協力医療機関とは、介護施設が入所者の急変に備えてあらかじめ定める連携先の医療機関です。特養・老健・介護医療院などには、相談対応・診療・入院受け入れの3要件を満たす協力医療機関を定める義務があり、経過措置は2027年3月31日までです。介護付き有料老人ホームなどは2要件での努力義務です。入居前に、協力医療機関の名称、入院先の病院、急変時の連絡の流れを施設に確認しておくと安心です。
協力医療機関とは|定義と3つの要件
まず、協力医療機関が何を求められる存在なのかを整理します。施設類型ごとの違いは次の章以降で扱います。
協力医療機関の定義と役割
協力医療機関は、国が定める介護施設のルール(人員、設備及び運営に関する基準)の中で「協力医療機関等」として定められている連携先です。施設は、入所者の病状が急に悪化したときなどに備えて、あらかじめ協力医療機関を定めておくことが求められます。
令和6年度(2024年度)の介護報酬改定で、従来の「協力病院」を定める枠組みが「協力医療機関」に改められ、後述する3つの要件が設けられました。介護付き有料老人ホームを含む特定施設の仕組みは特定施設入居者生活介護を解説した記事にまとめています。
協力医療機関に求められる3つの要件
厚生労働省の資料によると、協力医療機関が満たすべき要件は次の3つです。
- 要件1(相談対応):入所者の病状が急変した場合などに、医師または看護職員が相談に応じる体制を常時確保していること
- 要件2(診療):施設からの診療の求めに応じて、診療を行う体制を常時確保していること
- 要件3(入院):入院が必要と認められた入所者について、原則として入院を受け入れる体制を確保していること(この要件を満たせるのは病院に限られます)
国が定める介護施設のルールに共通する5つの定め
施設類型ごとに細かな定めは異なりますが、協力医療機関に関する国のルールの内容は、おおむね次の5点で共通しています。
- 病状の急変などに備え、あらかじめ協力医療機関を定めておくこと
- 年1回以上、協力医療機関との間で急変時の対応を確認し、協力医療機関の名称などを都道府県知事(指定都市・中核市では市長)に届け出ること
- 新興感染症の発生に備え、第二種協定指定医療機関(感染症の流行時に、都道府県と協定を結んで診療などを担う医療機関)との間で対応を取り決めるよう努めること(協力医療機関が第二種協定指定医療機関である場合は、発生時の対応を協議すること)
- 協力医療機関に入院した入所者が退院できる状態になったとき、速やかに再入所できるよう努めること
- 協力歯科医療機関を定めるよう努めること(努力義務)
協力歯科医療機関とは
協力歯科医療機関は、入所者の歯科治療や口腔ケアに備えて定める連携先です。協力医療機関のような3要件は設けられておらず、定めること自体が努力義務とされています。入れ歯の不具合などに備えて、施設が歯科の連携先を持っているかどうかを、入居前に施設へ聞いておきましょう。
急変から入院までの流れ|協力医療機関が果たす役割
3要件は、入所者が急に体調を崩したときの「相談、診療、入院」という段階に対応しています。家族が知っておきたい流れを整理します。
3要件に沿った流れの一例
実際の対応は施設の緊急時対応の定めによって異なります。ここでは3要件に沿った一例を示します。
- 施設の職員が入所者の異変に気づき、協力医療機関の医師または看護職員に相談する(要件1)
- 相談のうえ診療が必要になれば、施設の求めに応じて協力医療機関が診療を行う(要件2)
- 入院が必要と認められた場合、協力医療機関の病院が原則として入院を受け入れる(要件3)
入所時には、どの場面でどう動くのか、本人や家族の意向(延命治療や救急搬送の希望など)をどう反映するのかを、施設の担当者に聞いておくと安心です。
退院後の再入所
協力医療機関に入院した入所者が退院できる状態になったとき、施設は速やかに再入所できるよう努めることとされています。「入院したら退所になるのでは」と不安に感じる方もいますが、ここでいう再入所は努力義務であり、一律に再入所が保証されるわけではありません。契約書や重要事項説明書で、入院が長引いた場合の居室の扱いと再入所の考え方を、入所前に施設へ聞いておきましょう。
入院に備えて家族が共有しておきたい情報
本人の持病、服薬の内容、アレルギー、かかりつけ医の連絡先、延命治療に関する希望などを、日ごろから施設と共有しておくと、急変時にも医療機関へ正確に伝わりやすくなります。医療機関へ退所する場合の情報提供を評価する加算もあります(後述の加算の章)。
施設類型別の義務・努力義務
3要件はすべての介護施設に一律で義務づけられているわけではありません。施設の類型によって、義務か努力義務か、満たすべき要件が3つか2つかが異なります。
義務とされる施設|3要件
令和6年度介護報酬改定の資料では、特別養護老人ホーム(特養)、地域密着型特別養護老人ホーム、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、養護老人ホームについて、3要件を満たす協力医療機関を定めることが義務とされています。ただし経過措置があります。
努力義務とされる施設|2要件
特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホームなど)、地域密着型特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、軽費老人ホームでは、要件1(相談対応)と要件2(診療)の2要件を満たす協力医療機関を定めることが努力義務とされています。住宅型有料老人ホームは、この「特定施設」には含まれません。扱いは有料老人ホームの章で説明します。
施設類型別の比較
| 施設の類型 | 位置づけ | 満たすべき要件 |
|---|---|---|
| 特養・地域密着型特養 | 義務(経過措置あり) | 3要件 |
| 介護老人保健施設 | 義務(経過措置あり) | 3要件 |
| 介護医療院 | 義務(経過措置あり) | 3要件 |
| 養護老人ホーム | 義務(経過措置あり) | 3要件 |
| 特定施設・地域密着型特定施設 | 努力義務 | 要件1・2の2要件 |
| 認知症グループホーム・軽費老人ホーム | 努力義務 | 要件1・2の2要件 |
特養に加わった緊急時対応方法の定め
特養では、緊急時などの対応方法を、配置医師と協力医療機関の協力を得てあらかじめ定め、年1回以上見直すことが義務化されました。家族は、入所前に施設の担当者へ、緊急時の対応方法がどのように定められているかを聞いておくとよいでしょう。
経過措置・年1回の届出と確保状況
3要件の義務には期限付きの経過措置があります。一方で、年1回の届出には経過措置がありません。時期と数字を整理します。
2027年3月31日までの経過措置
3要件を満たす協力医療機関を定める義務には、経過措置があります。令和9年(2027年)3月31日までの間は、「定めておくよう努めなければならない」と読み替えられます。福島県や北海道なども、経過措置の期限を令和9年3月31日としています。経過措置が終わる2027年4月1日以降は、対象の施設で3要件を満たす協力医療機関を定めていることが求められます。
年1回の届出には経過措置がない
協力医療機関の名称などを自治体に届け出る年1回の手続きには、経過措置がありません。3要件を満たす協力医療機関を確保できていない場合も、その状況を届け出ることとされています。
期限や様式は自治体ごとに異なり(福島県は令和9年2月26日必着、北海道は毎年度3月31日までなど)、グループホームの届出が福島県で不要とされているように類型による違いもあるため、施設が所在する自治体の案内を確認しましょう。老健と介護医療院は、協力医療機関を変更する際に自治体への変更申請が必要とされています。
確保状況の調査結果(令和6年度・令和7年度速報)
3要件を満たす協力医療機関を定めている施設の割合は、厚生労働省の調査で次のとおりです。令和7年度調査は速報値です。
| 施設類型 | 令和6年度調査 | 令和7年度調査(速報) |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 56.6% | 67.9% |
| 介護老人保健施設 | 70.0% | 83.3% |
| 介護医療院 | 72.4% | 84.9% |
| 養護老人ホーム | 45.7% | 60.4% |
この数字をどう読むか
4類型とも割合は上がっており、通知には経過措置の終了まで「あと1年余り」と記載されています。ただし、令和7年度の速報でも特養で約3割、養護老人ホームで約4割は、3要件を満たす協力医療機関をまだ定めていない計算です。これは全国集計であり、個別の施設の状況を示すものではありません。気になる施設には、協力医療機関の確保状況を直接聞いてみましょう。
有料老人ホームの協力医療機関|介護付きと住宅型の違い
有料老人ホームは、介護付き(特定施設)と住宅型で協力医療機関の位置づけが異なります。重要事項説明書の読み方は有料老人ホームの重要事項説明書を解説した記事でも扱っています。
介護付き(特定施設)と住宅型の位置づけ
- 介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護):要件1・2の2要件を満たす協力医療機関を定めることが努力義務です。
- 住宅型有料老人ホーム:国が定める介護施設のルールの対象ではなく、有料老人ホーム設置運営標準指導指針(国が示す、有料老人ホーム運営の指導基準)で、相談対応と診療の体制を常時確保した協力医療機関を定めるよう努めることとされています。
標準指導指針の「医療機関等との連携」
標準指導指針の「医療機関等との連携」では、有料老人ホームの事業者に次のことが求められています。
- 協力する旨と内容を、あらかじめ医療機関と取り決めておくこと
- 相談対応と診療の体制を常時確保した協力医療機関を定めるよう努めること
- 第二種協定指定医療機関(感染症の流行時に診療などを担う医療機関)との取り決めに努めること
- 退院後、速やかに再入居できるよう努めること
- 歯科医療機関とも取り決めるよう努めること
- 協力の内容や診療科目などを入居者に周知すること
- 入居者が医療機関を自由に選択することを妨げないこと
- 医療機関から、患者紹介の対価として金品を受け取らないこと
重要事項説明書の「医療連携の内容」欄
有料老人ホームの重要事項説明書の別紙様式には、「医療連携の内容」の欄があります。ここには、救急車の手配、入退院の付き添い、通院の介助といった施設の支援内容と、協力医療機関の名称・住所・診療科目・協力の内容、協力歯科医療機関が記載されます。東京都の様式には、新興感染症の発生時に連携する医療機関の欄もあります。また東京都では、協力医療機関に関する届出書と協定書の写しの提出は介護付き(特定施設)のみが対象です。住宅型を検討するときは、協力医療機関の名称、協力の内容、入院先を事業者に具体的に聞きましょう。
家族が確認したいポイント
制度を踏まえて施設を検討するときは、誰に何を聞くかを決めておくと、体制を具体的に把握できます。
確認項目と聞く相手
| 確認項目 | 主な確認先 |
|---|---|
| 協力医療機関の名称と、要件を満たす旨の届出 | 施設の担当者 |
| 入院の受け入れを担う病院 | 施設の担当者 |
| 協力医療機関との協定書 | 施設の担当者(東京都の介護付きは届出に協定書の写しを添付) |
| 年1回の急変時対応の確認の実施 | 施設の担当者 |
| 情報共有の会議の開催状況 | 施設の担当者 |
| 協力歯科医療機関の有無 | 施設の担当者、有料老人ホームは重要事項説明書 |
| 退院後の再入所の考え方 | 契約書、重要事項説明書、施設の担当者 |
介護サービス情報公表システムで調べられること
特養については、介護サービス情報公表システムの詳細ページで、協力医療機関・協力病院・協力歯科医療機関の名称と、配置医師の常勤・非常勤の人数を確認できます。まずここで基本情報を調べ、そのうえで見学時に詳しく質問する流れが取りやすいでしょう。
見学・面談時の質問の例
- 夜間に具合が悪くなったとき、最初に誰が、どこへ連絡しますか
- 入院が必要になった場合、これまではどの病院に入院していますか
- 退院後に戻ってくる場合の手続きや居室の扱いはどうなりますか
- 本人が普段かかっている病院(かかりつけ医)への通院は、継続できますか
どの施設を検討するときにも共通して使える質問です。回答は口頭だけでなく、可能であれば書面でも受け取っておくと、後から見返せます。
よくある誤解
協力医療機関について、家族が誤解しやすい点を5つ挙げます。
「近くの病院=協力医療機関」とは限らない
施設の近くにある病院が、自動的に協力医療機関になるわけではありません。協力医療機関は、施設と医療機関が取り決めを結んだうえで定められます。北海道の案内では、在宅療養支援病院、在宅療養支援診療所、在宅療養後方支援病院、地域包括ケア病棟入院料の届出医療機関などが想定されるとしつつ、こうした受理番号がなくても、国の要件を満たせば協力医療機関になれるとされています。
全施設で3要件が義務ではない
3要件を満たす協力医療機関が義務とされるのは、特養、地域密着型特養、老健、介護医療院、養護老人ホームです。介護付き有料老人ホーム(特定施設)やグループホームなどは2要件での努力義務で、住宅型有料老人ホームは標準指導指針で「定めるよう努める」とされています。「協力医療機関がある」という説明だけでは、どの水準の体制なのかは分かりません。要件の内容まで施設に聞きましょう。
グループホームの届出は自治体で運用差がありうる
グループホームの協力医療機関の届出について、福島県は不要としています。自治体や類型によって運用が異なる場合があるため、グループホームを検討している場合は、お住まいの自治体の担当窓口に確認してください。
協力医療機関があれば入院が保証されるわけではない
3要件の入院受け入れは「原則として」受け入れる体制の確保を求めるものです。「協力医療機関がある=必ず入院できる」という意味ではありません。入院が必要になった場合の流れを、事前に施設へ聞いておきましょう。
制度や単位数は今後も変わりうる
介護報酬は3年ごとに改定されます。加算の単位数や経過措置の扱いなどは、今後の改定や通知で変わる可能性があります。この記事は2026年10月時点の公表資料にもとづいています。
配置医師・嘱託医との違い
特養などでは、協力医療機関とは別に、施設に関わる医師がいます。混同しやすい用語を整理します。
配置医師と協力医療機関はどう違うか
特養は、基準上、入所者の健康管理や療養上の指導を行う医師(配置医師)を置くことになっています。協力医療機関は、これとは別に、施設が連携先としてあらかじめ定める医療機関です。
配置医師の診療報酬上の扱い
愛知県の案内によると、配置医師には初診料・再診料などを算定できません。配置医師以外の医師が診療した場合に診療報酬を算定できるのは、次の場合に限られます。
- 緊急の場合
- 配置医師の専門外の傷病の場合
- 末期の悪性腫瘍の場合
- 在宅療養支援診療所などによる看取りの場合
「嘱託医」と書かれているときの確認
施設の案内や重要事項説明書に「嘱託医」と書かれている場合、呼称や契約形態は施設ごとに異なります。その医師の勤務形態、診察の頻度、夜間の対応の有無を、施設に聞いておきましょう。
連携に関する加算の仕組み(参考)
協力医療機関との連携に関しては、介護報酬に加算が設けられており、費用に反映されうる項目です。利用者負担への反映の有無や金額は、施設の料金表(加算の項目)で確認しましょう。単位数は介護報酬の計算単位で、今後の改定で変わる可能性があります。
協力医療機関連携加算の単位数
月単位の加算です。家族から見ると、施設が協力医療機関と定期的に入所者の情報を共有する仕組みがあるかどうかの目安になります。
| 施設 | 協力医療機関の条件 | 単位数(月) |
|---|---|---|
| 特養・地域密着型特養・老健・介護医療院 | 3要件を満たす | 令和6年度100単位、令和7年度以降50単位 |
| 特養・地域密着型特養・老健・介護医療院 | 3要件以外 | 5単位 |
| 特定施設・地域密着型特定施設 | 2要件を満たす | 100単位(改定前80単位) |
| 特定施設・地域密着型特定施設 | それ以外 | 40単位 |
| 認知症グループホーム(新設) | 2要件を満たす | 100単位 |
| 認知症グループホーム | それ以外 | 40単位 |
感染対策向上加算(I)(II)
新興感染症への備えを評価する加算です。家族から見ると、感染症の発生に備えた医療機関との取り決めや研修への参加があるかが分かります。対象は特定施設、地域密着型特定施設、グループホーム、特養、地域密着型特養、老健、介護医療院です。
加算(I)は月10単位で、第二種協定指定医療機関などとの感染症発生時の対応の取り決めと、医療機関が行う感染対策の研修・訓練への年1回以上の参加が主な要件です。加算(II)は月5単位で、医療機関から3年に1回以上、施設内で感染が発生した場合の感染制御などの実地指導を受けていることが要件です。
退所時情報提供加算・退居時情報提供加算
退所(退居)時に施設が心身の状況や生活歴などの情報を提供することを評価する加算です。提供先は区分で異なり、特養と特定施設・グループホームは医療機関へ退所する場合、老健・介護医療院は(I)が居宅へ、(II)が医療機関へ退所する場合です。家族から見ると、医療機関へ移る際は本人の情報が引き継がれやすくなる仕組みです。
配置医師緊急時対応加算
特養の配置医師が勤務時間外に緊急で対応した場合の加算です。家族から見ると、夜間や早朝に医師が対応できる体制があるかを聞く材料になります。看取りに関する加算は看取り介護加算の仕組みを解説した記事で整理しています。
算定には、複数名の配置医師を置くか、配置医師と協力医療機関の医師が連携して24時間対応できる体制を確保しておく必要があります。
まとめ|3要件と「施設に聞く3つの質問」を押さえる
- 協力医療機関は、施設が急変時に備えて定める連携先で、3要件は「相談対応」「診療」「入院受け入れ」です
- 特養・地域密着型特養・老健・介護医療院・養護老人ホームは3要件が義務(2027年3月31日まで経過措置)、介護付き有料老人ホーム(特定施設)・グループホーム・軽費老人ホームは2要件の努力義務です
- 年1回の急変時対応の確認と自治体への届出には、経過措置がありません
施設を検討するときは、次の3つを施設に聞いてみてください。
- 協力医療機関はどこで、入院を受け入れるのはどの病院ですか
- 夜間に急変したとき、最初に誰がどこへ連絡しますか
- 入院した後の再入所は、どのような考え方ですか
この記事は、特定の施設や事業者を評価・推奨するものではなく、厚生労働省・自治体などの公的資料にもとづいて制度の仕組みを整理したものです。当サイトの編集方針はこのサイトの立ち位置のページをご覧ください。介護保険制度は3年ごとに見直されるため、実際の手続きの前には、最新の情報を自治体・施設に確認してください。