養護老人ホームとは|措置入所の条件と費用の仕組みを厚労省基準で解説

養護老人ホームとは、環境上・経済的な理由で在宅生活が難しい高齢者を、市町村の措置によって受け入れる老人福祉法上の施設です。入所の条件と費用の仕組みを解説します。

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目次

養護老人ホームは、老人福祉法第20条の4にもとづく施設で、65歳以上の方が環境上の理由と経済的理由によって自宅で生活を続けることが難しい場合に、市町村の「措置」(=市町村が必要性を判断して入所を決める仕組み)として入所する施設です。有料老人ホームのように本人が施設と契約して入るのではなく、市町村が状況を調べたうえで決定します。要介護認定は入所の要件ではありません。この記事では、入所の条件、費用徴収の仕組み、特別養護老人ホームや軽費老人ホームとの違い、入所までの流れを、厚生労働省の法令・通知と自治体の公表資料にもとづいて解説します。

最初に相談するのはここです

  • 相談先は本人が住んでいる市区町村の高齢福祉の担当窓口です(区役所がある市では区の担当課)。施設に直接申し込む手続ではありません。
  • 離れて暮らしている子や親族が、本人に代わって相談することもできます。本人が窓口に出向くことが難しい場合は、家族やケアマネジャー、地域包括支援センターの職員が間に入る形が実務的です。
  • 持っていけるとよいのは、年金額が分かる書類、住民税の課税・非課税が分かる書類、健康状態が分かる資料です。
  • まずは電話で、相談の予約が必要か、当日何を持参すればよいかを確認しておくと二度手間になりません。

養護老人ホームとは何か

養護老人ホームは、名前に「老人ホーム」とついているため有料老人ホームや特別養護老人ホームと同じ枠組みの施設だと受け取られがちですが、制度上の性格はかなり異なります。入所するかどうかを決めるのは本人や家族ではなく市町村であり、費用も入居一時金や月額利用料ではなく、本人と扶養義務者(配偶者や子など、法律上その人を扶養する義務がある人)の負担能力に応じた「費用徴収金」として決まります。まずは、この施設が法律上どう位置づけられているのかを確認しておきましょう。

老人福祉法第20条の4に定められた施設

養護老人ホームの根拠は老人福祉法第20条の4です。条文は次のように定めています。

養護老人ホームは、第十一条第一項第一号の措置に係る者を入所させ、養護するとともに、その者が自立した日常生活を営み、社会的活動に参加するために必要な指導及び訓練その他の援助を行うことを目的とする施設とする。

要するに、養護老人ホームに入所する人とは「市町村が措置を決定した人」であると法律が定義しており、入所の入口が措置に限定されているということです。

その第11条第1項第1号は、65歳以上の方であって、環境上の理由および経済的理由(政令で定めるものに限る)により居宅において養護を受けることが困難な方を、市町村が養護老人ホームに入所させ、または入所を委託する措置を定めています。条文は「市町村は、必要に応じて、次の措置を採らなければならない」という書き方になっており、措置の主語はあくまで市町村です。介護保険制度が契約にもとづくサービス利用を原則としているのに対して、養護老人ホームは介護保険制度が始まる前からの「福祉の措置」の仕組みがそのまま残っている施設だといえます。

「契約」ではなく市町村の「措置」で入所する

措置と契約は、利用者から見ると次の点で大きく違います。契約は本人と施設の間で成り立つ取引であるのに対し、措置は市町村が行う行政の決定です。

観点契約で入る施設措置で入る養護老人ホーム
誰が決めるか本人と施設の合意市町村の措置決定
施設の選び方本人が選んで申し込む市町村が委託先の施設と調整する
費用の決まり方施設が定めた料金本人・扶養義務者の負担能力に応じた費用徴収金
相談先施設に直接市区町村の高齢福祉担当窓口

名古屋市は、ケアハウス(軽費老人ホーム)を「本人と施設との利用契約により入所する施設」と説明したうえで、養護老人ホームを措置による施設として区別して案内しています。このため、養護老人ホームに関心を持った家族が施設に直接電話をして「申し込みたい」と伝えても、その時点で入所が決まることはありません。相談や見学に応じてもらうことはできますが、入所の可否を判断するのは施設ではなく市町村です。横浜市は入所について「区の措置により決定します」と明記し、相談先として区の高齢・障害支援課を案内しています。

措置であることには、本人にとって不利な面ばかりではありません。契約であれば、支払い能力がなければ入居できませんが、措置では市町村が必要性を認めた以上、本人の収入が低くても入所できます。実際、後述のとおり対象収入が一定額以下であれば本人の費用負担は0円です。経済的に困窮している高齢者の生活の場を公的に確保するための仕組みが、この措置制度です。

自立した生活と社会参加を支える施設

第20条の4の条文には、「養護する」だけでなく「その者が自立した日常生活を営み、社会的活動に参加するために必要な指導及び訓練その他の援助を行う」という目的が書かれています。この一文は、養護老人ホームが単に住まいと食事を提供する場ではなく、入所者が自分で生活を組み立て、地域や施設内の活動に参加していくことを支える施設として設計されていることを示しています。

この目的は、養護老人ホームで働く職員の職種構成にも表れています。後述する人員配置基準では、介護職員ではなく「支援員」という職種が中心に置かれ、あわせて生活相談員の配置も定められています。生活上の困りごとの相談に乗り、必要な手続や社会資源につなぐ役割が制度上組み込まれているわけです。特別養護老人ホームが要介護状態にある方の介護を目的としているのに対し、養護老人ホームは生活の立て直しと社会参加を支える方向を向いている、という違いを押さえておくと、制度全体が理解しやすくなります。

入所できる人の条件

入所の条件は老人福祉法第11条第1項第1号に書かれており、「65歳以上」「環境上の理由」「経済的理由(政令で定めるものに限る)」の3つを満たし、居宅において養護を受けることが困難であることが基本です。それぞれが具体的に何を指すのかを、厚生労働省の通知や自治体の要綱にもとづいて確認します。

年齢はおおむね65歳以上

法律上の原則は65歳以上です。ただし、自治体によっては要綱で例外を定めています。千葉市の老人ホーム入所措置等実施要綱は、特に必要があると認められる場合として60歳以上65歳未満の方を、さらに60歳未満であっても初老期認知症のある方や、措置対象となる配偶者と同時に入所する必要がある場合などを、対象に含めうる規定を置いています。

年齢の扱いは自治体の要綱によって差があります。「65歳になっていないから対象外」と自己判断せず、まずは市区町村の高齢福祉担当窓口に状況を伝えて確認してください。特に、配偶者と一緒に入所する必要がある場合や、若年で認知症の診断を受けている場合は、例外規定の対象になりうる典型的なケースです。

環境上の理由とは

「環境上の理由」は、平成18年3月31日老発第0331028号「老人ホームへの入所措置等の指針について」に示された入所判定基準の中で、次の2つの観点から整理されています。1つは「入院加療を要する病態ではないこと」、もう1つは「家族や住居の状況など、現在置かれている環境の下では在宅において生活することが困難であると認められること」です。

前者は、養護老人ホームが医療機関ではないため、入院治療が必要な段階の方は対象にならないという趣旨です。後者は幅の広い要件で、次のような事情が該当しうるものです。

  • 住まいが老朽化・狭小で生活を続けられない
  • 同居する家族との関係が悪く、在宅での生活が成り立たない
  • 家族から虐待を受けている
  • 身寄りがなく、一人暮らしを続けることが難しい

4つ目は「身寄りがなく」と書きましたが、身寄りのいる方を除く趣旨ではありません。子や兄弟がいても、遠方に住んでいる、住宅や仕事の事情で同居できないなど、現実に一人暮らしを支えきれない事情があって在宅での生活の継続が難しい場合も含まれます。判定基準が定めているのは「家族や住居の状況など、現在置かれている環境の下では在宅において生活することが困難であると認められること」であり、見られているのは家族の有無ではなく、いま置かれている状況で生活が成り立つかどうかです。

「家族がいるから対象外」ということにはなりません。同じ判定基準では、感染症の罹患・既往がある場合についても、一定の場合を除いて「措置を行わない正当な理由には該当しない」とされています。また、胃ろうや経管栄養であることのみを理由に措置を行わないことも認められていません。医療的な事情を理由に入口で一律に断ることがないよう、国が通知で歯止めをかけている構造になっています。

そもそも措置指針は、第1(入所措置の目的)で次のように定めています。

法第11条の規定による養護老人ホームへの入所等の措置は、65歳以上の者であって、在宅において日常生活を営むのに支障があるものに対して、心身の状況、その置かれている環境の状況等を総合的に勘案して、適切に行われるよう努めなければならない。

心身の状況と環境の状況を「総合的に勘案して」判断する、という書き方になっている点が要点です。一つひとつの事情が要件に当たるかどうかを、相談する側があらかじめ採点しておく必要はありません。該当するかどうかを判断するのは市区町村なので、「こんなことで相談していいのだろうか」と迷う段階でも、いま起きていることをそのまま窓口に伝えてかまいません。

経済的理由とは(老人福祉法施行令第6条)

「経済的理由」は政令で具体的に定められています。老人福祉法施行令第6条が挙げているのは次の3つです。

  • その属する世帯が生活保護法による保護を受けていること
  • 本人およびその生計を維持する者の前年の所得について、市町村民税の所得割の額がないこと
  • 災害その他の事情により、世帯の生活が困窮していると認められること

2番目の「市町村民税の所得割が非課税」という基準は、実務上もっともよく使われる要件です。住民税には均等割と所得割があり、所得割が課されていなければこの要件を満たします。年金収入のみで生活している高齢者世帯では、この要件に該当するケースが少なくありません。3番目の「災害その他の事情」は、災害で住まいを失った場合など、前年所得だけでは実態を捉えきれない状況を拾うための規定です。

所得割が課されているかどうかは、市区町村の窓口で課税・非課税の証明書を取って確認できます。相談に行くときに持参できるとよい書類としても挙げられているので、あわせて用意しておくと話が早く進みます。

逆に言えば、一定以上の所得がある方は、この経済的理由の要件を満たしません。制度として、経済的に困窮した高齢者の生活を支えることを目的に設計されている施設だということが、この条文からも読み取れます。

要介護認定は入所の要件ではない

養護老人ホームについて誤解が多いのがこの点です。法律が定める入所要件は「環境上の理由および経済的理由」であって、要介護認定を受けていることは条件に入っていません。要介護認定が出ていなくても、上記の要件を満たせば措置の対象になりえます。

一方で、「介護が必要な人は入れない」というのも正確ではありません。前述の入所判定基準には、次の注記が置かれています。

法では入所要件を「環境上の理由及び経済的理由」と規定しているが、これは措置に当たり改正前に規定されていた「身体上若しくは精神上」の理由は問わないこととする趣旨であり、「身体上若しくは精神上」の理由を有する者を措置の対象外とするものではない

=身体や精神の状態が思わしくないことを理由に、入所を断ることはできないという意味です。実際、後述するとおり特定施設入居者生活介護の指定を受けた養護老人ホームでは、施設の中で介護保険サービスを受けることもできます。

ただし、独自の目安を要綱などに定めている自治体もあります。要介護認定を受けていることは法令上の入所要件ではありませんが、実際の運用は自治体によって異なるため、本人が住んでいる市区町村の窓口で確認してください。

特別養護老人ホームとの違い

名前が似ているために混同されやすい2つの施設ですが、根拠となる条文も、入所の仕組みも、費用の決まり方も別のものです。相談窓口で話をする前に、この違いを整理しておくと話が早く進みます。

根拠となる条文と入所の仕組みの違い

老人福祉法第20条の5は、特別養護老人ホームを次のように定めています。

第十一条第一項第二号の措置に係る者又は介護保険法の規定による地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護に係る地域密着型介護サービス費若しくは介護福祉施設サービスに係る施設介護サービス費の支給に係る者その他の政令で定める者を入所させ、養護することを目的とする施設

養護老人ホームと特別養護老人ホームの根拠・入所の仕組み・申込先の違い 養護老人ホームは老人福祉法第20条の4にもとづく市町村の措置で、申込先は市区町村の高齢福祉担当窓口。特別養護老人ホームは老人福祉法第20条の5と介護保険法にもとづき契約入所が原則で、申込先は施設または入所調整窓口。 養護老人ホーム 特別養護 老人ホーム 根拠条文 老人福祉法 第20条の4 老人福祉法 第20条の5 介護保険法 入所の仕組み 市町村の 措置 契約入所が 原則 申込・相談先 市区町村の 高齢福祉窓口 施設または 入所調整窓口
養護老人ホームは市町村の措置、特別養護老人ホームは契約入所が原則という点が、根拠条文と申込先の違いのもとになっている。

要するに、条文に介護保険法上の給付が並んでいるとおり、特別養護老人ホームは介護保険法上の介護老人福祉施設として、本人と施設の契約によって入所するのが原則です(第11条第1項第2号による措置入所の規定も残っています)。

これに対して養護老人ホームは、第20条の4のとおり第11条第1項第1号の措置に係る者を入所させる施設で、契約入所の制度自体がありません。申込先も、特養は施設(自治体によっては広域の入所調整窓口)であるのに対し、養護老人ホームは市区町村の高齢福祉担当窓口です。特別養護老人ホームの要介護度の条件や申込みの実務については特別養護老人ホームの入所条件を解説した記事で詳しく扱っています。

対象となる人の状態の違い

特別養護老人ホームは、要介護状態にある方の介護を目的とする施設です。介護保険の給付を受けて入所するため、要介護認定を受けていることが前提になります。一方、養護老人ホームの入所要件に要介護認定は含まれておらず、環境上・経済的な事情が判断の中心です。

この違いから、次のような住み分けが生じます。要介護度が重く、日常的に介護を必要とする方は特別養護老人ホームの対象になります。介護の必要性はそれほど高くないものの、住まいや家族関係、収入の面で在宅生活を続けることが難しい方は、養護老人ホームの検討対象になります。ただし養護老人ホームの入所者も加齢とともに介護を必要とするようになるため、その場合の扱いは後の章で説明します。

費用の決まり方の違い

特別養護老人ホームの費用は、介護保険の自己負担(原則1割)に加えて、居住費・食費・日常生活費を支払う構造です。これに対して養護老人ホームは、老人福祉法第28条にもとづき、措置に要した費用を本人や扶養義務者の負担能力に応じて徴収する仕組みです。契約に対する対価ではなく、公費で行われた措置の費用の一部を能力に応じて負担する、という考え方の違いがあります。主な違いを表にまとめます。

比較項目養護老人ホーム特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
根拠条文老人福祉法第20条の4老人福祉法第20条の5、介護保険法
入所の仕組み市町村の措置介護保険にもとづく契約入所が原則
要介護認定入所の要件ではない介護保険の給付を受けるため必要
申込・相談先市区町村の高齢福祉担当窓口施設または自治体の入所調整窓口
費用の性格第28条にもとづく費用徴収金(本人・扶養義務者の負担能力に応じる)介護保険の自己負担+居住費・食費等
全国の定員59,812人(918施設)604,469人(8,621施設)

定員の数字は、養護老人ホームが令和6年社会福祉施設等調査、特別養護老人ホームが令和6年介護サービス施設・事業所調査(いずれも令和6年10月1日現在)によるものです。

軽費老人ホーム(ケアハウス)との違い

「介護度はそれほど高くないが一人暮らしが難しい」という段階で、養護老人ホームとよく比べられるのが軽費老人ホーム(ケアハウス)です。この2つは、入所の仕組み・費用・相談先のすべてが異なります。

措置か契約かという根本的な違い

もっとも大きな違いは、養護老人ホームだけが措置による入所であるという点です。前述のとおり名古屋市は、ケアハウスを本人と施設の利用契約により入所する施設として、措置による養護老人ホームと区別して案内しています。有料老人ホームも同じく契約で入る施設で、事業者と入居者の間の契約にもとづいて入居します。つまり、契約で入る施設の中に軽費老人ホームや有料老人ホームがあり、措置で入る施設が養護老人ホームだ、という分け方になります。

この違いは、入居を断られたときの意味合いにも関わります。契約型の施設では、施設側が受け入れを判断します。措置の場合は、市町村が必要性を判断し、委託先の施設と調整します。どちらの制度で動いているのかによって、相談を持ち込むべき相手が変わるということです。軽費老人ホームの類型や費用の内訳については軽費老人ホーム(ケアハウス)の記事で詳しく説明しています。

月額費用の比較

名古屋市が令和7年9月現在で公表している「老人ホーム入所のごあんない」にもとづき、養護老人ホーム・軽費老人ホームA型・ケアハウスの条件を比較すると次のとおりです。

比較項目養護老人ホーム軽費老人ホームA型ケアハウス
入所の仕組み市町村の措置施設との契約本人と施設の利用契約
年齢原則65歳以上65歳以上原則60歳以上
所得の要件生活保護受給、市町村民税所得割が非課税など本人の年収300万円以下収入に応じた利用料
月額の費用本人負担0円〜上限140,000円約63,480円〜117,880円約61,300円〜128,900円

養護老人ホームの費用徴収の仕組みは次の章で詳しく説明します。

この表の金額は名古屋市の資料にもとづく一例で、費用徴収額は一般財源化を経て自治体の条例・要綱で定められているため、住んでいる市区町村によって異なります。養護老人ホームは収入が低い場合に本人負担が0円になりうる点が、契約型の施設と大きく異なるところです。なお、有料老人ホームは事業者ごとに料金設定が異なり、入居一時金の有無や月額の水準も一様ではないため、公的な統一基準にもとづく比較はできません。

相談する窓口が違う

養護老人ホームの相談先は市区町村です。横浜市は区の高齢・障害支援課、神戸市と札幌市は区役所の保健福祉課、名古屋市は「お住まいの区の福祉課又は支所区民福祉課へご相談ください」と案内しています。自治体によって課の名称は異なりますが、いずれも高齢者福祉を担当する部署が窓口である点は共通しています。

これに対して、軽費老人ホームや有料老人ホームは施設に直接問い合わせて見学・契約へ進むのが基本です。どの施設が候補になるか分からない段階であれば、地域包括支援センターに相談して、本人の状況に合う制度の見当をつけてもらう方法もあります。

費用の仕組みと月額の目安

養護老人ホームの費用は、入居一時金や月額利用料ではなく、老人福祉法第28条にもとづく「費用徴収金」として決まります。額は本人の対象収入(年金などの収入から税や社会保険料などを差し引いた後の額)と、扶養義務者の所得に応じた階層区分で決まり、収入が低ければ0円になることもあります。

老人福祉法第28条にもとづく費用徴収

老人福祉法第28条は、措置に要する費用について次のように定めています。

当該措置に係る者又はその扶養義務者から、その負担能力に応じて、当該措置に要する費用の全部又は一部を徴収することができる

要するに、措置にかかった費用はいったん公費で負担され、そのうち負担できる分を本人や扶養義務者から徴収する、という順序です。

運用の基準は、平成18年1月24日老発第0124001号の別紙「老人保護措置費支弁基準」および「費用徴収基準」に整理されています(支弁額とは、自治体がその入所者のために実際に支出する措置費の額のことです)。費用徴収の基礎となる「対象収入」の認定方法は昭和63年5月27日社老第74号が定めています。対象収入とは、前年の収入(年金等は実際の受給額)から、所得税・住民税等の租税、社会保険料、医療費などの必要経費を控除した後の収入のことです。額面の年金額そのものではない点に注意してください。

本人の費用徴収基準(0円〜月14万円の39階層)

本人からの費用徴収金は、対象収入が増えるほど段階的に上がります。まず全体の形を図で確認します。

本人からの費用徴収額(月額)の階層別の例対象収入270,000円以下は0円、270,001〜280,000円は1,000円、400,001〜420,000円は10,800円、1,000,001〜1,040,000円は51,800円、1,440,001〜1,500,000円は81,100円で、徴収金の限度額は140,000円であることを示す横棒グラフ本人からの費用徴収額(月額)対象収入の階層別(5階層+参考1階層を抜粋)対象収入 270,000円以下0円270,001〜280,000円1,000円400,001〜420,000円10,800円1,000,001〜1,040,000円51,800円1,440,001〜1,500,000円81,100円徴収金の限度額(参考)140,000円0円70,000円140,000円※実際の額は自治体の条例・要綱により異なります。
全39階層のうち5階層を抜粋し、月額の徴収額をバーの長さで表しています。いちばん下の枠だけのバーは実際の徴収額ではなく、上限額の位置を示す参考線です。

ここでいちばん間違えやすいのが、年金の額がそのまま「対象収入」になるわけではない、という点です。名古屋市は対象収入について次のように注記しています。

対象収入とは、前年の収入(年金、恩給その他これらに類する定期的に支給されるものについてはその実際の受給額、その他の収入については所得税法により算定される課税標準の額等をいう。)から所得税、住民税等の租税、社会保険料、医療費等の必要経費を控除した後の収入をいいます。

年金は実際の受給額で数え、そこから租税・社会保険料・医療費などの必要経費を差し引いた残りが対象収入です(昭和63年5月27日社老第74号、および取扱いの細則である社老第75号)。必要経費として認められるもの・認められないものは、これらの通知が次のように整理しています。

必要経費として認められるもの認められないもの
所得税・住民税等の租税(固定資産税を除く)交際費
健康保険料などの社会保険料寄附金
医療費(支払った総額から保険金等で補てんされる金額を控除した額の全額)生命保険料(原則)
配偶者への仕送り、やむを得ない事情による借金の返済(場合により)住宅の維持費(原則)

社会保険料は必要経費として控除されますが、具体的にどこまでを含めるかは市町村の運用によります。介護保険料や国民健康保険料の扱いを含め、自分の場合にどこまで差し引けるのかは窓口で確認してください。なお、1月から6月までの分について前年の対象収入が把握できない場合は、前々年分の対象収入で階層を決めることとされています。

名古屋市が令和7年9月現在で公表している基準表(広島市の公表する基準表とも一致します)では、次のような段階になっています。年金収入だけで暮らしている方が自分の位置を探せるよう、中間の階層も抜粋して示します。

階層対象収入(年額)徴収金(月額)
第1階層270,000円以下0円
(抜粋)270,001〜280,000円1,000円
(抜粋)400,001〜420,000円10,800円
第17階層560,001〜580,000円24,100円
第19階層600,001〜640,000円27,500円
第21階層680,001〜720,000円34,100円
第23階層760,001〜800,000円39,800円
第25階層840,001〜880,000円43,800円
第27階層920,001〜960,000円47,800円
第29階層1,000,001〜1,040,000円51,800円
第31階層1,080,001〜1,120,000円57,100円
(抜粋)1,440,001〜1,500,000円81,100円
第39階層1,500,001円以上150万円を超える額×0.9÷12月+81,100円

「(抜粋)」の行のあいだにも階層があり、全体では39階層に分かれています。第18階層・第20階層のように、ここに載せていない階層も同じ表の中に順に並んでいます。

自分の場合の見当をつけるには、次の順に考えます。

  1. 年金の年額を出す:受け取っている年金の月額に12を掛けます(月7万円なら年84万円です)。
  2. そこから必要経費を引く:所得税・住民税等の租税、社会保険料、医療費などを差し引いた額が、対象収入のおおよその目安になります。
  3. 表で自分の帯を探す:その金額が入る行の徴収金が、本人負担の月額の目安です。

ただし、これは見当をつけるための手順です。正確な階層は、市区町村が収入と必要経費を確認したうえで認定します。実際の額は窓口で確認してください。

そして、徴収金の限度は月額140,000円とされています。対象収入が270,000円以下であれば本人の負担は0円であり、経済的に困窮した方が費用を理由に入所できないということがないよう設計されていることが分かります。なお、これらの額は自治体の条例・要綱で定められるため、お住まいの市区町村では異なる場合があります。

扶養義務者からも徴収される場合がある

扶養義務者とは、配偶者や子など、法律上その人を扶養する義務がある人のことです。別居していても対象になりえますが、徴収されるかどうかも額も、その人の所得に応じて決まります。

第28条は「当該措置に係る者又はその扶養義務者から」と規定しており、扶養義務者も費用徴収の対象になりえます。名古屋市の基準では、生活保護を受けている世帯(A階層)と市町村民税が非課税の世帯(B階層)の0円から階層が始まり、そこから所得に応じて段階的に上がっていきます。全体の構成は次のとおりです。

階層扶養義務者の状況徴収金(月額)
A生活保護を受けている世帯0円
B市町村民税が非課税の世帯0円
C1市町村民税が均等割のみ課税2,200円
C2市町村民税の所得割が課税3,300円
D1前年の所得税が30,000円以下9,000円
D2〜D12前年の所得税額に応じて段階的に上昇9,000円〜191,200円のあいだ
D13前年の所得税が5,030,001〜6,270,000円191,200円
D14前年の所得税が6,270,001円以上その月の措置費支弁額

子世代が「親の費用は自分に請求されるのか」と心配することは多いのですが、上の表のとおり負担が生じるのは所得に応じた階層に該当する場合で、扶養義務者の所得が低ければ0円です。表の下のほう、D13・D14は所得税額が年500万円を超えるような階層で、D14では、その月に実際に支出された措置費の額が徴収額になります。所得の高い扶養義務者がいる場合には公費負担が実質的に生じない形になる、という設計です。具体的にどの階層に当たるかは、市区町村の窓口で確認してください。

自治体によって額が異なる理由

費用徴収額に自治体差が生じるのは、財源の仕組みが変わったためです。軽費老人ホームの事務費補助金は平成16年度に、養護老人ホーム等保護費負担金は平成17年度に一般財源化されました。国庫負担金として国が財源を出す仕組みから、自治体の一般財源でまかなう仕組みに移ったことで、実際の徴収額は各自治体の条例・要綱で定められるようになっています。

実際、京都市は市町村民税の均等割のみ課税されるC1階層について、7年間かけて段階的に本来の額に近づける経過的な軽減措置を設けており、0円、1,125円、2,250円、3,375円、4,500円と段階を踏む扱いを公表しています。同じ階層でも自治体によって額が違いうるということです。したがって、他の自治体の基準表を見て自分の負担額を計算しても正確ではありません。必ず本人が住んでいる市区町村の基準を確認してください。

入所までの流れ

措置による入所は、契約型の施設とは進み方が違います。相談から措置決定までの一般的な流れは次の4段階です。

  1. 市区町村の窓口に相談する:本人・家族・ケアマネジャーなどが、高齢福祉担当窓口に状況を伝えます。
  2. 調査・入所判定:市区町村が要件への該当と入所の必要性を調査・判定します。
  3. 措置決定・入所:市町村が措置を決定し、入所先の施設と調整します。
  4. 年1回の見直し:入所を続ける必要があるかどうかを市町村が確認します。

自治体によっては、判定のあとに「待機者登録」という段階を置き、空きが出た時点で入所措置に進む流れを案内しています(岩手県遠野市の例)。

養護老人ホームに入所するまでの4ステップ市区町村の窓口に相談し、市区町村が調査と入所判定を行い、市町村が措置を決定して入所し、その後は年1回見直されることを示す縦のステップ図相談から入所後の見直しまでの4ステップ① 市区町村の窓口に相談誰が:本人・家族・ケアマネジャーなど何を:高齢福祉担当窓口に状況を伝える② 調査・入所判定誰が:市区町村(保健福祉課など)何を:要件への該当と必要性を調べる③ 措置決定・入所誰が:市町村何を:措置を決定し、入所先と調整する④ 年1回の見直し誰が:市町村何を:入所を続ける必要があるかを確認する※手続の細部は自治体ごとに異なります。
相談から入所後の見直しまでの4段階を、上から順に示しています。矢印の向きが手続の進む方向です。

手続の細部は自治体ごとに異なるため、実際の進め方は窓口で確認してください。以下、各段階を順に見ていきます。

まず市区町村の高齢福祉担当窓口に相談する

出発点は、本人が住んでいる市区町村の窓口です。窓口では、本人の年齢、収入や資産の状況、住まいの状況、家族の状況、健康状態、現在困っていることなどを聞き取ります。本人が窓口に出向くことが難しい場合は、家族やケアマネジャー、地域包括支援センターの職員が同行したり、事前に相談したりするのが実務的です。

この段階で、次のような書類を持参できると話が早く進みます。

  • 年金額が分かる書類
  • 住民税の課税・非課税が分かる書類
  • 健康状態が分かる資料

何を用意すべきかは自治体によって異なります。事前に電話で確認しておくと二度手間になりません。

調査と入所判定

相談を受けた市区町村は、本人の状況を調査します。神戸市は、区役所の保健福祉課が状況を調査・検討したうえで入所の必要性を判断すると案内しています。調査では、老人福祉法第11条第1項第1号が定める要件、すなわち年齢、環境上の理由、経済的理由に該当するかどうかが確認されます。

そのうえで、厚生労働省の「老人ホームへの入所措置等の指針について」(老発第0331028号)に示された入所判定基準に沿って判定が行われます。入院加療を要する病態ではないか、現在置かれている環境の下では在宅での生活が困難といえるか、という観点が中心です。自治体によっては入所判定委員会のような合議の場を設けて判断しています。

本人が入所を望んでいない場合はどうなるか

家族が「このままでは一人暮らしは難しい」と考えていても、本人が乗り気ではない、という状況はよくあります。制度上どう扱われるのかを、はっきりしている部分と、資料からは分からない部分に分けて整理します。

まず、措置は市町村が行う行政処分です。厚生労働省の措置指針(老発第0331028号)の本文には、入所にあたって「本人の同意を要する」という明文の規定は置かれていません。

一方で、自治体の実務では本人の意思が前提に置かれている例が確認できます。岩手県遠野市は対象者を「65歳以上の高齢者で施設入所の意思があり」と明記していますし、佐賀県小城市は「入所希望者が居住地の市町村長へ申請し、入所判定委員会で入所の適否を判定し入所決定します」と案内しています。ある自治体の老人福祉措置要領では、入所決定時に本人と家族へ措置制度の仕組みや施設の種類・機能を事前に十分説明すること、措置の変更等に際しては「入所者及びその家族の意思を十分聴取するとともに措置の趣旨について十分説明し、理解と合意を得たうえで」行うことが定められています。本人の意向を確認しないまま話が進む仕組みにはなっていない、ということです。

例外的な枠組みとして、高齢者虐待の事案があります。高齢者虐待防止法第9条第2項は、養護者による虐待によって生命・身体に重大な危険が生じているおそれがあると認められる高齢者を一時的に保護するため、市町村が迅速に措置を講じることを定めています。神奈川県の高齢者虐待防止対応マニュアルは、この場面の実施上のポイントとして「本人の同意があれば、養護者が反対していても、措置することができる」と整理しています。ただし、この「やむを得ない事由による措置」で使えるのは訪問介護、通所介護、短期入所生活介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、特別養護老人ホームで、養護老人ホームはこの枠ではなく老人福祉法第11条第1項第1号による通常の措置で対応する扱いです。

そのうえで正直に書いておくと、本人が入所を拒否している場合にどう扱われるのかを明記した公的な資料は、今回の調査では確認できませんでした。ただ、本人がまだ渋っている段階であっても、家族が市区町村の窓口に状況を相談すること自体はできます。窓口で制度の説明を受け、どんな選択肢があるのかを知ったうえで本人と話す、という順番でも遅くはありません。

措置決定と入所

入所が必要と判断されると、市町村が措置を決定し、入所先の施設と調整のうえ入所となります。あわせて、本人と扶養義務者の費用徴収額が、前述の階層区分にもとづいて決定されます。措置決定は行政処分であるため、決定内容は書面で通知されるのが通常です。

入所先の施設は市町村が調整します。希望する地域や施設があるなら、相談の段階で伝えておきましょう。ただし、空床の状況によっては希望どおりにならないこともあります。全国の養護老人ホームは918施設と数が限られているため、地域によっては選択肢が少ない点は理解しておく必要があります。

「申し込んでからどのくらいで入所できるのか」は誰もが気にする点ですが、入所までの期間について、全国的な統計や公的な目安は示されていません。手続の流れとして待機の段階を明示している自治体はあり、岩手県遠野市は①相談→②実態調査→③入所判定委員会→④待機者登録→⑤入所措置という順で案内したうえで、「期間は調査・判定・待機期間により異なります」としています(日数の目安までは示されていません)。

全国の統計では、定員59,812人に対して在所者は50,543人で、定員に対する割合はおよそ84.5%です。ただしこれは全国を合計した数字であり、入所までにかかる期間を示すものではありません。空き状況は地域によって差があるため、見通しは本人が住んでいる市区町村の窓口で確認してください。

入所後は年1回見直される

措置は一度決まれば終わりではありません。千葉市の老人ホーム入所措置等実施要綱は、措置後も年1回、入所を継続する必要があるかどうかを見直すことを定めています。本人の状況や経済状況が変われば、費用徴収額も見直されます。

この見直しは、本人の状態が変わったときに適切な措置へつなぐための仕組みでもあります。たとえば介護の必要性が高まり、特別養護老人ホームの利用が適当と判断されれば、措置の変更や廃止という形で扱いが変わります。この点は後の章で詳しく説明します。

養護老人ホームで介護保険サービスは使えるのか

「養護老人ホームに入ったら介護は受けられないのか」という疑問はよく聞かれます。結論としては、介護保険サービスを利用することはできます。ただし、その施設が特定施設入居者生活介護の指定を受けているかどうかで、利用の形が変わります。

特定施設の指定を受けた養護老人ホーム

特定施設入居者生活介護とは、都道府県などの指定を受けた施設が、入所者に対して施設の中で介護保険サービスを提供する仕組みです。対象となる施設は、有料老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス)、養護老人ホームの3種類です(社会保障審議会介護給付費分科会 第260回 資料4)。養護老人ホームが対象に加わったのは平成18年の改正によるもので、あわせて外部サービス利用型特定施設入居者生活介護が創設されました(平成18年3月28日厚生労働省告示第165号)。

特定施設の指定を受けた養護老人ホームに入所している場合、施設が提供する特定施設入居者生活介護を利用できます。令和6年度改定後の報酬(1日あたりの単位数)は次のとおりで、自己負担はこの一部(原則1割)となります。

要介護度1日あたりの単位数
要支援1183単位
要支援2313単位
要介護1542単位
要介護2609単位
要介護3679単位
要介護4744単位
要介護5813単位

※外部サービス利用型の基本部分の報酬は、要介護度にかかわらず1日あたり84単位です。制度の全体像は特定施設入居者生活介護の記事で解説しています。

指定を受けているかどうかは施設ごとに異なるため、実際に検討している施設については、厚生労働省の介護サービス情報公表システムや市区町村の窓口で確認してください。

一般型と外部サービス利用型の違い

入所者にとっての違いは、介護保険サービスを施設の職員から受けるか、施設が委託した外部の事業者から受けるか、という点です。

特定施設入居者生活介護には、一般型と外部サービス利用型の2つの類型があります。厚生労働省の資料(社会保障審議会介護給付費分科会 第179回 資料7)は、両者を次のように整理しています。

比較項目一般型外部サービス利用型
報酬の仕組み包括報酬定額報酬(生活相談・安否確認・計画作成)+出来高報酬(各種居宅サービス)
介護の提供者3対1で配置した施設の介護職員・看護職員が自ら提供特定施設が委託した事業者が提供
向いている状況継続的に介護を必要とする入居者が多い施設1対1のスポット的なサービスが中心で、要介護者が少ない施設

厚生労働省の資料は、外部サービス利用型を「1対1のスポット的なサービスが中心で、要介護者が少ない施設」に向くものと整理しています。自立度の高い入所者が多い養護老人ホームは、この類型に当てはまる場合があります。

指定を受けていない施設では居宅サービスを使う

特定施設の指定を受けていない養護老人ホームに入所している場合、入所者は外部の居宅サービス事業者と個別に契約して、訪問介護や通所介護などを利用します。要介護認定を受けたうえで、ケアマネジャーにケアプランを作成してもらう、在宅での利用と同様の流れです。

この場合、施設内で完結する介護体制があるわけではないため、必要な介護の量が増えてきたときに、その施設で生活を続けられるかどうかが課題になります。見学や相談の際には、その施設が特定施設の指定を受けているか、受けていない場合に外部サービスをどのように利用している入所者が多いかを聞いておくと、先々の見通しが立てやすくなります。

データで見る養護老人ホーム

制度の位置づけは、数字で見るとより分かりやすくなります。ここでは令和6年社会福祉施設等調査(令和6年10月1日現在、公表は2025年12月17日)と、令和6年介護サービス施設・事業所調査の数値を使います。

全国の施設数・定員・在所者数

まず、養護老人ホーム全体の規模と、定員がどの程度埋まっているかを見ます。

養護老人ホームの定員と在所者数(918施設)養護老人ホームの定員59,812人に対して在所者が50,543人であり、定員に対する在所者の割合がおよそ84.5%であることを示す横棒グラフ定員と在所者数(918施設)令和6年社会福祉施設等調査定員59,812人在所者50,543人03万人6万人定員に対する在所者の割合はおよそ84.5%
バーの長さが人数を表します。上が定員、下が実際に入所している人数です。

令和6年社会福祉施設等調査によると、全国の養護老人ホームは918施設、定員は59,812人、在所者は50,543人です。常勤換算の従事者数は15,949人となっています。養護老人ホーム単独では定員59,812人に対し在所者50,543人で、およそ84.5%です(老人福祉施設全体の在所率89.0%とは別の数値です)。

定員に空きがあるように見えても、施設の分布には地域ごとの偏りがあります。また、入所するかどうかは空床の有無だけでなく、市町村の措置判断によって決まります。本人が住んでいる地域にどのくらい施設があるかは、市区町村の高齢福祉担当窓口で聞けるほか、厚生労働省の介護サービス情報公表システムでも調べられます。

盲養護老人ホームという類型

視覚障害のある方を対象にした専用の類型があり、数が少ないぶん、広域での調整が必要になることがある、というのがこの項の要点です。

養護老人ホームには、視覚障害のある高齢者を対象とする「盲養護老人ホーム」という類型があります。令和6年社会福祉施設等調査による918施設の内訳は次のとおりです。

区分施設数定員在所者
計918施設59,812人50,543人
一般の養護老人ホーム866施設56,948人48,124人
盲養護老人ホーム52施設2,864人2,419人

盲養護老人ホームは全国で52施設にとどまるため、地域によっては近くにない場合があります。視覚障害のある方の措置を検討する場合は、広域での調整が必要になることがあるため、早めに市区町村の窓口に相談してください。設備・運営の基準についても、盲養護老人ホームには特例が設けられています。

特養・軽費老人ホームとの規模の比較

他の類型と比べると、養護老人ホームの規模の位置づけが見えてきます。

定員規模の比較(同じ目盛りで表示)定員規模の比較。特別養護老人ホームが604,469人、軽費老人ホームが94,963人、養護老人ホームが59,812人であることを示す横棒グラフ定員規模の比較(同じ目盛り)令和6年社会福祉施設等調査介護サービス施設・事業所調査特別養護老人ホーム604,469人軽費老人ホーム94,963人養護老人ホーム59,812人035万人70万人※特養の定員は介護サービス施設等調査による
3つの類型の定員を同じ目盛りで並べています。オレンジのバーがこの記事の主役である養護老人ホームです。

令和6年介護サービス施設・事業所調査によると、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は8,621施設・定員604,469人で、利用率は94.5%です。定員で見ると養護老人ホームの10倍以上の規模があります。

軽費老人ホームの内訳は次のとおりです。

類型施設数定員在所者
軽費老人ホーム 計2,331施設94,963人86,325人
ケアハウス2,037施設81,790人74,324人
A型187施設——
B型11施設——
都市型軽費老人ホーム96施設1,656人—

養護老人ホームの定員59,812人は、軽費老人ホーム全体よりも小さい規模です。なお、老人福祉施設全体では5,069施設で、前年から57施設減少しています。これらは全国を合計した数字で、施設の分布には地域差があります。本人が住んでいる地域にどのような施設があるかは全国の数字からは分からないので、市区町村の高齢福祉担当窓口や、厚生労働省の介護サービス情報公表システムで確認してください。規模の小さい類型であるぶん、制度そのものを知らないまま候補から外れてしまうことが起きやすい施設でもあります。

職員体制と居室の基準

養護老人ホームの設備・運営の基準は、「養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」(昭和41年厚生省令第19号)で定められています。どのような職員が、どのくらい配置されるのかを知っておくと、見学時に確認すべきことが具体的になります。

人員配置基準

この基準から読み取れるのは、養護老人ホームが「介護を提供する施設」ではなく「生活を支える施設」として人を置いている、ということです。

同省令第12条が定める人員配置は次のとおりです。

職種配置の基準
施設長1人
医師健康管理および療養上の指導を行うために必要な数
生活相談員常勤換算で入所者30人またはその端数を増すごとに1以上(入所者100人ごとに主任生活相談員)
支援員常勤換算で一般の入所者15人またはその端数を増すごとに1以上(主任支援員を置く)
看護職員常勤換算で入所者100人またはその端数を増すごとに1以上
栄養士または管理栄養士1以上
調理員・事務員等実情に応じた適当数

特徴的なのは、「介護職員」ではなく「支援員」という職種が中心に置かれていること、そして生活相談員の配置が定められていることです。これは、第20条の4が掲げる「自立した日常生活を営み、社会的活動に参加するために必要な指導及び訓練その他の援助」という目的に対応しています。看護職員は入所者100人ごとに1以上と、介護保険施設と比べて手厚い配置ではありません。医療的ケアが継続的に必要な状態の方を想定した基準にはなっていない、ということです。

なお、特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設、盲養護老人ホーム、サテライト型の施設については、この基準に特例が設けられています。

居室・床面積の基準

居室の定員は原則1人です。処遇上必要と認められる場合に限って2人までとすることができます。入所者1人当たりの床面積は10.65平方メートル以上と定められています。畳数にするとおよそ6畳強にあたる広さです。

個室が原則であることは、養護老人ホームが「自立した日常生活を営む」ことを目的に掲げていることと一貫しています。ただし、実際の居室の広さや設備(洗面やトイレが居室内にあるかなど)は施設ごとに差があるため、基準はあくまで下限だと考えて、実際の居室を見て確認することが大切です。

施設での生活はどのように定められているか

入所した後の暮らしがどうなるのかも、同じ省令に定められています。1日の過ごし方を細かく決めた規定ではありませんが、施設が守らなければならない最低限のルールを読むと、生活の輪郭が見えてきます。

処遇の方針(第16条):入所者が「有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように」援助することが基本方針です。援助は「漫然かつ画一的なものとならないよう配慮」しなければならないとされ、説明は懇切丁寧に、理解しやすいように行うことも定められています。身体的拘束等は「生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き」行ってはならないとされ、やむを得ず行った場合は、その態様・時間・そのときの心身の状況・理由を記録することが義務づけられています。あわせて、適正化のための委員会の開催、指針の整備、研修の実施も求められています。

日々の生活(第18条):生活相談員による相談・助言のほか、家族との連携や交流の機会の確保に努めること、外出の機会を確保するよう努めることが定められています。入浴は週2回以上。教養娯楽設備等を備え、適宜レクリエーション行事を行うことも義務づけられています。地域生活への移行を念頭に置いた自立支援も方針として掲げられています。

食事(第17条):「栄養並びに入所者の心身の状況及び嗜好を考慮した食事を、適切な時間に提供しなければならない」と定められています。嗜好、つまり本人の好みを考慮することが条文に書き込まれている点が特徴です。

健康管理(第20条):入所時と、その後は毎年定期に2回以上の健康診断を行うことが義務づけられています。

一人ひとりの計画(第15条):生活相談員が、心身の状況や環境、本人とその家族の希望等を勘案して処遇計画を作成し、必要な見直しを行います。入所後の生活の組み立てに本人と家族の希望が反映される道筋が、制度として用意されているということです。

苦情への対応(第27条):施設には苦情を受け付ける窓口を設けることが求められ、苦情の内容は記録されます。市町村の指導・助言を受けた場合はそれに従って改善し、改善の内容を市町村に報告しなければなりません。社会福祉法第83条にもとづく運営適正化委員会の調査にも協力することとされています。施設に直接言いにくいときの道筋も用意されている、ということです。

退所への配慮(第14条):施設は、入所者が居宅で日常生活を営むことができるかどうかについて常に配慮し、可能と認められる場合には、本人と家族の希望や退所後の生活環境を勘案して、円滑な退所のための援助に努めることとされています。入所が一方通行の制度としては設計されていません。

ここに挙げたのは、省令が定める最低限のルールです。実際の暮らしぶりは施設ごとに異なるので、見学や相談の場で、食事や外出、行事の実際の様子を聞いてみてください。

見学や相談のときに確認したいこと

措置による入所であっても、施設の見学や相談は可能です。制度と基準を踏まえると、次のような点を確認しておくと判断材料が増えます。

  • 特定施設入居者生活介護の指定を受けているか、受けている場合は一般型か外部サービス利用型か
  • 指定を受けていない場合、外部の居宅サービスをどのように利用している入所者が多いか
  • 居室の広さ・設備と、実際に個室で利用できるか
  • 支援員・生活相談員・看護職員の実際の配置状況と、夜間の体制
  • 費用徴収金のほかに、日常生活費として実費負担が生じる項目は何か
  • 介護が必要になったときに、その施設で生活を続けられる範囲はどこまでか

これらは施設によって答えが異なるため、市区町村の窓口に相談する際にも、こうした点を気にしていると伝えておくと、調整の参考にしてもらえます。

退所になるケースと特養への移行

措置は年1回見直されるため、本人の状態や環境が変われば措置の内容も変わります。千葉市の老人ホーム入所措置等実施要綱第6条は、措置の「変更」と「廃止」を分けて規定しています。自治体によって要綱の内容は異なりますが、基本的な考え方を知るうえで参考になります。

措置の変更

措置の変更とは、他の措置(特別養護老人ホームへの入所措置や養護委託など)が適当と認められるに至った場合に、その時点で措置の内容を変更することです(養護委託は、施設ではなく個人の家庭で高齢者を預かる措置です)。同じ「措置」の枠組みの中で、本人の状態に合った形に切り替える扱いといえます。

変更の判断も市町村が行います。施設の職員や担当のケアマネジャーが本人の状態の変化に気づいた場合は、市区町村の担当部署と情報を共有しながら検討が進むのが一般的です。家族の側から「最近こういう変化がある」と窓口に伝えることも、判断材料になります。

措置の廃止

千葉市の要綱が挙げる措置の廃止の事由は次の3つです。

  • 措置の基準に適合しなくなったとき
  • 入院その他の事情により施設外での生活が3か月以上に及ぶことが明らかに予想されるとき、またはおおむね3か月を超えるに至ったとき
  • 介護保険法第8条第23項にもとづく施設サービス(特別養護老人ホーム等)の利用が可能になったとき

2つ目は、入院が長期化した場合の扱いです。養護老人ホームは医療機関ではないため、長期の入院が続くと措置が廃止されることがあります。入院の見通しが立たない場合は、退院後の住まいをどうするかを含めて、早い段階で市区町村の窓口に相談してください。

特養へ移行する典型的なケース

3つ目の「介護保険法にもとづく施設サービスの利用が可能になったとき」が、特別養護老人ホームへ移行する典型的なルートです。養護老人ホームで生活するうちに要介護状態が進み、要介護認定を受けて特別養護老人ホームへの入所が可能になった場合、養護老人ホームの措置は廃止され、介護保険にもとづく施設利用に移ります。

この流れを知っておくと、「養護老人ホームに入ったら介護が必要になったときに行き場がなくなるのではないか」という不安はある程度解消できます。制度としては、状態の変化に応じて措置の変更・廃止という形で次の受け皿につなぐ道筋が用意されています。ただし、特別養護老人ホームに空きがあるかどうかは地域の状況によるため、移行が常にスムーズに進むとは限りません。

注意点とよくある誤解

養護老人ホームは、制度の仕組みが他の施設と違うために誤解されやすい施設です。相談の場で行き違いが起きやすい点を整理しておきます。

申込順ではなく、市町村が必要性を判断して決める

もっとも多い誤解が、「気に入った施設に早く申し込めば入れる」という理解です。前述のとおり養護老人ホームには契約入所の制度がなく、入所の可否を決めるのは市町村です。そして措置は、申込みを受け付けた順に決まるものでもありません。年齢、環境上の理由、経済的理由という要件に該当するかどうかが調査・判定され、そのうえで入所の必要性の高さをふまえて措置の要否が判断されます。

つまり、早く申し込んだほうが有利という性質の手続ではなく、市区町村が必要性を判断する仕組みです。逆にいえば、状況が切迫している場合はそれを具体的に伝えることが重要で、困っている事情は窓口で漏れなく説明してください。要件に当てはまるかどうかを判断するのは市区町村なので、当てはまるかどうか自信がない、迷っているという段階でも相談してかまいません。

措置の対象にならなかった場合に相談できる先

要件に当てはまらなかった場合や、すぐには入所に至らなかった場合でも、高齢者の生活を支える公的な仕組みは養護老人ホームだけではありません。話がそこで行き止まりにならないよう、ほかの相談先も知っておくと次の一手が打てます。

  • 地域包括支援センター:市町村が設置する高齢者の総合相談窓口で、総合相談のほか、権利擁護、地域の支援体制づくり、介護予防に必要な援助などを行う中核機関です。全国に5,487か所、ブランチを含めると7,374か所あります。
  • 生活困窮者自立支援制度:支援員が本人の状況に応じた支援プランを作成する自立相談支援事業のほか、家賃相当額を一定期間支給する住居確保給付金、宿泊場所や衣食を提供する一時生活支援事業、家計改善支援事業などがあります。
  • 住宅セーフティネット制度:国土交通省の制度で、住宅の確保に配慮が必要な人として高齢者が明記されています。入居を拒まない登録住宅(セーフティネット住宅)のほか、居住支援法人による情報提供・相談、見守り等の生活支援、家賃債務保証が用意されています。改正法は令和7年10月1日に施行されました。
  • 生活保護:養護老人ホームの経済的理由を定める老人福祉法施行令第6条の第1号にも「生活保護による保護を受けていること」が挙げられているとおり、生活保護と養護老人ホームの措置は相反するものではありません。

措置の決定に納得できない場合についても触れておきます。措置の決定は行政処分にあたるため、一般には行政不服審査法にもとづく審査請求の対象となります。審査請求は処分があったことを知った日の翌日から3か月以内に行うこととされ、手数料はかかりません。ただし、養護老人ホームの措置について審査請求の方法を具体的に案内している自治体の資料は、今回の調査では確認できませんでした。実際の手続は、市区町村から示される教示(不服申立てができる旨・申立先・期間の案内)に従ってください。

費用徴収金と介護保険の自己負担は別々にかかる

費用の見積もりで行き違いが起きやすいのが、この点です。老人福祉法第28条にもとづく費用徴収金は、あくまで措置に要した費用の負担分です。施設で介護保険サービスを利用した場合、その自己負担(原則1割)は費用徴収金とは別に発生します。

特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設で施設内のサービスを使う場合も、指定を受けていない施設で外部の居宅サービスを使う場合も、介護保険の自己負担は費用徴収金に含まれません。このほか、日常生活費として実費負担が生じる項目もあります。月々の支出の全体像を知りたいときは、費用徴収金と介護保険の自己負担、実費負担を分けて窓口で確認してください。

「身寄りのない人だけの施設」ではない

「家族がいるから対象外だろう」と考えて相談をやめてしまう方がいますが、これは誤解です。入所の要件は環境上の理由と経済的理由であり、家族の有無そのものが要件ではありません。家族がいても、虐待を受けている、同居の継続が困難である、といった事情で在宅生活が困難であれば、対象になりえます。ただし、扶養義務者がいる場合は、前述のとおり費用徴収の対象になります。

また、「介護が必要な人は入れない」「自立している人しか入れない」という理解も正確ではありません。前述のとおり、要介護認定は入所要件ではない一方で、入所判定基準は身体上・精神上の理由がある方を排除する趣旨ではないと明記しています。入所要件は老人福祉法と施行令が定めるものに限られます。「この状態では無理だろう」と自己判断せず、まず窓口で相談してください。

制度改定で内容が変わりうる

養護老人ホームをめぐる制度は、これまでも変わってきました。平成17年度には養護老人ホーム等保護費負担金が一般財源化され、費用徴収の実務が自治体ごとに定められる形になりました。平成18年には、特定施設入居者生活介護の対象に養護老人ホームが加えられ、外部サービス利用型が創設されるとともに、入所要件から「身体上若しくは精神上」の理由が外れ、措置事務の指針が老発第0124001号として整理されています。

介護保険の報酬は3年ごとに改定されるため、特定施設入居者生活介護の単位数も変わります。この記事で示した単位数は令和6年度改定後のものです。費用徴収基準も自治体の条例・要綱の改正によって変わりえます。制度は改正されることがあるため、最新の情報は必ず市区町村の窓口で確認してください。当サイトの編集方針についてはこのサイトの立ち位置をご覧ください。

まとめ

  • まず、本人が住んでいる市区町村の高齢福祉の担当窓口に相談します。離れて暮らす家族が本人に代わって相談することもできます。施設に直接申し込む手続ではないため、ここが出発点です。
  • 養護老人ホームは老人福祉法第20条の4にもとづく施設で、65歳以上の方が環境上の理由と経済的理由により在宅での養護が困難な場合に、市町村の措置として入所します。契約入所の制度はありません。
  • 経済的理由は老人福祉法施行令第6条が定め、生活保護の受給、市町村民税の所得割が非課税、災害等による生活困窮のいずれかが要件です。要介護認定は要件ではなく、身体上・精神上の理由がある方を対象外とするものでもありません。
  • 費用は老人福祉法第28条にもとづく費用徴収金で、本人分は対象収入に応じた全39階層、270,000円以下なら0円、上限は月額140,000円です(扶養義務者からも所得に応じて徴収され、額は自治体により異なります)。
  • 令和6年社会福祉施設等調査では全国918施設・定員59,812人・在所者50,543人で、特別養護老人ホームの定員604,469人と比べると小規模な類型です。
  • 措置は年1回見直され、介護保険の施設サービスを使えるようになった場合などには、措置の変更・廃止という形で次の受け皿につながります。入所までの期間の全国的な目安は公的に示されていないため、見通しも窓口で確認してください。

よくある質問

年金だけで暮らしていますが、養護老人ホームの費用はいくらになりますか。

本人負担は「対象収入」で決まり、対象収入が270,000円以下なら0円です。注意したいのは、年金の額がそのまま対象収入になるわけではない点で、年金の実際の受給額から所得税・住民税等の租税、社会保険料、医療費などの必要経費を差し引いた後の額が対象収入です。名古屋市の基準では対象収入600,001〜640,000円で月27,500円、920,001〜960,000円で月47,800円、限度額は月140,000円です。額は自治体により異なります。

養護老人ホームは申し込んでからどのくらいで入所できますか。

入所までの期間について、全国的な統計や公的な目安は示されていません。市町村の調査・入所判定と施設の空き状況によって変わるためです。岩手県遠野市のように、①相談②実態調査③入所判定委員会④待機者登録⑤入所措置という流れを案内し、「期間は調査・判定・待機期間により異なります」としている自治体もあります。見通しは本人が住む市区町村の窓口で確認してください。

本人が嫌がっていますが養護老人ホームに入所できますか。

厚生労働省の措置指針の本文に「本人の同意を要する」という明文の規定はありませんが、自治体の実務では本人の意思を前提に置いている例が確認できます。岩手県遠野市は対象者を「施設入所の意思があり」と明記し、自治体の老人福祉措置要領も、措置の変更等に際して入所者と家族の意思を十分聴取し、理解と合意を得たうえで行うと定めています。本人が渋っている段階でも、家族が市区町村の窓口に相談することはできます。

養護老人ホームと特別養護老人ホームは何が違いますか。

根拠条文と入所の仕組みが違います。養護老人ホームは老人福祉法第20条の4にもとづき市町村の措置で入所し、要介護認定は要件ではありません。特別養護老人ホームは同法第20条の5および介護保険法にもとづき、介護保険の契約入所が原則で、要介護状態にある方の介護を目的としています。全国の定員も59,812人と604,469人で大きく異なります。

介護が必要になったら退所になりますか。

介護が必要になったことだけを理由に退所になるわけではありません。特定施設入居者生活介護の指定を受けた養護老人ホームでは施設内で介護保険サービスを利用でき、指定がない施設でも外部の居宅サービスを利用できます。ただし千葉市の要綱では、介護保険法第8条第23項にもとづく施設サービス(特別養護老人ホーム等)の利用が可能になったときは措置を廃止すると定めており、これが特養へ移行する典型的なルートです。判断は市町村が行い、措置は年1回見直されます。

参考・出典

  1. 老人福祉法 (e-Gov法令検索(デジタル庁))
  2. 老人福祉法(法令等データベース) (厚生労働省)
  3. 老人福祉法施行令 (厚生労働省)
  4. 養護老人ホームの設備及び運営に関する基準 (厚生労働省)
  5. 老人保護措置費の国庫負担(費用徴収基準)の取扱いについて(社老第74号) (厚生労働省)
  6. 令和6(2024)年 社会福祉施設等調査の概況 (厚生労働省)
  7. 社会福祉施設等調査 (e-Stat(政府統計の総合窓口))
  8. 令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況 (厚生労働省)
  9. 特定施設入居者生活介護(社会保障審議会介護給付費分科会 第260回 資料4) (厚生労働省)
  10. 特定施設入居者生活介護(社会保障審議会介護給付費分科会 第179回 資料7) (厚生労働省)
  11. 養護老人ホーム入所判定基準(老人ホームへの入所措置等の指針について) (岐阜県瑞穂市)
  12. 老人保護措置費に係る支弁額等の改定の考え方及び改定の例(事務連絡) (厚生労働省老健局高齢者支援課)
  13. 老人ホーム入所のごあんない(令和7年9月) (名古屋市健康福祉局)
  14. 養護老人ホーム被措置者費用徴収基準表 (広島市)
  15. 千葉市老人ホーム入所措置等実施要綱 (千葉市)
  16. 養護老人ホーム (神戸市)
  17. 養護老人ホームについて知りたい (横浜市)
  18. 養護老人ホーム (札幌市)
  19. 養護老人ホーム入所措置 (京都市)
  20. 特定施設入居者生活介護(介護サービス情報公表システム) (厚生労働省)
  21. 老人ホームへの入所措置等の指針について(老発第0331028号) (厚生労働省(大分県豊後高田市掲載))
  22. 養護老人ホームの設備及び運営に関する基準 (e-Gov法令検索)
  23. 老人保護措置費の国庫負担(費用徴収基準)の取扱いに関する細則(社老第75号) (厚生労働省)
  24. 高齢者虐待防止対応マニュアル別冊 (神奈川県)
  25. 地域包括支援センターについて (厚生労働省)
  26. 生活困窮者自立支援制度 (厚生労働省)
  27. 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット制度) (国土交通省)
  28. 行政不服審査制度の概要 (総務省)
  29. 養護老人ホーム入所措置 (岩手県遠野市)
  30. 養護老人ホームへの入所 (佐賀県小城市)
  31. 老人福祉措置要領 (自治体例規(老人福祉措置要領))