夫婦のどちらにも物忘れがあっても、介護保険などを使って在宅で暮らす方法はあります。気になる段階で、地域包括支援センターに相談できます。窓口は高齢者や家族介護者の総合相談を行っています。認認介護は、介護する人とされる人の双方に認知症がある状態を指す通称で、公的な組数の統計はありません。公的資料で確認できるのは、同居の介護の37.1%が75歳以上同士で担われていることと、認知症の高齢者が2025年に約471.6万人と推計されていることです。この記事では、リスク、相談先、使える制度を厚生労働省などの資料で整理します。
まずやること3ステップ
- 様子を確認する:服薬、食事、お金、火の始末など、困りごとが出ていないかを見る
- 地域包括支援センターへ電話する:「夫婦ともに物忘れが出てきて心配」という一言から始められる
- 要介護認定の申請を検討する:サービスを使うために必要な手続き(申請の流れは後半で説明)
認認介護とは
はじめに、言葉の意味と、どんな家庭で起こりうるのかを確認します。法令や統計での扱いも合わせて押さえておくと、後の章が読みやすくなります。
認認介護の意味
認認介護とは、一般に「認知症の人が認知症の人を介護している状態」を指す言葉です。夫婦のどちらも認知症である場合や、認知症のある親を、同じく認知症のある配偶者が世話している場合などが典型として語られます。
認認介護:介護する人とされる人の双方に認知症がある状態を指す通称。法令上の定義語ではなく、公的統計の集計区分でもない。
この言葉は介護保険法などに定められた用語ではなく、厚生労働省の統計にも「認認介護の組数」という区分はありません。そのため、全国に何組いるかという公的な数字は示されていません。民間の調査や報道で見かける試算は、調査の範囲や前提がそれぞれ異なります。この記事では公的資料で確認できる数値だけを使います。
言葉の印象が強いため、「認知症の人同士はもう在宅で暮らせない」と受け止められることがあります。しかし、暮らし方は本人たちの状態や生活環境、使えるサービスによって変わります。大切なのは言葉に当てはめることではなく、いまの生活で困りごとが起きていないかを周囲が気にかけ、早めに相談につなぐことです。
どんな家庭が当てはまりうるか
認認介護は通称で、どこからが該当するといった明確な基準はありません。年齢に関係なく起こりうる状況でもあります。
同居の家族として代表的なのは配偶者どうしです。国民生活基礎調査(2025年)では、主な介護者全体のうち同居は46.1%で、その続柄の内訳(主な介護者全体に占める割合)は、配偶者が22.5%、子が18.2%、子の配偶者が4.2%でした。同居の介護者の続柄では配偶者が最も多い結果です。高齢の夫婦のどちらかに認知症が出ると、もう一方が世話を担う場面が生まれます。
そこへ、世話をする側にも物忘れが出始めると、認認介護と呼ばれる状況に近づきます。本人たちが「まだ大丈夫」と考えていても、服薬や食事、金銭の管理といった日常の基本が、少しずつ回らなくなる場合があります。周囲が先に気づくことも少なくありません。
親子でも起こりえます。高齢の親と同居する子が、自身も認知症を発症する場合です。認知症は年齢が上がるほど有病率が高まる病気で、どの家庭でも起こりうるものとして備えておくことが役立ちます。
よくある誤解
誤解1:認認介護は統計で把握されている。公的統計が示しているのは、65歳以上同士などの年齢の組み合わせです。認知症の有無まで掛け合わせた集計は、確認できていません。
誤解2:夫婦で認知症になったら施設に入るしかない。在宅で暮らし続ける方法として、訪問介護やデイサービス、ショートステイ、小規模多機能型居宅介護などを組み合わせる選択肢があります。施設への入所も選択肢の一つで、どれが合うかは本人の希望や状況によって異なります。窓口に相談しながら検討するものです。
誤解3:相談は診断がついてからするもの。地域包括支援センターは、高齢者本人だけでなく家族介護者からの相談も受け付ける総合相談窓口です。気になる段階で相談できます。
認認介護と老老介護の違い
二つの言葉はよく並べて語られますが、物差しが違います。ここでは、何を見ている言葉なのかと、リスクの出方の違いを整理します。
年齢の概念か、認知症の概念か
老老介護は「年齢」の概念です。国民生活基礎調査では、同居の主な介護者と要介護者等の年齢の組み合わせとして、60歳以上同士、65歳以上同士、75歳以上同士の割合が集計されています。認認介護は「双方に認知症がある状態」を表す概念で、統計上の区分はありません。
| 観点 | 老老介護 | 認認介護 |
|---|---|---|
| 見ている軸 | 年齢(介護する人もされる人も高齢) | 認知症の有無(双方に認知症がある) |
| 公的統計 | 年齢の組み合わせとして集計されている | 集計区分はない |
| 法令上の定義 | この記事で使った資料では、定義は確認していない | 法令上の定義語ではない(通称) |
| 規模の目安 | 65歳以上同士61.9%、75歳以上同士37.1%(2025年) | 公的な数値は確認できていない |
二つは重なる世帯がありうる関係です。ただし、老老介護は年齢の話、認認介護は認知症の話なので、親子など年齢が離れた組み合わせでも認認介護は起こりえます。その規模を示した公的な数値は確認できていません。老老介護そのものは老老介護とはの記事で整理しています。
図のとおり、老老介護には統計があり、認認介護には統計がありません。次に、リスクの現れ方を見ていきます。
リスクの現れ方の違い
老老介護で心配されることの一つが、介護者の体力低下や病気によって、介護する人もされる人も生活が成り立たなくなる「共倒れ」です。
認認介護では、これに加えて、困りごとに気づいたり、相談先を思い出したりすることが難しくなる場面が考えられます。服薬や金銭管理のように、互いに確かめ合う必要がある作業は、双方に物忘れがあると、見落としが起きることも考えられます。こうした場合に備え、周囲の見守りと、本人たちが自分で動かなくても支援につながる仕組みを活用しておくことが役立ちます。
公的統計で見る老老介護の現状
認認介護そのものの統計はありませんが、老老介護については国民生活基礎調査で長く調べられています。ここでは要点だけを取り上げます。
65歳以上同士・75歳以上同士の割合
同居の主な介護者と要介護者等がともに65歳以上である割合は、2001年の40.6%から上昇し、2022年は63.5%、2025年は61.9%でした。ともに75歳以上の割合は、2001年の18.7%から一貫して上昇し、2025年は37.1%です。いずれも分母は「同居の主な介護者がいる要介護者等」で、つまり同居の介護の37.1%が75歳以上同士で担われています。年ごとの推移は図で確認できます。
この数値は年齢の組み合わせであり、認知症の有無は問うていません。認知症のある人同士がどれだけ含まれるかは、公的な統計からは分かりません。
介護者の続柄と介護時間
先に触れた続柄の割合(配偶者22.5%、子18.2%など)は、主な介護者全体を分母にしたものです。同居の主な介護者に限ると、2025年は男性36.5%、女性63.5%でした。
介護時間が「ほとんど終日」の同居の介護者では、続柄は配偶者が64.6%、子が28.9%です。長時間の介護を担う同居の介護者のうち、配偶者が6割を超えています。
介護が必要になった主な原因
国民生活基礎調査(2025年)で、介護が必要になった主な原因として最も多いのは認知症でした。要介護者で23.6%、要介護者等の総数では16.7%です。介護を受ける側が認知症であることは珍しくなく、介護する側も高齢であれば、同じように認知症の有病率が高まる年代に入ります。次の章で人数の推計を見ます。
認知症の人数推計と年齢別の有病率
認知症の高齢者数は、厚生労働省の研究事業で将来推計が示されています。年齢が上がるほど有病率が高まる点が、高齢夫婦の備えを考える手がかりになります。
認知症高齢者数の推計
厚生労働省の推計(令和5年度老人保健健康増進等事業、九州大学の二宮利治教授らの研究)では、認知症高齢者数は次のとおりです。内閣府の令和7年版高齢社会白書にも掲載されています。
| 年 | 認知症高齢者数 | 有病率 |
|---|---|---|
| 2022年 | 443.2万人 | 12.3% |
| 2025年 | 471.6万人 | 12.9% |
| 2030年 | 523.1万人 | 14.2% |
| 2040年 | 584.2万人 | 14.9% |
| 2050年 | 586.6万人 | 15.1% |
| 2060年 | 645.1万人 | 17.7% |
将来の数値は、有病率が一定であるという仮定にもとづく推計です。実際の人数は、予防や医療の進歩、社会環境の変化によって変わる可能性があります。
年齢階級別の有病率
2022年の推計では、有病率は65〜69歳が1.1%、70〜74歳が3.1%、75〜79歳が7.1%、80〜84歳が16.6%、85〜89歳が32.8%、90歳以上が50.3%です。
75歳を超えると有病率が大きく上がり、85〜89歳では約3人に1人、90歳以上では約2人に1人にあたります。高齢の夫婦では、どちらにも物忘れが出る可能性を想定して、元気なうちから相談先を知っておくことが役立ちます。
最初の相談先は地域包括支援センター
統計の数字を見ると不安になるかもしれませんが、相談する方法があります。窓口の役割と、電話でのやり取りの流れを確認しておきましょう。
地域包括支援センターとは
地域包括支援センターは、市町村が設置する高齢者の総合相談窓口です。厚生労働省の資料(令和7年4月末時点)によると、全国に5,487か所あります。運営は市町村の直営が約2割、委託が約8割です。次の専門職が配置されています。
- 保健師
- 社会福祉士
- 主任介護支援専門員
主な業務は次のとおりです。
- 総合相談支援:高齢者本人や家族介護者の相談を受ける
- 権利擁護:成年後見制度の活用促進や、高齢者虐待への対応
- 包括的・継続的ケアマネジメント支援:地域のケアマネジャーなどへの支援
- 介護予防ケアマネジメント:要支援1・2の人のケアプラン(利用するサービスの計画)の作成
要支援は介護の必要度を表す区分のうち比較的軽い段階で、要介護1〜5とあわせて認定の区分を構成します。センターの詳しい役割は地域包括支援センターとはで解説しています。
相談するときに伝えたいこと
相談は電話や窓口でできます。次の点を伝えるとやり取りがスムーズです。
- ご本人たち(介護される人・する人)の年齢と、同居しているかどうか
- 気づいている変化(物忘れ、服薬、食事、金銭、火の始末など)
- 要介護認定を受けているか、かかりつけ医がいるか
- 相談者の続柄と、連絡のとりやすい時間帯
すべてを整理して話す必要はありません。「夫婦ともに物忘れが出てきて心配」という一言からでも、職員が状況を聞き取ります。個人情報の取り扱いについては、窓口で確認できます。
担当センターの探し方
お住まいの市区町村の窓口(高齢者福祉・介護保険の担当課など)やホームページで確認できます。
離れて暮らす家族が代わりに電話する場合は、親が住んでいる市区町村の窓口で確認してください。自分の住まいではなく、親の住所地の窓口に連絡します。
高齢の夫婦世帯で心配されるリスク
ここでは、生活の安全に関わる主な心配ごとを取り上げます。数値は高齢者全体などを対象にしたもので、認認介護に限った統計ではありません。介護する人を責めるためではなく、早めの相談につなげるために整理します。
日常生活の安全に関わるリスク
- 熱中症:消防庁の調査では、令和6年5〜9月の熱中症による救急搬送は97,578人で、調査開始以来最多でした。そのうち65歳以上が55,966人(57.4%)、発生場所は住居が37,116人(38.0%)で最多です。これは高齢者全体の数値で、認認介護に限ったものではありません。
- 住宅火災:令和7年版消防白書によると、令和6年の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く)は1,030人で、うち65歳以上が779人(75.6%)でした。これも高齢者全体の数値です。
自宅で過ごしていても、室温の管理やガスコンロ・暖房器具の使い方に注意が必要です。夏や冬の前に、家族やケアマネジャーと使い方を見直しておくと安心です。
服薬・食事・金銭管理の乱れ
厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」(2018年5月)は、多剤服用による有害事象や、薬剤が原因となる老年症候群などを扱っています。
薬の飲み忘れや重ね飲みが起こることも考えられます。双方に物忘れがある場合は、互いに確認し合うことが難しくなることも考えられます。薬の扱いは、医師や薬剤師、ケアマネジャーに相談するのが基本です。
食事の準備、買い物、公共料金の支払い、通帳の管理も、少しずつ滞ることがあります。家族は、どの作業が回らなくなっているかを具体的に把握し、その内容を相談先に伝えてください。
介護疲れと高齢者虐待
厚生労働省の令和6年度調査(令和7年12月25日公表)では、養護者による高齢者虐待の相談・通報件数は41,814件で、前年度より1,428件増え、12年連続の増加となりました。虐待と判断された件数は17,133件です。発生要因は、被虐待者の状態で「認知症の症状」が58.1%、虐待者側で「介護疲れ・介護ストレス」が57.2%、「理解力の不足や低下」が49.6%でした。これらは養護者による虐待全体の数値で、認認介護に限った統計ではありません。
「養護者」とは、金銭管理や食事、介護などの世話をしている家族・親族・同居人等を指します。虐待は次の5つに分けられます。
- 身体的虐待
- 介護・世話の放棄放任
- 心理的虐待
- 性的虐待
- 経済的虐待
発生要因として、介護疲れ・介護ストレスなどが挙がっています。虐待の防止は養護者への支援も含めて考えられており、介護で行き詰まりを感じたら、早めに地域包括支援センターや市区町村に相談してください。
孤立とセルフ・ネグレクト
セルフ・ネグレクトとは、厚生労働省の高齢者虐待対応マニュアルによると、介護・医療サービスを拒否し、孤立して、生活行為や健康維持ができなくなっている状態です。認知症等が背景にあることが多く、孤立死のリスクがあるとされています。
外部との接点が少ない世帯では、必要な医療や介護につながりにくくなる可能性があります。本人たちが「必要ない」と断る場合でも、周囲が気にかけ続け、地域包括支援センターなどにつなぎ続けることが役立ちます。
周囲が気づきたい変化と声かけの視点
早めの相談につなげるには、周囲の気づきが手がかりになります。診断や判断をするためのものではなく、相談のきっかけとして気にかけたい視点です。
暮らしの変化チェック
- 郵便物や請求書が溜まっている
- 同じ食材が大量に冷蔵庫にある
- 家の中の片付けが急にできなくなった
- 季節に合わない服装をしている
- 電話に出なくなった、約束を忘れることが増えた
- 近所づきあいが減った
いくつかが重なって見られるときは、本人たちを責めずに、一緒に相談する形で窓口につなぐことを考えてください。
本人たちを尊重した声かけ
「できなくなったから手伝う」という伝え方は、反発を招くことがあります。「迷惑をかけたくない」「自分たちでやれる」と感じる人も少なくないためです。次のような言い方が参考になります。
「体調のことで一度、地域の相談窓口で話を聞いてみませんか」
「いろいろな制度があるそうなので、一緒に聞きに行きましょう」
親が相談やサービスを嫌がるときは、すぐに結論を出そうとせず、「話を聞くだけ」「見学だけ」といった小さな一歩から提案する方法があります。それでも難しい場合は、家族が地域包括支援センターに相談してみることもできます。
離れて暮らす家族・近隣・民生委員との連携
家族が遠方にいる場合は、近隣の人や民生委員など、地域の見守りが頼りになります。気づいたことは、地域包括支援センターに相談できます。
離れて暮らす子にできることは、次のようなものです。
- 電話の様子や、帰省時の冷蔵庫・郵便物・服薬の状態を確認する
- 親の住所地の地域包括支援センターに、先に電話で相談する
- きょうだいで役割を分担し、一人に負担が集中しないようにする
「両親は大丈夫」と思っていても、生活が回らなくなっていることがあります。気になる変化があれば、早めに窓口へ連絡してください。行方不明の心配がある場合の自治体の取り組み(捜索や事前登録など)の有無や内容は、市区町村に確認できます。
要介護認定と介護保険サービスの使い方
介護保険サービスを使うには、要介護認定の申請が必要です。ここでは、申請の流れと、在宅で組み合わせやすいサービスを紹介します。
要介護認定の申請の流れ
厚生労働省の介護サービス情報公表システムによると、流れは次のとおりです。まず市区町村の窓口に申請します。そのとき、介護保険被保険者証(40〜64歳の人は医療保険証)が必要です。次に、調査員が自宅を訪問して心身の状況を調べます。主治医意見書は市区町村が主治医に依頼し、自己負担はありません。結果の通知は原則30日以内に届きます。
要介護1以上と認定された場合は、居宅介護支援事業者のケアマネジャーにケアプランの作成を依頼します。要支援1・2の場合は、地域包括支援センターが担当します。申請を代わりに行ってもらえるかどうかは、市区町村や地域包括支援センターに確認してください。
認定を受けたあとに使えるサービスを見ていきます。
在宅で組み合わせやすいサービス
介護サービス情報公表システムが示す代表的な在宅サービスは次のとおりです。
- 訪問介護:入浴、排泄、食事などの介護や、生活支援を受ける
- 通所介護(デイサービス):日中に施設へ通う
- 短期入所生活介護(ショートステイ):短期間、施設に泊まる
- 小規模多機能型居宅介護:通いを中心に、訪問や泊まりを組み合わせる
- 居宅介護支援:ケアマネジャーがケアプランを作る
どのサービスが合うかは、認定の結果と本人たちの状況によって異なります。ケアマネジャーに、困っていることを具体的に伝えて相談してください。
介護者の休息と短期入所
介護する側が疲れ切る前に、休息を取る仕組みも大切です。ショートステイを使うと、一定期間、介護から離れて休むことができます。利用の計画は、ケアマネジャーに相談して立てます。
認知症の人と家族のための専門的な支援
介護保険サービスのほかにも、認知症の人と家族を支える専門的な仕組みがあります。窓口は多くの場合、地域包括支援センターや市区町村です。
認知症初期集中支援チーム
認知症初期集中支援チームは、複数の専門職が、認知症が疑われる人や認知症の人とその家族を訪問し、アセスメント(状況を聞き取り、必要な支援を整理すること)や家族支援を行う仕組みです。支援期間はおおむね6か月です。
対象は、40歳以上で在宅で暮らす、認知症が疑われる人または認知症の人です。医療・介護サービスを受けていない、あるいは中断している人や、サービスを受けていても行動・心理症状が顕著で対応に苦慮している人が当てはまります。チームは、地域包括支援センター、診療所、病院、認知症疾患医療センター(認知症の診断や相談を行う専門の医療機関)、市町村本庁などに置かれています。詳しくは認知症初期集中支援チームとはをご覧ください。
認知症地域支援推進員・認知症カフェ・認知症ケアパス
厚生労働省の主な認知症施策には、次のものがあります。
- 認知症地域支援推進員:医療・介護の支援ネットワークの構築や、相談支援に取り組む
- 認知症カフェ:本人や家族が、地域住民や専門家と交流できる場
- 認知症ケアパス:生活機能の低下に応じて、いつ、どこで、どんな医療・介護サービスを受けられるかの流れをまとめたもの
実施の有無や内容は市区町村によって異なるため、お住まいの地域の窓口で確認してください。
認知症基本法と基本計画
国の施策の枠組みとして、認知症基本法(令和5年法律第65号)があり、同法にもとづく認知症施策推進基本計画が令和6年12月3日に閣議決定されました。内閣官房の認知症施策推進本部のページで公表されています。日々の困りごとは、市区町村の窓口や地域包括支援センターが具体的に支援する領域です。
お金や契約を守る支援
判断力が下がると、契約や金銭の管理が難しくなります。代表的な二つの制度を、表で比べます。
日常生活自立支援事業と成年後見制度の比較
| 観点 | 日常生活自立支援事業 | 成年後見制度 |
|---|---|---|
| 対象 | 判断能力が不十分な認知症高齢者等のうち、契約の内容を理解できる人 | 認知症などでひとりで決めることが心配な人 |
| 内容 | 福祉サービスの利用援助、行政手続き・日常生活上の契約の援助、日常的な金銭管理、定期的な訪問 | 契約や手続きを支える。法定後見(判断力が低下した後)と任意後見(元気なうちに備える)がある |
| 窓口 | 市区町村の社会福祉協議会が担う場合が多い | 中核機関など。地域包括支援センターにも相談できる |
日常生活自立支援事業
実施主体は都道府県・指定都市の社会福祉協議会です。利用には、契約できる程度の判断能力が前提となります。そのため、症状が進む前の早い段階で相談しておくことが役立ちます。条件の詳細は窓口で確認してください。なお、要介護認定で使われる「認知症高齢者の日常生活自立度」とは別の仕組みです。
成年後見制度
厚生労働省の「成年後見はやわかり」では、法定後見と任意後見があることが説明されています。夫婦のどちらも判断能力が低下すると、お互いに代わりの手続きを行うことが難しくなります。どちらの制度が適するか、いつ検討するかは個別の事情で異なります。地域包括支援センターは成年後見制度の活用促進も担っているため、相談できます。
金銭トラブルを避けるために
金銭の管理を本人だけに任せきりにせず、通帳や印鑑の保管、口座の見守りなどについて、家族や支援者と話し合っておくことが重要です。具体的な契約や財産の扱いは、市区町村の窓口や社会福祉協議会、専門家に相談してください。この記事は一般的な情報の整理であり、個別の法的助言ではありません。
家族が備えておきたいこと・注意点
最後に、家族が事前に整えておきたいことと、制度の変更への向き合い方をまとめます。
早めに準備しておくこと
状況が進んでから対応するよりも、早い段階で準備しておく方が選択肢は広がります。次の点を家族で共有しておくとよいでしょう。
- かかりつけ医と、服薬している薬の一覧
- 地域包括支援センターの連絡先
- 要介護認定の申請をしているか、介護保険被保険者証の保管場所
- 金銭管理や契約についての本人の希望
本人の意思を確かめやすいのは、判断力が保たれているうちです。将来の暮らし方についての考えを、元気なうちから話し合っておくことが、後の選択を助けます。施設への入所を含む住まいの選択は、本人の希望と状況によって異なるため、窓口やケアマネジャーに相談しながら決めていきます。
家族の誰かが一人で負担を背負うのではなく、きょうだいで役割を分担し、サービスや地域の支援を使うことが、本人たちの暮らしを支えることにつながります。
制度は改定されうる点に注意
制度は改定されることがあります。最新の状況は、お住まいの市区町村や厚生労働省で確認してください。
本記事の数値は、国民生活基礎調査(2022年・2025年)、厚生労働省の推計、消防庁の統計などの公表時点のものです。制度の名称や要件、窓口の運営は変わることがあります。
まとめ
ここまでの内容を整理します。
- 認認介護は、双方に認知症がある状態を指す通称で、法令上の定義や公的な組数の統計は確認できていない
- 老老介護は年齢の概念で、同居の介護の37.1%が75歳以上同士で担われている(2025年)。認知症高齢者は2025年に約471.6万人と推計されている
- 熱中症、住宅火災、服薬、金銭管理、介護疲れ、孤立など、生活の安全に関わる心配ごとに早めに備える
- 最初の相談先は、全国5,487か所の地域包括支援センター。気になる段階で相談できる。高齢者や家族介護者の総合相談を行っている
- 要介護認定、介護サービス、認知症初期集中支援チーム、日常生活自立支援事業、成年後見制度などを組み合わせられる
介護保険制度や各種支援制度の内容は、法改正や自治体の判断によって変わることがあります。利用する際は、最新の要件を厚生労働省の公表資料や、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。このサイトは特定の施設や事業者を評価・推奨するものではなく、公的資料にもとづく中立的な情報提供に努めています。