紙おむつ支給事業とは|自治体ごとの要介護度別上限額と申請方法を解説

紙おむつ支給事業は市区町村独自の地域支援事業。対象となる要介護度や上限額は自治体で異なり、確認せず引っ越すと支給が途切れることもあります。

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目次

紙おむつ支給事業は、在宅で介護を受ける高齢者に対して市区町村が紙おむつの現物や利用券、あるいは現金を支給する制度です。対象となる要介護度の目安はおおむね要介護3〜5ですが、要介護2から対象にする自治体や、逆に要介護4・5に限定する自治体もあります。上限額も月4,000円台〜8,000円程度まで幅があります。全国一律の国の制度ではなく市区町村ごとの独自事業のため、まず「お住まいの自治体でどうなっているか」を確認することが出発点になります。本記事では要件・上限額・申請方法・医療費控除との違いまで、公的機関の一次情報にもとづいて整理します。

紙おむつ支給事業とは何か

地域支援事業との位置づけ

紙おむつ支給事業は、介護保険制度に関連する市区町村の地域支援事業(市区町村が介護予防や生活支援のために行う事業の枠組み)の中で運用されてきたとされていますが、その位置づけや対象範囲は時期によって見直しが行われてきた経緯があります。制度区分の細かな変遷を正確にたどるには自治体・国の一次資料の逐語確認が必要なため、本記事ではその詳細には立ち入りません。確実に言えるのは、現在実施されているのは国の全国一律の補助制度ではなく、各市区町村が独自の予算と要綱にもとづいて運営している事業だという点です。

よくある誤解=国の一律制度ではない

「介護保険で紙おむつが支給される」と誤解されがちですが、正確には介護保険の給付そのものではなく、市区町村が独自に実施する地域支援事業の一環です。そのため対象となる要介護度、所得要件、支給される金額や方法(現物か利用券か現金か)は自治体ごとにまったく異なります。転居によって支給が受けられなくなるケースもあるため、「制度名」だけで内容を思い込まず、必ず居住地の自治体窓口で最新の要綱を確認する必要があります。

対象者の要件

対象となる要介護度・所得要件・施設入所者や入院者の扱いは、いずれも自治体ごとに設計が異なります。主な自治体の要件を一覧にまとめました。

自治体要介護度の目安所得要件施設入所者・入院者の扱い
横浜市要介護4・5が基本(要介護1〜3は区福祉保健センター長が必要と認めた場合)住民税非課税世帯施設入所者は対象外
さいたま市要介護3〜5介護保険料段階(所得に応じて保険料の負担額が区分される仕組み)第1〜5段階施設入所者は対象外/入院が3か月を超えると対象外
大田区要介護3〜5(要介護1・2も医師が必要と認めれば対象)要綱に明記なし入院中は現物支給とは別枠の現金助成あり(詳しくは後述)
江東区要介護3〜5(医師の診断書がある場合も対象)介護保険料段階第1〜8段階施設入所者は対象外/入院中は現金助成あり(詳しくは後述)
山形市要介護4・5、または認知症により排泄が困難で常時失禁が1か月以上続く場合住民税非課税世帯施設入所者は対象外
中央区要介護2以上で常時寝たきり・認知症により失禁状態にある場合要綱に明記なし施設入所者は対象外
高松市要介護3〜5住民税非課税世帯施設入所者は対象外
世田谷区要介護3〜5要綱に明記なし施設入所者は対象外/入院中は現金助成あり(詳しくは後述)
藤沢市要綱で個別に規定40〜65歳未満は所得400万円未満、65歳以上は非課税世帯要綱に準じる
町田市要綱で個別に規定住民税非課税世帯要綱に準じる

このように「要介護4・5が一般的」とは単純化できず、要介護1〜3でも医師の診断書などで対象になる自治体があります。ここに載っていない自治体にお住まいの場合も、この幅(要介護2〜5、所得要件の有無)を参考に、必ず窓口で確認してください。

対象となる要介護度の3パターン 要介護度の要件は自治体ごとに異なり、要介護3〜5を基本とする自治体、要介護2以上でも対象になる中央区のような例、要介護4・5を基本とする横浜市のような例の3パターンがある 要介護度の要件は自治体で異なる パターン1:要介護3〜5 さいたま市・山形市・高松市など 多くの自治体の基本要件 パターン2:要介護2以上 中央区(寝たきり・認知症で失禁) 要介護1〜2でも対象になる例 パターン3:要介護4・5が基本 横浜市(1〜3は例外的に対象) 施設入所者は原則対象外
対象となる要介護度の下限は自治体により要介護2〜4の範囲で異なる(本文の一覧表より抜粋)。

支給される内容と上限額

支給方式(現物・利用券・ポイント制・現金助成)と月額上限額も自治体によって設計が異なります。以下の表は主な自治体の内容をまとめたものです。

自治体支給方式月額上限の目安
横浜市現物支給要介護4・5は月8,000円上限(要介護1〜3の認定時は月6,000円上限)
さいたま市利用券(年最大12枚)月6,000円限度
町田市カタログから選ぶ現物支給(年4回配送)要綱に準じる
江東区ポイント制(1点超過ごとに100円の自己負担)月75点=約7,500円相当
山形市現物支給月7,000円限度
中央区ポイント制月40〜70点=4,000〜7,000円相当
大田区(入院者助成)現金助成(入院中は現物支給とは別枠)月5,000円限度
世田谷区(入院者助成)現金助成(入院中は現物支給とは別枠)月5,000円限度
江東区(入院者助成)現金助成(入院中は現物支給とは別枠)月7,500円上限

ポイント制の自治体(大田区・江東区・中央区・世田谷区)は、月に付与されるポイント数の範囲内で紙おむつ等を選べる仕組みで、超過分は自己負担になります。入院中の現金助成の詳しい要件は「生活保護受給者・入院中の人の扱い」で後述します。以下の図は、通常の支給上限額と入院者向け助成の上限額を分けて示したものです。

自治体別・月額上限額の比較(円) 通常の支給上限額 入院中の現金助成上限額 横浜市 8,000円 江東区 7,500円相当 山形市 7,000円 さいたま市 6,000円 江東区(入院者助成) 7,500円 大田区(入院者助成) 5,000円 世田谷区(入院者助成) 5,000円

※ 各自治体公表資料をもとに作成。点数制の自治体は円換算のおおよその目安。制度改定により変更される可能性があるため最新情報は各自治体窓口で要確認

このように、同じ「紙おむつ支給事業」という名称でも、支給方式と上限額はまったく異なります。金額の多寡だけで自治体を比較するのではなく、まずは自分が住む自治体の制度内容を窓口や公式サイトで確認することが重要です。

申請方法・必要書類

申請窓口

主な申請窓口は、市区町村の高齢福祉課・介護保険課・在宅支援に関する担当係、または地域包括支援センター(自治体により「あんしんすこやかセンター」等の名称の場合もあります)です。さいたま市・町田市・江東区などはオンライン申請にも対応しています。要介護度の判定については要介護認定の仕組みを解説した記事もあわせてご確認ください。

必要書類と医師の診断書が必要なケース

必要書類は基本のものと、状況に応じて追加で求められるものに分かれます。

基本の必要書類

  • 支給申請書
  • 介護保険被保険者証の写し

追加で必要になる場合がある書類

  • 医師による「紙おむつ使用証明書」等の診断書(要件となる要介護度の下限を下回る人。例:大田区の要介護1・2、江東区の医師診断書によるケースなど)

書類の様式や添付書類は自治体ごとに異なるため、申請前に窓口へ電話やオンラインで確認しておくと二度手間を避けられます。福祉用具の貸与・購入費助成とあわせて検討したい場合は福祉用具貸与制度の解説記事も参考にしてください。

医療費控除との関係

おむつ使用証明書とは

自治体の紙おむつ支給事業と、確定申告における医療費控除の仕組みは別の制度です。国税庁の確定申告書等作成コーナーのFAQでは、次のように説明されています。

傷病によりおおむね6か月以上にわたり寝たきりであり、医師の治療を受けている者のおむつ代は、医師による治療を受けるため直接必要な費用として医療費控除の対象となる。

この控除を受けるには、主治医が発行する「おむつ使用証明書」を確定申告書に添付または提示する必要があるとされています。つまり、市区町村の支給事業を利用していない場合でも、自費で購入したおむつ代について、要件を満たせば医療費控除を別途申請できる点が重要です。

2年目以降の簡易な証明

国税庁が令和4年6月25日付で示した法令解釈通達では、2年目以降の申告については医師の「おむつ使用証明書」に代えて、市区町村長が要介護認定情報等にもとづき確認した簡易な証明書類でも医療費控除が認められるとされています。実際の運用例として、上尾市では市が発行する「おむつに係る費用の医療費控除に用いる証明の確認書」を医師証明の代替として発行しており、申請から発行までおおむね10日程度としています(このケースは市発行の確認書に関する目安であり、支給事業自体の審査日数とは異なります)。毎年医師の診断書を取り直す負担を減らせる仕組みなので、2年目以降に控除を受ける予定がある場合は自治体窓口に相談するとよいでしょう。介護にかかる費用全体の控除については介護と医療費控除の関係を解説した記事で詳しく整理しています。

紙おむつ支給事業と医療費控除は別々の制度 紙おむつ支給事業は市区町村が運営し、医療費控除は国税庁の確定申告の仕組みで、運営主体も申請先も異なる別々の制度であり、要件を満たせば両方を利用できる 紙おむつ支給事業(市区町村) 市区町村の予算にもとづき現物・現金を支給 所得・要介護度の要件は自治体ごとに異なる 支給事業と医療費控除は別々の制度→併用できる 医療費控除(国税庁) 確定申告で自費のおむつ代を控除できる制度 医師の証明書(2年目以降は簡易な証明も可)
紙おむつ支給事業と医療費控除は運営主体も申請先も別々の制度で、要件を満たせば両方を利用できる。

生活保護受給者・入院中の人の扱い

生活保護世帯の扱いの違い

生活保護を受給している世帯の扱いは、自治体によって正反対の対応が取られている点に注意が必要です。

自治体生活保護世帯の扱い
横浜市対象に含まれる(自己負担が生じない扱い)
大田区対象外
藤沢市対象外

大田区・藤沢市が対象外としているのは、生活保護制度の中で介護扶助や生活扶助として別途おむつ代相当が賄われる整理によるものと考えられますが、自治体により真逆の扱いがあるため、生活保護を受給している場合は必ず担当のケースワーカーと自治体の介護保険課の双方に確認することをおすすめします。

入院中の扱い

入院中の扱いも自治体で対応が割れています。さいたま市は入院が3か月を超えると紙おむつ支給事業の対象外になる規定があります。一方、大田区・江東区・世田谷区は、入院中の人向けに現物支給とは別枠の現金助成制度を用意しており、大田区・世田谷区は月5,000円限度、江東区は月7,500円上限となっています。多くの自治体で特別養護老人ホームなどの施設入所者は対象外とされていますが(さいたま市・山形市・高松市・世田谷区・中央区で確認)、これは施設側で介護保険サービスとして必要な物品が提供される、あるいは施設サービス費に含まれる整理のためです。入院が長引きそうな場合は、現物支給から現金助成への切り替えが必要になることがあるため、早めに病院の相談窓口や自治体担当課へ連絡しておくと安心です。

利用開始までの流れ

相談から支給決定まで

一般的な流れは次のとおりです。

支給までの4ステップ 相談、要件確認、申請書類の提出、審査を経ての支給決定という4つの段階で利用が始まる 支給までの4ステップ 1 相談 自治体窓口・地域包括支援センター 2 要件確認 対象要件・所得要件を満たすか確認 3 申請書類の提出 被保険者証の写し・必要なら診断書 4 審査→支給決定 書類確認・審査を経て決定通知
相談から支給決定までは、要件確認・書類提出・審査という4段階を経る(標準的な処理日数は自治体ごとに異なる)。
  1. 要介護認定の結果が出たら自治体の担当課または地域包括支援センターへ相談する
  2. 要件を満たすか確認する
  3. 申請書と必要書類(介護保険被保険者証の写し、必要に応じて医師の診断書)を提出する
  4. 自治体側で審査のうえ支給決定される

オンライン申請に対応している自治体(さいたま市・町田市・江東区など)では、窓口に出向く手間を減らせます。支給決定までの標準的な処理日数は自治体ごとに公表状況が異なり、統一的な目安は確認できていませんが、参考として上尾市では医療費控除用の確認書発行までおおむね10日程度としている例があります(これは支給事業そのものの審査日数ではなく、医療費控除の確認書に関する目安です)。支給事業の申請から決定までは、審査や書類確認の期間を含めて数週間程度を見込んでおくとよいでしょう。正確な日数は申請時に窓口で確認することをおすすめします。

要介護度が変わった場合の扱い

要介護度は認定更新のたびに変わる可能性があります。要介護度が下がって要件を下回った場合や、逆に上がって上限額が変わる自治体もあるかもしれませんが、この点について統一的な公的情報は確認できていません。認定区分が変わった場合の取り扱いは自治体ごとの運用によるため、断定はせず、要介護認定の更新通知を受け取った際には速やかに担当窓口へ相談することをおすすめします。

注意点・よくある失敗

自治体をまたぐ引っ越し時の注意

紙おむつ支給事業は市区町村ごとの独自事業であるため、引っ越しをすると転出元の自治体での支給資格は失われ、転入先の自治体で改めて申請し直す必要があります。転入先の要介護度の下限や所得要件が転出元と異なるために、これまで対象だった人が対象外になる、あるいはその逆になるケースもあり得ます。引っ越しを予定している場合は、転入先の要綱を事前に確認しておくと支給が途切れる期間を短くできます。

退院後・逝去後は申請不可のケース

江東区の要綱では、退院後や本人が亡くなった後の申請は認められないと明記されています。入院中に使用していたおむつ代を後からまとめて申請しようとしても間に合わない場合があるため、入院前後のタイミングで対象になるかどうかを早めに確認しておくことが重要です。同様の運用は他の自治体にもある可能性があるため、事前確認を怠らないようにしましょう。

引っ越し・入退院時のチェックリスト 引っ越し前に転入先の要綱と要件を確認すること、退院前に対象かどうかを自治体へ確認すること、退院後や逝去後は申請できない場合があるため早めに確認することの4点 引っ越し・入退院時のチェック 引っ越し前に転入先の 要綱・要件を確認する 転入先の要介護度・所得 要件も確認しておく 退院前に対象になるか 自治体へ確認する 退院後・逝去後の申請は 不可(早めの確認が重要)
自治体をまたぐ引っ越しや入退院のタイミングでは、支給が途切れる・申請できないケースがあるため事前確認が欠かせない。

まとめ

  • 紙おむつ支給事業は国の一律制度ではなく、市区町村独自の地域支援事業として運営されている。
  • 対象となる要介護度は自治体により要介護2〜4の間で下限が異なり、月額上限もおおむね4,000円台〜8,000円程度と幅がある。
  • 生活保護世帯の扱い(対象に含む・含まない)や入院中の対応(対象外・現金助成あり)は自治体で正反対のケースがある。
  • 自治体の支給事業とは別に、要件を満たせば自費のおむつ代について国税庁の医療費控除を申請できる。2年目以降は自治体発行の簡易な証明書でも対応可能な場合がある。
  • 引っ越しや入退院のタイミングでは支給が途切れる、または申請自体ができなくなることがあるため、早めに窓口へ相談することが望ましい。

制度の詳細や上限額は自治体の予算・要綱の見直しによって変更されることがあります。本記事の内容は執筆時点で各自治体・国税庁が公表している一次情報にもとづいていますが、最新の要件・金額は必ずお住まいの自治体窓口でご確認ください。

当サイトは特定の事業者やサービスを評価・推奨するものではなく、公的機関の情報を整理して並列に紹介する編集方針をとっています。詳しくはこのサイトの立ち位置をご覧ください。

よくある質問

紙おむつ支給事業はどこの自治体でも同じ内容ですか。

いいえ、市区町村ごとの独自事業のため対象となる要介護度、所得要件、支給方法(現物・利用券・現金)、上限額はすべて自治体で異なります。転居すると転入先で改めて要件を確認し、申請し直す必要があります。

要介護1や要介護2でも紙おむつ支給を受けられますか。

自治体によります。要介護3〜5または要介護4・5を基本とする自治体が多いですが、大田区のように要介護1・2でも医師が必要と認めれば対象になる自治体や、中央区のように要介護2から対象とする自治体もあります。お住まいの自治体の要綱を確認してください。

生活保護を受けていても紙おむつ支給を受けられますか。

自治体により扱いが異なります。横浜市では生活保護世帯も対象に含まれますが、大田区・藤沢市の要綱では生活保護受給者は対象外とされています。担当のケースワーカーと自治体の介護保険課の両方に確認することをおすすめします。

紙おむつ支給事業を利用していなくても医療費控除は受けられますか。

受けられる場合があります。市区町村の支給事業と国税庁の医療費控除は別の制度で、自費でおむつを購入している場合でも、医師が発行する「おむつ使用証明書」等の要件を満たせば控除の対象になります。2年目以降は自治体発行の簡易な証明書で代替できる場合もあります。

入院中でも紙おむつ支給を受けられますか。

自治体で対応が分かれます。さいたま市は入院が3か月を超えると対象外になりますが、大田区・江東区・世田谷区は入院中の人向けに現物支給とは別枠の現金助成を用意しています。入院が長引きそうな場合は早めに病院の相談窓口や自治体担当課へ連絡してください。

参考・出典

  1. 高齢者紙おむつ給付事業 (横浜市)
  2. 紙おむつ等の支給 (大田区)
  3. 重度要介護高齢者紙おむつ等支給事業 (さいたま市)
  4. 町田市在宅高齢者紙おむつ支給事業 (町田市)
  5. 高齢者紙おむつ支給及びおむつ購入費助成 (江東区)
  6. 紙おむつ支給事業 (山形市)
  7. 紙おむつ等支給 (中央区)
  8. 高松市寝たきり高齢者等紙おむつ給付事業 (高松市)
  9. 紙おむつの支給・助成 (世田谷区)
  10. 大人用紙おむつの支給 (藤沢市)
  11. おむつに係る費用の医療費控除の取扱いについて(法令解釈通達) (国税庁)
  12. おむつ代の医療費控除(確定申告書等作成コーナーFAQ) (国税庁)
  13. 高齢者のおむつ代の医療費控除 (上尾市)