生活保護を受けていても入れる老人ホームはあります。介護保険施設・養護老人ホーム・軽費老人ホームなどがあり、有料老人ホームやサ高住は自治体の取扱いによります。この記事では、入れる施設の種類、費用を分担する制度、手続きの順番がわかります。
厚生労働省の被保護者調査(令和5年度)では、被保護世帯1,650,478世帯のうち、高齢者世帯は908,629世帯(55.3%)です。
生活保護や介護保険の制度・金額は改定されることがあり、取扱いは自治体ごとに異なります。記事の内容は公開時点の公的資料にもとづきます。最新の内容は必ず福祉事務所でご確認ください。
生活保護でも入れる老人ホームの結論と全体像
まず、入れる施設と費用の全体像を押さえます。
結論:入れる施設はあるが「どこでも」ではない
「どの老人ホームでも入れる」わけではなく、施設の種類・部屋のタイプ・家賃などで扱いが分かれます。
- 介護保険施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院):受給者も利用できます。介護保険の自己負担分は介護扶助で賄われます。
- 養護老人ホーム:市区町村の措置による入所で、環境上・経済的な理由で自宅での生活が難しい方が対象です。
- 軽費老人ホーム:契約による入居で、身寄りがない、家族の援助を受けにくいといった事情のある60歳以上の方が対象です。
- 有料老人ホーム・サ高住:自治体の取扱いによります。大分市の取扱指針では、法的な位置付けのある住宅への入居を原則認めています(全国共通のルールではありません)。
入居先を先に決めるより、福祉事務所に相談して条件を確かめる順序が安全です。
費用を支える3つの扶助と補足給付
施設入居の費用では、生活保護の次の3つの扶助が主に関わります。
- 介護扶助:介護保険サービスの自己負担分(原則1割)を賄います。
- 生活扶助:日用品費など日常の暮らしの費用です。施設入所者には「介護施設入所者基本生活費」などが設けられています。
- 住宅扶助:住居の費用(家賃等)に対応する扶助です。有料老人ホーム・サ高住での扱いは、自治体と福祉事務所に確認してください。
このほか、介護保険施設では食費・居住費の負担を軽くする「補足給付(特定入所者介護サービス費)」があり、生活保護の受給者は最も負担限度額が低い第1段階に位置づけられます。
最初の相談先は福祉事務所
生活保護の実施機関は福祉事務所です。施設への入居は、介護扶助の決定などに関わるため、入居先を決める前に担当のケースワーカーへ相談することが基本になります。
ケアマネジャー(介護支援専門員)や地域包括支援センター、市役所の高齢福祉の窓口、民生委員も相談先になります。まだ生活保護を受けていない方も、福祉事務所で相談できます。資産・収入は全て申告することが前提です。
施設の種類別に見る受け入れの考え方
前章の全体像を、施設の種類ごとに見ていきます。
| 施設の種類 | 入居方式 | 対象年齢 | 生活保護の扱い・備考 |
|---|---|---|---|
| 介護保険施設(特養・老健・介護医療院) | — | — | 受給者も利用可。自己負担分(原則1割)は介護扶助 |
| 養護老人ホーム | 市区町村の措置 | 65歳以上 | 全国930施設・定員61,040人(令和4年度)。費用は前年度収入に応じ概ね0〜14万円 |
| 軽費老人ホーム | 契約 | 60歳以上 | 全国2,331施設・定員95,656人。費用は概ね4〜15万円 |
| 有料老人ホーム・サ高住 | — | — | 自治体の取扱いによる(大分市の取扱指針では原則認めている) |
介護保険施設(特養・老健・介護医療院)
特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院は、生活保護の受給者も利用できます。介護扶助が自己負担分(1割)を原則として現物給付します。
特養と地域密着型特養は、指定を受けた時点で生活保護法の指定介護機関とみなされます。介護医療院は、平成30年4月から生活保護制度でも扱われるようになりました(京都市の資料)。
特養の入所条件や費用の全体像は別の記事で扱っていますので、ここでは生活保護の観点に絞って説明します。
養護老人ホームと軽費老人ホーム
養護老人ホームは、65歳以上で環境上・経済的な理由により自宅での生活が難しい方が、市区町村の措置によって入所する施設です。費用や施設数は上の表のとおりです。
軽費老人ホームは、60歳以上で、身寄りがない、または家族の援助を受けにくい方が契約して入居する施設です。
養護老人ホームについては、養護老人ホームとはでも解説しています。
有料老人ホーム・サ高住の考え方
有料老人ホームやサ高住は、民間事業者が運営する住まいです。受給者の入居の扱いは自治体の取扱いによって異なり、全国共通ではありません。
大分市の取扱指針では、有料老人ホームやサ高住など法的な位置付けのある住宅への入居を原則として認め、位置付けのない住宅は原則として認めないとしています。同指針では、食事の提供などを行うサ高住は老人福祉法第29条の有料老人ホームに該当し、届出の有無ではなく実態で判断されるとしています。お住まいの地域の扱いは福祉事務所に確認してください。
グループホームなど、扱いが分かれる住まい
グループホームや無料低額宿泊所などの扱いは、福祉事務所に確認してください。
費用を支える仕組み:介護扶助・生活扶助・住宅扶助・補足給付
施設の種類がわかったところで、次は費用をどの制度が受け持つかを見ます。
介護扶助の対象と限界
介護扶助の対象は、介護保険の自己負担分(1割)です。40〜64歳で医療保険に加入していない方は、介護扶助が10割となります(福岡県の資料)。
一方で、支給限度額を超えた分の全額自己負担のサービスは、介護扶助では利用できません。制度の基本は介護扶助とはで説明しています。
施設入所者の生活扶助
施設に入所すると、生活扶助は「介護施設入所者基本生活費」と「介護施設入所者加算」で構成されます。厚生労働省の告示(昭和38年厚生省告示第158号)では、基本生活費は月額10,120円以内とされています。
日用品費は、この生活扶助で賄うことが前提です。施設入所者は世帯人員に含めずに算定され、中途で入所した場合、基本生活費は入所日の属する月の翌月から計上されると実施要領に示されています。
特例加算は、京都市の資料では施設入所者で月1,000円とされています。令和8年10月以降の額は福祉事務所に確認してください。
補足給付(特定入所者介護サービス費)の第1段階
介護保険施設の食費・居住費は、原則として利用者の自己負担です。低所得者には、負担限度額を超えた分が介護保険から支給される補足給付があります。
生活保護受給者である第1段階の負担限度額(日額)と基準費用額は次のとおりです(厚生労働省の介護保険最新情報、出典欄参照)。第1段階に預貯金等の要件はありません。
| 項目 | 第1段階の負担限度額 | 基準費用額 |
|---|---|---|
| 食費 | 300円 | 1,545円 |
| 居住費(多床室) | 0円 | 915円(特養多床室) |
| 居住費(従来型個室) | 380円 | — |
| 居住費(ユニット型個室) | 880円 | 2,066円 |
令和8年8月から、第3段階の食費や居住費の一部などが引き上げられましたが、第1段階の限度額は変わりません。
補足給付の詳細は特定入所者介護サービス費とはで解説しています。
月々の負担のイメージ
多床室の特養なら、第1段階の食費の限度額は日額300円(30日で約9,000円)です。この食費をどの扶助から充てるかは、福祉事務所に確認してください。
介護保険施設の個室制限と例外
費用の仕組みのうち、介護保険施設で受給者が使える居室について整理します。
受給者は多床室が基本
生活保護の受給者は原則として「ユニット型個室」「ユニット型個室的多床室」「従来型個室」には入れず、多床室が基本とされています(京都市・大分市の資料)。
社会福祉法人等による負担軽減の例外
例外として、社会福祉法人等による利用者負担軽減制度(社会福祉法人などが低所得の利用者の負担を軽くする制度)で、利用者負担が全額軽減される場合は、個室等への入所も可能とされています。ただし、施設がこの軽減事業を実施していない場合もあります。
個室を希望するときは、施設に「社会福祉法人等による利用者負担軽減を実施していますか」と聞き、あわせて福祉事務所にも確認しましょう。
有料老人ホーム・サ高住の費用と住宅扶助の限度額
介護保険施設とは別に、有料老人ホームやサ高住では家賃にあたる住宅扶助が関わります。
住宅扶助の限度額は自治体ごとに決まる
住宅扶助は、実費が基準額の範囲で支給されます。告示の本則には、1・2級地は13,000円以内、3級地は8,000円以内とありますが、この本則の額は実務では使われず、厚生労働省の局長通知にもとづいて都道府県・指定都市・中核市ごとに設定された別の限度額が基準になります。級地とは、物価などで分けた地域区分のことです。自分の地域の額は、福祉事務所で聞いてください。
東京都の例(単身)では、1級地53,700円、2級地45,000円、3級地40,900円です(令和8年10月算定図)。これは東京都の例で、全国一律ではありません。
特別基準と敷金等
福祉事務所がやむを得ないと認めた場合は、特別基準として、1人の限度額に1.3〜1.8の率を乗じた額まで認められることがあります。
敷金等は、特別基準額の3倍の範囲で認定できると、実施要領に定められています。個別の事情で判断されるため、事前に福祉事務所へ相談してください。
家賃以外の費用の考え方
有料老人ホームやサ高住では、家賃のほかに管理費・共益費・食費などがかかります。大分市の取扱指針では、事業者に対して、これらを生活扶助の範囲で最低生活が維持できる額にすることを求めています。また、受給者と非受給者で合理的な理由なく差を設けないこと、入院・入所を解約事由にしないこと(原則6か月)も求めています。
同指針では、保護費は本人交付が原則とされ、金銭管理が難しい場合は日常生活自立支援事業や成年後見制度の利用を促すことがあるとされています。これも大分市の例で、全国共通ではありません。
養護老人ホームの措置入所
契約ではなく措置で入る養護老人ホームは、入所の決まり方が他の施設と違います。
措置入所の対象と費用
養護老人ホームは、65歳以上で環境上・経済的理由により在宅での生活が困難な方が、市区町村の措置で入所します。要介護認定があっても申請できます。
費用は前年度の収入に応じて決まり、居住費・食費を含めて概ね0〜14万円程度が目安とされています(全老施協資料)。
入所までの流れ
流れは、市区町村窓口への相談、申込み、調査、入所判定委員会、市区町村長の決定、入所という順序です。入所中に介護が必要になったときのサービスの受け方は、福祉事務所に確認してください。
申込みから入居までの流れ
ここまでの施設と費用の仕組みを踏まえ、実際の進め方を、受給中の方とこれから申請する方に分けて示します。
すでに生活保護を受けている場合
- 担当の福祉事務所に、施設入居を考えていることと希望の条件を伝えます。
- ケアマネジャーに、要介護度とケアプランの見通しを確認します。
- 候補の施設に、生活保護の受給者の受け入れが可能か、生活保護法の指定介護機関かを問い合わせます。
- 介護扶助を福祉事務所に申請します(保護変更申請書・介護扶助)。福祉事務所は、要介護認定の結果とケアプラン等をもとに決定し、「介護券」を事業者に月単位で送付します。
施設入所によって生活保護が廃止されるかどうかは個別の事情によるため、福祉事務所に確認してください。
これから生活保護を申請する場合
まず福祉事務所で生活保護の相談をします。資産・収入は全て申告することが前提です。東京都の手引では、扶養の履行が期待できない場合は、扶養義務者への照会は基本的に行わないとされています。
保護が決まった後は、上の手順と同じく、ケアマネジャーへの確認、施設への問い合わせ、介護扶助の申請の順に進めます。
居住地特例と実施責任
施設が別の市にある場合は、どの福祉事務所が担当するかという別の論点があります。
生活保護での居住地特例
施設が別の市にあっても、元の住所の福祉事務所が担当する場合があります(介護付き有料老人ホーム・養護老人ホームに限る)。これは「居住地特例」という生活保護の制度で、介護保険の住所地特例とは別のものです。
平成30年10月1日から、居住地特例の対象に有料老人ホームと養護老人ホームが追加されました。有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護(介護付き)に限られ、入所前の居住地を所管する福祉事務所が実施責任を持ちます。
対象外となる住まい
住宅型有料老人ホームやサ高住は、対象外とされています(習志野市の資料)。
介護保険側の特例については、介護保険の住所地特例とはで解説しています。
断られたときの相談先と注意点
手続きを進めても、施設に断られることがあります。そのときの動き方です。
入居を断られたときの考え方
施設に断られたときは、その理由を施設に確認したうえで、他の施設の種類も含めて福祉事務所とケアマネジャーに相談しましょう。
相談先
- 担当ケースワーカー(福祉事務所)
- ケアマネジャー
- 地域包括支援センター
- 市役所の高齢福祉の窓口
- 民生委員
まとめ
最後に、進める順番を整理します。
この記事のポイントと今日できる最初の一歩
生活保護でも入れる施設はありますが、種類・個室・家賃の条件で扱いが異なり、制度や金額は変わります。進める順番は次のとおりです。
- 福祉事務所に連絡する(受給中の方は担当ケースワーカー、これからの方は生活保護の相談から)。
- ケアマネジャーに要介護度を確認する。
- 候補の施設に受け入れを問い合わせる。
今日できる最初の一歩は、担当の福祉事務所(これから申請する方は生活保護の相談窓口)に連絡し、「施設入居を考えている」と伝えることです。
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