老健・介護医療院の一部の相部屋(多床室)で、令和7年(2025年)8月から、居住費の基準費用額が1日260円(月約8,000円相当)上がりました。
基準費用額とは、居住費について国が示している目安額のことです。
対象になるのは一部の類型・居室だけです。まず施設に、入所(予定)の部屋が対象かどうかを確認してください。
- 対象は、老健の「その他型」「療養型」と介護医療院II型の多床室のみです。個室・ユニット型は対象外です。
- 補足給付(所得や預貯金が一定以下の方の居住費・食費を軽くする制度)の対象である第1〜3段階は、令和7年8月の室料負担の導入そのものでは、基準費用額の増加分が補足給付で補われます。ただし令和8年8月の別の改定で、第3段階②の負担限度額は上がりました。
- 対象かどうかは施設の届出で決まります。施設に聞けば分かります。
以下、厚生労働省などの資料にもとづき、2026年9月30日時点の情報で整理します。
多床室の室料負担とは何か
この章では、室料負担が何を指すのかと、よくある誤解を先に整理します。
定義と改正の位置づけ
多床室とは、1つの部屋を複数人で使う療養室のことです。介護保険施設では、居住費や食費は平成17年(2005年)10月から保険給付の対象外になり、利用者が自分で負担する形になりました。このとき、多床室の居住費は光熱水費のみで、部屋そのものの使用料にあたる「室料相当額」は含まれていませんでした。
今回の見直しは、老健と介護医療院の一部の類型の多床室で、室料相当額を基本サービス費から差し引き、その分を利用者に負担してもらうものです。根拠は令和6年厚生労働省告示第86号の一部改正で、令和6年度の介護報酬改定の一環として、令和7年(2025年)8月1日に施行されました。
よくある誤解
- 「老健や介護医療院の多床室はすべて対象」ではありません。老健の一部の類型と介護医療院II型に限られます。
- 「介護サービス費そのものが値上がりした」わけではありません。基本サービス費から室料相当額が差し引かれ、居住費の基準費用額が上がる形です。
- 「全員が同じ額を負担する」わけではありません。補足給付の対象(第1〜3段階)は、令和7年8月の室料負担の導入そのものでは、基準費用額の増加分が補足給付で補われます。ただし、令和8年8月の別の改定で第3段階②の負担限度額が430円から530円/日(約+3,000円/月)になりました。これは室料負担とは別の見直しです。
対象になる施設・ならない施設
対象かどうかは、施設の種別ではなく、類型と部屋のタイプで決まります。
対象となる類型
- 介護老人保健施設のうち「その他型」の多床室
- 介護老人保健施設のうち「療養型」の多床室
- 介護医療院II型の多床室
- 上記の施設が行う(介護予防)短期入所療養介護(ショートステイ)にも準用
老健の「その他型」とは、超強化型・在宅強化型・加算型・基本型のいずれの要件も満たさない老健です。「療養型」とは、平成18年(2006年)7月1日から平成30年(2018年)3月31日までの間に、療養病床等から移行して開設された老健です。
対象外となる類型
- ユニット型・個室
- 老健の超強化型・在宅強化型・加算型・基本型
- 介護医療院I型
- 特養(すでに別途導入済み)
それぞれの施設の性格は、介護老人保健施設(老健)の解説と介護医療院の解説で詳しく説明しています。対象と対象外を図にまとめると次のとおりです。
対象かどうかの判定ルールと面積要件
判定は施設の届出で決まり、家族は施設に確認すれば分かります。判定の要件は次のとおりです。
- 老健は、前の計画期間の最終年度に「その他型」または「療養型」として算定した月が7か月以上あること。令和7年8月から令和9年7月までは、令和6年度の実績で判定します。
- 療養室の床面積の合計を入所定員で割った値が、1人あたり8平方メートル以上の多床室であること。
- 設備基準は、1室の定員が4人以下、1人あたり8.0平方メートル以上が基本です(老健療養型は大規模改修まで6.4平方メートル以上でも可)。
- 入所者が外泊した場合は、室料相当額の控除を適用しません。
負担額の目安と計算のしかた
ここでは、増えた金額の目安と、基準費用額の推移を確認します。
月額でいくら増えるのか
資料では、負担の増加は月額でおよそ8,000円相当と示されています(実際の額は利用日数などで変わります)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 居住費の基準費用額 | +260円/日 |
| 月額の目安 | 約8,000円相当(約260円×30日の概算) |
| 介護報酬側 | 基本報酬▲26単位/日(室料相当額の控除) |
居住費の基準費用額の推移
老健・介護医療院の多床室の基準費用額は、令和6年(2024年)7月まで377円、8月から437円(+60円。第1段階の多床室は0円で据え置き)、令和7年(2025年)8月から室料を徴収する多床室で697円(+260円)と動いてきました。特養等の多床室の915円は、月換算で約2.7万円にあたります。
推移を図にすると次のとおりです。
計算例(概算)
補足給付の対象外の方を想定し、居住費が基準費用額どおりだった場合の単純な計算です。
| 時期 | 日額 | 30日換算 |
|---|---|---|
| 令和6年7月まで | 377円 | 11,310円(約1.1万円) |
| 令和6年8月から | 437円 | 13,110円(約1.3万円) |
| 令和7年8月から(室料徴収の多床室) | 697円 | 20,910円(約2.1万円) |
437円と697円の差は30日で7,800円で、約8,000円相当という目安と合います。実際の請求額は施設ごとに異なるため、施設に確認してください。
所得段階別の負担と補足給付
所得や預貯金によって、居住費の負担は段階ごとに変わります。
補足給付とは何か
補足給付(特定入所者介護サービス費)は、所得や預貯金が一定以下の方の居住費・食費を軽くする制度です。段階ごとに「負担限度額」が決まっており、基準費用額との差額が介護保険から施設に支払われます。申請は市区町村の介護保険担当窓口で行います(負担限度額認定証の解説、特定入所者介護サービス費の解説も参照してください)。
令和7年8月の室料負担の導入そのものでは、補足給付の対象(第1〜3段階)は、基準費用額が+260円/日になった分が補足給付で補われます。
ただし、令和8年8月の別の改定で、第3段階②の負担限度額が430円から530円/日(約+3,000円/月)になりました。これは室料負担とは別の見直しです。
室料徴収の多床室の負担限度額(1日)
令和7年(2025年)8月時点と、令和8年(2026年)8月からの負担限度額は次のとおりです。
| 所得段階 | 令和7年8月時点 | 令和8年8月から |
|---|---|---|
| 第1段階 | 0円 | 0円 |
| 第2段階 | 430円 | 430円 |
| 第3段階① | 430円 | 430円 |
| 第3段階② | 430円 | 530円(30日で約1.6万円) |
基準費用額は、令和8年8月からも697円のままです。第3段階②の530円は、30日で15,900円にあたります。図で並べると、変わったのは第3段階②だけだと分かります。
段階の要件(令和7年8月から)
補足給付の主な要件は次のとおりです。
| 段階 | 年金収入+所得 | 預貯金(単身) | 預貯金(夫婦) |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護受給者は要件なし。市町村民税非課税世帯の老齢福祉年金受給者 | 1,000万円以下 | 2,000万円以下 |
| 第2段階 | 80.9万円以下 | 650万円以下 | 1,650万円以下 |
| 第3段階① | 80.9万円超〜120万円以下 | 550万円以下 | 1,550万円以下 |
| 第3段階② | 120万円超 | 500万円以下 | 1,500万円以下 |
令和8年(2026年)8月からは、この「80.9万円」が「82.65万円」に変わりました。自分の段階は、市区町村の窓口や負担限度額認定の結果で確認できます。
第4段階(補足給付の対象外)の場合
補足給付の対象外である第4段階の方は、居住費が施設と入所者の契約で決まります。目安として、基準費用額の増加分は月約8,000円相当です。契約前に、居住費の日額と、室料相当額がどう反映されているかを確認しておくと安心です。
高額介護サービス費との関係
負担が増えたとき、高額介護サービス費で戻るのかを確認します。
食費・居住費は対象外
高額介護サービス費は、1か月の利用者負担が上限を超えたときに、超えた分が戻る制度です。介護サービス情報公表システムでは、食費・居住費等は対象となる利用者負担額から除かれると説明されています。月額の上限は、第1段階の個人15,000円から第4段階③の世帯140,100円まで、所得区分によって決まります。詳しくは高額介護サービス費の解説をご覧ください。
室料負担の扱い
室料負担が高額介護サービス費の対象かどうかを明記した公的資料は、見当たりません。
居住費の一部として扱われる構造上、対象外と読めますが、これは推論です。
実際の取り扱いは、市区町村の介護保険担当窓口で確認してください。
ご家族が確認したいこと
対象かどうかは、施設と市区町村の窓口の2か所で確認できます。図の順番で進めると迷いません。
施設に聞くこと
- 室料相当額の控除の届出はあるか(例:「多床室の室料相当額控除の届出はありますか」)
- 入所(利用)する部屋が、対象となる多床室か
- 実際の居住費の日額(負担限度額認定を受けている場合は、その適用後の額)
- 補足給付の対象外の場合の、居住費の設定額
厚生労働省が令和7年(2025年)6月20日付の介護保険最新情報(Vol.1397)で示したリーフレットでも、自分が対象かは施設に確認するよう案内されています。
窓口に聞くこと
- 自分(親)の所得段階と、負担限度額認定の申請・更新の時期
- 預貯金の確認書類など、申請に必要なもの
- 室料負担が高額介護サービス費の対象になるか
食費の改定と合わせて見る
食費は室料負担とは別の改定ですが、同じ時期に動いたため、あわせて確認すると全体像がつかめます。食費の基準費用額は、従来1,445円でしたが、令和8年(2026年)8月から1,545円(+100円)になりました。負担限度額は、第1段階300円・第2段階390円は据え置き、第3段階①は650円から680円、第3段階②は1,360円から1,420円になりました。
なぜ室料負担が導入されたのか
導入の経緯と、検討で使われた観点を整理します。
経緯:令和5年12月の報告から施行まで
この見直しは、令和5年(2023年)12月27日の社会保障審議会・介護給付費分科会(第237回)で、令和6年度介護報酬改定の一環として報告されました。大臣折衝事項にもとづくものです。施行は令和7年(2025年)8月1日です。
資料には「在宅との負担の公平性、各施設の機能や利用実態等を踏まえ更なる見直しを含め必要な検討を行う」という付記もあり、今後の見直しの可能性は導入時点から示されていました。
検討の観点:日常生活の施設か、生活の場か
検討では、老健や介護医療院が「日常生活を行う施設か」、「死亡退所が多く、生活の場としての性格が強いか」という観点が示されました(島根県の資料による)。在宅で暮らす方は家賃などを自分で負担しているため、施設の多床室の負担との公平性を考える、という発想です。
特養の多床室はすでに導入済み
特別養護老人ホーム(特養)の多床室では、平成27年度(2015年度)から室料負担が導入されています。基準費用額は1日915円で、今回の改正の対象外です。
今後の見直しの動き(検討中)
今回の対象を広げる議論が続いていますが、決定された事項はありません。
介護保険部会の意見(令和7年12月)
令和7年(2025年)12月25日の介護保険部会(第133回)では、室料負担のあり方を介護給付費分科会で検討すべきだという意見が出ました。一方、「老健は在宅復帰を支援する施設で、室料負担は適切でない」「開始直後で説得力に欠ける」という慎重な意見もありました。
財政制度等審議会の指摘(令和8年6月)
令和8年(2026年)6月26日、財政制度等審議会は、見送られた類型(老健の超強化型・在宅強化型・加算型・基本型、介護医療院I型)についても、室料相当額を基本サービス費から除外する見直しを「実施することが考えられる」と指摘しました。老健の平均在所日数が400日を超えることなどが根拠です。
介護給付費分科会での議論(令和8年9月)
令和8年(2026年)9月3日の介護給付費分科会(第264回)で、「多床室の室料負担」が議題になりました。令和9年度(2027年度)の改定に向けた議論を念頭に置いたもので、制度は今後変わる可能性があります。これまでの流れを時系列で並べると次のとおりです。
算定状況と施設の統計
令和7年(2025年)11月審査分では、室料相当額控除を算定しているのは、事業所ベースで老健3.3%、介護医療院23.0%でした。対象になる施設は限られていることが分かります。
| 区分 | 算定事業所数 | 事業所ベース | 日数ベース |
|---|---|---|---|
| 老健 | 137か所 | 3.3% | 2.3% |
| 介護医療院 | 214か所 | 23.0% | 18.5% |
施設数は、令和6年(2024年)10月1日時点で老健4,214か所、介護医療院917か所です。老健の算定回数(令和7年10月サービス提供分)では、療養型・その他型を合わせても約2.9%です。
制度改定と情報の見方
3年ごとの改定と本記事の情報の時点
介護報酬は3年ごとに改定されます。制度の変更は、その途中でも随時ありえます。本記事の内容は2026年9月30日時点で、令和8年(2026年)8月の改定後の情報です。次の報酬改定は令和9年度(2027年度)が念頭にあり、今後の議論で内容が変わる可能性があります。金額や要件は、市区町村や厚生労働省の最新の資料で確認してください。
このサイトの立ち位置
かいごの窓は、特定の施設を評価したり、順位を付けたりせず、制度の情報を並列にお伝えする方針です。詳しくはこのサイトについてをご覧ください。
関連する制度もあわせて
老健と介護医療院のどちらを選ぶか迷う方は、老健と介護医療院の違いを比べた解説もあわせてご覧ください。
まとめ
この記事のポイント
- 令和7年(2025年)8月1日から、老健の「その他型」「療養型」と介護医療院II型の多床室が対象で、基準費用額は437円から697円(+260円/日、月約8,000円相当)になりました。
- 補足給付の対象(第1〜3段階)は、令和7年8月の室料負担の導入そのものでは、基準費用額の増加分が補足給付で補われます。
- 令和8年8月の別の改定で、第3段階②の負担限度額は430円から530円/日(約+3,000円/月)になりました。
- 食費の基準費用額も、令和8年8月に1,445円から1,545円になりました。
- 対象外は個室・ユニット型、老健の超強化型ほか、介護医療院I型、特養です。今後は令和9年度改定に向けて検討中で、制度は変わりうるため、施設と市区町村に確認してください。
次にすること
- 入所前:施設に、対象の類型・部屋か、居住費の日額はいくらかを確認し、市区町村で所得段階を確認する。
- 入所中:請求書の居住費欄と、施設からの通知を見て、確認した日額と合っているかを確かめる。