認知症カフェとは、認知症の人とその家族、地域住民、専門職などが気軽に集い、お茶を飲みながら交流できる場のことです。介護保険サービスではないため要介護認定や申請は不要で、参加費も平均177円程度と低く抑えられています。全国には2021年時点で7,904か所設置されており、月1回程度の頻度で開かれるのが主流です。本記事では、認知症カフェの定義や運営主体、参加費用、利用方法、そして地域包括支援センターなど類似の相談窓口との違いを、厚生労働省の調査データにもとづいて解説します。
認知症カフェとは何か
定義と目的
認知症カフェは、認知症の人やその家族が孤立せず、地域の中で安心して過ごせる場所をつくることを目的とした取り組みです。厚生労働省が公表しているリーフレット「私たちの認知症カフェ」では、認知症カフェを、認知症の人とその家族、地域住民、専門職などが集い、お茶や食事を楽しみながら交流し、情報交換や相談ができる場として紹介しています(出典1)。カフェという名称のとおり、堅苦しい会議室のような雰囲気ではなく、誰でも立ち寄りやすい喫茶店のような雰囲気で運営されているのが特徴です。
認知症の診断を受けたばかりの人やその家族にとって、同じ立場の人と話せる場所があることは、不安の軽減につながります。また地域住民が参加することで、認知症についての理解を深める機会にもなっています。
介護保険サービスではない任意事業
訪問介護やデイサービスとは異なり、認知症カフェは介護保険給付サービスではありません。厚生労働省のリーフレットでも、認知症カフェの利用に要介護認定やケアプランは必要ないことが明記されています(出典1)。制度上は、市町村が実施する地域支援事業のうち「認知症総合支援事業」に位置づけられているのが一般的です。たとえば茨城県小美玉市の実施要綱では、認知症カフェの運営が同事業の一環として定められています(出典4)。ただしこれは一自治体の実施例であり、事業の細かな位置づけ方は市町村によって異なる場合があります。認知症総合支援事業は市町村が地域の実情に応じて実施する事業であり、認知症カフェのほか、認知症初期集中支援チームの設置なども含まれます。
介護保険サービスではないぶん、利用にあたって費用の1〜3割負担といった仕組みは適用されず、後述するとおり実費相当の少額の参加費のみで参加できる場になっています。
誰が運営しているのか
地域包括支援センターが最多
認知症介護研究・研修仙台センターが2023年3月にまとめた「認知症カフェの類型と効果に関する調査研究 報告書」は、全国の認知症カフェ運営者3,659件を対象とした調査結果をまとめています(出典2)。この調査によると、運営主体として最も多いのは地域包括支援センターで全体の39%を占めています。地域包括支援センターは高齢者の総合相談窓口として市町村ごとに設置されている機関で、認知症カフェの運営を担うケースが最も多い実態がうかがえます。地域包括支援センターが運営することで、カフェで交流した家族がそのまま介護保険の申請や他の相談窓口の案内につながりやすいという利点もあります。
次いで多いのが市区町村の認知症担当課で15.2%となっており、行政が直接運営に関わっているケースも一定数あることが分かります。
NPOや医療・介護事業所などその他の主体
同調査では、地域包括支援センターや市区町村の担当課以外にも、グループホーム(10.7%)をはじめ、さまざまな主体が認知症カフェを運営していることが示されています(出典2)。主なものは以下のとおりです。
- 社会福祉法人
- NPO法人
- 医療機関
- 居宅介護支援事業所
- 介護老人保健施設
埼玉県や兵庫県、横浜市などの自治体ページでも、地域包括支援センターのほか、医療機関や介護事業所、住民ボランティア団体などが運営する認知症カフェの存在が紹介されています(出典3、5、6)。
運営者ごとに得意分野は異なり、医療機関が運営するカフェでは医師や看護師による相談対応がしやすく、地域包括支援センターが運営するカフェでは介護サービス全般の相談につなげやすいといった傾向があります。ただし、いずれの運営主体であっても、認知症カフェそのものは相談・診断・治療を行う専門機関ではなく、あくまで交流と情報提供の場という位置づけである点は共通しています。
出典2「認知症カフェの類型と効果に関する調査研究 報告書」(認知症介護研究・研修仙台センター、運営者3,659件調査)をもとに作成。「その他」は地域包括支援センター39%・市区町村の認知症担当課15.2%・グループホーム10.7%を除いた残りの内訳。
対象者は誰か
認知症の本人・家族
認知症カフェの主な対象は、認知症の診断を受けた本人と、その家族です。診断直後で今後の生活に不安を抱えている家族が、同じ立場の人と経験を共有できる場として利用されるケースが多く見られます。厚生労働省のリーフレットでも、認知症カフェは本人と家族が気軽に参加できる場であることが強調されています(出典1)。
本人にとっては、外出の機会や役割を持てる場として、家族にとっては、日々の介護の悩みを話せる場として、それぞれ異なる意味を持つのが認知症カフェの特徴です。
地域住民・専門職も参加できる
本人・家族に限定されないのも、認知症カフェの大きな特徴です。前出の調査研究報告書によると、参加対象を「誰でも参加可」としているカフェは全体の89.2%にのぼります(出典2)。つまり、多くの認知症カフェは、認知症とは直接関係のない地域住民でも自由に参加できる開かれた場として運営されています。
また、地域包括支援センターの職員やケアマネジャー、医療・介護の専門職がスタッフやボランティアとして参加していることも多く、専門的な相談がしたい場合に声をかけやすい環境が整っているカフェもあります。ただし、専門職が常駐しているかどうかはカフェごとに異なるため、詳しい相談を希望する場合は事前に運営主体へ確認することが望ましいでしょう。
開催頻度・時間・場所
月1回開催が主流
前出の調査研究報告書によると、認知症カフェの開催頻度で最も多いのは「月1回」で全体の72.3%を占めています(出典2)。週1回以上の高頻度で開催しているカフェは少数派で、多くのカフェは月に一度、決まった曜日・時間帯に開催されるスタイルをとっています。
そのため、参加を希望する場合は、自分の地域のカフェがいつ開催されているかを事前に確認しておく必要があります。開催日が毎月変動する場合もあるため、最新の開催情報は運営主体の窓口やホームページで確認するのが確実です。
開催場所の傾向
開催場所は、地域包括支援センターの併設スペース、公民館、介護施設の交流スペース、医療機関のロビー、さらには一般の喫茶店の一角を借りて開催されるケースまで多岐にわたります。埼玉県や横浜市の紹介ページでも、地域の集会所や高齢者福祉施設など、身近な場所で開催されている事例が紹介されています(出典3、6)。
自宅から通いやすい場所で開催されていることが多いため、まずは自分が住んでいる市区町村や地域包括支援センターの圏域にどのようなカフェがあるかを確認するとよいでしょう。
時間帯についても、平日の午後に2時間程度開催されるケースが多く見られますが、土曜日や日曜日に開催することで、平日は仕事のある家族も参加しやすいよう工夫しているカフェもあります。開催曜日・時間帯・場所はいずれも運営主体の判断によるため、決まった形式はなく、地域の実情に合わせて柔軟に設定されているのが実態です。
参加費用の目安
平均177円、最頻値は100円
認知症カフェの参加費用について、前出の調査研究報告書では、有料で運営しているカフェが全体の59.3%、無料で運営しているカフェが40.7%という結果が示されています(出典2)。有料カフェも含めた参加費の平均は177.1円で、金額として最も多い(最頻値)のは100円となっています。介護保険サービスのような1〜3割負担の仕組みとは異なり、飲み物代やお菓子代に相当する実費程度の少額負担にとどまっているのが特徴です。
大田区の紹介ページでも、参加費は飲み物代など実費程度であることが案内されており(出典7)、一部自治体の案内でも同様の傾向が見られます。介護保険サービスの利用料(1〜3割の自己負担)と比較すると、認知症カフェの参加費は数百円以内に収まる場合がほとんどで、経済的な負担を気にせず繰り返し参加しやすい仕組みになっています。
無料カフェもある
調査結果のとおり、参加費が無料のカフェも全体の4割程度を占めています(出典2)。国立市の「くに梅カフェ」のように、参加費無料・申込不要で運営されている例もあります(出典9)。無料か有料か、有料の場合の金額はカフェによって異なるため、参加を検討する際は事前に運営主体へ確認しておくと安心です。無料で運営できている背景には、自治体からの運営費補助や、会場を公共施設の一室として無償で借りられていることなどがあると考えられ、地域によって費用構造は一様ではありません。
プログラム内容の例
お茶を飲みながらの交流
お茶や軽食を楽しみながら自由に会話をする「カフェタイム」が、認知症カフェの基本的なプログラムです。前出の調査研究報告書によると、カフェタイムを実施しているカフェは全体の70.7%にのぼり、最も一般的なプログラムであることが分かります(出典2)。決まったプログラムがなく、参加者同士が自由に会話を交わす時間を中心に据えているカフェも少なくありません。
ミニ講話や認知症予防の取り組み
カフェタイムに加えて、体操や手芸、音楽演奏などの「アクティビティ」を取り入れているカフェは69%、医療・介護の専門職による「ミニ講話」を実施しているカフェは54.4%にのぼります(出典2)。ミニ講話では、認知症の基礎知識や介護保険制度の使い方、認知症予防に関する情報などが提供されることが多く、参加者が制度や病気について理解を深める機会にもなっています。
プログラムの内容や頻度はカフェごとに異なるため、興味のある内容を実施しているカフェを事前に調べておくと、より有意義に参加できるでしょう。
このほか、認知症の人が趣味や特技を発揮できる場として、絵画や書道、園芸などの創作活動を取り入れているカフェもあります。また、家族向けに介護保険サービスの利用方法や、地域で受けられる相談窓口の情報を提供するコーナーを設けているカフェも見られます。プログラムを固定せず、参加者同士の自由な会話を重視する運営方針をとっているカフェも多く、堅苦しさを感じさせない雰囲気づくりが共通した特徴となっています。
利用方法・探し方
申し込みは原則不要
認知症カフェの多くは、事前の申し込みや予約が不要で、開催日時に会場を訪れればそのまま参加できます。厚生労働省のリーフレットでも、認知症カフェは申込不要で気軽に立ち寄れる場であることが案内されています(出典1)。国立市の「くに梅カフェ」も申込不要で運営されている例です(出典9)。
ただし、すべてのカフェが予約不要というわけではありません。松本市の認知症カフェの案内のように、事前予約制で運営されているカフェも存在します(出典11)。参加人数の管理や会場の都合によって予約制をとっているケースもあるため、初めて参加する際は、念のため運営主体(地域包括支援センターなど)に開催状況を確認してから訪れると安心です。
近くのカフェの探し方
自分の地域の認知症カフェを探す方法としては、まず居住地の市区町村や都道府県が公開している認知症カフェの一覧・紹介ページを確認する方法があります。埼玉県、兵庫県、横浜市、大田区、入間市など、多くの自治体が認知症カフェの開催情報をホームページで公開しています(出典3、5、6、7、8)。また、最寄りの地域包括支援センターに問い合わせることでも、近隣のカフェの開催状況を教えてもらえます。地域包括支援センターの探し方については、地域包括支援センターとはで詳しく解説しています。
自治体によっては、認知症カフェの一覧をマップ形式で公開しているところもあるため、住んでいる地域名と「認知症カフェ」で検索し、公的機関のページから情報を確認するのが確実な方法です。
全国の設置状況
2021年時点で7,904か所
認知症介護研究・研修仙台センターの調査研究報告書によると、全国の認知症カフェの設置数は、2019年度末時点で7,988か所でした(出典2)。その後、2020年度末には7,737か所まで減少しましたが、2021年時点では7,904か所まで持ち直しています(出典2)。全国の市区町村数(1,700余り)と比較すると、多くの地域で1か所以上の認知症カフェが設置されている計算になり、身近な地域資源として広く展開されていることが分かります。
出典2「認知症カフェの類型と効果に関する調査研究 報告書」(認知症介護研究・研修仙台センター)の設置数調査をもとに作成。
コロナ禍で一時減少した経緯
設置数が2019年度末から2020年度末にかけて7,988か所から7,737か所へ減少したのは、新型コロナウイルス感染症の拡大により、対面での交流を前提とする認知症カフェの開催が各地で見合わせられたことが背景にあると考えられます(出典2)。感染対策の観点から一時的に休止や規模縮小を余儀なくされたカフェが多かったものの、2021年には7,904か所まで回復しており、感染状況を踏まえながら再開が進んだことがうかがえます。
設置数の推移をもとに単純計算すると、2019年度末から2020年度末にかけての落ち込みは全体の3%程度にとどまり、2021年には減少分を上回る水準まで回復しています。現在は多くのカフェが再開しているものの、開催状況には地域差があるため、実際に参加する際は最新の開催情報を運営主体や自治体のホームページで事前確認しておくことが欠かせません。
認知症初期集中支援チームなど類似制度との違い
認知症初期集中支援チーム
認知症に関する地域の支援策には、認知症カフェ以外にもいくつかの仕組みがあります。そのひとつが「認知症初期集中支援チーム」です。大阪府の紹介ページによると、認知症初期集中支援チームは、認知症が疑われる人や認知症の人、その家族を訪問し、状況の把握や助言、適切な医療・介護サービスにつなげるための支援を行うチームとされています(出典12)。認知症カフェが「誰でも立ち寄れる交流の場」であるのに対し、認知症初期集中支援チームは、専門職が個別に自宅を訪問し、早期の医療・介護導入を支援する仕組みという違いがあります。
認知症の症状が心配で医療や介護サービスにどうつなげたらよいか分からない場合は、認知症カフェで様子を見るだけでなく、地域包括支援センターを通じて認知症初期集中支援チームへの相談を検討するという選択肢もあります。
いきいきサロン・家族会との違い
高齢者向けの集いの場としては、認知症カフェのほかに「いきいきサロン」のような高齢者全般を対象とした交流の場や、認知症の人を介護する家族だけが集まる「家族会」もあります。認知症カフェ自体の定義は大阪府の紹介ページでも確認できます(出典13)。また大阪府の別の紹介ページでは、地域包括支援センター、家族支援団体がそれぞれ異なる役割を持つ相談・支援の入口として整理されています(出典12)。千葉県の相談窓口紹介ページでも、認知症カフェは交流会の一形態として、コールセンターなどの個別相談窓口とは異なる位置づけで案内されています(出典10)。
| 制度名 | 対象者 | 役割 |
|---|---|---|
| 認知症カフェ | 本人・家族・地域住民など誰でも | 気軽に集い交流・情報交換ができる場 |
| 家族会 | 認知症の人を介護する家族 | 介護家族同士で悩みを共有する場 |
| 地域包括支援センター | 高齢者本人・家族 | 制度利用や個別相談に対応する行政系の窓口 |
| 認知症初期集中支援チーム | 認知症が疑われる人・認知症の人とその家族 | 専門職が訪問し早期の医療・介護導入を支援 |
実際には、認知症カフェに参加した家族が、そこで知り合った専門職を通じて地域包括支援センターへの相談につながったり、地域包括支援センターの職員から認知症初期集中支援チームの利用を案内されたりするなど、それぞれの仕組みが単独で完結するのではなく、相互に連携しながら機能している面もあります。どの窓口から相談を始めればよいか迷う場合は、まず身近な地域包括支援センターに問い合わせることで、状況に応じた適切な窓口を案内してもらえます。
利用する際の注意点
認知症カフェは専門的な治療の場ではない
診断や治療を行う医療機関ではない点も、認知症カフェを利用するうえで押さえておきたいポイントです。ミニ講話や専門職の参加があるカフェもありますが、あくまで情報提供や交流が中心であり、個別の症状に対する診断や治療方針の決定は行われません。体調や症状について気になる点がある場合は、かかりつけ医や医療機関への受診、あるいは地域包括支援センターへの相談を通じて、専門的な対応につなげる必要があります。
また、認知症カフェは介護保険サービスではないため、ケアプランに組み込まれるものではありません。介護保険の枠外で利用できるサービスという意味では、介護保険外サービスとはで紹介している他の取り組みと共通する面もあります。
情報は変わることがある(制度改定の注意書き)
認知症カフェの運営状況や参加費、開催頻度は、地域や時期によって異なり、また介護保険制度は3年ごとに見直しが行われるため、関連する地域支援事業の内容が変更される可能性があります。本記事で紹介した参加費や設置数などの数値は、記事作成時点で公表されている厚生労働省の調査データにもとづくものです。実際に参加を検討する際は、最新の情報を市区町村や運営主体の窓口で確認することが重要です。
あわせて、認知症カフェの休止や再開の状況は、感染症の流行状況や地域の担い手の確保状況によっても左右されます。開催が不定期になっている場合や、一時的に休止しているカフェもあるため、初めて訪れる際には運営主体の窓口やホームページで直近の開催実績を確認しておくと、無駄足を防ぐことができます。
家族が一時的に介護から離れて休息を取りたい場合の制度については、レスパイトケアとはで解説しています。また、認知症の高齢者が外出先で行方不明になった場合に備える仕組みとして、認知症高齢者見守りSOSネットワークとはもあわせて確認しておくと安心です。
まとめ
- 認知症カフェは介護保険サービスではなく、要介護認定なしで誰でも参加できる交流の場である
- 運営主体は地域包括支援センターが39%と最多で、市区町村や介護事業所、NPOなども担っている
- 開催頻度は月1回が72.3%と主流で、参加費は平均177円、最頻値100円、無料のカフェも4割程度ある
- 多くは申込不要で参加できるが、予約制のカフェもあるため事前確認が望ましい
- 全国の設置数は2021年時点で7,904か所。認知症初期集中支援チームなど他の支援策とは役割が異なる
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