認知症初期集中支援チームとは、認知症が疑われるものの医療機関を受診していない人や介護サービスにつながっていない人を対象に、保健師・看護師等の専門職と専門医が自宅を訪問し、おおむね6か月間、集中的に早期診断・早期対応を支援する厚生労働省の事業です。対象は原則40歳以上で在宅生活を送る人。訪問支援自体は無料ですが、医療機関の受診料や介護サービス利用料は自己負担になります。相談は住まいの地域を担当する地域包括支援センターが窓口になります。この記事では制度の位置づけ、対象者の条件、支援の流れ、費用、他制度との違いまでを一次情報にもとづき解説します。
認知症初期集中支援チームとは
認知症初期集中支援チームは、認知症になっても本人の意思が尊重され、できるかぎり住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられるよう、早期診断・早期対応の体制を構築することを目的とした事業です。認知症の症状が疑われる段階から複数の専門職がチームを組んで自宅を訪問し、必要な医療・介護サービスへの導入を支援します。
制度の位置づけ
この事業は、国が策定した認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)における「早期診断・早期対応のための体制整備」の一環として位置づけられています。認知症は進行してから対応するのではなく、早い段階で気づき、専門的な支援につなげることで、本人と家族の生活の質を保ちやすくなるという考え方にもとづいています。
実施主体と委託先
実施主体は市町村です。市町村が直接実施する場合もありますが、地域包括支援センター、認知症疾患医療センター、診療所などに事業を委託することも認められています。委託先は自治体ごとに異なるため、どこが担当しているかは住んでいる市区町村の公式ページや地域包括支援センターで確認する必要があります。
チームを構成する専門職
認知症初期集中支援チームは、複数の専門職がチームとして関わる点が特徴です。単独の専門職が判断するのではなく、医療・介護それぞれの視点を持つ複数の職種と専門医が連携して支援方針を検討します。
医療・介護の専門職
チームには、保健師・看護師・作業療法士・社会福祉士・介護福祉士等の専門職と、認知症の専門医(認知症サポート医)を合わせて3名以上が配置されます。専門職には国家資格を保有し、認知症ケア等の実務経験がおおむね3年以上あることが目安とされています。訪問は原則として医療系職種と介護系職種がペアで行い、医療と介護双方の視点から状態を確認します。
認知症サポート医の役割
認知症サポート医は、チーム員会議において医学的な観点から助言を行う立場です。訪問で得られた情報をもとに、受診の必要性や適切な医療機関の選び方について専門的な判断を示し、チーム全体の支援方針の決定に関わります。本人や家族への直接の診断・治療行為は、実際の受診先の医療機関が担う点に注意が必要です。
支援を受けられる対象者の条件
この事業の対象は、原則40歳以上で在宅生活を送っている人のうち、次のいずれかの条件に当てはまる人です。
医療・介護サービスを受けていない人
1つ目の条件は、認知症が疑われるにもかかわらず、医療や介護のサービスにつながっていない人です。具体的には、認知症の診断を受けていない、医療機関にかかっているが継続的な医療を受けていない、介護保険サービスを利用していない、あるいは介護サービスの利用を中断しているといった状態が該当します。
サービス利用中でもBPSD(行動・心理症状)が顕著な人
2つ目の条件は、すでに医療や介護のサービスを利用している場合でも、認知症の行動・心理症状(BPSD)が顕著で、家族や周囲が対応に苦慮している人です。ただし、この事業は本来、サービスにつながっていない人への早期対応を主眼としており、2つ目の条件だけに支援対象が偏らないよう留意して運用することとされています。
相談から支援終了までの流れ
支援は、相談を受けてすぐに訪問するのではなく、情報収集からアセスメント、チームでの検討を経て段階的に進められます。
地域包括支援センターへの相談
最初の窓口は、多くの自治体で地域包括支援センターです(名称は自治体によって異なります)。本人や家族、ケアマネジャー、近隣住民、民生委員など誰でも相談できます。相談を受けたあと、訪問支援対象者かどうかの把握と情報収集が行われます。地域包括支援センターの業務全体については地域包括支援センターとはで解説しています。
訪問・アセスメント・チーム員会議
情報収集の後、専門職が自宅を訪問して初回のアセスメントを行います。得られた情報にもとづき、認知症サポート医を含めたチーム員会議で支援方針を検討し、初期集中支援を実施します。支援の過程では医療機関や介護サービス事業者など関係機関との連携も行われ、必要な医療・介護サービスへの導入につなげます。
支援期間の目安
支援期間はおおむね6か月が目安とされていますが、実際の運用は自治体によって幅があります(詳細は後述の自治体ごとの運用例を参照)。
支援にかかる費用
費用面での不安から相談をためらう人もいますが、この事業には無料の部分と自己負担の部分があります。
訪問支援自体は無料
認知症初期集中支援チームによる訪問支援そのものには、利用者の費用負担はありません。杉並区・墨田区の公式ページでも、チームの訪問支援自体は無料であることが明記されています。
医療機関の受診料・介護サービス利用料は自己負担
一方で、支援の結果として医療機関を受診した場合の診察料や検査料、介護保険サービスを利用した場合の利用料は、それぞれの制度の定めにもとづき自己負担が発生します。訪問支援そのものと、その先につながる医療・介護サービスの費用は別のものとして理解しておく必要があります。
地域包括支援センター・認知症カフェとの違い
認知症初期集中支援チームは、しばしば地域包括支援センターや認知症カフェと混同されますが、目的や関わり方が異なります。
地域包括支援センターとの役割の違い
地域包括支援センターは、介護予防や総合相談、権利擁護など幅広い業務を担う機関です。認知症初期集中支援チームは、この地域包括支援センター等に配置される専門チームで、認知症の早期対応という特定の役割に特化している点が異なります。多くの自治体では、地域包括支援センターへの相談が支援チームにつながる入口になっています。
認知症カフェとの目的・期間の違い
認知症カフェは、本人・家族・地域住民・専門職が交流し、認知症への理解を広げることを目的とした場で、利用期間の制限はなく、地域包括支援センター等が主体となって運営されています。これに対し認知症初期集中支援チームは、おおむね6か月間の期間を定めた訪問支援によって早期診断・サービス導入を図るもので、手法と期間の両面で認知症カフェとは異なります。認知症カフェの詳細は認知症カフェとはで解説しています。
自治体ごとの運用例
認知症初期集中支援チームは全国共通の枠組みですが、実際の運用は自治体ごとに細部が異なります。
対象年齢・支援期間の違い
支援期間については、前述のとおり杉並区の約6か月、松戸市の3〜6か月程度、福山市の6か月間、墨田区の原則月1回・最長6か月、東京都北区の約6か月など、自治体ごとに表現や運用に幅があります。同じ「おおむね6か月」という国の枠組みの中でも、実際の訪問頻度や終了の判断基準は地域差があるため、利用する自治体の窓口で具体的な運用を確認することが大切です。
相談窓口の名称の違い
相談窓口の名称も自治体によって異なります。多くの地域では地域包括支援センターが窓口ですが、「ケア24」「高齢者支援総合センター」「高齢者あんしんセンター」といった別名称で呼ばれている地域もあります。名称が異なっても、認知症の相談を受け付ける高齢者福祉の総合窓口である点は共通しています。
全国の設置状況
この事業は認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の中で、全国展開が目標として掲げられてきました。
新オレンジプランの目標値
厚生労働省の資料によると、認知症初期集中支援チームの設置は2015年度に306市町村で見込まれ、2018年度以降はすべての市町村で実施することが新オレンジプランの目標として示されています。実際の設置状況は自治体により導入時期が異なるため、居住地での実施状況は自治体の窓口で確認する必要があります。
支援につながったきっかけの実績データ
厚生労働省が実施した平成27年度の調査(対象560件)では、支援につながったきっかけは家族が44.3%と最も多く、その他20.3%、ケアマネジャー14.3%、医療機関6.8%、民生委員6.3%、近隣住民5.9%、本人2.1%という結果でした。同調査では、支援対象者の性別は女性63.7%・男性36.3%、年齢は80〜84歳が37.1%で最も多く、85歳以上が27.8%と続きます。世帯構成は独居31.8%、夫婦のみ30.2%、その他38.0%という内訳でした。
利用するときの注意点
実際に相談・利用する際には、次の点を踏まえておくと安心です。
家族だけで抱え込まず早めに相談する
前述の実績データでも、支援のきっかけの多くが家族からの相談でした。認知症が疑われる段階では、本人も家族も「まだ大丈夫」と受診や相談を先延ばしにしがちですが、家族だけで対応を抱え込む必要はありません。地域包括支援センターに相談すれば、必要に応じて認知症初期集中支援チームの訪問支援につながる可能性があります。施設への入所などを検討する段階に進んだ場合の考え方は認知症の方の施設選びとはでも解説しています。
本人の同意が得られない場合の対応
訪問支援は本人・家族の状況に配慮しながら進められますが、本人が受診や支援そのものに拒否的な場合もあります。そうした場合でも、チームは本人の意思を尊重しながら、家族や関係機関と連携して段階的に関わりを続ける姿勢で対応します。すぐに強制的な受診や介護サービス利用につなげるものではない点を理解しておくとよいでしょう。本人の同意が得られない状況でも、まずは家族だけで地域包括支援センターに相談してかまいません。
まとめ
- 認知症初期集中支援チームは、認知症が疑われるが医療・介護サービスにつながっていない人等を対象に、専門職と専門医がおおむね6か月間、集中的に自宅を訪問支援する事業
- 対象は原則40歳以上・在宅生活を送る人で、市町村が実施主体となり地域包括支援センター等に委託されることが多い
- 訪問支援自体は無料だが、その先の医療機関の受診料・介護サービス利用料は自己負担になる
- 支援期間や相談窓口の名称は自治体によって運用に幅があるため、居住地の地域包括支援センターで確認するのが第一歩
- 家族だけで抱え込まず、早い段階で相談することが、早期診断・早期対応につながりやすい
認知症を取り巻く制度は、介護保険の見直し等にともなって内容が変わることがあります。このサイトは特定の事業所やサービスを評価・推奨するものではなく、公的機関の情報にもとづく中立的な情報提供に努めています。運営方針の詳細はこのサイトの立ち位置をご覧ください。