介護施設の避難確保計画とは、洪水や土砂災害などの危険がある区域にある要配慮者利用施設が、利用者の避難のしかたをあらかじめ定めておく計画です。浸水想定区域や土砂災害警戒区域内で市町村地域防災計画に載った施設には、水防法などにより作成と市町村長への報告、計画に基づく訓練が求められます。この記事では、対象の範囲、3つの法律の違い、計画に載る項目、介護保険施設の運営基準や消防法との関係、作成率と訓練実施率、令和2年7月豪雨の事例、ご家族が確認できる点を、国土交通省・厚生労働省などの公的資料にもとづいて整理します。
避難確保計画とは
避難確保計画の定義
避難確保計画は、災害のおそれがあるときに、施設の利用者の命を守るための避難の手順をまとめた計画です。国土交通省は、水害や土砂災害の危険がある区域にある要配慮者利用施設の所有者または管理者に、この計画の作成を求めています。計画には、だれが、いつ、どこへ、どの方法で避難させるかといった内容を、施設ごとの立地や利用者の状況に合わせて書き込みます。
ここでいう「要配慮者利用施設」とは、社会福祉施設、学校、医療施設など、主として防災上の配慮を要する方が利用する施設を指します。高齢者が暮らす老人福祉施設、有料老人ホーム、認知症グループホームなどが例として挙げられています。
義務の対象になる施設の範囲
すべての介護施設に作成義務があるわけではありません。国土交通省の資料によると、洪水・雨水出水・高潮・土砂災害については、義務の対象は次の条件を満たす施設です。
- 洪水・雨水出水・高潮の浸水想定区域、または土砂災害警戒区域の中にある
- その施設の名称と所在地が、市町村地域防災計画に定められている
津波については、津波災害警戒区域内で、市町村が避難促進施設として定めた施設が対象です。どの施設を地域防災計画に載せるか、避難促進施設として定めるかは市町村が判断するため、同じ区域内にあっても、対象になっているかどうかは市町村によって異なりえます。「うちの施設は区域に入っているのか」「地域防災計画に載っているのか」は、施設や市町村の防災担当窓口に尋ねることで確認できます。
災害の種類ごとの計画
国土交通省の手引きは、洪水、雨水出水、高潮、土砂災害、津波の各災害を対象に作成方法を示しています。後から内水(雨水出水)や高潮の区域に指定された場合は、それぞれの区域に対応した計画が別に必要になります。最初に洪水の計画を作った施設でも、区域の指定が追加されたときは見直しの対象になります。
法的根拠となる3つの法律の違い
災害の種類によって、根拠となる法律が分かれます。3つの法律の違いは次のとおりです。
| 法律・条文 | 対象の災害 | 対象の施設 |
|---|---|---|
| 水防法 第15条の3 | 洪水・雨水出水・高潮 | 浸水想定区域内で、名称と所在地が市町村地域防災計画に定められた施設 |
| 土砂災害防止法 第8条の2 | 土砂災害 | 土砂災害警戒区域内で、名称と所在地が市町村地域防災計画に定められた施設 |
| 津波防災地域づくり法 第71条 | 津波 | 津波災害警戒区域内で、市町村が避難促進施設として定めた施設 |
水防法第15条の3(洪水・雨水出水・高潮)
水害に関する根拠は水防法第15条の3です。各項の内容を、施設の義務と市町村長の権限に分けて整理します。
施設の義務(努力義務を含む)
- 第1項:浸水想定区域内の要配慮者利用施設の所有者または管理者は、避難確保計画を作成する
- 第2項:計画を作成・変更したときは、遅滞なく市町村長へ報告する
- 第5項:計画に基づく訓練を行い、その結果を市町村長へ報告する
- 第7項:自衛水防組織(施設の職員などで水害時の避難誘導などを担う組織)の設置は努力義務
市町村長の権限
- 第3項:計画を作成していない場合、必要な指示ができる
- 第4項:正当な理由なく指示に従わないときは、その旨を公表できる
- 第6項:報告を受けて、必要に応じて助言・勧告ができる
土砂災害防止法第8条の2(土砂災害)
土砂災害警戒区域内の施設については、土砂災害防止法第8条の2が同じ流れで定めています。避難確保計画の作成と市町村長への報告、未作成の場合の指示と公表、訓練の実施と結果報告という構成は、水防法とほぼ同じです。山あいや崖の近くにある施設は、こちらの規定が関係します。
津波防災地域づくり法第71条(津波)
津波災害警戒区域では、津波防災地域づくりに関する法律第71条が根拠になります。津波災害警戒区域内で、市町村が避難促進施設として定めた施設の所有者または管理者が、避難確保計画の作成と報告、公表、訓練の実施と報告を行う仕組みです。水防法・土砂災害防止法と比べると、対象を市町村が「避難促進施設」として定める点に特徴があります。
法改正の経緯
- 平成29年(2017年):水防法の改正で、避難確保計画の作成が努力義務から義務になった
- 令和3年(2021年):水防法の改正で、訓練の実施結果を市町村長へ報告することが義務になり、市町村長による助言・勧告の制度も設けられた。国土交通省のリーフレットでは、施行日は令和3年7月16日とされている
現在は、作成するだけでなく訓練して市町村長に報告するところまでが義務になっています。
施設に課される義務の中身
作成から訓練結果の報告までの流れ
施設側に求められる流れは、次の順に整理できます。
- 避難確保計画を作成する
- 作成または変更したら、遅滞なく市町村長へ報告する
- 計画に基づいて避難訓練を実施する
- 訓練の結果を市町村長へ報告する
計画の内容を変えたときも報告が必要です。人員体制や連絡先、避難先が変わった場合も、変更後の内容を市町村長へ報告する対象になります。
未作成の場合の指示と公表
計画を作成していない施設に対しては、市町村長が作成を指示できます。正当な理由なく指示に従わなかったときは、その旨を公表できるとされています。また、訓練結果の報告を受けた市町村長は、必要があれば助言や勧告を行えます。
罰則について
避難確保計画に載せる項目
水防法施行規則第16条の記載項目
計画に定める事項は、水防法施行規則第16条に示されています。主な項目は次のとおりです。
- 防災体制に関する事項
- 避難の誘導に関する事項
- 避難の確保を図るための施設の整備に関する事項
- 防災教育および訓練に関する事項
- 自衛水防組織を置く場合は、その業務に関する事項
- その他、利用者の避難の確保に必要な措置
注意体制・警戒体制・非常体制の3段階
国土交通省の手引きの記載例では、防災体制を「注意体制」「警戒体制」「非常体制」の3段階に分けて例示しています。気象情報や避難情報の段階に応じて、どの職員がどこまで動くかを前もって決めておく考え方です。手引きでは、夜間や休日に職員数が少なくなる時間帯の人員体制を検討することが留意点として挙げられています。
国土交通省の手引きと様式
国土交通省は、洪水、雨水出水、高潮、土砂災害、津波を対象にした「要配慮者利用施設における避難確保計画の作成・活用の手引き」を公開しています。あわせて、次の資料が用意されています。
- 社会福祉施設向けの様式(Excel)
- 記載例
- チェックリスト(非常災害対策計画を含む版があります)
- 訓練報告の様式
介護保険施設に求められる非常災害対策
運営基準(省令第39号)第26条
水防法などの避難確保計画とは別に、介護保険施設には運営基準で非常災害対策が求められます。特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)の基準である平成11年厚生省令第39号の第26条では、次の内容が定められています。
- 第1項:非常災害に関する具体的計画を立て、関係機関への通報・連携体制を整備し、定期的に従業者へ周知する。あわせて、定期的に避難・救出その他の必要な訓練を行う
- 第2項:訓練にあたり、地域住民の参加が得られるよう連携に努める
ほかの種類の施設の基準にも、同じ趣旨の規定が置かれています。
解釈通知(老企第43号)の読み方
老企第43号は、運営基準の内容を具体的に説明する厚生労働省の解釈通知です。この通知では、運営基準の「具体的計画」を2種類に分けて説明しています。ひとつは消防法施行規則第3条に規定する消防計画(またはこれに準ずる計画)、もうひとつは風水害・地震などの災害に対処するための計画です。防火管理者を置く施設では、防火管理者が消防計画の策定と、その業務を担うこととされています。
平成28年9月9日付の厚生労働省通知
平成28年8月31日の台風10号では、岩手県岩泉町の認知症グループホームで利用者9人が亡くなる被害が出ました。これを受けて厚生労働省は、平成28年9月9日に通知を出し、非常災害対策の強化を求めました。通知の要点は次のとおりです。
- 非常災害対策計画は、火災、水害、土砂災害、地震などに対処できる内容にする。災害ごとに別の計画にする必要はない
- 項目例として、立地条件、情報の入手方法、連絡先と通信手段、避難開始の時期と判断基準、避難場所、避難経路、避難方法、人員体制と指揮系統、関係機関との連携が挙げられている
- 訓練は、夜間の時間帯にも実施するよう求めた
避難確保計画と非常災害対策計画の関係
二つの計画は根拠が異なり、内容には重なる部分があります。違いは次のとおりです。
| 項目 | 避難確保計画 | 非常災害対策計画 |
|---|---|---|
| 根拠 | 水防法第15条の3、土砂災害防止法第8条の2、津波防災地域づくり法第71条 | 運営基準(特養は省令第39号第26条) |
| 対象 | 区域内にあり、地域防災計画等で定められた要配慮者利用施設 | 運営基準の対象となる介護保険施設 |
| 内容 | 水害・土砂災害・津波のときの避難の手順 | 火災、水害、土砂災害、地震などへの対処 |
| 報告・連携先 | 作成・変更・訓練結果を市町村長へ報告 | 関係機関への通報・連携体制を整備 |
国土交通省のチェックリストには非常災害対策計画を含む版があり、実態調査(後述)では二つの計画を一元化していた施設も一部にありました。
なお、感染症や災害時の業務継続の計画(BCP)については、介護施設のBCPを解説した記事で別に整理しています。
消防法にもとづく火災対策との関係
ここで扱うのは、避難確保計画(水害等)とは別枠の火災対策です。ご家族にとっては、施設の耐火構造やスプリンクラー設備の有無を尋ねられる、という意味があります。火災をきっかけとした制度の変遷は次のとおりです。
| 火災 | 死者 | 改正の内容 | 施行 | 既存施設の経過措置期限 |
|---|---|---|---|---|
| 平成18年1月 長崎県大村市の認知症高齢者グループホーム | 7人 | 平成19年6月に消防法施行令を改正。スプリンクラー設備を延べ面積275平方メートル以上の対象施設に義務化。自動火災報知設備・火災通報装置・消火器は面積を問わず義務化 | 平成21年4月1日 | 平成24年3月31日(スプリンクラー設備) |
| 平成25年2月8日 長崎市のグループホーム | 5人(7人負傷) | 平成25年政令第368号による改正で、275平方メートル未満の(6)項ロの施設にもスプリンクラー設備を義務化 | ― | 平成30年3月31日 |
「(6)項ロ」は、消防法施行令の別表で老人福祉施設などをまとめた防火上の区分です。平成25年の改正のうち、(6)項ロの(2)(4)(5)に当たる施設については、自力での避難が困難な要介護者等を主として入居させる施設以外は、義務の対象から除かれています。なお、延べ面積が1,000平方メートル未満の施設では、水道連結型スプリンクラーも使えるとされていました(2009年時点のパンフレットの記載)。
消防庁の消防予第75号によると、平成29年12月1日現在、275平方メートル未満の(6)項ロでは、設置義務のある9,243施設のうち6,661施設(72.1%)が設置済みで、設置の措置見込みを含めると97.8%でした。
防火管理者の選任と消防計画
消防法にもとづき、(6)項ロの施設は収容人員が10人以上の場合、防火管理者を選任し、消防計画を作成して届け出ることになっています。消防計画に基づいて、消火・通報・避難の訓練を実施します。前の章のとおり、運営基準の「具体的計画」にも消防計画が含まれます。
作成率と訓練実施率の実態
作成率の推移
国土交通省の公表による、避難確保計画の作成率の主な数値は次のとおりです。
- 平成28年3月:2.3%
- 平成29年3月:8.0%
- 令和4年9月末:85.3%
- 令和5年3月末:85.9%(対象121,556施設のうち104,381施設が作成済み。うち社会福祉施設は99,008施設中85,335施設)
令和7年9月末の状況
国土交通省が公表した令和7年9月末時点のデータを、災害の種類ごとに示します。作成率と訓練実施率は、公表された施設数から計算した値です。また、訓練の実施数は令和6年度内に行われたものを集計しているため、作成数とは時点が異なります。
| 災害の種類 | 対象施設数 | 作成済み(作成率) | 訓練実施(実施率) |
|---|---|---|---|
| 洪水 | 133,514 | 117,544(88.0%) | 52,002(38.9%) |
| 土砂災害 | 23,012 | 20,651(89.7%) | 9,707(42.2%) |
| 高潮 | 30,112 | 24,202(80.4%) | 9,606(31.9%) |
| 津波 | 12,775 | 9,722(76.1%) | 4,544(35.6%) |
| 雨水出水 | 5,090 | 3,211(63.1%) | 1,157(22.7%) |
特別養護老人ホーム等の実態調査
令和2年10月31日時点で国土交通省と厚生労働省が行った実態調査(中間速報)では、特別養護老人ホーム等5,120施設のうち、浸水想定区域または土砂災害警戒区域内にある施設が2,172ありました。その内訳は、分母が項目ごとに異なります。
| 項目 | 施設数 | 割合 | 分母 |
|---|---|---|---|
| 避難確保計画を作成 | 1,874 | 約86% | 区域内の施設(2,172) |
| 非常災害対策計画を作成 | 1,691 | 約78% | 区域内の施設(2,172) |
| 二つの計画を一元化 | 1,018 | 約47% | 区域内の施設(2,172) |
| 施設外への避難訓練を実施 | 448 | 約24% | 計画作成施設(1,874) |
令和2年7月豪雨・球磨村の特養千寿園の事例
被害の概要
国土交通省と厚生労働省の検討会がまとめた「高齢者福祉施設における避難の実効性を高める方策について(骨子)」には、令和2年7月豪雨の事例が整理されています。球磨川流域の死者・行方不明者は50人で、そのうち球磨村が25人、さらにその中の14人が特別養護老人ホーム千寿園の利用者でした。
当時の施設の状況は、利用者65人、宿直職員1人、夜勤職員3人で、居室はすべて1階、エレベーターは無かったとされています。浸水は7月4日の7時頃に始まりました。
当日の避難の経過
浸水が始まったあと、現場の判断で2階への垂直避難が始まりました。避難支援の協力者の助けもあり、48人が2階へ避難しました。一方で、17人は2階へ誘導できず、そのうち3人は屋上で救助され、14人は救助できませんでした。
計画の内容から見える課題
骨子によると、千寿園は平成30年4月に避難確保計画を作成して村に報告しており、年2回(5月・11月)の避難誘導訓練を計画に定めていました。しかし、施設の外へ誘導する訓練までは行われていませんでした。計画の中身については、次の課題が指摘されています。
- 土砂災害を重視した内容で、浸水リスクの認識が薄かった
- 外部の避難先は屋外中心で、指定緊急避難場所(災害時の避難先として市町村長が指定した場所)ではなかった。警戒レベル3(高齢者等避難)の時点では、避難先が開設されていなかった
- 最大規模(L2、想定し得る最大規模の降雨による想定)での浸水深は10〜20mとされていた。実際の浸水範囲は、国が指定した洪水浸水想定区域内だった
骨子は、計画の作成・報告と訓練回数の設定があっても、想定するリスク、避難先、訓練の中身が実態に合っていなかった点を課題として整理しています。
そのほかの被害事例
同じ骨子では、過去の事例として平成21年7月の山口県防府市の特別養護老人ホーム(7人死亡)と、平成28年8月の岩手県岩泉町のグループホーム(9人死亡)も挙げられています。
福祉避難所・個別避難計画・垂直避難との関係
垂直避難と緊急安全確保
内閣府の「避難情報に関するガイドライン」では、災害対策基本法第60条第3項の緊急安全確保措置として、次の行動が示されています。
- 高所への移動
- 近傍の堅固な建物への退避
- 屋内の、屋外に面する開口部から離れた場所での待避
同ガイドラインは、立ち退き避難(指定緊急避難場所など、施設の外への避難)が必要な場所なのか、上の階へ移動すれば命に危険が及ばないのかを、平時から確認しておくことを求めています。
福祉避難所との関係
令和3年5月に改定された福祉避難所ガイドラインでは、市町村は指定一般避難所と指定福祉避難所を区別して公示することとされています。また、特別養護老人ホームや老人短期入所施設などの入所者は原則として福祉避難所の受入対象とされず、当該施設が対応する想定とされています。
個別避難計画との違い
個別避難計画は、令和3年の災害対策基本法の改正で、市町村の作成が努力義務とされました。在宅で暮らす避難行動要支援者ひとりひとりについて、避難先や支援者を定める計画です。一方、避難確保計画は「施設」が作る計画で、施設全体の利用者を対象にします。自宅で介護を受ける方は個別避難計画、施設に入所する方は施設の避難確保計画というように、暮らし方に応じて関係する計画が変わります。
ご家族が確認できるポイント
ハザードマップで立地を調べる
まずは、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」で、施設の所在地のリスクを調べる方法があります。複数の災害情報を重ねて表示する「重ねるハザードマップ」と、市町村のハザードマップを探せる「わがまちハザードマップ」があります。洪水、土砂災害、津波などの想定を、住所から確認できます。
有料老人ホームについては、厚生労働省の標準指導指針で、立地は災害に対する安全性を考慮すること、耐火建築物または準耐火建築物とすること、避難設備・消火設備・警報設備を十分に設けることが示されています。重要事項説明書の別紙様式には、耐火構造の欄もあります。
公表情報と書面で確認する
介護サービス情報公表システムの運営情報には「安全・衛生管理等の体制」という項目があります。重要事項説明書とあわせて、施設の安全管理についての基本的な情報が掲載されています。避難確保計画そのものは施設が作成し市町村へ報告する書類のため、詳しい内容は施設に尋ねる方法があります。
施設に聞いてみたい質問例
見学や契約、入居後の面談の際に、次のような点を尋ねることができます。
- 避難確保計画を作成し、市町村へ報告していますか。
- 計画の概要を、家族が確認できますか(共用スペースへの掲示を含みます)。
- 避難訓練は、どのくらいの頻度で行っていますか。夜間を想定した訓練や、家族が参加できる訓練はありますか。
- 想定されている浸水の深さに対して、上の階への避難で足りますか。
- 夜間・休日の職員数で、全員の避難をどう進める想定ですか。
どの質問も、評価をするためではなく、施設の備えを知るためのものです。回答が口頭だけの場合は、計画の該当ページを見せてもらえるか尋ねてみる方法もあります。
訓練の頻度の考え方
国土交通省のリーフレット(令和5年3月)は、訓練を「原則として年1回以上実施」することを推奨しています。これは推奨であり、法律に回数の規定があるわけではありません。リーフレットが示す内容は次のとおりです。
- 訓練の形:立ち退き避難や屋内安全確保の訓練のほか、図面上のシミュレーションも認められている
- 参加者:消防団、地域住民、利用者の家族の参加を勧めている
- 訓練後:振り返りを行い、計画の見直しにつなげることが望ましい
- 掲示:計画の概要を共用スペースに掲示することが、有効な方法として挙げられている
ほかの安全管理の面については、介護施設の事故報告を解説した記事や、感染症対策を解説した記事もあわせてご覧ください。
注意点と制度変更について
計画があることと実効性は別
計画があるかどうかに加えて、公的資料からは次の3点が実効性を見る材料として読み取れます。
- 想定リスクと避難先の整合:千寿園の事例では、計画が土砂災害を重視し、浸水リスクや避難先の開設時期と合っていなかったと整理されている
- 夜間訓練の有無:平成28年9月9日の通知は、夜間の時間帯にも訓練を実施するよう求めている
- 施設外への避難訓練の有無:令和2年の実態調査で、施設外への避難訓練を実施していた施設は計画作成施設の約24%(448施設)
対象区域や制度は変わることがある
浸水想定区域や土砂災害警戒区域は、見直しや新たな指定が行われることがあります。区域が変わると、必要な計画の種類も変わります。また、水防法は平成29年と令和3年に改正されたように、制度は変わりえます。介護保険の運営基準も、3年ごとの制度改定などで見直されることがあります。
最新情報の確認先
最新の内容は、国土交通省・厚生労働省・消防庁などの公式資料や、施設のある市町村の窓口で確認してください。この記事の内容は、記載した各資料の公表時点にもとづいています。サイトの編集方針についてはこのサイトの立ち位置をご覧ください。
まとめ
- 【制度の概要】避難確保計画は、浸水想定区域や土砂災害警戒区域内にあり、市町村地域防災計画に載った要配慮者利用施設(津波は、津波災害警戒区域内で市町村が避難促進施設として定めた施設)が、作成・報告し、訓練の結果も報告する計画です。
- 【罰則と運営基準】未作成の場合は市町村長の指示と、従わない場合の公表が定められています。水防法第15条の3違反を対象とする罰則は確認できませんでした。介護保険施設には運営基準にもとづく非常災害対策も求められ、火災については消防法の設備や防火管理も関係します。
- 【家族の確認点】ハザードマップで立地を調べ、計画の有無・訓練の頻度・夜間想定の訓練・想定浸水深への対応を施設に尋ねることができます。
- 【数値】令和7年9月末の洪水の作成率は88.0%、訓練実施率は38.9%です(計算値)。
- 【制度変更の注意】浸水想定区域や制度は改正・見直しされることがあるため、最新情報は公的機関や市町村の窓口で確認してください。