看護も組み合わせられる点が異なります。社会保障審議会介護給付費分科会では、両サービスの役割の整理や将来的な統合が論点として議論されており、今後、制度の枠組みが見直される可能性があります。
利用開始までの流れ・申し込み方法
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用開始までの流れは、他の介護保険サービスと同様、要介護認定を受けたあとケアマネジャーを通じて進めます。
ケアマネジャーによるアセスメントとプランニング
まず、担当のケアマネジャーが本人の心身の状態や生活状況、家族の介護状況などをアセスメント(評価)し、定期巡回・随時対応型訪問介護看護が適切かどうかを検討します。適していると判断されれば、サービスを提供する事業所へ依頼し、1日の中でどの時間帯に定期巡回を行うか、随時対応にどう備えるかといった週間スケジュールの案を作成します。
サービス担当者会議とスケジュール作成
作成したスケジュール案をもとに、本人・家族・ケアマネジャー・事業所の担当者が参加するサービス担当者会議を開き、内容を確認・調整したうえでケアプランを確定します。利用開始後も、本人の状態変化に応じて巡回の回数や時間帯を見直しながら運用していきます。
これまで通常の訪問介護や訪問看護を利用していた方が定期巡回・随時対応型訪問介護看護に切り替える場合は、サービス提供事業所が変わることもあるため、担当のケアマネジャーと相談しながら、切り替えのタイミングや引き継ぎの方法についても事前に確認しておくと、スムーズに移行しやすくなります。
全国の普及状況と今後の見込み
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は制度創設から10年以上が経過し、事業所数は年々増加してきました。
事業所数の年次推移
厚生労働省の介護給付費等実態統計にもとづく資料によると、請求事業所数は平成25年度の176事業所から、平成31年度には946事業所、令和4年度には1,151事業所まで増加しています。
第8期計画における今後の見込み
厚生労働省の資料では、第8期介護保険事業計画にもとづく利用者数の見込みとして、令和4年度実績の約3.5万人から、令和7年度には約4.4万人へ、約26%増加する見通しが示されています。社会保障審議会介護給付費分科会では、夜間対応型訪問介護との将来的な整理・統合も論点として議論されており、今後もサービスのあり方が見直されていく可能性があります。
事業所数は全国的に増加してきた一方、このサービスは市区町村ごとに事業者が指定される地域密着型サービスであるため、都市部と地方とでは整備状況に差があります。居住している市区町村内に指定事業所が無い、または少ないという地域もあるため、利用を検討する際は、まず地域内にどのような事業所があるかを早めに確認しておくと安心です。
メリットと向いているケース
このサービスの最大の特徴は、施設に入所せず自宅にいながら24時間365日の見守りと介護・看護を受けられる点にあります。
利用者にとってのメリット
埼玉県の普及マニュアルでは、利用者にとってのメリットとして、住み慣れた自宅で暮らし続けながら24時間365日の支援体制を確保できること、多くの場合、これまで利用していた訪問介護事業所のヘルパーが引き続き支援を担当できること(馴染みの関係を継続しやすいこと)などが挙げられています。
在宅介護の限界を防ぐ選択肢として
夜間の排せつ介助や体調急変時の不安から、家族が「そろそろ施設入所を考えるべきか」と悩む場面は少なくありません。定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、日中・夜間を通じた定期巡回と24時間のコール対応を組み合わせることで、こうした不安の一部を軽減し、在宅介護を続けられる期間を延ばす選択肢の一つになり得ます。在宅介護を続けるかどうかの判断基準については、関連記事の在宅介護の限界のサインとはもあわせて参考にしてください。
家族の介護負担軽減という視点
在宅介護では、夜間や早朝に排せつ介助や体位交換のために家族が何度も起きて対応しているケースも少なくありません。定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用することで、こうした対応の一部を専門職に任せられるようになり、家族の睡眠時間や心身の負担を軽減する効果も期待できます。介護をする家族自身の健康を保つことは、在宅介護を無理なく継続するうえで重要な要素の一つです。
利用する際の注意点
利用を検討する際に、あらかじめ知っておきたい注意点を整理します。
入院中は費用が発生しない
前述のとおり、1か月を通じて入院するなど自宅にいない期間がある場合、その月の基本サービス費は算定されません。逆に言えば、月の途中で退院して自宅に戻った場合は、その月の分から通常どおり算定される扱いとなるため、入退院のタイミングについてはケアマネジャーや事業所に確認しておくと安心です。
事業所の探し方
このサービスは地域密着型サービスであるため、まずは自分が住んでいる市区町村内に指定事業所があるかどうかを確認する必要があります。担当のケアマネジャーに相談するほか、厚生労働省の介護サービス情報公表システムで、事業所ごとの体制やオペレーション時間、対応可能な医療的ケアの範囲などを比較できます。通常の訪問介護や訪問看護との違いも踏まえたうえで、本人の状態に合ったサービスかどうかをケアマネジャーと相談しながら判断することが大切です。
まとめ
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、訪問介護と訪問看護を組み合わせ、定期巡回と24時間365日の随時対応を行う地域密着型サービスです
- 訪問看護を自事業所で一体的に提供する「一体型」と、他の訪問看護事業所と連携する「連携型」の2類型があります
- 対象は要介護1以上で、要支援の方は利用できません
- 料金は要介護度別の月額包括報酬で、令和6年度改定後の目安で連携型は月5,446円〜24,692円程度(1割負担・1単位10円換算)です
- 事業所数は平成25年度の176事業所から令和4年度には1,151事業所まで増加しており、在宅介護を続けるための選択肢として普及が進んでいます
制度や金額は今後の介護保険制度改定によって変わる可能性があります。最新の情報は担当のケアマネジャーや市区町村の窓口、厚生労働省の公表資料で確認してください。このサイトは特定の事業所を評価・推奨するものではなく、公的データにもとづく中立的な情報提供を目的としています。運営方針の詳細はこのサイトの立ち位置をご覧ください。