訪問介護の初回加算とは、新規に訪問介護計画を作成した利用者に対して、サービス提供責任者(サ責)が初回の訪問を自ら行うか、他の訪問介護員の訪問に同行した場合に、1月につき200単位を算定できる加算です。単価が最も低い「その他」地域(1単位10円)なら総額2,000円、1割負担で自己負担は約200円、1級地(1単位11.40円)なら総額2,280円、1割負担で約228円が目安です。
この記事では、算定の要件、「過去2月」の数え方、サ責の同行の考え方、自己負担額の計算例、指導で指摘されやすい点、介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)での扱いの違いを、厚生労働省と自治体の資料にもとづいて整理します。金額は筆者の計算例で、実際の請求は事業所の算定内容や地域区分で変わります。
先に知っておくこと
- 令和6年度の介護報酬改定でも、初回加算の単位数は変わっていません。
- 総合事業の訪問型サービスは自治体ごとに単位数や算定条件が異なります。
- 報酬は改定などで見直されることがあります。本記事は2026年10月時点で確認できた公的資料にもとづいています。
訪問介護の初回加算とは何か
加算の定義と単位数
訪問介護の報酬は、身体介護や生活援助の所要時間ごとに決まる基本単位が土台です。初回加算はその基本単位とは別に、新しく訪問介護を使い始めた月に上乗せされる加算で、1月につき200単位と厚生労働省の算定構造表に示されています。基本単位に率を掛けるタイプの割増ではなく、月ごとの定額である点が特徴です。
「初回」という名前ですが、利用開始から最初の1回だけに付く、という意味ではありません。最初の1回だけでなく、初回の属する月にサ責が自ら訪問または同行していれば要件を満たす、という月単位で見る加算です。具体的な要件は次の章で整理します。
なぜこの加算があるのか
訪問介護は、まず訪問介護計画を作り、それに沿ってヘルパー(訪問介護員)が支援する仕組みです。利用開始の時期は、利用者の心身の状態や住まいの環境、家族の事情をサ責が直接確認し、計画と実際の支援内容をすり合わせる手間がかかります。初回加算は、こうした立ち上げ時に、サ責が自ら訪問するか同行することを算定要件としている加算です。
誰にとって関係があるのか
次のような場面で関係してきます。
- 初めて訪問介護を使い始める方
- 以前に別の事業所を使っていて、新しい事業所に変える方
- 同じ事業所を2か月以上(暦月基準)使わず、再開する方
- 請求内容を確認するご家族やケアマネジャー
利用者にとっては、利用開始月の請求に200単位分が加わる、という形で目に見えます。請求書に「初回加算」と記載があれば、このしくみによるものです。
訪問介護そのものの説明は別記事で
訪問介護の種類(身体介護・生活援助・通院等乗降介助)や基本的な利用の流れは、訪問介護とは何かを解説した記事で説明しています。この記事では、初回加算に絞って扱います。
算定要件を整理する
新規に訪問介護計画を作成した利用者が対象
老企第36号(算定基準の解釈通知)では、初回加算は「新規に訪問介護計画を作成した利用者」に対して算定する加算とされています。すでに計画がある利用者の内容見直しが「新規作成」にあたるかどうかの線引きは、今回確認した資料では分かりませんでした。迷う場合は事業所や市町村に確認してください。
サ責が行う2つのパターン
要件として挙げられている行為は次の2つです。どちらかを満たす必要があります。
| パターン | 内容 |
|---|---|
| (a) 自ら訪問 | サ責が自ら、初回、または初回の属する月に訪問介護を行う |
| (b) 同行 | 他の訪問介護員が行う訪問介護に、サ責が同行する |
サ責の役割や資格要件についてはサービス提供責任者について解説した記事で整理しています。
「過去2月に提供を受けていない」という条件
もう一つの条件が、当該事業所から過去2月に訪問介護の提供を受けていないことです。つまり、同じ事業所を使っていた方がしばらく間をあけて再開する場合などに、どこまでさかのぼって確認するかが論点になります。数え方は次の章で具体例を示します。
この条件は「当該事業所」について見るものです。以前に別の事業所を使っていた場合は、新しい事業所にとっては新規の利用者になり得ます。
同一月に複数の事業所が算定できる場合
厚生労働省の適用要件一覧では、同一月内に複数の事業所がそれぞれ初回加算を算定できる扱いが示されています。事業所を併用する場合や、月の途中で事業所を変えた場合などで、それぞれの事業所が新規に計画を作成し要件を満たしていれば、月内に複数の請求が並ぶことがあります。
また、一体的に運営されている介護予防訪問介護の利用実績は、この「過去2月」の確認では問わないとされています。
「過去2月」の数え方と判断の例
暦月で数える考え方
「2月」は、30日や60日といった日数ではなく、暦の月で数えます。厚生労働省の過去の事務連絡(平成21年3月の介護保険最新情報)のQ&Aでも、この考え方が示されています。
具体例で確認する
例えば、4月15日に訪問介護を提供した場合は、2月1日以降にその事業所の訪問介護を受けていないことが条件になります。日付で見ると4月15日の60日前(2月14日ごろ)まで確認すればよさそうですが、暦月で数えるため、2月は1日までさかのぼって確認する扱いです。
| 提供した日 | 確認する範囲(暦月で数える) |
|---|---|
| 4月15日 | 2月1日以降に当該事業所の訪問介護の利用がないこと |
| 6月3日 | 4月1日以降に当該事業所の訪問介護の利用がないこと |
上の表の2行目は、同じ考え方を別の月に当てはめた筆者の整理例です。実際の判断は事業所が利用記録をもとに行います。
間があいた再開のとき
入院などで利用をいったん止めて再開する場合は、再開の月から暦月で数えて、過去2月に同じ事業所の利用があるかどうかで見ます。目安としては、暦月で2か月以上あいていれば対象になりうる、ということです。例えば4月に再開するなら、2月と3月に同じ事業所の訪問介護を受けていないことが条件になります。実際に付くかどうかは事業所の判断になるため、事業所に確認してください。
なお、入院などをはさんだ場合に新規の計画作成として扱うかどうかの細かな取り扱いは、今回確認した資料に記載が見当たりませんでした。該当しそうな場合は事業所に確認してください。
サ責の訪問・同行と記録
サ責が訪問する時期
サ責が自ら訪問する場合は、「初回」または「初回の属する月」に行うことが要件です。計画を作った直後の最初の訪問に限らず、同じ月の中で行っていれば要件を満たす、という整理になります。
同行は訪問時間の全体にいる必要があるか
奈良県橿原市が示している資料では、サ責の同行は訪問時間の全体にいる必要はなく、利用者の状況を確認した後に離れても差し支えないとされています。ただし、同行した旨を記録に残しておくことが前提です。
これは自治体の取り扱いの例です。他の市町村でも同様かどうかは断定できないため、疑問があるときは事業所の指定権者(多くは市町村や都道府県)に確認するのが確実です。
記録として求められるもの
埼玉県の運営指導(実地指導)に関する資料では、指導で指摘された例として、サ責の訪問・同行の記録が確認できないことが挙げられています。利用者に見える範囲では、事業所の記録の書き方までは分かりませんが、事業所側がサ責の訪問や同行を記録として残していることが、算定の前提になります。
訪問介護計画書との関係
計画書の作成と同意
初回加算は「新規に訪問介護計画を作成した」ことが出発点なので、計画書がなければ算定の根拠が成立しません。埼玉県の資料では、指導での指摘例として、訪問介護計画書を作成しないまま算定していたケースが挙げられています。
計画は利用者または家族に説明し、同意を得ることが必要で、曜日・時間・担当する訪問介護員の氏名などを記載するとされています。
生活援助だけの利用でも計画書は必要
橿原市の資料では、生活援助のみの利用であっても、訪問介護計画書の作成と同意が必要で、ケアマネジャーにも計画書の写しを提出するとされています。「掃除や調理だけだから簡単な手続きで済む」という扱いにはならない点に注意が必要です。
利用者側が受ける説明
利用開始の際は、サ責が計画の内容を説明し、利用者の同意を求めます。ご家族が同席できるときは、一緒に聞いておくと、後で請求書を見たときに内容が結びつけやすくなります。計画書の写しを受け取り、保管しておくことも有益です。
自己負担額の計算例
1単位の単価は地域で異なる
1単位あたりの金額は地域区分で異なります。訪問介護は70%区分で、国の資料では次のとおり示されています(端数は1円未満を切り捨てる扱い)。
| 地域区分 | 1単位の単価 | 200単位の総額 |
|---|---|---|
| 1級地 | 11.40円 | 2,280円 |
| 2級地 | 11.12円 | 2,224円 |
| 3級地 | 11.05円 | 2,210円 |
| 4級地 | 10.84円 | 2,168円 |
| 5級地 | 10.70円 | 2,140円 |
| 6級地 | 10.42円 | 2,084円 |
| 7級地 | 10.21円 | 2,042円 |
| その他 | 10.00円 | 2,000円 |
お住まいの市町村の区分は、市町村の介護保険担当窓口や事業所で確認できます。
1割・2割・3割の場合の目安
以下では、負担割合が1割・2割・3割の場合の金額を、計算上の目安として示します。
200単位の自己負担の目安
総額に負担割合を掛けた目安は次のとおりです(全8地域)。自己負担の端数処理は今回の資料で確認できていないため、「約」で示します。
| 地域区分 | 総額 | 1割 | 2割 | 3割 |
|---|---|---|---|---|
| 1級地 | 2,280円 | 約228円 | 約456円 | 約684円 |
| 2級地 | 2,224円 | 約222円 | 約445円 | 約667円 |
| 3級地 | 2,210円 | 約221円 | 約442円 | 約663円 |
| 4級地 | 2,168円 | 約217円 | 約434円 | 約650円 |
| 5級地 | 2,140円 | 約214円 | 約428円 | 約642円 |
| 6級地 | 2,084円 | 約208円 | 約417円 | 約625円 |
| 7級地 | 2,042円 | 約204円 | 約408円 | 約613円 |
| その他 | 2,000円 | 約200円 | 約400円 | 約600円 |
初回加算は月ごとの定額なので、その月の訪問回数が多くても少なくても、加算は月に1回分(200単位)です。
開始月の請求のイメージ
例えば、1級地で身体介護の「30分以上1時間未満」(387単位)を月に8回使い始めた場合の計算は次のとおりです(筆者の計算。ほかの加算は含めていません)。
- 基本単位:387単位×8回=3,096単位
- 初回加算を加えた合計:3,096+200=3,296単位
- 総額:3,296単位×11.40円=約37,574円
- 1割負担の場合:約3,757円
初回加算が占めるのは全体の約6%で、開始月に一度だけ生じる負担です。翌月以降も要件を満たす限り付くわけではなく、通常は開始月に限られる点が、一般的な加算との違いです。
区分支給限度基準額との関係
在宅サービスには要介護度ごとに1か月の保険の利用上限額があります。初回加算がこの上限の計算に含まれるかどうかは、今回確認した資料からは断定できません。限度額に収まるかは、ケアプランを作るケアマネジャーに確認してください。
他の加算との関係
緊急時訪問介護加算との関係
緊急時訪問介護加算は、利用者や家族からの要請を受けて、要請から24時間以内に訪問を行った場合に算定する加算で、1回につき100単位です(身体介護中心型のみ)。
厚生労働省の過去のQ&Aでは、緊急時訪問介護加算と初回加算について、算定のたびに利用者の同意を得る必要はないが、重要事項説明書などで事前に説明し同意を得ておく必要があるとされています。
2時間ルールとの関係
緊急時訪問介護加算を算定する場合は、前回の訪問から2時間未満の間隔でも所要時間を合算しないとされています(平成24年3月の厚生労働省のQ&A)。
特定事業所加算との違い
特定事業所加算は、1回の訪問ごとの基本単位に対する率(区分により20%、10%、3%)で算定する加算です。一方、初回加算は月額定額の200単位です。算定の仕組みが異なる別の加算で、両者を同じ月に併せて算定できるかどうかについては、今回確認した資料に明文が見当たりませんでした。事業所に確認してください。詳しくは特定事業所加算を解説した記事をご覧ください。
居宅介護支援の初回加算とは別
ケアマネジャーが所属する居宅介護支援にも「初回加算」という名前の加算があります。訪問介護の初回加算とは別の加算で、算定する事業所も要件も違います。名前が同じため請求書の上で混同しやすいので、どのサービスの項目かを確認してください。
総合事業の訪問型サービスでの扱い
総合事業と初回加算
訪問型サービスは、市町村が実施する総合事業の一部です。訪問介護と同様の内容でも、単位数や算定条件は市町村ごとに定められているため、国の訪問介護の取り扱いとは異なることがあります。
自治体の例
自治体ごとの違いを、確認できた資料から並べます。
| 自治体 | 資料の時点 | 確認できた内容 |
|---|---|---|
| 東京都江戸川区 | 2021年3月 | 国の基準と同等の訪問型サービスに、初回加算として1月につき200単位 |
| 福岡県大牟田市 | 資料に記載の時点 | 訪問介護相当は国の基準に準じ、基準を緩和したサービスは国の基準の8割程度など、類型で単位数が異なる |
| 横浜市 | 令和3年12月版 | 訪問型生活援助で、同一事業所内の移行・併用開始は算定不可 |
これらは当時の資料です。単位数は改定で変わっている可能性があるため、最新の単位数表を確認してください。
同じ事業所内で移行・併用する場合
横浜市の総合事業に関するQ&A(令和3年12月版)では、訪問型生活援助について、同一の事業所内で移行したり併用を開始したりする場合は、初回加算を算定できないとされています。ほかの自治体も同じとは限りません。
総合事業を利用する方は、お住まいの市町村の単位数表やQ&Aで、初回加算の単位数と算定条件を確認してください。
指導で指摘されやすい点と確認のポイント
指摘される例
埼玉県の資料に挙げられている主な例は次のとおりです。
- 訪問介護計画書を作成しないまま初回加算を算定した
- サ責の訪問または同行の記録が確認できない
いずれも事業所側の管理の問題ですが、利用者側から見れば、計画書の写しがない、サ責が来たことが記憶にないのに加算が付いている、といった形で気づく場合があります。
利用者・家族が確認できること
請求書に初回加算の記載があった場合は、次の点を振り返ると状況が整理できます。
- 利用開始月であるか(過去2月、同じ事業所を使っていなかったか)
- 計画書の説明を受けて同意したか
- サ責が訪問または同行したか
疑問があるときは、ケアマネジャーか事業所に尋ねます。それでも不明な場合は、市町村の介護保険担当窓口にも相談できます。
資料では確認できなかった点
今回確認した公的資料では、次の点の明記は見つかりませんでした。断定せず、該当しそうなときは括弧内の相談先に確認してください。
- 特定事業所加算と初回加算を同じ月に併せて算定できるか(事業所)
- 初回加算が区分支給限度基準額の計算に含まれるか(ケアマネジャー)
- 自己負担額の端数処理の細かな方法(事業所)
- すでに計画がある利用者の内容見直しが「新規作成」にあたるかの線引き(事業所・市町村)
- 改定後の告示や通知での項番(事業所・市町村)
- 令和8年度以降の報酬見直しが初回加算に及ぶか(市町村・事業所)
制度改定との関係
令和6年度改定での扱い
令和6年度の介護報酬改定では、初回加算の200単位は据え置かれました。一方、基本単位は動いており、身体介護の30分以上1時間未満は396単位から387単位に下がっています。
算定している事業所の割合
社会保障審議会介護給付費分科会の資料(令和7年3月提供分)では、初回加算を算定した事業所は18,406事業所で、全体の52.0%とされています。約半数の事業所が算定しており、特別な事業所だけの加算ではありません。
報酬の見直しと古い資料への注意
介護報酬は改定で見直されることがあります。この加算の根拠は、厚生省告示第19号(平成12年)、老企第36号(平成12年3月1日)などで、令和6年度の改正は令和6年厚生労働省告示第86号などで行われています。インターネット上の古い資料には、改定前の数字が残っていることもあるため、最新の情報を市町村や事業所で確認してください。
まとめ
この記事のまとめ
- 初回加算は、新規に訪問介護計画を作成した利用者に対し、サ責が初回または初回の属する月に自ら訪問するか、他のヘルパーの訪問に同行した場合に、1月につき200単位を算定する加算です。
- 過去2月に当該事業所の訪問介護を受けていないことが条件で、「2月」は暦月で数えます。
- 自己負担の目安は、1割負担で1級地約228円、その他地域約200円です。2割・3割は倍、3倍が目安です。
- 指導では、計画書の未作成やサ責の訪問・同行の記録が確認できない点が指摘されています。総合事業は自治体ごとに扱いが異なります。
- 制度は報酬改定などで見直されることがあります。請求内容は事業所やケアマネジャーに確認してください。
次にすること
- 請求書に初回加算があれば、利用開始月か、計画書の説明を受けたかを振り返る
- 総合事業を使う場合は、市町村の単位数表で初回加算の扱いを確認する
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