毎月給与や年金から天引きされる介護保険料が、なぜこの金額になっているのか、今後さらに上がっていくのか、疑問に思ったことはないでしょうか。介護保険の財源は、公費(税金)50%と、40歳以上が納める保険料50%で構成されています。公費50%はさらに国25%・都道府県12.5%・市町村12.5%に分かれ、保険料50%は65歳以上が負担する第1号保険料23%と、40〜64歳が負担する第2号保険料27%に分かれます。この記事では、それぞれの内訳と負担割合、調整交付金や財政安定化基金の役割、第2号保険料の徴収の仕組みまでを厚生労働省の資料にもとづいて解説します。介護保険制度は3年ごとの介護保険事業計画にあわせて数値が見直されるため、最新の公的情報とあわせて確認してください。
介護保険の財源構成とは(公費50%・保険料50%)
財源の全体像と総費用
介護保険制度は、介護サービスにかかる費用(給付費)を公費と保険料で折半して賄う仕組みです。厚生労働省老健局が公表する「介護保険制度の概要」によれば、介護保険の総費用は制度創設時の2000年度の約3.6兆円から大きく増加しており、高齢化の進行にともなって給付費・保険料双方の規模が拡大し続けています。財源構成そのものの割合(公費50%・保険料50%)は制度創設以来維持されていますが、総費用が増えれば、それに比例して国・自治体・被保険者それぞれの負担額も増える構造になっています。
利用者が介護サービスを利用する際に窓口で支払う自己負担(原則1割、所得に応じて2割・3割)は、この公費50%・保険料50%の枠外にある費用です。つまり、サービスにかかる費用全体のうち利用者負担分を除いた給付費部分が、公費と保険料で半分ずつ賄われていると理解すると整理しやすくなります。
公費と保険料で半分ずつ支える仕組み
公費50%は国・都道府県・市町村という3つの行政主体が分担し、保険料50%は65歳以上の第1号被保険者と40〜64歳の第2号被保険者が分担します。この「半分は税金、半分は保険料」という設計により、介護が必要な高齢者を社会全体で支えつつ、現役世代を含む幅広い層が制度の担い手になる仕組みが作られています。次章以降で、公費・保険料それぞれの内訳を具体的に見ていきます。
公費50%の内訳(国・都道府県・市町村)
国の負担25%(定率分20%+調整交付金5%)
公費50%のうち、国が負担するのは居宅給付費等(在宅サービス等の給付費)で25%です。この25%は、全国一律に配分される「定率分」20%と、自治体間の財政力格差を調整するために使われる「調整交付金」5%に分かれています。定率分はどの市町村にも等しく交付されますが、調整交付金は後期高齢者の加入割合や所得段階別の被保険者構成に応じて自治体ごとに交付額が変わる点が特徴です(調整交付金の詳細は後述します)。
都道府県12.5%・市町村12.5%の負担
居宅給付費等における公費負担は、国25%に加えて都道府県12.5%・市町村12.5%で構成され、合計50%となります。都道府県と市町村はいずれも定率で一般財源(税金)から負担しており、国のような調整分は設けられていません。この国25%・都道府県12.5%・市町村12.5%という内訳は、在宅サービスや地域密着型サービスなど「居宅給付費等」に適用される割合です。なお、都道府県・市町村がここで負担する「一般財源(税金)」とは、介護保険料とは別に、都道府県・市町村が住民税や地方税などとして集めている税金を指します。
施設等給付費は都道府県の負担が17.5%に増える
特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの施設サービスにかかる「施設等給付費」については、公費の内訳が居宅給付費等と異なります。厚生労働省の資料によれば、施設等給付費の場合は国の負担が定率15%+調整交付金5%の合計20%に引き下げられ、代わりに都道府県の負担が17.5%に引き上げられます。市町村の負担は12.5%で変わりません。つまり、施設等給付費では「国20%・都道府県17.5%・市町村12.5%」の合計50%という構成になり、居宅給付費等よりも都道府県の負担割合が5ポイント高くなる点が違いです。なお、施設サービスと在宅サービスとで公費の内訳が分かれている理由の詳細は、本記事で確認できた出典の範囲では明記されていません。
| 給付費の種類 | 国 | 都道府県 | 市町村 |
|---|---|---|---|
| 居宅給付費等(在宅サービス等) | 25%(定率20%+調整交付金5%) | 12.5% | 12.5% |
| 施設等給付費(施設サービス等) | 20%(定率15%+調整交付金5%) | 17.5% | 12.5% |
差分は、施設等給付費で国の定率分が15%に下がり、その分だけ都道府県の負担が17.5%に上がる点のみです。市町村の負担はどちらも12.5%で変わりません。
図:公費50%の内訳(居宅給付費等の場合、都道府県は薄い青・市町村はオレンジで区別)
保険料50%の内訳(第1号・第2号保険料)
第1号保険料(65歳以上)23%
保険料50%のうち、65歳以上の第1号被保険者が負担する第1号保険料の割合は23%です。第1号保険料は市町村ごとに基準額が設定され、所得段階に応じて段階的な保険料が課されます。年金額が一定以上ある人は年金からの天引きである特別徴収(年金支給時に自動的に保険料が差し引かれる方式)、それ以外は普通徴収(口座振替や納付書で市町村に直接納付する方式)で納めます。保険料の仕組みそのものについては、介護保険料の仕組みを解説した記事で詳しく説明しています。
第2号保険料(40〜64歳)27%
40〜64歳の医療保険加入者である第2号被保険者が負担する第2号保険料の割合は27%です。第2号保険料は各医療保険者(健康保険組合、全国健康保険協会、国民健康保険など)が医療保険料と一体的に徴収し、社会保険診療報酬支払基金を通じて市町村に交付されます(この徴収・交付の流れは後の章で詳しく説明します)。
按分率は介護保険事業計画期間(3年)ごとに見直し
第1号保険料23%・第2号保険料27%という按分率は、固定された数値ではなく、3年を1期とする介護保険事業計画の期間ごとに、第1号・第2号それぞれの被保険者数の見込みなどに応じて国の政令で見直されます。この按分率は全国共通の数値として定められており、本記事で参照した厚生労働省の資料の範囲では、市町村が独自の按分率を設定した事例は確認できませんでした。介護保険事業計画そのものの仕組みについては、介護保険事業計画とは何かを解説した記事もあわせて参照してください。
図:保険料(全体の50%)における第1号・第2号保険料の按分比率(23:27、第9期時点)
調整交付金の役割
自治体間の財政力格差を調整する仕組み
調整交付金は、国が負担する25%(居宅給付費等の場合)のうち5%分を占める交付金で、全国一律に配分される定率分とは異なり、市町村ごとの財政力格差を調整する目的で配分額が変わります。高齢化率が高く後期高齢者の割合が多い市町村や、所得の低い高齢者が多い市町村ほど、保険料収納だけでは財源を確保しにくいため、調整交付金によって国からの交付額が手厚くなる仕組みです。
後期高齢者加入割合・所得段階別加入割合による補正
調整交付金の配分は、全国平均と比較した各市町村の後期高齢者(75歳以上)加入割合、および第1号被保険者の所得段階別加入割合という2つの指標をもとに補正されます。後期高齢者の割合が高い市町村ほど要介護認定率や給付費が高くなる傾向があるため、その分を国費で補うことで、市町村間の保険料水準の格差を一定程度抑える役割を果たしています。
財政安定化基金の仕組み
設置目的と都道府県への設置
財政安定化基金は、保険料収納が見込みを下回ったり、給付費が予想以上に増加したりして市町村の介護保険財政が赤字になった場合に、資金を貸し付け・交付する目的で各都道府県に設置されている基金です。市町村の介護保険特別会計は単年度収支が原則のため、想定外の財源不足が生じた際のセーフティネットとして機能します。
財源不足時の貸付・交付の条件
- 交付:保険料未納などにより、見込みを下回る保険料収入しか得られなかった場合に基金から交付を受けられる
- 貸付:給付費が見込みを上回るなど、給付費の増加による財源不足に対しては無利子の貸付を受けられる
- 償還:貸付を受けた市町村は、原則として次の介護保険事業計画期間(3年間)で保険料に上乗せする形で返済する
国・都道府県・市町村が1/3ずつ負担
財政安定化基金の財源は、国・都道府県・市町村がそれぞれ3分の1ずつを負担する仕組みです。市町村の負担分は、通常の介護保険料の中に組み込まれて徴収されます。厚生労働省が公表している財政安定化基金の貸付等状況によれば、貸付・交付の実績は年度や都道府県によって差があり、制度創設当初と比べて近年は活用件数が限定的になっている傾向がうかがえます。
第2号保険料の徴収・交付ルート(社会保険診療報酬支払基金)
医療保険料と一体的に徴収される仕組み
第2号被保険者(40〜64歳)の介護保険料は、単独で徴収されるのではなく、加入している医療保険(健康保険組合、全国健康保険協会〈協会けんぽ〉、共済組合、国民健康保険など)の医療保険料と一体的に徴収されます。給与所得者であれば給与天引きされる健康保険料に介護保険料分が上乗せされる形で控除され、自営業者などが加入する国民健康保険であれば、国保料(税)の中に介護分として組み込まれます。
支払基金から市町村への交付金交付
各医療保険者が徴収した第2号保険料は、社会保険診療報酬支払基金に介護給付費納付金として納付され、支払基金がこれを取りまとめたうえで「介護給付費交付金」として全国の市町村に交付します。社会保険診療報酬支払基金のウェブサイトでも、この介護保険制度における第2号保険料の徴収・交付の仕組みが説明されています。この交付ルートがあることで、市町村は個々の医療保険者と直接やり取りすることなく、全国統一的な仕組みで第2号保険料分の財源を受け取ることができます。
国民健康保険団体連合会(国保連)の役割との違い
給付費の審査・支払業務
国民健康保険団体連合会(国保連)は、介護サービス事業者が市町村に請求する介護給付費の請求内容を審査し、事業者への支払いを代行する業務を担う組織です。介護報酬の請求・審査・支払いという、サービス提供後のお金の流れを担う実務機関です。介護報酬そのものの仕組みについては、介護報酬とは何かを解説した記事で詳しく説明しています。
支払基金との役割の違い
社会保険診療報酬支払基金と国保連は、名称が似ている部分もあり混同されがちですが、役割は明確に異なります。
| 組織 | 役割 | 担当する流れ |
|---|---|---|
| 社会保険診療報酬支払基金 | 第2号保険料を医療保険者から集め、市町村に交付金として渡す | 財源を集める側(財源調達) |
| 国民健康保険団体連合会(国保連) | 事業者からの介護給付費の請求を審査し、市町村に代わって事業者へ支払う | 給付を支払う側(給付実務) |
財源を集める仕組みと、集まった財源を給付として支払う仕組みは別の組織が担当している点を押さえておくと、介護保険財政全体の流れが理解しやすくなります。
保険料按分率の推移
| 期間 | 年度 | 第1号保険料 | 第2号保険料 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 第7期以前 | 〜平成29年度 | 22% | 28% | 厚生労働省資料「1号保険料と2号保険料の推移」 |
| 第7期〜第9期 | 平成30年度(2018年度)〜令和8年度(2026年度) | 23% | 27% | 厚生労働省資料「1号保険料と2号保険料の推移」/介護保険最新情報Vol.1190 |
平成30年度(第7期)に22%から23%へ変更
厚生労働省の資料「1号保険料と2号保険料の推移」によれば、第1号保険料と第2号保険料の按分率は、平成30年度(2018年度)からの第7期介護保険事業計画期間において、第1号保険料22%・第2号保険料28%から、第1号保険料23%・第2号保険料27%へと変更されました。これは、65歳以上人口の増加にともなって第1号被保険者の割合が高まったことを反映した見直しです。なお、第6期以前の按分率の詳細な推移については、本記事執筆時点で確認できた一次資料の範囲を超えるため、ここでは言及を控えます。
第9期(令和6〜8年度)も23%・27%を維持
厚生労働省老健局介護保険計画課が公表した「介護保険最新情報Vol.1190」によれば、令和6年度(2024年度)から令和8年度(2026年度)までの第9期介護保険事業計画期間においても、第1号保険料23%・第2号保険料27%という按分率が維持されています。つまり、第7期に変更された按分率(上表参照)が、第9期時点まで変更されずに続いていることが同資料で確認できます。
今後の制度改定の見通し
第10期(2027年度〜)介護保険事業計画への反映
介護保険制度は3年を1期とする介護保険事業計画にあわせて見直されるため、2027年度からの第10期介護保険事業計画においても、被保険者数の推計等を踏まえて按分率や公費負担の運用が見直される可能性があります。本記事執筆時点(2026年)では第10期の具体的な按分率は確定していません。制度は法改正や政令改正によって変更されうるため、最新の数値は厚生労働省や居住する市区町村の公式発表で確認することをおすすめします。
財源構成を知っておくメリット
保険料の仕組みを理解して家計の見通しを立てる
介護保険の財源構成を理解しておくと、自分が納めている保険料がどのような仕組みで介護サービスの財源に組み込まれているかが把握しやすくなります。主なメリットは次のとおりです。
- 地域差の理解:第1号保険料は市町村ごとの給付見込みに応じて基準額が設定されるため、地域の高齢化の進み方によって保険料水準が変わりうることが分かる
- 給与明細での確認:第2号保険料は医療保険料と一体で徴収されるため、給与明細等の健康保険料の内訳で確認できることが分かる
- 施設検討時の視点:施設サービスを検討する際には、居宅サービスより都道府県の公費負担割合が高いことを踏まえ、制度全体が国・都道府県・市町村・被保険者という複数の主体で支えられていることを理解しておくと、制度改定のニュースを読み解く際にも役立つ
まとめ
- 介護保険の財源は公費50%(国25%・都道府県12.5%・市町村12.5%)と保険料50%(第1号保険料23%・第2号保険料27%)で構成される
- 施設等給付費は国20%・都道府県17.5%・市町村12.5%となり、居宅給付費等より都道府県の負担割合が高くなる
- 調整交付金は国負担25%のうち5%を占め、後期高齢者加入割合や所得段階別加入割合に応じて自治体間の財政力格差を調整する
- 財政安定化基金は都道府県に設置され、市町村の財源不足時に国・都道府県・市町村が1/3ずつ負担する財源から貸付・交付を行う
- 第1号23%・第2号27%の按分率は平成30年度(第7期)に変更され、第9期(令和6〜8年度)まで維持されている。介護保険制度は3年ごとの計画期間で見直されるため、最新情報は厚生労働省や市区町村の公式発表で確認する
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