介護保険優先原則とは、障害福祉サービスと同じ内容の介護保険サービスがあるとき、原則として介護保険のサービスを先に使うという考え方です。65歳になると、障害福祉サービスのうち介護保険に相当するサービスは原則として介護保険に移ります。障害福祉サービスを使ってきた人にとっては、いわゆる「65歳の壁」と呼ばれる節目です。この記事では、法律上の根拠、障害福祉サービスを引き続き使える場合、手続き、費用の軽減制度を厚生労働省などの公的資料で整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原則 | 障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合は、介護保険が優先される |
| 根拠 | 障害者総合支援法第7条 |
| 例外 | 介護保険の支給量・内容で足りない場合や、介護保険に相当するサービスがない場合は障害福祉サービスを使える |
| 手続きの目安 | 65歳到達日の3か月前から要介護認定の申請を受理できる運用がある |
| 判断する人 | 個別の支給可否や支給量は、お住まいの市区町村が判断する |
障害のある家族が65歳前後の方は、まず次の3点を確認してください。①今使っているサービス名(居宅介護、生活介護、就労継続支援など)、②そのサービスが就労系かどうか、③世帯が住民税非課税かどうか。この3つが分かると、介護保険に移るのか、障害福祉サービスを続けられるのか、費用の軽減制度の対象になりそうかの見当がつきます。
金額や要件は令和8年(2026年)10月24日時点で確認できた内容です。制度の内容や、通知・事務連絡による取り扱いは見直されることがあります。個別の支給可否は市区町村の判断になるため、最新の内容は市区町村の障害福祉担当窓口や介護保険担当窓口で確認してください。
介護保険優先原則とは
定義と考え方
障害のある人が受ける福祉サービスは障害者総合支援法にもとづく「自立支援給付」で、高齢者の介護サービスは介護保険法にもとづく「介護給付」です。制度の根拠法が別であるため、同じような支援が両方の制度に存在します。たとえば、自宅でヘルパーが身の回りの世話をする支援は、障害福祉では居宅介護、介護保険では訪問介護と呼ばれます。
厚生労働省の資料「障害福祉サービスと介護保険サービスとの関係」では、サービスの内容や機能から障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合には、原則として介護保険サービスに係る保険給付を優先して受けることになる、と整理されています。これが介護保険優先原則です。
ここでいう「優先」は、障害福祉サービスが一律に使えなくなるという意味ではありません。後の章で見るように、介護保険のサービスだけでは必要な支援が受けられない場合には、障害福祉サービスの給付が認められる運用が通知で示されています。
原則の対象になる人
介護保険の被保険者は、65歳以上の第1号被保険者と、40〜64歳で医療保険に加入している第2号被保険者に分かれます。第2号被保険者が介護保険のサービスを受けられるのは、特定疾病が原因で要介護・要支援の状態になった場合に限られます。厚生労働省老健局の資料「介護保険制度の概要」(令和7年7月)では、被保険者は第1号が3,585万人、第2号が4,188万人、要介護・要支援の認定者は第1号が681万人、第2号が13万人です。
障害福祉サービスを使っている人が介護保険優先の取り扱いを受けるのは、介護保険のサービスを利用できる状態にあるときです。多くの人は65歳になる時期が節目ですが、40〜64歳でも特定疾病により要介護・要支援の認定を受ければ、介護保険のサービスを利用できる立場になります。
障害者支援施設などに入所している人は、介護保険の適用除外とされ、当分の間は介護保険の被保険者になりません(厚生労働省 障害者部会資料)。
よくある誤解
65歳をめぐっては、次のような誤解が見られます。
- 「65歳になった途端、障害福祉サービスはすべて終わる」:就労継続支援のように介護保険に相当するサービスがないものは、65歳以降も障害福祉サービスとして使えます。
- 「介護保険を使うと、障害福祉の支援は一切受けられない」:介護保険の支給量や内容で足りない分は、障害福祉の給付が認められる場合があります。
- 「要介護認定を受けなければ、障害福祉サービスが続く」:最高裁の判決は、要介護認定の申請や認定の有無にかかわらず、受けられる介護給付がある限度で介護給付が優先されると示しています(次の章)。
- 「どの自治体でも同じ結果になる」:支給の要否や量は市町村が個別に判断するため、運用に差が生じることがあります。
制度の細部は通知で定められており、誤解がそのまま不利益につながることもあります。判断に迷うときは、決める前に市区町村の窓口と相談支援専門員(障害福祉サービスを使うための計画づくりや、事業所との調整を支える専門職)に確認するのが確実です。
法的根拠と最高裁判決
障害者総合支援法第7条
根拠は障害者総合支援法第7条です。条文の趣旨は、自立支援給付は、介護保険法の介護給付等のうち政令で定めるもので、自立支援給付に相当するものを受けられるときは、政令で定める限度において行わない、というものです。つまり、介護保険から受けられる範囲については、障害福祉の給付は行わないという定めです。
この条文の運用の基本になるのが、平成19年3月28日付けの通知(障企発第0328002号・障障発第0328002号)です。平成25年3月29日には新旧対照表が出されています。その後も事務連絡で具体的な運用が示されており、現在の取り扱いは通知と事務連絡の組み合わせで確認する必要があります。
令和7年7月17日の最高裁判決
最高裁判所第一小法廷は、令和7年7月17日の判決(令和5年(行ヒ)第276号)で、この規定の解釈を示しました。判決が示した点は、大きく次の2つです。
- 第7条と施行令により、要介護認定の申請をしたか、認定を受けたかにかかわらず、受けられる介護給付がある限度で介護給付が優先される
- 障害福祉サービスの支給量は市町村の合理的な裁量にゆだねられており、具体的な事情によっては、要介護認定を経ずに支給量を算定できる場合もあり得る
市町村は、障害支援区分(障害の特性などから必要とされる支援の度合いを示す区分)、心身の状況、置かれている環境、サービスの提供体制などを総合的に勘案して判断します(施行規則第12条)。この事件では、原判決が破棄され、東京高等裁判所に差し戻されました。
過去の裁判について
65歳をめぐっては、過去にも裁判で争われた例があります。障害者自立支援法違憲訴訟団が令和2年7月16日に厚生労働省の検討チームへ提出した資料(原告側の資料)によると、岡山地方裁判所の平成30年3月14日の判断と、広島高等裁判所岡山支部の平成30年12月13日の判断により、65歳を超えた障害者が障害福祉サービスを選ぶことが相当な場合があるとして本人の選択が認められ、確定したとされています(いわゆる浅田訴訟)。
この説明は当事者側の資料にもとづくもので、判決文そのものは確認していません。前の項の令和7年の最高裁判決とは別の事件です。
相当するサービスと障害福祉に固有のサービス
相当するサービスの対応
介護保険優先の対象になるかどうかは、サービスの内容と機能が介護保険のサービスに相当するかで決まります。厚生労働省の資料に示されている対応は次のとおりです。
| 障害福祉サービス | 相当する介護保険サービス |
|---|---|
| 居宅介護 | 訪問介護 |
| 重度訪問介護 | 訪問介護 |
| 生活介護 | 通所介護 |
| 短期入所 | 短期入所生活介護 |
この対応にあてはまるサービスは、65歳以降、原則として介護保険のサービスに移ります。ただし「相当する」かどうかはサービス名だけでなく、実際に必要な支援の内容で見ます。介護保険の訪問介護で受けられない支援が必要であれば、その部分は障害福祉側で扱える余地があります。
障害福祉に固有のサービス
介護保険に相当するサービスがない障害福祉サービスは、介護保険優先の対象になりません。厚生労働省の資料では、就労継続支援、行動援護、同行援護、障害者支援施設などが障害福祉に固有のものとして挙げられています。
令和5年6月30日付けの事務連絡では、就労系のサービスと自立訓練(生活訓練)は障害福祉に固有のサービスであり、65歳以降も介護保険に移行せずに使えるとされています。就労系サービスは障害福祉固有のため、65歳を過ぎても就労を続けたい人は、この点を確認しておくとよいでしょう。
介護保険に固有のサービス
反対に、介護保険にだけあるサービスもあります。厚生労働省の資料では、訪問看護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、特別養護老人ホームなどが介護保険固有のものとして例示されています。
介護保険に固有のサービスは、65歳以上(または特定疾病のある40〜64歳)で要介護・要支援の認定を受けた人が使うものです。介護保険の制度全体の仕組みはケアプランの作成の流れとあわせて確認すると、サービスの組み合わせ方が分かりやすくなります。
65歳以降も障害福祉サービスを使える場合
通知が示している考え方
平成27年2月18日付けの事務連絡では、相当する介護保険サービスで必要な支援が受けられる場合でも、介護保険の給付が受けられないときには、障害福祉の介護給付費等を支給できるとされています。また、介護保険の支給量や内容で不十分な場合には、介護給付費等を支給するなど、適切に運用するよう求めています。
令和4年4月18日の障害者部会(第127回)の資料でも、原則は相当する介護保険サービスへの移行としつつ、個別の状況により、一部を併用する場合や、障害福祉サービスを引き続き利用する場合もあり得る、と整理されています。
令和5年6月30日の事務連絡は、「要介護5で、かつ障害支援区分4以上」といった画一的な基準だけで判断するのは適切でない、とも述べています。つまり、一つの数字だけで機械的に決めず、本人の状況を個別に見ることが前提です。
資料に挙げられている具体例
障害者部会の資料や令和5年の事務連絡には、障害福祉サービスを引き続き認める具体例が挙げられています。
- 区分支給限度基準額(介護度ごとに決まっている、介護保険の月の利用上限)の制約により、ケアプラン上、必要な量を確保できない場合
- 身近に事業所がない、または事業所に空きがない場合
- 要介護認定が非該当(自立)となった場合
- 居宅介護・重度訪問介護:介護保険の限度額で足りない分を認める
- 介護保険の対象にならない支援(家事援助の範囲の違い、見守りなど)を認める
- 自立訓練(機能訓練):通所介護では提供できない支援(白杖歩行訓練など)が必要な場合は、65歳以降も認める
- 共同生活援助(グループホーム):必要と認められれば、65歳以降も認める
これらは例であり、すべての人にあてはまるわけではありません。どの例にあたるかは、市区町村が障害支援区分や生活の状況をもとに個別に確認します。
上乗せ支給の考え方
「上乗せ」とは、介護保険のサービスだけでは足りない分を、障害福祉サービスで上積みして支給することです。障害福祉の側では、介護保険の訪問介護で受けられない支援について、上乗せとして障害福祉サービスを支給できるとされています(令和4年の障害者部会資料、令和5年の事務連絡)。たとえば、介護保険の訪問介護では原則として対象にならない支援が日常生活に必要な場合、その部分を障害福祉で補う、という形です。
介護保険の中で整える視点
介護保険に移行する場合、ケアマネジャーがケアプランを作り、サービスの種類と量を決めます。そのときに、これまで障害福祉で受けていた支援の内容を、プランの中でどこまで再現できるかが焦点になります。再現できない部分があれば、その理由と必要な量をケアマネジャーと相談支援専門員の間で共有し、市区町村に伝える方法が考えられます。
65歳到達時の手続きと流れ
申請の時期
平成27年2月18日付けの事務連絡では、要介護認定等の申請は、65歳到達日(誕生日の前日)の3か月前以内に受け付け、65歳到達日に認定する運用ができるとされています。これにより、65歳になった時点で切れ目なく介護保険のサービスを使い始められる可能性があります。
特定疾病による40歳到達時についても、同じように3か月前から申請を受け付ける運用が示されています。具体的な受け付けの方法は、市区町村の窓口に確認してください。
自治体による説明
通知では、自治体は、職員または相談支援専門員から直接説明することが望ましいとされています。その際に、介護保険の優先であっても介護給付費等が支給できる場合があることも案内する、とされています。要介護認定の申請をしない人に対しては、理由を聞き取り、継続して説明するよう求めています。
説明を受けても分かりにくい場合は、何度でも質問して構いません。ご自身の生活のどこが変わるのかを、紙に書き出して確認すると整理しやすくなります。
相談支援専門員とケアマネジャーの連携
障害福祉サービスを使っている人には相談支援専門員がつき、介護保険では介護支援専門員(ケアマネジャー)がつきます。通知では、両者の連携の仕方が具体的に示されています。
- 相談支援専門員は、モニタリングの際に介護保険について案内する
- 本人の了解を得たうえで、状態やサービス等利用計画(利用するサービスの内容や目標をまとめた計画)を、居宅介護支援事業所などに引き継ぐ
- 介護保険の利用開始後も、サービス担当者会議に参加し、情報を共有する
令和4年度からは、都道府県の研修に「介護支援専門員との連携」のコースが設けられました。
手続きの流れの例
一般的な流れの例です。自治体により順序や名称が異なることがあります。
- 65歳到達日の3か月前ごろから、要介護認定の申請ができる
- 相談支援専門員と、現在のサービスの内容と量を整理する
- 要介護認定の申請をする(お住まいの市区町村の窓口。障害福祉担当・介護保険担当)
- 認定結果を受けて、ケアマネジャーとケアプランを作る
- 介護保険で足りない部分があれば、障害福祉サービスの支給について市区町村に相談する
認定の結果によって、使える介護保険サービスの種類や量は変わります。結果が出たあとで、障害福祉との組み合わせをあらためて検討します。
40〜64歳の場合と特定疾病
第2号被保険者の位置づけ
40〜64歳は介護保険の第2号被保険者です。介護保険のサービスを受けられるのは、特定疾病が原因で要介護・要支援の状態になった場合に限られます。そのため、事故や、特定疾病以外の病気・障害により支援が必要な人は、40〜64歳の間は介護保険の給付の対象になりません。
厚生労働省老健局「介護保険制度の概要」(令和7年7月)では、第2号の認定者は13万人で、第1号の681万人と比べて少数です。65歳を迎えると第1号被保険者になり、原因を問わず、要介護・要支援の状態であれば認定を受けられるようになります。
特定疾病16疾病
特定疾病は16疾病が定められています。厚生労働省の資料にある疾病は次のとおりです。
- がん(末期)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靭帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症・パーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症・糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節または股関節の著しい変形を伴う変形性関節症
診断基準や申請の流れなどは介護保険の特定疾病とはで詳しく解説しています。ここでは、障害福祉サービスとの関係に絞ってみていきます。
特定疾病がある障害のある人の場合
障害福祉サービスを使っている人が、特定疾病にあたる病気を発症して要介護認定を受けた場合、40〜64歳でも介護保険のサービスが利用できる状態になります。この場合、介護保険優先の考え方が65歳より前に関わってくる可能性があります。
また、後で見る新高額障害福祉サービス等給付費は、65歳に達するまでの間に介護保険法による保険給付を受けていないことが条件の一つです。特定疾病により介護保険サービスを利用した人は、この給付の対象外になる点に注意が必要です。
共生型サービスという選択肢
共生型サービスの概要
共生型サービスは、平成30年度から始まった仕組みで、介護保険と障害福祉の両方の指定を受けた事業所が、高齢者と障害のある人を同じ事業所で受け入れるものです。厚生労働省の資料では、65歳以上になっても、障害のある人が使い慣れた事業所を継続して利用できるようにすることが目的の一つとされています。
対象になるサービスは次のとおりです。
| 介護保険のサービス | 障害福祉のサービス |
|---|---|
| 訪問介護 | 居宅介護・重度訪問介護 |
| 通所介護(地域密着型を含む) | 生活介護・自立訓練・児童発達支援・放課後等デイサービス |
| 短期入所生活介護 | 短期入所 |
共生型サービスの事業所では、同じ事業所で年齢を問わず利用できるため、65歳の前後で同じ事業所を継続して使える場合があります。
事業所数の状況
令和7年11月審査分の厚生労働省の資料によると、障害福祉の事業所が行う共生型の介護保険サービスは203事業所、介護保険の事業所が行う共生型の障害福祉サービスは障害児通所を含めて1,546事業所です。厚生労働省自身も、令和4年の資料で「普及が十分とは言えない」としています。
お住まいの地域に共生型の事業所があるとは限りません。あるかどうかは、相談支援専門員か市区町村に確認してください。
共生型を考えるときの注意
共生型サービスは、事業所を変えずに済む可能性がある仕組みです。利用中の事業所に、共生型の指定を受けているか、65歳以降にどのような取り扱いになるかを、早めに尋ねてみてください。
利用者負担と新高額障害福祉サービス等給付費
障害福祉サービスの自己負担上限
障害福祉サービスの利用者負担は、所得に応じて月ごとの上限額が決められています。厚生労働省の「障害者の利用者負担」のページと、利用者負担認定の手引き(令和8年6月版)に示されている区分は次のとおりです。
| 区分 | 月額上限 |
|---|---|
| 生活保護 | 0円 |
| 低所得(市町村民税非課税世帯) | 0円 |
| 一般1(課税世帯で、所得割16万円未満。入所施設利用者(20歳以上)・グループホーム利用者を除く) | 9,300円 |
| 一般2(上記以外) | 37,200円 |
「所得割」とは、住民税の通知書に載っている、所得に応じて決まる部分の金額です。目安として、3人世帯で障害基礎年金1級の場合、低所得は収入がおおむね300万円以下、一般1は収入がおおむね670万円以下とされています。所得を見る世帯の範囲は、18歳以上の障害者の場合、本人と配偶者です。
介護保険と併用するとき
介護保険と障害福祉サービスを併用する場合、介護保険の利用者負担も合算して、上の基準額を超えた分が高額障害福祉サービス等給付費として償還されます。ただし、高額介護サービス費で償還された分は除かれます。
介護保険側にも、月の自己負担の合計が上限を超えた分が払い戻される仕組みがあります。内容は高額介護サービス費とはで解説しています。高額介護サービス費で償還された分は除かれる扱いのため、どちらの窓口に何を申請するかは、事前に市区町村に確認するとよいでしょう。
新高額障害福祉サービス等給付費の要件
ざっくり言うと、新高額障害福祉サービス等給付費は、低所得の人の介護保険の利用者負担を償還する制度です。平成30年4月から設けられています。厚生労働省の資料(平成30年6月版)では、次の4つすべてを満たす人が対象です。
- 65歳に達する日の前5年間、介護保険に相当する障害福祉サービス(居宅介護、重度訪問介護、生活介護、短期入所)の支給決定を受けていた(入院などやむを得ない期間は除く。複数サービスの通算も可)
- 本人と配偶者が、65歳到達日の前日の属する年度に市町村民税非課税、または生活保護(境界層該当で負担軽減を受けていた場合)であり、申請時も非課税等である
- 65歳到達日の前日に、障害支援区分が2以上である
- 65歳に達するまでの間に、介護保険法による保険給付を受けていない(特定疾病により介護保険サービスを利用した人は対象外)
要件はいずれも細かく、自分が対象になるかどうかは市区町村が判断します。
対象サービスと償還の方法
対象となる介護保険サービスは、訪問介護、通所介護、短期入所生活介護、地域密着型通所介護、小規模多機能型居宅介護です。介護保険の利用者負担分を、いったん支払ったうえで償還される「償還払い」で受け取ります。高額介護サービス費を受けたあとの額が対象になります。
初回の申請だけで、翌年以降は自動的に決定される自治体もあります。たとえば板橋区は、7〜8月に勧奨を行い、翌年以降は自動で入金される運用を案内しています。
制度の周知
厚生労働省の令和4年の資料では、対象者へ個別に周知している自治体は約3割にとどまっていました。令和5年の事務連絡では、個別に勧奨の通知を出すことが望ましいとされています。
対象になりそうな場合は、案内を待たず、市区町村の障害福祉担当窓口に確認するとよいでしょう。
自治体ごとの運用と相談先
運用に差がある理由
支給の要否や支給量は市町村の裁量にゆだねられているため、同じ通知を受けても、運用の細部は自治体ごとに異なることがあります。札幌市のように、適用関係についての通知を自治体として公開している例もあります。
運用の違いは、支給量の算定方法や周知の方法などに現れます。他の自治体の事例をそのまま自分にあてはめることはできないため、必ずお住まいの市区町村の取り扱いを確認してください。
相談できる窓口
相談先は、お住まいの市区町村の窓口(障害福祉担当・介護保険担当)が基本です。主なものを整理します。
| 相談したいこと | 主な窓口 |
|---|---|
| 障害福祉サービスの支給量・継続 | 市区町村の障害福祉担当窓口、相談支援専門員 |
| 要介護認定の申請 | 市区町村の介護保険担当窓口 |
| 新高額障害福祉サービス等給付費 | 市区町村の障害福祉担当窓口 |
担当の相談支援専門員が誰か分からないときは、障害福祉担当の窓口に聞いてみてください。どこに連絡すればよいか分からない場合も、まず障害福祉担当の窓口に連絡して、案内を受けるのが分かりやすいでしょう。
事前に準備しておくこと
65歳を迎える前に、次の点を整理しておくと、窓口での相談が進みやすくなります。
- 現在使っている障害福祉サービスの種類と1か月の利用量
- サービスを使って、日常生活のどの場面を支えてもらっているか
- 通っている事業所の名称と、介護保険の指定や共生型の有無
- 障害支援区分と、これまでの支給決定の内容
- 世帯の所得の状況(利用者負担や新高額給付に関わるため)
特に、「どの場面でどんな支援が必要か」を具体的に伝えることが、介護保険で足りない部分の相談につながります。記録を残しておくと、担当者が交代しても説明がしやすくなります。
注意点とよくある失敗
要介護認定を申請しない場合
要介護認定を申請しないまま、障害福祉サービスだけを続けたいと考える人もいます。しかし、申請しなくても介護保険で受けられる分は優先される扱いになりうるため、申請をためらう事情があるときは、まず窓口で理由を伝えて相談してください。通知では、申請しない人に対して自治体が理由を聞き取り、継続して説明することとされています。
画一的な基準への思い込み
「要介護〇なら障害福祉は使えない」といった説明を聞いて、あきらめてしまう人がいます。令和5年の事務連絡は、要介護5かつ障害支援区分4以上のような画一的な基準だけで判断するのは適切でないと示しています。説明に納得できないときは、支援の必要な場面や、介護保険のサービスで足りない点をあらためて整理して、市区町村に伝えることが考えられます。
まとめ
- 介護保険優先原則は障害者総合支援法第7条にもとづき、居宅介護・重度訪問介護、生活介護、短期入所は、相当する介護保険サービスがあれば原則として介護保険が優先される
- 就労継続支援、行動援護、同行援護など障害福祉に固有のサービスは、65歳以降も使える
- 介護保険で足りない場合なども、障害福祉の給付が認められる運用がある。支給の要否や量は市町村が個別に判断し、令和7年の最高裁判決も市町村の合理的な裁量を前提としている
- 要介護認定は、65歳到達日の3か月前から申請できる運用がある
- 共生型サービス、新高額障害福祉サービス等給付費、自己負担上限の仕組みも、あわせて確認しておく
- 制度や運用は見直されることがあるため、最新の内容は市区町村の窓口で確認する
次にやること
次の3つは、窓口で相談するときの土台になります。何が変わり、何が続くのかを具体的に話せるほど、市区町村も状況を個別に確認しやすくなるためです。
- 現在のサービスの内容と量を、相談支援専門員と整理する
- 市区町村の障害福祉担当窓口へ、早めに相談する
- 新高額障害福祉サービス等給付費の対象になりそうか、市区町村に確認する
この記事の数値は一次情報で確認できた範囲に限っています。制度や運用は改定されることがあるため、手続きの前に必ず最新の内容を確認してください。このサイトの編集方針はこのサイトの立ち位置をご覧ください。