在宅介護の限界のサインとは|施設入居のタイミングと判断基準を解説

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目次

在宅介護をいつまで続けるか、施設入居に切り替えるタイミングをどう判断すればよいかは、多くの家族が悩む問題です。この記事では、在宅介護の限界を示すサインに加え、介護離職の実態データ、介護休業・介護休暇といった公的支援制度、地域包括支援センターへの相談の流れ、レスパイトケアの制度的な位置づけ、施設サービスへ移行する際に確認したい公的手続きまで、厚生労働省・総務省等の統計や制度情報にもとづき整理します。判断に絶対の正解はありませんが、客観的な情報を知っておくことで、いざというときに落ち着いて次の一歩を選びやすくなります。

在宅介護の限界を判断するのが難しい理由

「まだ大丈夫」と思っているうちに、介護者・要介護者の双方が限界に近づいていることは少なくありません。

少しずつ悪化するため気づきにくい

要介護者の状態も、介護者の負担も、多くの場合は急激にではなく少しずつ悪化していきます。日々の変化は小さくても、半年前・1年前と比較すると大きく状況が変わっていることに、渦中にいる家族ほど気づきにくいものです。久しぶりに会う遠方の親族の方が変化に気づきやすい、というのもよくあるパターンです。

「施設に頼る=見捨てる」という誤解

施設入居を検討することに罪悪感を抱く家族は少なくありませんが、施設は専門的なケアを提供する場であり、入居は「見捨てる」ことではありません。介護者が倒れてしまっては共倒れになりかねず、本人にとっても、専門職による安定したケアを受けられる環境の方が良い結果につながることもあります。介護は本来、家族だけで抱え込むものではなく、公的サービスや専門職の力を借りながら続けていくものだという前提を、家族自身が持っておくことも大切です。

老々介護と主な介護者の実態

在宅介護の負担がどの程度深刻な社会的課題になっているか、公的統計から確認しておきましょう。誰が、どれくらいの時間をかけて介護を担っているのかを客観的な数字で把握しておくことは、自分たちの状況が特別なものではないと理解するうえでも役立ちます。

老々介護は6割を超えている

厚生労働省の2022年(令和4年)国民生活基礎調査によると、同居の主な介護者と要介護者がともに65歳以上である「老々介護」の割合は63.5%にのぼり、3年前の調査(59.7%)から3.8ポイント上昇して過去最高を更新しました。介護者・要介護者ともに75歳以上という「超老々介護」ともいえるケースも35.7%を占めており、介護者自身も高齢で体力的な限界を抱えているケースが多いのが実態です。子世代が遠方に住んでいる、あるいは子世代自身も自分の子育てや仕事で手一杯であるといった事情から、高齢の配偶者が介護を一手に担わざるを得ない状況が増えていることがうかがえます。

主な介護者との続柄・性別

同じ国民生活基礎調査によると、要介護者等からみた「同居の主な介護者」の続柄は、配偶者が22.9%で最も多く、次いで子が16.2%、子の配偶者が5.4%となっています。要介護者等と主な介護者が同居しているケースは45.9%で、別居の家族等が担っているケースが11.8%、訪問介護等の事業者が主な介護者となっているケースも15.7%あります。また、同居の主な介護者を性別でみると、男性が31.1%、女性が68.9%と、女性が担うケースが多数を占めています。

介護に費やす時間の実態

同居の主な介護者の介護時間を要介護度別にみると、要支援1から要介護2までは「必要なときに手をかす程度」が最も多い一方、要介護3以上になると「ほとんど終日」が最も多くなります。全体では、介護時間が「ほとんど終日」に及ぶ人が19.0%、「半日程度」が11.1%、「2〜3時間程度」が10.9%、「必要なときに手をかす程度」が45.0%となっています。介護時間が「ほとんど終日」に及ぶ人に限ってみると、女性の配偶者が45.7%と突出して多く、次いで女性の子が18.5%、男性の配偶者が15.7%となっており、配偶者を中心とした特定の家族に長時間の介護が集中しやすい実態がうかがえます。

在宅介護の限界のサイン(介護者・要介護者双方の変化)

在宅介護の限界を判断するうえでは、介護者自身の変化と、要介護者本人の状態変化の両方に目を向けることが重要です。どちらか一方だけを見ていると、もう一方の変化を見落としてしまうことがあるため、定期的に両方の状態を振り返る機会を持つことが望ましいでしょう。

介護者自身の体調不良・睡眠不足

夜間の介助やトイレ介助のために十分な睡眠が取れない状態が続く、腰痛や体調不良を我慢しながら介護を続けている、といった状態は、介護者自身の健康を損なう危険信号です。介護者が倒れてしまえば、要介護者のケアも継続できなくなってしまいます。

精神的な余裕がなくなる

些細なことでイライラしてしまう、要介護者に対して強い口調になってしまう、といった変化も、精神的な限界が近づいているサインです。介護うつのリスクにもつながるため、こうした変化を感じたら早めに誰かに相談することが重要です。

医療的ケアの必要度が上がる

たんの吸引や経管栄養など、家族だけでは対応が難しい医療的ケアが必要になった場合、在宅での介護には限界が生じやすくなります。訪問看護等を活用しても対応しきれない場合は、医療体制の整った施設への入居を検討する時期といえます。特に24時間体制での医療的な見守りが必要になった場合、家族だけで対応し続けることは現実的に難しく、看護職員が配置された施設への切り替えを早めに検討する必要があります。

夜間の見守りが頻繁に必要になる

認知症による夜間の徘徊や、頻回なトイレ介助など、夜間に何度も対応が必要な状態が続くと、介護者の睡眠時間が慢性的に不足し、心身の限界に直結しやすくなります。夜間対応の負担は、在宅介護の継続可否を左右する大きな要因のひとつです。夜間対応型の訪問介護サービスや、施設への短期入所(ショートステイ)を組み合わせることで負担を軽減できる場合もあるため、一人で抱え込む前にケアマネジャーに相談することが望ましいでしょう。

介護離職の実態データ

家族の介護のために仕事を辞める「介護離職」は、在宅介護の限界が引き起こす深刻な結果のひとつです。収入が減るだけでなく、離職によって社会とのつながりが薄れ、結果として在宅介護の負担がさらに重くなってしまう悪循環につながることもあります。公的統計から実態を確認します。

介護・看護を理由とした離職者数の推移

総務省統計局の2022年(令和4年)就業構造基本調査によると、過去1年間に「介護・看護のため」に前職を離職した人は10.6万人で、2017年の9.9万人から0.7万人増加しました。過去5年間の累計でみると47万人(2017年調査は49万人)とやや減少していますが、直近1年間の離職者数の推移をみると、2007年の14.5万人から2012年の10.1万人、2017年の9.9万人へと減少を続けた後、2022年には10.6万人へと増加に転じています。内訳をみると、女性が8.0万人(うち有業者1.8万人、無業者6.2万人)と大半を占め、男性は2.6万人(うち有業者0.5万人、無業者2.1万人)となっています。離職した人のうち、無業者(調査時点で就業していない人)は合計8.3万人にのぼり、離職後も再就職に至っていない人が多い実態がうかがえます。

離職前に利用したかった両立支援制度

厚生労働省が令和3年度に実施した委託調査によると、仕事を辞める前にどのような仕事と介護の両立支援制度を利用したかったかをたずねた設問では、「介護休業制度」を挙げた人が約6割(64.4%)、「介護休暇制度」を挙げた人が約4割(40.5%)にのぼりました。一方で、実際に介護をしている雇用者(322万人)のうち介護休業等制度を利用した人は11.6%にとどまり、「介護休業」の利用者は1.6%(5万1千人)、「短時間勤務」の利用者は2.3%(7万5千人)、「介護休暇」の利用者は4.5%(14万5千人)にとどまっています。制度を知らない、あるいは利用しにくい職場環境であることが、介護離職につながっている可能性がうかがえます。

雇用形態による制度利用率の差

同じ調査を雇用形態別にみると、「介護休業等制度の利用あり」の割合は、正規の職員・従業員で15.0%である一方、非正規の職員・従業員では8.7%にとどまっています。非正規雇用の労働者は、そもそも介護休業や介護休暇の対象になるかどうかの要件(雇用期間の見込み等)を満たしにくい場合があることに加え、制度自体が周知されにくいことも背景にあると考えられます。家族の介護に直面した際は、雇用形態にかかわらず、まず自分が対象家族に該当するか、勤務先の制度がどうなっているかを確認しておくことが望ましいでしょう。

介護休業・介護休暇などの公的支援制度

介護離職を防ぐため、育児・介護休業法では家族介護者向けの休業・休暇制度が定められています。厚生労働省の資料によると、対象家族とは配偶者・父母・子・祖父母・兄弟姉妹・孫・配偶者の父母を指し、同居の有無は問わないとされています。制度の存在を知らないまま離職を選んでしまうことがないよう、それぞれの仕組みを確認しておきましょう。

介護休業の仕組みと介護休業給付金

介護休業は、要介護状態にある対象家族の介護の体制を構築するために取得できる休業で、対象家族1人につき通算93日の範囲内で、合計3回まで分割して取得できます。制度の趣旨は、労働者自身が終日つきっきりで介護をするための休業というより、その93日間のうちに、ケアマネジャーへの相談やサービス事業者との契約、施設の見学・申込みなど、その後も仕事を続けながら介護に対応できる体制を整えることに主眼が置かれています。事業主に賃金の支払義務はありませんが、一定の要件を満たすと雇用保険から賃金の67%相当額の介護休業給付金が支給される仕組みがあります。有期契約労働者も、取得予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までの間に労働契約の期間が満了することが明らかでない場合は、取得の対象になります。取得の前提となる「常時介護を必要とする状態」は、2週間以上の期間にわたり常時介護を要する状態を基本とし、厚生労働省が示す判断基準を参照しつつ、労働者個々の事情に応じて事業主が柔軟に運用することが望まれるとされています。

介護休暇の仕組み

介護休暇は、対象家族が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日を限度に、1日単位または時間単位で取得できる休暇です。介護休業とは別の制度であり、通院の付き添いや役所での手続きなど、短時間の対応が必要な場面での利用が想定されています。2025年(令和7年)4月1日以降は、勤続6か月未満の労働者を労使協定に基づいて対象から除外する仕組みが廃止され、より多くの労働者が利用しやすくなっています。

所定外労働の制限・短時間勤務等の措置

介護休業・介護休暇のほかにも、育児・介護休業法には仕事を続けながら介護にあたるための制度が定められています。介護を行う労働者が請求した場合、事業主は所定外労働をさせることを制限しなければならず、時間外労働についても月24時間・年150時間を超える労働をさせることが制限されます。深夜業(午後10時から午前5時まで)についても、労働者の請求により制限の対象になります。また、事業主には、介護を行う労働者について3年の間で2回以上利用できる短時間勤務制度・フレックスタイム制・始業終業時刻の繰上げ繰下げ・介護費用の援助措置のいずれかを講じることが義務付けられており、2025年(令和7年)4月1日以降は、労働者がテレワークを選択できるようにする努力義務も事業主に課されています。

事業主に義務付けられる措置(令和7年施行)

令和6年の育児・介護休業法改正により、事業主には、労働者から家族の介護に直面した旨の申し出があった際に、介護休業・介護両立支援制度等について個別に周知し、利用の意向を確認することが義務付けられました(令和7年4月1日施行)。あわせて、研修の実施や相談窓口の設置といった雇用環境整備の措置や、40歳など介護に直面する前の早い段階での情報提供の措置を講じることも義務付けられています。改正の趣旨として、厚生労働省の資料では、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするための措置の拡充とあわせて、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化が掲げられています。介護休業等の取得を理由とした解雇その他の不利益な取扱いは禁止されており、上司・同僚等からのハラスメントを防止する措置を講じることも事業主の義務です。勤務先にこうした制度や周知の体制が整っているかどうかは、人事労務担当部署や社内規程で確認できます。

限界を迎える前に検討したいこと

「もう限界」となる前に、できる対策があります。ここまで見てきた統計や公的支援制度をふまえると、負担を一人で抱え込まずに済む選択肢は、在宅サービスの見直し以外にもいくつか存在します。

在宅サービスを増やして様子を見る

すぐに施設入居を決断するのではなく、まずは訪問介護やデイサービスの利用回数を増やす、支給限度額の範囲内でサービスを組み替えるなど、在宅での負担軽減策を検討する余地がないか確認することも大切です。

早めにケアマネジャーへ相談する

「まだ相談するほどではない」と思っている段階から、ケアマネジャーに現状を伝えておくことが望ましいでしょう。状況が変化した際にスムーズに対応してもらえるだけでなく、地域の施設の空き状況などの情報も早めに得られます。ケアマネジャーが決まっていない場合や、介護保険サービスの枠を超えた相談をしたい場合は、後述する地域包括支援センターも早い段階からの相談先として活用できます。

地域包括支援センターへの相談の流れ

ケアマネジャーが決まっていない場合や、制度の枠を超えた相談をしたい場合には、地域包括支援センターも重要な相談先になります。「どこに相談すればよいか分からない」という段階でも利用できる窓口として、覚えておくとよいでしょう。

センターの役割と設置根拠

地域包括支援センターは、介護保険法第115条の46第1項にもとづき市町村が設置主体となる公的機関で、地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことで、保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的としています。厚生労働省老健局の調べによると、2025年(令和7年)4月現在、全国に5,487か所設置されており、身近な場所で相談を受け付けるブランチが1,567か所、本体のセンターと一体的に業務を行うサブセンターが320か所設けられています。ブランチ・サブセンターを含めると全国で7,374か所となり、すべての市町村に少なくとも1つは設置されています。運営は、市町村が直接運営する場合と、社会福祉法人等に委託して運営する場合があります。

配置される専門職と主な業務

地域包括支援センターには、保健師等・社会福祉士等・主任介護支援専門員等の3職種が配置され、それぞれの専門性を生かして連携しながら業務にあたります。業務は大きく、地域の高齢者や家族介護者に初期段階から継続的・専門的な相談支援を行う「総合相談支援事業」、成年後見制度の活用促進や高齢者虐待への対応などを行う「権利擁護事業」、個々の介護支援専門員への支援等を行う「包括的・継続的ケアマネジメント支援事業」、要支援者等の介護予防・日常生活支援を行う「第一号介護予防支援事業」の4つに整理されます。これらに加えて、地域の関係者が集まり地域づくりや政策形成について検討する「地域ケア会議」の実施も、地域包括支援センターが担う役割のひとつです。

相談の流れ

地域包括支援センターの総合相談支援事業は、地域の高齢者や家族介護者に対して初期段階から継続的・専門的に相談支援を行い、必要なサービスにつなげることを目的としています。担当の地域(中学校区単位で設置されていることが多い)を管轄するセンターに連絡すれば、現在の状況や困りごとを聞き取ったうえで、要介護認定の申請支援、在宅サービスの利用調整、権利擁護に関する相談など、状況に応じた対応につなげてもらえます。介護保険サービスを利用していない段階でも相談できる窓口である点が、ケアマネジャーとは異なる特徴です。また、地域包括支援センターは介護サービス事業者や医療機関、民生委員、ボランティアのほか、都道府県労働局(介護休業・介護休暇等に関する相談窓口)とも連携する「地域包括支援ネットワーク」の中核を担っており、介護と仕事の両立に関する相談についても、必要に応じて適切な窓口につないでもらうことができます。

レスパイトケア(短期入所等)の制度的位置づけ

在宅介護を続けるうえで、介護者が定期的に休息をとる「レスパイトケア」の考え方と、その制度上のルールを確認しておきましょう。レスパイトケアは、介護者が体調を崩してから慌てて利用を検討するのではなく、限界を迎える前の予防的な選択肢として、あらかじめケアプランに組み込んでおくという考え方で活用されています。

短期入所の利用日数に関するルール

短期入所生活介護・短期入所療養介護(ショートステイ)には、2つの日数ルールがあります。1つは連続利用の上限で、原則として連続30日を超えて利用することはできません(30日を超えた分は介護保険の給付対象外になります)。もう1つは、要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えないようにするというルールです。たとえば認定有効期間が180日であれば、原則として90日までが利用日数の目安になります。この日数には、介護保険給付の対象となった利用日数のみが数えられ、全額自己負担で利用した日数は含まれません。

上限を超えて利用できる例外

利用者の心身の状況や、介護者の急病・入院、高齢者虐待のおそれ、施設への入所時期が既に決まっているといった特別な事情があり、特に必要と認められる場合には、この上限を超えて短期入所を利用できることがあります。その場合、ケアマネジャーが理由書や居宅サービス計画書、サービス担当者会議の記録、利用票、アセスメント表などの必要書類を、利用予定月の前月15日までに保険者へ提出することが求められます。上限を超えた利用について必要な手続きが取られていないと、後日、保険給付の返還を求められることもあるため、早めにケアマネジャーへ相談しておくことが望ましいでしょう。特に、介護者の急病や入院のように緊急性の高い事情で短期入所の利用が急に必要になった場合は、通常の手続きより先に施設や保険者への相談を進めることになるケースもあるため、日頃からケアマネジャーと連絡が取りやすい関係を作っておくことが役立ちます。

デイサービスなど他のレスパイト手段

レスパイトケアは短期入所に限らず、デイサービス(通所介護)の利用回数を増やすことでも一定の効果が見込めます。日中の数時間だけでも要介護者が事業所で過ごす時間があれば、介護者にとっては通院や用事を済ませたり、まとまった休息をとったりする時間を確保しやすくなります。ただし、いずれのサービスも区分支給限度基準額の範囲内で組み合わせる必要があるため、短期入所の利用日数を増やす際には、他の在宅サービスとのバランスをケアマネジャーと一緒に調整することになります。

施設入居を検討する際の選択肢

実際に施設入居を検討する段階になったら、いくつかの選択肢を整理しましょう。施設ごとに入居条件や費用の目安、提供されるケアの内容が異なるため、複数の候補を比較しながら検討を進めることになります。

まずはショートステイで試す

短期入所(ショートステイ)を利用して、数日間だけ施設での生活を体験してもらう方法があります。本人が施設での生活に慣れるきっかけになるだけでなく、介護者にとっても一時的な休息(レスパイト)の機会になります。

施設タイプの候補を整理する

要介護度や医療的ケアの必要性に応じて、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホームなど候補となる施設タイプを整理します。詳しい選び方は老人ホームの選び方の記事で解説しています。

在宅から施設サービスへ移行する際に確認したい手続き

実際に施設入居を決めた後は、いくつかの公的な手続きを済ませておく必要があります。手続きの多くは施設や市区町村の窓口が案内してくれますが、あらかじめ全体像を知っておくと、入居準備をスムーズに進めやすくなります。

要介護度の再確認・区分変更申請

施設入所を検討する時点で、心身の状態が要介護認定を受けた当時から変化していることがあります。現在の要介護度が実際の状態と合わなくなっている場合は、認定の有効期間中であっても区分変更申請を行うことができます。区分変更申請は市区町村の窓口で随時受け付けられており、新たな認定調査と主治医意見書にもとづいて要介護度が再判定されます。施設によっては入所条件となる要介護度(たとえば特別養護老人ホームは原則要介護3以上)が定められているため、事前に現在の要介護度を確認しておくことが大切です。申請から結果通知までは、通常の新規申請と同様に一定の日数がかかるため、入所を急ぐ事情がある場合は早めにケアマネジャーや市区町村の窓口に相談しておくとよいでしょう。

負担限度額認定証(特定入所者介護サービス費)の申請

介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院)やショートステイを利用する際の食費・居住費は、原則として全額自己負担です。ただし、世帯(と配偶者)が住民税非課税で、預貯金等が段階別の基準を下回る場合には、市区町村に申請して「介護保険負担限度額認定証」の交付を受けることで、食費・居住費の負担が段階に応じて軽減される「特定入所者介護サービス費」という制度があります。預貯金等の基準は所得段階によって異なり、単身の場合、生活保護受給者等が該当する第1段階では1,000万円以下、年金収入が82.65万円以下の第2段階では650万円以下、年金収入が120万円を超える第3段階(2)では500万円以下などと定められています。食費の負担限度額も段階に応じて1日あたり300円台から1,300円台程度まで異なります。認定証は自動更新されないため、有効期間内にあらためて更新の申請を行う必要があります。

施設サービス計画への切り替え

在宅サービスを利用していた場合、施設に入所するとケアプランの作成主体が、居宅介護支援事業所のケアマネジャーから入所先の施設のケアマネジャーに変わります。施設サービス計画は、入所後の心身の状態や生活状況にもとづいて改めて作成されるため、それまで利用していた在宅サービスの情報を施設側に丁寧に引き継いでおくことが、入所後のケアの質を左右します。既往歴や服薬状況、これまでの介護で工夫してきた点、本人の生活リズムなどは、口頭だけでなく書面でも申し送りをしておくと、担当が変わった後も同じ方針でケアを続けやすくなります。

本人・家族の合意形成

施設入居は本人の人生に関わる大きな決断であり、丁寧な合意形成が欠かせません。

本人の気持ちに配慮した伝え方

本人にとって、住み慣れた自宅を離れることへの不安や抵抗感は自然なものです。「施設に入れる」という一方的な伝え方ではなく、本人の意向を聞きながら、なぜ施設という選択肢を検討しているのかを丁寧に説明することが、納得感のある決断につながります。

きょうだい間での役割・費用分担

介護の負担が特定の家族に偏っていると、後々の家族関係にしこりを残すことがあります。施設入居を検討する段階で、きょうだいなど関係者間で役割分担や費用負担について話し合い、特定の誰かだけに負担が集中しない体制を作っておくことが望ましいでしょう。

まとめ

  • 在宅介護の限界は少しずつ進行するため、介護者・要介護者双方の変化に注意する
  • 老々介護(65歳以上同士)の割合は63.5%、介護・看護を理由とした離職者は年間10.6万人(いずれも公的統計)で、家族介護の負担は社会的な課題になっている
  • 介護休業(通算93日・給付金は賃金の67%相当)や介護休暇(年5日・対象家族2人以上で年10日)など、離職を防ぐための公的な支援制度がある
  • 限界を迎える前に、在宅サービスの見直しや、ケアマネジャー・地域包括支援センターへの早めの相談を検討する
  • 施設入居はショートステイでの試し利用から始め、区分変更申請や負担限度額認定証の申請といった手続きも確認しながら、本人・家族間で丁寧に合意形成を進める

よくある質問

在宅介護の限界のサインにはどんなものがありますか?

介護者側では体調不良や睡眠不足、精神的な余裕のなさ、要介護者側では医療的ケアの必要度の上昇や夜間の頻回な見守りの必要性などが、限界のサインとして挙げられます。

老々介護はどのくらいの割合ですか?

厚生労働省の2022年国民生活基礎調査によると、同居の主な介護者と要介護者がともに65歳以上の老々介護は63.5%で、過去最高を更新しています。

介護離職を防ぐための公的な制度はありますか?

育児・介護休業法にもとづく介護休業(対象家族1人につき通算93日、3回まで分割取得可、給付金は賃金の67%相当)や介護休暇(年5日、対象家族2人以上で年10日)などの制度があります。

施設入居を検討する前にできることはありますか?

訪問介護やデイサービスの利用回数を増やすなど在宅サービスの見直しや、早めにケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談することが有効です。ショートステイで一時的に施設生活を体験する方法もあります。

本人が施設入居を嫌がる場合はどうすればいいですか?

一方的に伝えるのではなく、本人の意向を聞きながら、なぜ施設という選択肢を検討しているのかを丁寧に説明することが大切です。ショートステイから始めて徐々に慣れてもらう方法も有効です。

地域包括支援センターにはどんなことを相談できますか?

地域の高齢者や家族介護者を対象にした総合相談窓口で、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等が、要介護認定の申請支援や在宅サービスの利用調整、権利擁護に関する相談など幅広く対応しています。介護保険サービスを利用していない段階でも相談できます。

参考・出典

  1. 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 (厚生労働省)
  2. 国民生活基礎調査(令和4年)Ⅳ 介護の状況 (厚生労働省)
  3. 令和4年就業構造基本調査 結果の概要 (総務省統計局)
  4. 令和6年育児・介護休業法改正について【介護関係を中心に】 (厚生労働省)
  5. 短期入所サービスの利用日数が要介護認定有効期間の半数を超える場合の取扱い (福岡県筑紫野市)
  6. 特定入所者介護サービス費(負担限度額認定証) (神奈川県秦野市)
  7. 地域包括支援センターについて (厚生労働省)