介護施設の日常生活費とは|理美容代など別途負担の範囲とおむつ代の扱いを解説

介護施設の日常生活費の定義、理美容代など別途負担の範囲、老企第54号が挙げる施設の入所者のおむつ代の扱い、受領の要件を公的資料で整理します。

目次

介護施設の「日常生活費」とは、介護保険から支払われる費用とは別に、利用者が実費相当で負担する日常生活上の便宜に係る費用のことです。この記事では、厚生労働省の通知・省令や自治体の案内にもとづき、次の点を整理します。

  • 歯ブラシなどの身の回り品や行事の材料費が典型で、理美容代は運営基準で別立ての費用として並んでいる
  • 厚生労働省の通知(老企第54号)が挙げる特養・老健などの入所者のおむつ代は、保険給付に含まれ徴収できない
  • 受け取るには、保険給付との重複がないことや実費相当であることなどの要件がある
  • 契約前に、書面で費用の項目と単価を確かめておくことが大切

制度は見直されることがあります。最新の内容は、契約前に施設や市区町村でご確認ください。

日常生活費とは何か|まず押さえたい定義

「その他の日常生活費」の定義

日常生活費は、正式には「その他の日常生活費」と呼ばれます。厚生労働省が出した通知「老企第54号」(平成12年3月30日)では、利用者の自由な選択に基づき、事業者がサービス提供の一環として供給する、日常生活上の便宜に係る経費と整理されています。ポイントは「自由な選択に基づく」点です。施設が必要だと判断した費用を、すべての人に当然のこととして求めるものではありません。

たとえば、個人用の歯ブラシや化粧品など、本人が使う身の回り品を施設が用意して、使った分の実費を請求するのは、この範囲に入る考え方です。逆に、本人が望んでいないのに全員分をまとめて請求するような扱いは、後述するとおり認められていません。

介護保険の自己負担とは別の費用

施設に入所したとき、利用者が支払う費用は大きく分けて、介護サービス費の自己負担(1〜3割)、居住費、食費、そして日常生活費などです。厚生労働省の介護サービス情報公表システムでも、介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院では、介護サービス費の1〜3割に加えて、居住費・食費・日常生活費は利用者の自己負担になると案内されています。

つまり日常生活費は、介護保険の枠の外にある費用です。請求書を見るときは、どの項目が保険の対象でどれがそうでないのかを分けて読むことが大切です。なお、食費・居住費、特別な居室や特別な食事の費用、理美容代は基準上それぞれ別の項目として整理されています。何が日常生活費に当たり、何が当たらないかは、次の章以降で順に確認します。

保険給付に含まれる費用と別途負担の区分

保険給付に含まれる範囲

介護保険の給付に含まれるのは、施設の職員による日常の介護や看護、機能訓練など、介護サービスそのものです。老企第54号が挙げる入所者については、おむつに係る費用も給付に含まれる扱いで、施設が別にお金を求めることはできません(詳しくは次々章)。「介護にかかる費用は介護サービス費で賄われている」という整理で見ると分かりやすくなります。

保険給付に含まれる費用と別途負担の費用の区分介護や看護、機能訓練、入所系施設のおむつ提供は保険給付に含まれる。居住費、食費、特別な居室・食事の差額、理美容代、その他の日常生活費は別途負担になる。施設で払う費用の2つの区分保険給付に含まれる日常の介護・看護・機能訓練入所系施設のおむつの提供+ 介護サービス費の1〜3割を自己負担保険の外=別途負担居住費(滞在費)食費特別な居室・特別な食事の差額理美容代その他の日常生活費
日常生活費は、介護保険の枠の外で負担する費用のひとつです。

図のとおり、保険の外に置かれる費用はいくつかの種類に分かれます。次に、その中身を一つずつ見ていきます。

別途負担になる主な費用

別途負担になる費用として、公表システムでは居住費、食費、日常生活費が挙げられています。さらに、一定の基準を満たす特別な居室や特別な食事を利用者が選んだ場合の差額も、別に負担することになります。運営基準(省令)には、理美容代も受領できる費用として並んでいます。

  • 居住費(滞在費):部屋や光熱水費にあたる費用
  • 食費:食事の提供に要する費用
  • 特別な居室・特別な食事:利用者が選んだ場合の差額
  • 理美容代:理容・美容のサービスを利用した場合の費用
  • その他の日常生活費:身の回り品、教養娯楽、健康管理費など

請求を見分けるための三つの問い

迷ったときは、次の三つの問いで考えると整理しやすくなります。これは筆者が整理のために作った目安で、法令上の判断基準ではありません。

  1. 介護そのものにかかる費用か。「はい」なら保険給付が中心で、別に請求されている場合は内訳を確認する価値があります。
  2. 本人が選んで使うものか。「いいえ」(選んでいないのに全員に請求されている)なら、自由な選択に基づく費用かどうかを確認します。
  3. 実費の範囲か。「いいえ」(実際にかかった額を超えている、または内訳が示されない)なら、内訳を確認します。

三つの問いのどこかで引っかかる請求があっても、直ちに不当とは限りません。施設の運用や契約内容で説明が付く場合もあるため、まず内訳を尋ねるところから始めます。

受領できる日常生活費の範囲

通知に例示されている費用

老企第54号には、サービスの種類ごとに、日常生活費の対象になり得る例が示されています。例示の違いを表にまとめます。

老企第54号が例示する日常生活費(サービス別)
サービスの種類身の回り品教養娯楽健康管理費・預り金の出納管理費・私物の洗濯代
通所介護・通所リハビリテーション・短期入所例示あり(歯ブラシ、化粧品など個人用の日用品)例示あり(クラブ活動、行事の材料費など)例示なし
入所系(特養・老健など)例示あり例示あり例示あり(予防接種、預り金の出納管理、希望による外部クリーニングなど)
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)・特定施設例示あり例示なし例示なし

身の回り品と教養娯楽

身の回り品は、本人専用の歯ブラシ、化粧品などの個人用の日用品が該当し、本人が施設に用意を頼んだ場合の実費が対象です。教養娯楽は、クラブ活動や行事で使う材料費の実費などです。ただし、共用のテレビやカラオケなど施設の共用設備を使う料金は、受け取れないとされています。

健康管理費・預り金・洗濯代

入所系で例示されている3つの費用の内容は、次のとおりです。

健康管理費
インフルエンザの予防接種を希望した場合の費用など。
預り金の出納管理費
利用者のお金を施設が預かって出し入れを管理する場合に、実費相当の範囲でかかることがあります。
私物の洗濯代
本人の希望で外部のクリーニングを利用した場合などの費用です。通知が例示しているのは、この希望による外部クリーニングなどの場合です。

いずれも、通知で例示されているのは入所系の施設である点に注意してください。

理美容代の位置づけ

理美容代は、老企第54号の日常生活費の例には出てきません。運営基準(省令)で、受領できる費用として別の項目に挙げられています。特別養護老人ホームや短期入所生活介護の基準にも、理美容代が列挙されています。名称は「日常生活費」の一部のように扱われがちですが、基準上は別立てだと知っておくと、請求書や重要事項説明書(契約前に施設が示す、料金や運営方針をまとめた書面)を読むときに混乱しにくくなります。

理美容を利用したときの費用が、毎回の精算なのか定額なのかは施設によって異なり得ます。契約前の確認項目に入れておきましょう。

受領できない費用とおむつ代の扱い

老企第54号が定めるおむつ代の扱い

費用の中でも、特に相談が多いのがおむつ代です。老企第54号には、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設(54号に記載された類型)の入所者と、短期入所生活介護・短期入所療養介護の利用者のおむつ代は、保険給付の対象に含まれると書かれています。そのうえで、次のように定められています。

おむつ代を始め、おむつカバー代及びこれらに係る洗濯代等おむつに係る費用は一切徴収できない

出典:老企第54号 通所介護等における日常生活に要する費用の取扱いについて(厚生労働省)

介護医療院のおむつ代の扱いは、通知の原文と、契約書・重要事項説明書の記載で確かめてください。

想定例1(実在の施設とは関係のない例です):特養に入所している母の請求書に、「おむつ代」という項目がある。入所者のおむつ代は保険給付に含まれ、徴収できないと54号に書かれていますので、請求の根拠を確認する余地があります。ただし、施設の運用や個別の事情で説明が付く場合もあるため、断定せず、内訳の確認から始めます。その項目が紙おむつ本体なのか、別の名目を言い換えたものなのかを尋ね、契約書の記載と照らし合わせます。

施設の種類によって扱いが分かれる

おむつ代の扱いは、施設の種類で異なります。公表システムでは、特定施設入居者生活介護について入居費用・日常生活費(おむつ代など)は別途負担と案内され、グループホームについても、日常生活費(食材料費・理美容代・おむつ代など)は別途負担と案内されています。特養や老健の入所者とは、おむつ代の考え方が違います。

施設の種類ごとのおむつ代の扱い特養・老健・介護療養型医療施設の入所者と短期入所の利用者のおむつ代は保険給付に含まれ徴収できない。特定施設とグループホームは別途負担と案内されている。通所介護は省令に別枠で列挙され、運営規程などで確認する。おむつ代の扱いは施設で違う特養・老健・介護療養型短期入所生活介護・療養介護保険給付に含まれるおむつ代は一切徴収できない特定施設・グループホーム日常生活費として別途負担と案内通所介護省令に別枠で列挙運営規程・重要事項説明書で確認
同じおむつ代でも、施設の種類によって負担の考え方が異なります。

通所介護については、運営基準(省令)に「おむつ代」が別枠で列挙されています。通所のおむつ代の扱いは施設ごとに異なるため、重要事項説明書の料金表や運営規程(施設が利用料などを定めた規則)で確認してください。

在宅で使う紙おむつの扱い

在宅で暮らしている場合、紙おむつそのものは介護保険の給付の対象ではありません。自治体によっては、紙おむつの支給事業を行っていることがあります。仕組みは紙おむつ支給事業の記事で解説しています。対象や内容は市区町村ごとに異なります。また、在宅の紙おむつ代の医療費控除には条件があるため、国税庁の最新の案内で確認してください。

家族が気になりやすいおむつまわりの点

54号が挙げる施設では、おむつは保険給付の中で提供されます。種類やサイズ、家族が好みの商品を持ち込みたい場合の取り扱いは施設によって異なる可能性があるため、後述の「契約前の確認チェック」で質問例として挙げています。短期入所を利用する際に、普段在宅で使っているおむつを持参するかどうかも、同じように事前に尋ねておくと安心です。短期入所生活介護のおむつ代は、54号により保険給付に含まれ、別に徴収できないとされています。

施設の種類ごとの違い

同じ「介護施設」でも、種類によって費用の組み立てが異なります。パンフレットの月額だけを比べず、まず施設の種類を確かめてから料金表を見ると、読み違いが減ります。おむつ代の扱いを種類別に整理すると、次のとおりです。

施設の種類別に見たおむつ代の扱い
施設の種類おむつ代の扱い根拠
特養・老健・介護療養型医療施設(54号に記載された類型)の入所者保険給付に含まれ、おむつに係る費用は徴収できない老企第54号
短期入所生活介護・短期入所療養介護の利用者同上老企第54号
介護医療院通知の原文と書面で確認契約書・重要事項説明書
特定施設・グループホーム日常生活費(おむつ代など)は別途負担と案内介護サービス情報公表システム
通所介護省令に「おむつ代」が別枠で列挙。扱いは施設ごとに確認運営基準(省令)

特養・老健・介護医療院

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院では、公表システム上、居住費・食費・日常生活費は利用者の自己負担とされています。日常生活費の対象としては、身の回り品、教養娯楽、健康管理費、預り金の出納管理費、私物の洗濯代などが通知で例示されています。老健の団体である全国老人保健施設協会も、日常生活品費についての案内を公開しています。施設によって運営規程の書き方に違いがあるため、実際の費用項目は個々の施設の書面で確認することになります。

短期入所生活介護(ショートステイ)

短期入所生活介護の運営基準では、食費・滞在費、特別な居室・特別な食事、送迎、理美容代、日常生活上通常必要となる費用が受領できるものとして並んでいます。おむつ代は、54号により保険給付に含まれ、別に徴収できないとされています。短期間の利用でも、請求書の内訳は同じ考え方で読めます。

特定施設・グループホーム・通所系

介護付きの有料老人ホームなどの特定施設と、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、公表システムで日常生活費などが別途負担と案内されています。特定施設では入居費用や日常生活費(おむつ代など)、グループホームでは食材料費・理美容代・おむつ代などが挙げられています。契約形態や費用の組み立ては施設ごとに異なります。

通所介護や通所リハビリテーションでは、日常生活費の例として身の回り品と教養娯楽が示されています。昼食代などの食費、送迎など、通所独自の費用もあるため、利用前に料金表を見てください。

受領の5要件と、同意・説明のルール

日常生活費を受け取るための5つの要件

日向市がまとめている受領基準では、日常生活費を受け取るための要件として、次の5点が挙げられています。これは老企第54号の趣旨を日向市が整理したもので、通知そのものに5項目が並んでいるわけではありません。

日常生活費を受け取るための5つの要件保険給付と重複していない、あいまいな名目でない、自由な選択に基づく、実費相当額の範囲内、運営規程に定め掲示している、の5要件。一律・画一的な徴収は認められない。受け取るための5つの要件1保険給付と重複していない2あいまいな名目(お世話料など)でない3利用者の自由な選択に基づく4実費相当額の範囲内5運営規程に定め、見やすい場所に掲示一律・画一的な徴収は認められない
日向市がまとめた受領基準の5要件です。

図の5点を文章にすると、次のとおりです。

  • 保険給付の対象となっているサービスと重複していないこと
  • お世話料、管理協力費などのあいまいな名目でないこと
  • 利用者の自由な選択に基づくものであること
  • 実費相当額の範囲内であること
  • 運営規程に定め、施設内の見やすい場所に掲示していること

1つめの要件のとおり、保険給付と重複する費用は受け取れません。たとえば、介護職員が行う入浴介助や排せつ介助に別の名目の料金を上乗せしたり、介護サービスの一部を日常生活費の名目で請求したりすることは、この要件に反します。

5要件を請求書にあてはめる想定例

想定例2(実在の施設とは関係のない例です):全員に同額の「日用品費」が毎月かかっている。老企第54号は、一律に提供して全員から画一的に徴収することを認めないとしています。使った物の実費なのか、選べる仕組みなのかを尋ね、内訳が示されない場合は、市区町村の介護保険担当課や地域包括支援センターに相談する方法があります。

想定例3:「管理協力費」という名目の請求がある。あいまいな名目は受領できないとされているため、何の費用なのかを尋ね、運営規程のどこに定めがあるかを確認します。説明を受けても納得できなければ、後述の相談先に沿って相談しましょう。いずれの例でも、感情的にならず、書面と日付を手元に整理して話すことが近道です。

一律・画一的な徴収は認められない

老企第54号には、すべての利用者に対して一律に提供し、すべての利用者からその費用を画一的に徴収することは認められないという趣旨が書かれています。たとえば「全員に同じ消耗品セットを提供し、全員から同額を月々徴収する」ような形は、自由な選択に基づくとはいえません。使った人が、使った分だけ負担する仕組みが基本です。

事前の説明・同意と、施設が示す書面

特養の運営基準(省令第9条第5項)では、費用を受領するにあたって、あらかじめ入所者または家族に、費用を記載した文書を交付して説明し、同意を得ることとされています。老企第54号でも、事前の十分な説明と同意、費用の内訳の明示が求められています。老健では、食事・居住費・特別な居室・特別な食事の費用の同意は、文書で行うこととされています。

施設は運営規程に利用料その他の費用の額を定め、契約時には重要事項の説明と同意も必要です。また、令和7年4月からは、介護サービス事業者の重要事項のウェブ公表が義務化されたと、箕面市が案内しています。施設のウェブサイトなどで費用の内訳を確認できる場合もありますが、公表の方法や範囲は事業者ごとに異なります。

苦情を受け付ける体制

費用の説明や請求に納得できないとき、まず窓口になるのは施設自身です。特養の運営基準には、苦情を受け付けるための窓口を設けるなど、必要な措置を講じることが定められています。窓口の場所や連絡先は、契約時に受け取った書面や施設の掲示で確かめられます。費用についての疑問は「苦情」と構えず、「内訳を知りたい」という質問として伝えると、話が進みやすくなります。

家族が代わりに確認する場合は、誰が窓口に連絡するのかを決めておくと、やり取りが滞りません。説明と同意の対象は入所者本人またはその家族と省令に書かれていますが、本人の意向を尊重して話を進めることが大切です。

日常生活費の目安額

公的な統一額はない

日常生活費に、全国一律の公的な金額はありません。額は施設ごとに運営規程で定められ、かかった実費の範囲という考え方です。使う物やサービスが違えば、月々の負担も変わります。同じ種類の施設でも、含まれる項目や内訳は施設によって異なります。

公表システムの例示

厚生労働省の介護サービス情報公表システムには、特養に入所した要介護5の人が多床室を使う場合の1か月の費用の例が示されています。この例では、日常生活費が約10,000円、月額の合計が約109,930円、個室の場合は約146,980円とされています。多床室の例では、合計のうち日常生活費は約9%、おおむね1割弱にあたります。これは調査にもとづく平均額ではなく、あくまで例示です。実際の費用は、施設・居室・所得による負担段階などで変わります。

特養に入所した要介護5の人の1か月の費用例介護サービス情報公表システムの例示で、日常生活費は約10,000円、多床室の月額合計は約109,930円、個室の場合は約146,980円。特養・要介護5の1か月の費用例うち日常生活費約10,000円多床室の月額合計約109,930円個室の月額合計約146,980円※公表システムの例示で、平均額ではない
公表システムの例示です。実際の費用は施設・居室・負担段階などで変わります。

この例示は、特養で多床室または個室を使う場合のものです。他の施設や負担段階では額が変わるため、金額感をつかむ手がかりとして見てください。

費用を見積もるときの考え方

見積もるときは、毎月かかる費用と、必要なときにかかる費用に分けると整理しやすくなります。毎月かかるのは、本人が使う日用品や理美容の利用分、預り金の管理に係る費用などです。必要なときにかかるのは、予防接種や、希望した外部クリーニングなどです。過去の請求書や、施設から見積書をもらえるときは、直近数か月分の内訳を参考にしてみてください。

家計の面では、先ほどの例示の約10,000円が毎月続くと、年額で約12万円になります。日常生活費は、後述のとおり負担限度額認定や高額介護サービス費の対象外なので、軽減制度とは別に見込む必要があります。入所を考える段階で、介護サービス費の自己負担、居住費、食費、日常生活費、施設外で使う医療費などを、一覧にして並べてみましょう。

複数の施設を比べるときの注意

複数の施設の費用を比べるときは、月額の合計だけでなく、何が含まれているかを見る必要があります。ある施設では日常生活費に含まれている項目が、別の施設では別建ての請求になっていることもあります。たとえば、理美容代が月額の中に含まれているのか、利用のたびの精算なのか、預り金の管理に費用が発生するのかなど、項目ごとに同じ条件に揃えて比べないと、金額の大小だけで判断を誤ることがあります。

他の制度との関係

日常生活費が対象外になる制度

日常生活費は、費用を軽くしたり、税金の控除に使ったりする制度の対象にはなりません。自治体や国税庁の案内によると、次のとおりです。

日常生活費と他の制度の関係
制度日常生活費の扱い案内している機関
負担限度額認定(補足給付)対象外(対象は食費と居住費のみ。認定を受けても日常生活費は自己負担)品川区
高額介護サービス費対象外(入所施設の食費・居住費・日常生活費は対象外)東大阪市
医療費控除対象外(理美容代を含む)。特養は介護費・食費・居住費の自己負担額の2分の1、老健・介護医療院は全額が対象国税庁(No.1125)

医療費控除との関係

医療費控除で施設サービスの自己負担がどう扱われるかは、介護費用の医療費控除の記事で解説しています。対象となる医療費の範囲は、国税庁のNo.1122もご覧ください。高額介護サービス費の対象や上限額は、お住まいの市区町村の案内で確認できます。

制度見直しと費用への影響

介護保険の制度は、見直されることがあります。千葉県の案内によると、令和7年8月から、一部の老健や介護医療院の多床室で室料負担が導入されています。詳しくは多床室の室料負担の記事をご覧ください。制度の変更があるときは、市区町村や施設に最新の内容を確認してください。

契約前の確認チェック

書面で確認する項目

契約前に、重要事項説明書、運営規程、料金表を見せてもらいましょう。見たいのは、日常生活費の項目の一覧と、各項目の単価・請求の方法・請求の頻度です。見出しだけではなく、細かい内訳まで確認すると、あとの食い違いを防げます。

  • 日常生活費の項目の一覧と、それぞれの単価
  • 利用するかしないかを選べる項目はどれか
  • 理美容代は、1回ごとの精算か、毎月定額か
  • おむつ代の扱い(特養・老健などは54号により給付内とされています。通所・介護医療院・特定施設などは、書面の記載を見る)
  • 預り金の管理にかかる費用の有無
  • 請求書・領収書で内訳が確認できるか

施設に尋ねたい質問

質問は短く具体的にしましょう。たとえば「この費用は、利用しなければ請求されませんか」「実費の内訳は、どう確認できますか」「この名目は、運営規程のどの項目にありますか」「家族が日用品やおむつを持ち込む場合の取り扱いはどうなっていますか」。口頭の返答だけでなく、書面や、後から見返せるメモとして残しておくと安心です。

請求書・領収書の見方

請求を受けたら、介護サービス費の自己負担、居住費、食費、日常生活費が、別々の項目で記載されているかを見ます。そのうえで、次の3点に目を向けます。

  • 日常生活費:内訳が示されているか。使っていない項目が含まれていないか
  • おむつ代:施設の種類に照らして、請求されること自体が整合しているか。理美容代とは別の項目として記載されているか
  • 名目:「お世話料」など、何の費用か分からない名称がないか

分かりにくい項目は内訳を問い合わせます。医療費控除を受ける場合に備えて、領収書は保管しておきましょう。

入所後に気をつけたいこと

入所後も、定期的に請求書を確認する習慣をつけましょう。請求の内容が契約時から変わっていないか、新しい項目が加わっていないかを、毎月の請求書で見比べます。変更の案内があったときは、内容を書面で受け取っておくと、あとで確認しやすくなります。

また、本人が日常生活費の項目を使う意思があるかも、折に触れて確かめましょう。使わなくなったサービスが、請求に残り続けていないかを確認する意味もあります。

家族として決めておきたいこと

施設に預けるお金や、立て替えてもらった費用の精算については、あらかじめ方法を決めておきましょう。預り金の出納管理費が発生する場合は、その金額と、残高や出入りの報告方法も確認しておくと、後で食い違いが起きにくくなります。日用品については、「家族が用意する」「施設に用意を頼む」のどちらにするかを、入所の前に決めておく例があります。

困ったときの相談先

相談する順番

国保連(国民健康保険団体連合会)の案内では、相談の流れは、まず事業者やケアマネジャー、次に市町村の介護保険担当課や地域包括支援センター、それでも解決しないときに国保連の順に示されています。まずは身近なところで、事実を整理して話し合うのが基本です。

費用に困ったときの相談の順番まず事業者やケアマネジャー、次に市町村の介護保険担当課や地域包括支援センター、それでも解決しないときに国保連に相談する。困ったときの相談の順番1事業者・ケアマネジャーまず身近なところで2市町村の介護保険担当課地域包括支援センター3国保連それでも解決しないとき
国保連の案内にある相談の流れです。

順番に迷ったら、契約書と請求書を手元に置いて、事業者やケアマネジャーに状況を伝えるところから始められます。

国保連の苦情相談

国保連が受け付けるのは、市町村の区域を超える問題や、高度な法令解釈が必要なもの、利用者が特に望む場合などです。国保連は、必要に応じて調査や指導助言を行いますが、責任を追及する場ではありません。気持ちを落ち着けて、事実と希望を伝えるのが目的です。

指導監査の窓口

制度上の疑いが強いときは、事業者の指導監督を担当する自治体の窓口に相談できます。たとえば船橋市のように、介護サービス事業者の指導・監査の窓口を案内している自治体もあります。担当する窓口は施設の種類や所在地で異なるため、市区町村や都道府県の案内を確認してください。

相談前に準備しておくもの

  • 契約書・重要事項説明書のコピー
  • 請求書・領収書
  • やり取りの日付と内容のメモ
  • 本人や家族として希望すること(返金か、説明か、改善か)

まとめ

  • 日常生活費は、介護保険の給付外で、本人の選択に基づき実費相当で負担する費用です
  • 請求書を見るときは、日常生活費・おむつ代・名目の3点を確認します。おむつ代と理美容代は別の項目です
  • 老企第54号が挙げる特養・老健などの入所者のおむつ代は徴収できません。介護医療院・通所・特定施設などは書面で確認します
  • 受領には、保険給付と重複しないこと、あいまいな名目でないこと、実費相当で運営規程に定めて掲示することなどが必要です
  • 日常生活費は、負担限度額認定・高額介護サービス費・医療費控除の対象外です

費用の考え方に不安があるときは、ひとりで抱えず、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみてください。当サイトの編集方針はこのサイトの立ち位置にまとめています。

よくある質問

介護施設の日常生活費とは何ですか。

介護保険の給付外で、利用者が実費相当を負担する日常生活上の費用です。老企第54号は、利用者の自由な選択に基づき、事業者が供給する便宜に係る経費としています。身の回り品や教養娯楽費などが例です。理美容代は運営基準で別に列挙されています。

特養や老健でおむつ代を請求されました。払う必要がありますか。

特養・老健・介護療養型医療施設の入所者と短期入所の利用者は、おむつ代が保険給付に含まれ、おむつカバー代や洗濯代を含めて徴収できないと老企第54号に書かれています。請求があれば、まず契約書・重要事項説明書の記載と請求の内訳を確認してください。納得できなければ、市町村の介護保険担当課に相談できます。

日常生活費の目安は月いくらですか。

公的な統一額はなく、施設ごとの運営規程で決まります。厚生労働省の公表システムには、特養の要介護5・多床室の例として、日常生活費約10,000円、月額合計約109,930円(個室は約146,980円)が示されています。調査にもとづく平均ではなく例示です。

日常生活費は負担限度額認定や医療費控除の対象になりますか。

対象外です。品川区の案内では負担限度額認定の対象は食費と居住費のみ、東大阪市の案内では高額介護サービス費でも入所施設の日常生活費は対象外とされています。国税庁の案内でも、理美容代を含む日常生活費は医療費控除の対象になりません。

家族が日用品を持ち込んでもよいですか。

老企第54号が例示するのは、本人の希望で施設が用意した身の回り品の実費です。家族が持ち込めるかどうかや持ち込み品の扱いは施設ごとに異なる可能性があるため、契約前に重要事項説明書で確認するか、職員に尋ねてください。

理美容代は日常生活費とは別に払うのですか。

運営基準(省令)では、理美容代は受領できる費用として別の項目に挙げられています。毎回の精算か定額かは施設によって異なり得るため、料金表で確認してください。請求書でもおむつ代とは別の項目として記載されているかを見ます。

参考・出典

  1. 老企第54号 通所介護等における日常生活に要する費用の取扱いについて (厚生労働省)
  2. 日常生活費の受領基準の整理(介護保険事業者向け) (日向市)
  3. 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号) (厚生労働省)
  4. 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号) (厚生労働省)
  5. 介護サービス情報公表システム 費用について (厚生労働省)
  6. 介護サービス情報公表システム 特定施設入居者生活介護 (厚生労働省)
  7. 介護サービス情報公表システム 認知症対応型共同生活介護 (厚生労働省)
  8. WAM NET 介護保険サービス 特定施設入居者生活介護 (独立行政法人福祉医療機構(WAM NET))
  9. 負担限度額認定(補足給付)について (品川区)
  10. 高額介護サービス費について (東大阪市)
  11. No.1125 介護保険制度における施設サービスの対価に係る医療費控除 (国税庁)
  12. No.1122 医療費控除の対象となる医療費 (国税庁)
  13. おむつ代の医療費控除に関する取扱いの改正(令和6年10月9日) (国税庁)
  14. 介護保険サービスに関する苦情・相談について (千葉県国民健康保険団体連合会)
  15. 介護サービスの苦情相談窓口 (宮城県国民健康保険団体連合会)
  16. 介護サービス事業者への指導・監査について (船橋市)
  17. 令和7年8月からの室料負担について (千葉県)
  18. 介護サービス事業者の重要事項のウェブ公表の義務化について (箕面市)
  19. 日常生活品費について (公益社団法人全国老人保健施設協会)