お泊まりデイとは、通所介護(デイサービス)などの事業所の設備を使い、夜間・深夜に宿泊を伴う日常生活上の世話を行うサービスの通称です。介護保険の給付対象である指定通所介護などとは別のサービスとして扱われ、費用は全額が利用者負担で、事業所には自治体への届出が求められています。
この記事では、厚生労働省の指針と各自治体の公開情報にもとづき、制度の位置づけ、費用、利用できる期間、ショートステイなどとの違いを先に整理し、そのうえで届出や人員・設備の基準、契約前に確認したい点を説明します。特定の事業所の評価や比較は行いません。
お泊まりデイとは
まず、言葉の意味と、サービスを提供する事業者、よくある誤解を整理します。
定義と対象範囲
お泊まりデイは法令上の正式な名称ではなく、一般に使われる通称です。厚生労働省の指針や自治体のページでは「宿泊サービス」と表現されることが多く、通所介護(デイサービス)事業所などが、日中のサービス提供に使っている設備を利用して、夜間・深夜に宿泊のサービスを提供するものを指します。ここでいう宿泊のサービスは、介護保険の指定を受けて行う通所介護などとは別枠のものです。
夜間・深夜のサービスには、排せつや食事の介助など、日常生活上の世話が含まれます。つまり、日中はデイサービスとして通い、そのまま夜も同じ建物で過ごすというイメージです。
このサービスは、介護保険法にもとづく指定サービスそのものではなく、事業所が自主的に行ういわゆる保険外サービスの一つとして位置づけられています。そのため、同じデイサービスという名前の事業所でも、宿泊サービスを行っている事業所と行っていない事業所があります。気になる事業所があれば、まず宿泊サービスを実施しているかどうかを確認するところから始めます。
誰が提供するのか
宿泊サービスを提供するのは、通所介護事業所などの運営法人です。デイサービスの仕組みそのものは、デイサービスについて解説した記事で整理しています。
三重県の説明では、宿泊サービスは、その事業所と契約済みの利用者が既存の通所介護のスペースを使う場合に限られるとされています。ただし、自治体や事業所によって扱いが異なることも考えられるため、現在デイサービスを使っていない場合は、利用できるかどうかを事業所と、お住まいの自治体の担当課に確認してください。
どの事業所が宿泊サービスを行っているかは、自治体が届出の情報を公表している場合があります。公表の状況は「届出制度と自治体の公表」の章で整理します。
よくある誤解
よくある誤解の一つは、「デイサービスの延長なので介護保険が使える」という理解です。宿泊サービスは介護保険の給付対象外で、費用は全額が自己負担になります。詳しくは次の章で説明します。
もう一つは、「施設に入所できるまでのつなぎとして、長く泊まれる」という誤解です。宿泊サービスは緊急時または短期的な利用が前提とされています。利用できる期間の考え方は「利用できる場面と期間の考え方」の章で説明します。
また、「届出をしていれば内容は国が審査して認めている」と受け取られることがありますが、届出の意味は異なります。この点は「注意点・よくある誤解」の章でまとめています。
介護保険の対象外(全額自己負担)という位置づけ
利用を考えるとき、最初に気になるのは費用です。ここでは、保険の扱いと、費用の説明を事業所からどう受けるかを説明します。
保険給付の対象にならない理由
厚生労働省の指針では、通所介護事業所等の設備を使って夜間・深夜に提供するサービスは、指定通所介護等以外のサービスとして扱われ、介護保険の給付対象外です。事業所の自主事業であり、費用は利用者が全額を負担します。
三重県の説明でも、宿泊サービスは保険外の独立した事業で、通所介護とは別に利用料がかかるとされています。つまり、日中のデイサービスは介護保険の給付対象でも、夜間の宿泊部分は別の契約・別の料金になります。
なお、介護保険では要介護度ごとに、保険で利用できるサービス量の上限(区分支給限度基準額)が決められています。宿泊サービスは給付の対象外のため、全額自己負担となります。
保険内のサービスと保険外のサービスを組み合わせて利用する場合は、ケアプランの中でどこまでが保険内なのかを分けて把握しておくと、請求書を見たときに戸惑いにくくなります。
延長加算との関係
通所介護の延長加算は、平成27年度の改定で見直され、実態として事業所の設備に宿泊する場合は算定できないと整理されました(社会保障審議会介護給付費分科会 第141回の資料)。宿泊の時間帯は、介護報酬とは別の扱いになります。
費用は重要事項として説明を受ける
宿泊サービスの利用料は、全国共通の公定価格ではありません。事業所ごとに設定され、運営規程(事業所の運営のルールをまとめた書類)や重要事項説明書(料金や運営の方針などを契約前に説明する書面)で定められます。指針では、利用料を含む重要事項について、利用者や家族へ説明したうえで書面を交付することが求められています。
1泊あたりの金額について、公的機関が示している統計は確認できていないため、この記事では金額の相場は示しません。実際の金額は、検討している事業所の重要事項説明書で、食事代などの内訳を含めて確認してください。
確認するときは、1泊あたりの合計額だけでなく、何が含まれていて何が別料金なのか、キャンセルや日程の変更があったときの扱いはどうなるのかも、書面で見せてもらうと安心です。全額自己負担のため、泊まる日数が増えるほど総額も大きくなります。見込みの総額を事前に尋ねておくと、あとで想定外の請求に驚くことを避けられます。
利用できる場面と期間の考え方
次に、どのような場面で使われ、何日くらいまでが想定されているのかを、指針の記載にそって見ていきます。
どのような場面で使われるか
厚生労働省の指針は、宿泊サービスの利用を、家族の疾病や冠婚葬祭、利用者本人の心身の状況などにより、居宅での生活に支障がある場合などの緊急時または短期的な利用に限るとしています。長期の居住の場としては位置づけられていません。
たとえば、介護をしている家族が急に入院した、親戚の葬儀で数日家を空ける必要がある、本人の体調が不安定で夜間に家族だけでは対応が難しい、といった場面が考えられます。計画的に長期間利用することは想定されていません。
おおむね4日以上の連続利用と宿泊サービス計画
おおむね4日以上連続して利用する見込みがある利用者については、居宅介護支援事業者(ケアマネジャーが所属し、ケアプランを作成する事業所)などと連携して、宿泊サービス計画を作成することが指針に示されています。
計画の目的は、宿泊中の過ごし方や必要な支援を整理し、日中のデイサービスやケアプラン全体と食い違いが起きないようにすることです。短期間であっても、体調や服薬、食事の形態、夜間の様子などを事前に共有しておくことが大切です。
連続利用が見込まれる場合の考え方
指針は、連続した利用が予定される場合には、他の介護保険サービスへの変更も検討することを求めています。宿泊が長引きそうなときは、保険内のサービスを組み立て直せないか、ケアマネジャーに相談するのが基本です。
何日までなら泊まれるのかは、読者のかたが最も知りたい点の一つです。全国一律の日数の上限は、指針には示されていません。自治体によっては運用の目安を示している例があり、京都市は連続7日以内(特例の場合は14日まで)という運用です。これは京都市の運用であり、全国共通のルールではないため、お住まいの自治体と事業所に確認してください。
ショートステイ・小規模多機能との違い
宿泊を伴うサービスは、お泊まりデイのほかにもあります。制度上の位置づけの違いを、介護保険のサービスと並べて整理します。
短期入所生活介護(ショートステイ)との違い
短期入所生活介護は、介護保険の給付対象となるサービスです。宇都宮市の案内では、連続して利用できるのは30日が上限とされ、31日目以降は全額自己負担になります。また、利用日数は要介護認定の有効期間のおおむね半数までが目安とされています。例外として、市への事前協議・届出で認められる場合があります。
一方、お泊まりデイは給付の対象ではなく、全額自己負担です。介護保険の枠を使いたいときはショートステイ、というように、まず制度上の位置づけが異なります。ショートステイの仕組みは、短期入所生活介護の解説記事で詳しく説明しています。
小規模多機能型居宅介護の宿泊との違い
小規模多機能型居宅介護は、通い・訪問・宿泊を組み合わせて提供する介護保険のサービスです。介護サービス情報公表システムの説明では、宿泊の定員は事業所ごとに1日9人以内で、利用できるのは基本的に登録者とされています。
登録者以外が短期間だけ利用する仕組み(短期利用)もあり、期間は7日間、やむを得ない場合は14日間までとされていますが、実施するかどうかは事業所によって異なります。仕組みの全体像は、小規模多機能型居宅介護の解説記事をご覧ください。
3つの違いを整理する
ここまでの内容を、給付、費用負担、期間の目安、対象者の4つの観点で表にまとめます。
| 観点 | お泊まりデイ | ショートステイ | 小規模多機能型居宅介護 |
|---|---|---|---|
| 給付 | 介護保険の給付対象外 | 介護保険の給付対象 | 介護保険のサービス |
| 費用負担 | 全額自己負担 | 宇都宮市の例では、連続30日を超える31日目以降は全額自己負担 | この記事では金額を扱いません(事業所や自治体で確認) |
| 期間の目安 | 緊急時または短期的な利用に限る。全国一律の日数の上限は指針に示されていない | 宇都宮市の例では連続30日が上限、認定期間のおおむね半数まで | 宿泊定員は1日9人以内。登録者以外の短期利用は7日間(やむを得ない場合14日間) |
| 対象者 | 三重県の説明では、その事業所と契約済みの利用者 | この記事では扱いません(ケアマネジャーに確認) | 基本は登録者。登録者以外の短期利用は事業所により実施が異なる |
どのサービスが家庭の状況に合うかは、要介護度、家族の状況、利用したい期間などによって変わります。比較して優劣をつけるものではなく、目的に応じて組み合わせを考えるものです。
状況別の目安
あくまで目安ですが、状況ごとに考え方を整理すると、次のようになります。
- 緊急時や短期的な利用が必要な場合:指針は、宿泊サービスを緊急時または短期的な利用に限るとしています(費用は全額自己負担です)
- 連続した利用が見込まれる場合:指針では、他の介護保険サービスへの変更も検討するとされています
- 通いと泊まりを組み合わせたい場合:通い・訪問・宿泊を組み合わせる介護保険のサービスとして、小規模多機能型居宅介護があります
どれが合うかは本人の状態や地域の事業所の状況で変わりますので、断定はできません。迷ったときは、担当のケアマネジャーに相談してください。
届出制度(2015年4月〜)と自治体の公表
宿泊サービスには届出の仕組みがあります。ここからは、制度の経緯、届出先、時期、自治体の公表について、家族が知っておきたい範囲で説明します。
届出制度の開始と目的
宿泊サービスは、もともと法令上の位置づけがないまま各地で広がった経緯があります。そこで平成27年(2015年)4月から、運営基準の見直しの中で「夜間及び深夜のサービスの運営基準の厳格化」として、届出と事故報告の仕組みが設けられました。
同じ時期の平成27年4月30日付けで、厚生労働省から宿泊サービスの提供に当たっての指針が示されています。事業所は、この指針や自治体の定めに沿って運営することになります。
届出先と自治体の窓口
届出先は、通所介護事業所を指定している指定権者(事業所を指定した都道府県や市のこと)です。都道府県、政令指定都市、中核市が指定権者となるのが一般的で、地域密着型通所介護の場合は市町村になります。
窓口の名前は自治体ごとに違い、たとえば千葉県は高齢者福祉課、名古屋市は介護事業者指定指導センターが案内されています。家族が窓口名を覚える必要はありません。お住まいの自治体名に「宿泊サービス 届出」と加えて検索し、情報が見つからなければ、介護保険の担当課に電話で尋ねるのが近道です。
届出の時期と必要書類
届出の時期は、名古屋市・愛知県・愛媛県などの案内で共通しています。
開始は提供開始前、変更は事由が生じてから10日以内、休止・廃止は1か月前に届け出ます。
提出する書類は自治体によって異なり、次のようなものが挙げられています。
- 届出書と付表
- 平面図
- 運営規程
- 従業者名簿
- 写真
- 苦情処理の体制を示す書類
- 消防関連の書類
これらは事業所が行う手続きです。届出状況は事業所に確認できる事項ですので、気になる場合は「どの自治体に、いつ届出をしていますか」と尋ねてみてください。
自治体による届出事業所の公表
届出のあった事業所について、一覧を公表している自治体があります。公表の時点や形式は自治体ごとに異なり、たとえば次のような例があります。
| 自治体 | 公表の内容 |
|---|---|
| 東京都 | 令和8年4月1日時点で、都が所管する分の事業所を公表 |
| 埼玉県 | 令和8年4月時点の届出情報(Excel形式)を公表 |
| 京都市 | 事業所の一覧と、令和7年度の実施状況の報告を公表 |
公表の時点は自治体ごとに違い、更新の頻度もさまざまです。最新の状況は、該当する自治体のページや窓口で確認してください。全国で宿泊サービスを届け出ている事業所の総数について、この記事で引用できる統計は確認できていません。
厚労省指針の基準(人員・設備・定員・7.43㎡)
指針には、夜間の職員配置や宿泊室の広さなどの基準が示されています。数値の意味と、利用者側が確認したい点をあわせて説明します。
人員に関する基準
厚生労働省の指針では、宿泊サービスを提供している時間中、介護職員または看護職員を常時1名以上配置することが基本とされています。
東京都の案内では、宿泊サービスを提供している時間は、通所介護の人員基準で用いる常勤換算(職員の勤務時間を、常勤職員の人数に置き換えて数える方法)の勤務時間に算入できないとされています。日中のデイサービスの職員体制と、夜間の宿泊の職員体制は、別の枠で考える必要があるということです。
休憩時や、複数の利用者に同時に対応が必要になったときの体制は、事業所に確認する項目です。見学や面談の際に、夜間の職員の人数と役割を具体的に尋ねてください。
利用定員と宿泊室の広さ
設備面では、宿泊サービスの利用定員は、その事業所の通所介護の利用定員の2分の1以下で、かつ9人以下とされています。
宿泊室の床面積は、利用者1人につき7.43㎡以上が基本です。京都市の説明でも同じ数値が示されています。
このほかに、パーテーションなどを使ってプライバシーを確保すること、男女が同じ部屋になる場合は処遇上必要な場合を除いて配慮することが求められています。
消防・防災に関する基準
指針では、消防法令上必要とされる設備を整えることが求められます。東京都の案内によれば、月に5日以上宿泊サービスを提供する事業所では、スプリンクラーや火災報知設備の設置が必要とされています。
埼玉県が示している改正後の指針には、非常災害時に備えた物資の備蓄に努めることも盛り込まれています。夜間の避難方法や訓練の実施状況は、チェックリストの章で確認点として挙げています。
自治体ごとの運用の違い
国の指針をもとに、各都道府県や市が独自の指針や運用の目安を定めている場合があります。愛知県は最終改正を令和元年1月1日と記載しており、埼玉県は改正後の指針を公表しています。
前の章で触れた京都市の日数の目安のように、同じ内容でも地域によって扱いが異なる可能性があります。お住まいの自治体の情報を確認してください。
利用前に確認したい点(チェックリスト)
ここまでの内容を、契約前に事業所へ尋ねる項目に落とし込みます。メモにして、見学や面談の際に持参すると便利です。
契約・届出まわりの確認
利用を検討する際、最初に確認したいのは、その事業所が自治体に宿泊サービスの届出をしているかどうかです。自治体のページで一覧が公表されている場合は、そこに載っているかを確認できます。載っていない場合でも、公表の時点が古いだけの可能性があるため、事業所に直接尋ねる方法もあります。
- 自治体へ届出済みか、届出先はどこか
- 運営規程と重要事項説明書の交付を受けたか
- 利用料(宿泊代、食事代、その他の費用)の内訳と支払い方法
- キャンセルや急な延長が生じた場合の取り扱い
- 苦情を申し出る窓口はどこか
指針では、事業所内に運営規程の概要、責任者の氏名、勤務体制、苦情処理の概要、避難経路などを掲示することが求められています。介護サービス情報公表システムへの報告も求められている旨が、茨城県・三重県の案内に記載されています。見学の際に、掲示の状況を確認するのも一つの方法です。
設備・人員の確認
次に、設備と人員の確認です。基準として示されている数値と照らし合わせて、次の点を尋ねてみてください。
- 宿泊の利用定員は、通所介護の定員の2分の1以下かつ9人以下になっているか
- 宿泊室は1人あたり7.43㎡以上あるか、パーテーションなどでプライバシーが確保されているか
- 夜間の職員は介護職員または看護職員が常時1名以上いるか、休憩時や同時対応時の体制はどうなっているか
- スプリンクラーや火災報知設備など、消防設備はどう整備されているか
- 夜間の避難方法と、訓練の実施状況
見学で実際の宿泊室を見せてもらえるか尋ねてみると、広さやトイレまでの動線、夜間の照明の状況などを具体的に把握できます。
本人の状態に関する確認
本人の状態に関する情報も、事前に正確に共有しておく必要があります。持病や服薬の内容、アレルギー、食事の形態(刻み食・とろみなど)、夜間の排せつの回数、徘徊や不眠の有無、転倒歴などが該当します。認知症のある方の受け入れの可否や体制は、事業所に確認が必要です。本人の様子を具体的に伝えて、対応できるかを尋ねてください。
かかりつけ医(主治医)の連絡先も大切な情報です。緊急時には、主治医または協力医療機関(事業所が緊急時などに連携する医療機関)に連絡する流れが指針に示されているためです。
本人が環境の変化に不安を感じやすい場合は、いきなり宿泊を始めるのではなく、日中の通所に慣れたうえで、短時間から様子を見るなど、段階を踏むことも考えられます。具体的な進め方は、ケアマネジャーや事業所と話し合って決めてください。
事故・緊急時対応と家族ができること
夜間は職員の人数が限られるため、万一のときにどう動くのかを事前に知っておくことが大切です。指針に示された流れと、家族側の備えを説明します。
緊急時の対応の流れ
指針では、利用者の体調が急変するなど緊急時には、主治医または協力医療機関へ連絡するなどの対応を取ることが示されています。事前に、緊急時の連絡先の優先順位や、救急搬送が必要になった場合の対応を事業所と確認しておくことが重要です。
家族側も、夜間でも連絡がつく電話番号を事業所に伝えておく、マイナンバーカードや保険証、お薬手帳、既往歴の情報をすぐ出せるようにしておく、といった備えが考えられます。
事故が起きた場合の記録と報告
事故が起きた場合、事業所は事故の状況と、そのときに取った処置を記録し、市町村、家族、居宅介護支援事業者等へ連絡することが指針に示されています。記録は、サービス提供が完結した日から2年間保存することが求められています。
事故報告の仕組みは、前述の届出制度と同時期に整えられたものです。事故が起きた場合にどのような連絡が自分たちに届くのか、事前に確認しておくと安心です。
自治体が把握している状況の例
東久留米市の公開情報では、市内の5事業所が宿泊サービスを実施していること、これまでに消防設備の不備や、転倒事故の報告があったことが掲載されています。
これは一つの自治体の例であり、全体の傾向とは言えません。家族としては、夜間のトイレ介助の体制や、居室から廊下までの段差・照明の状況を、見学の際に事業所へ確認しておくとよいでしょう。
家族ができること
家族ができることは、日常のようすを正確に伝えること、緊急連絡先を確保すること、利用後に本人から話を聞いて気になる点を事業所やケアマネジャーに伝えることです。
不安や疑問があれば、ためらわずに事業所の苦情・相談窓口に伝えてください。事業所で解決しない場合は、自治体の担当課や、後述する相談窓口に相談する方法があります。
利用の流れと相談先
実際に利用するときの一般的な順序と、困ったときの相談先をまとめます。
一般的な利用の流れ
利用の流れは事業所によって異なりますが、指針や自治体の案内から、おおむね次のような順序が考えられます。
- ケアマネジャーに宿泊の必要性と時期を相談する
- 通所介護を利用している事業所に、宿泊サービスの実施有無と空きの状況を尋ねる
- 事業所から運営規程・重要事項説明書の説明を受け、宿泊サービスの契約を結ぶ
- おおむね4日以上連続する見込みの場合は、居宅介護支援事業者等と連携して宿泊サービス計画を作成することが指針に示されている
- 利用開始。利用後は、様子を家族とケアマネジャーに共有してもらう
事業所の運用により、事前の体験や面談が必要になる場合もあります。また、宿泊の日程が決まったら、利用開始日・終了日、送迎の有無、持ち物(着替え、常用薬、日用品など)、緊急時の連絡先を書面で確認しておくと、当日の行き違いを防げます。宿泊中に体調の変化があった場合の連絡方法や、利用後に受け取る報告の形(連絡帳、電話など)も、あらかじめ事業所と決めておくと安心です。
ケアマネジャーへの相談
相談先の基本は、担当のケアマネジャーです。ケアマネジャーの役割は、ケアマネジャーについて解説した記事で説明しています。ケアプランの全体を把握しているため、保険内のサービスと保険外の宿泊サービスをどう組み合わせるか、連続利用になるなら他のサービスに切り替えられないか、といった点を整理してくれます。
まだケアマネジャーがついていない場合は、後述の地域包括支援センターで相談できます。
自治体の担当課・地域包括支援センター
制度や届出に関する相談は、自治体の担当課でも受け付けています。たとえば、埼玉県では高齢者福祉課、京都市では介護ケア推進課が案内されています。事業所の運営について疑問がある場合や、届出の有無を確認したい場合に利用できます。
介護全般の入り口としては、地域包括支援センターがあります。要介護認定の申請前でも相談でき、必要なサービスを一緒に整理してもらえます。お住まいの地域を担当する窓口は、市区町村の高齢者福祉の担当課や公式サイトで確認できます。
注意点・よくある誤解
最後に、利用を検討するうえで取り違えやすい点と、情報の見方をまとめます。
長期の滞在先としては位置づけられていない
宿泊サービスは緊急時または短期的な利用が前提です。介護の負担が大きく、長く預けたいという場合は、保険内の施設サービスや、ショートステイ、小規模多機能型居宅介護などを含め、ケアマネジャーと相談してください。連続して利用すると全額自己負担の総額がかさむ点にも注意が必要です。
「届出済み」は質の保証ではない
届出は、事業所が自治体に内容を知らせる手続きで、基準に適合していることを自治体が認めたものではありません。そのため、届出がされていることだけで、サービスの質や安全が保証されるわけではありません。実際の運営は、見学や面談、重要事項説明を通じて確認するのが現実的です。
自治体のページにある一覧は、公表時点の情報です。事業所の休止や廃止、内容の変更が反映されていない可能性もあります。
制度は変わることがあります
介護保険制度は見直されることがあります。直近では令和6年度の介護報酬改定が令和6年4月1日(一部は6月1日)に施行されました。宿泊サービスの指針についても、国や自治体が改正を行う可能性があります。
この記事の内容は、2026年10月時点で確認できた公開情報にもとづいています。最新の基準や手続きは、必ず厚生労働省や、お住まいの自治体の公式ページ、窓口で確認してください。
この記事の立ち位置
かいごの窓は、特定の事業所や施設を評価したり、順位をつけたりしない方針で運営しています。この記事も、制度の仕組みを公的な情報にもとづいて整理するものです。サイトの編集方針はこのサイトの立ち位置で説明しています。
まとめ
ここまでの内容を、要点と次の一歩に絞って振り返ります。
この記事のポイント
- お泊まりデイ(宿泊サービス)は、通所介護事業所等の設備を使う夜間・深夜の保険外サービスで、介護保険の給付対象外・全額自己負担
- 利用は緊急時または短期的な利用に限られ、おおむね4日以上の連続利用が見込まれる場合は宿泊サービス計画を作成し、他の介護保険サービスへの変更も検討する
- 平成27年4月から届出と事故報告の仕組みがある。基準は、夜間は介護職員または看護職員を常時1名以上、定員は通所介護定員の2分の1以下かつ9人以下、居室は1人7.43㎡以上が基本
- 契約前に、届出の状況、重要事項説明書、夜間の職員体制を確認する
- 相談の基本はケアマネジャー。制度は変わりうるため、最新情報は厚労省・自治体の公式情報で確認する
宿泊サービスは、家族に急な事情が生じたときなどの選択肢の一つです。制度の位置づけと確認すべき点を押さえたうえで、ケアマネジャーや自治体の窓口に相談しながら、ご本人と家族に合った方法を考えてください。
次に確認したいこと
まずは担当のケアマネジャーに、宿泊の必要性と時期を伝えて相談し、制度や基準は改定で変わることがあるため、最終的な判断の前には自治体の公式ページ・窓口で最新の情報を確認してください。