介護離職防止措置とは、2025年(令和7年)4月1日に施行された改正育児・介護休業法で、事業主(会社)に課された介護と仕事の両立を支える義務のことです。介護に直面したと会社に伝えると、会社には制度を説明して利用の意向を確認する義務があり、説明がなければ都道府県労働局に相談できます。
この記事では、厚生労働省などの公的資料をもとに、その内容と使える制度、困ったときの相談先を整理します。内容は2026年11月時点の確認です。その後の法改正や、会社の就業規則による上乗せがありうる点にご留意ください。
介護離職防止措置とは
2025年4月施行の位置づけと対象
介護離職防止措置は、法律上の正式な名称というより、改正育児・介護休業法(令和6年法律第42号、令和6年5月31日公布)のうち、介護を理由とする離職を防ぐための事業主の義務をまとめて指す呼び方です。介護に関する改正部分は2025年4月1日に施行されました。
義務を負うのは従業員本人ではなく事業主です。従業員が自分で何かを届け出ないと始まる仕組みではなく、会社が研修や相談体制などの環境を整え、申出があった従業員に制度を伝える必要があります。
よくある誤解
よくある誤解を整理します。
- 「新しい休業制度ができた」わけではありません。介護休業や介護休暇などの既存制度を、会社が周知し使いやすくするための義務が加わったものです。
- 「介護の残業免除が広がった」わけでもありません。所定外労働の制限(定時を超える残業を免除してもらう制度)の対象を3歳未満から小学校就学前に広げたのは育児の改正で、介護の所定外労働の制限は従来どおりです。2025年10月1日施行分も、育児期の柔軟な働き方の措置など主に育児の内容で、介護の新ルールは4月施行分が中心です。
- 法は最低基準です。会社が法を上回る内容(日数の上乗せ、独自の休暇など)を定めることは差し支えなく、就業規則に上乗せがある場合があります。
2025年改正の全体像
4月施行の介護関連の改正点
2025年4月施行の介護関連の改正は、次の内容です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 介護休暇の対象拡大 | 労使協定(会社と従業員代表の取り決め)で除外できる人から「継続雇用6か月未満」を廃止 |
| 雇用環境整備 | 研修・相談体制など複数の措置のうち1つ以上を講じる義務 |
| 個別周知・意向確認 | 介護に直面した旨を申し出た従業員への周知と意向確認の義務 |
| 早期の情報提供 | 40歳等の従業員へ制度の情報を提供する義務 |
このほか、介護のためのテレワークが事業主の努力義務になりました(下記「介護のためのテレワーク」で説明します)。
雇用環境整備の4つの措置
いずれか1つ以上を講じる義務
事業主は、介護休業などを申し出やすい環境をつくるため、次の措置のうち少なくとも1つを講じなければなりません。複数の措置を講じることが望ましいとされています。
- 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施。研修があれば、制度の内容を知る機会になります。
- 相談体制の整備(相談窓口の設置など)。相談窓口があればまずそこに申し出られます。
- 自社の従業員による制度の利用事例の収集・提供。同じ職場の事例を、自分の場合の参考にできます。
- 制度と利用促進に関する方針の周知。方針が示されていれば、制度を使ってよいことを確認できます。
対象となる両立支援制度
整備の対象は、次の5つの制度です。
- 介護休暇
- 所定外労働の制限(定時を超える残業を免除してもらう制度)
- 時間外労働の制限(法定労働時間を超える残業の上限を設ける制度)
- 深夜業の制限
- 所定労働時間の短縮等の措置
介護のためのテレワーク
介護のためにテレワークを選べるようにすることは、事業主の努力義務です。義務ではないため、導入するかどうかは会社によります。人事・総務に確認してください。
介護に直面した旨を申し出たときの個別周知・意向確認
周知される3つの事項
従業員が介護に直面した旨を申し出た場合、事業主は次の事項を知らせたうえで、制度を利用する意向を確認する必要があります。
- 介護休業制度や介護両立支援制度等の内容
- 制度の申出先(例:人事部など)
- 介護休業給付金に関すること
周知の方法
方法は、面談(オンラインも可)、書面の交付、FAX、電子メールのいずれかです。ただし、FAXと電子メールは労働者が希望した場合に限られます。
取得を控えさせる周知は認められない
制度の取得や利用を控えさせるような個別周知・意向確認は認められません。意向確認は、利用を促すか抑えるかの場ではなく、本人の意向を把握し制度を使えるようにするためのものです。
40歳等での早期の情報提供
提供の時期は2通り
介護はある日突然始まることが多いため、介護に直面する前の早い段階で情報を得られるよう、40歳等の従業員への情報提供が義務づけられました。時期は、次のいずれかです。
- 40歳に達する日の属する年度の1年間
- 40歳に達した日の翌日から1年間
提供する事項と望ましい事項
提供する事項と方法は、個別周知と同様です。加えて、次の3制度の趣旨を伝えることが望ましく、介護保険制度の周知も望ましいとされています。
| 制度 | 趣旨 |
|---|---|
| 介護休業 | 介護の体制を構築するため、一定期間休業する場合 |
| 介護休暇 | 日常的な介護ニーズへのスポット対応 |
| 所定労働時間の短縮措置等 | 日常的な介護ニーズへの定期的な対応 |
介護保険制度のリーフレット
厚生労働省は、40歳向けの介護保険制度のリーフレットも用意しています。介護保険は40歳から保険料の負担が始まる制度で、介護保険制度の全体像は厚生労働省のページで確認できます。
介護休暇の対象拡大
労使協定で除外できる人の見直し
介護休暇では、労使協定を結べば対象から除外できる人から、「継続雇用6か月未満」が廃止されました。これにより、入社して6か月未満の従業員も介護休暇を取得できます。除外できるのは、週の所定労働日数が2日以下の人のみです。介護休暇の仕組みは介護休暇とはで詳しく整理しています。
使える両立支援制度の全体像
介護休業と介護休暇
| 項目 | 介護休業 | 介護休暇 |
|---|---|---|
| 日数・回数 | 対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限 | 年5日 |
| 分割・単位 | 3回まで分割して取得できる | 1日単位または時間単位 |
| 賃金 | 支払い義務は事業主にない(雇用保険の給付金あり) | 会社の規定による |
| 対象家族が2人以上の場合 | 対象家族1人ごとに通算93日 | 年10日 |
詳しくは介護休業とはをご覧ください。
労働時間に関する制度
| 制度 | 期間・回数 | 請求・その他 |
|---|---|---|
| 所定労働時間の短縮等の措置 | 利用開始から3年以上の期間内に2回以上利用可 | 下記の選択肢から会社が措置を選ぶ |
| 所定外労働の制限 | 1回1か月以上1年以内、回数制限なし | 請求は開始予定日の1か月前まで |
| 時間外労働の制限 | 1回1か月以上1年以内、回数制限なし | 月24時間・年150時間を超える時間外労働を制限 |
| 深夜業の制限 | 1回1か月以上6か月以内、回数制限なし | 午後10時〜午前5時が対象 |
所定労働時間の短縮等の措置の選択肢は、次の8つです。
- 短時間勤務
- 週や月の所定労働時間の短縮
- 所定労働日数の短縮
- 個別に請求した日時の労働の免除
- フレックスタイム
- 時差出勤
- 介護サービス費用の助成
- これらに準ずる措置
介護休業給付金
介護休業中の収入を支える公的な給付として、雇用保険の介護休業給付金があります。給付額は原則として次の式で計算されます。
休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
主な要件は次のとおりです。
- 雇用保険に加入していて、休業前の2年間に12か月以上の被保険者期間があることが目安(詳細はハローワークで確認してください)
- 各支給単位期間の就業日数が10日以下
- 休業中に賃金が80%以上支払われる場合は不支給
手続きは、原則として事業主を経由してハローワークに行います。給付の上限額は毎年8月に改定されるため、最新額はハローワークでご確認ください。詳しくは介護休業給付金とはで解説しています。
対象家族と対象労働者・要介護状態の考え方
対象家族は7者
介護休業などの対象家族は、次の7者です。同居していなくても対象になります。
- 配偶者(事実婚を含む)
- 父母
- 子
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
- 配偶者の父母
要介護状態の考え方
要介護状態とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態です。判断は厚生労働省の12項目の表を使い、次のいずれかに当てはまる場合に該当します。
- 状態2が2つ以上あり、その状態が継続すると見込まれる
- 状態3が1つ以上あり、その状態が継続すると見込まれる
- 要介護2以上である
この判断基準は、障害のある人や医療的ケアが必要な人への配慮を背景に見直しが行われました。詳細は厚生労働省の資料を確認してください。
要介護認定を受けていなくても、要介護2未満でも、対象になりうるとされています。「要介護2未満だから」「診断書がないから」と断られた場合は、都道府県労働局に相談できます。
対象労働者と除外できる場合
介護休業の対象は、日々雇用を除く男女の労働者です。有期雇用の場合は、取得予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約期間が満了することが明らかでないことが要件です。労使協定がある場合は、次の人を対象から除外できます。会社の就業規則に上乗せがある場合もあります。
| 除外できる人 | 介護休業 | 介護休暇 |
|---|---|---|
| 継続雇用の期間が短い人 | 1年未満は除外できる | 除外できない(6か月未満の除外は廃止) |
| 申出の日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな人 | 除外できる | この除外は設けられていない |
| 週の所定労働日数が2日以下の人 | 除外できる | 除外できる |
会社から説明がないとき・困ったときの相談先
相談先の整理
| 困りごと | 相談先 |
|---|---|
| 育児・介護休業法、会社の対応、両立支援 | 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) |
| 介護休業給付 | ハローワーク |
| 介護の困りごと全般 | 地域包括支援センター |
| 介護保険の手続き | 市区町村の介護保険担当課 |
| 中小企業の両立支援(無料の訪問支援) | 仕事と家庭の両立支援プランナー |
介護のことで最初にどこへ相談すればよいか分からない場合は、地域包括支援センター(詳しくは当サイトの地域包括支援センターの記事をご覧ください)が総合的な相談窓口になります。厚生労働省には「介護休業制度 特設サイト」もあります。
不利益取扱いの禁止と事業主の義務
制度を申し出たことや利用したことを理由とする解雇などの不利益取扱いは禁止されており、ハラスメント防止措置も事業主の義務です。会社内で解決しない場合は、労働局による苦情処理、紛争解決の援助や調停があります。勧告に従わない事業所は、事業所名が公表される場合があります。
育児と介護が重なる場合
育児と介護が同時進行する場合の仕組みは、当サイトのダブルケアの記事を参照してください。
退職を決める前に
退職を決める前に使える制度を確認できます。次の順に進めてください。
- 会社の人事・総務に、介護に直面したと申し出る。
- 制度の説明を受け、利用したいかどうかの意向を伝える。
- 説明がない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談する。
- 介護そのものの困りごとは、地域包括支援センターに相談する。
数字で見る働く介護者と介護離職
介護をしながら働く人
総務省の令和4年(2022年)就業構造基本調査によると、介護をしながら働く人は364.6万人です。2012年は291.0万人、2017年は346.3万人で、増加が続いています。
介護・看護を理由とする離職
過去1年間に介護・看護のために離職した人は、2022年で約10.6万人(男性2.6万人、女性8.0万人)で、男性の比率は24.7%です。年ごとの人数は次のとおりです。
| 年 | 人数 |
|---|---|
| 2007年 | 14.5万人 |
| 2012年 | 10.1万人 |
| 2017年 | 9.9万人 |
| 2022年 | 10.6万人 |
制度の利用状況と周知
調査時点で介護をしている雇用者322万人のうち、制度の利用ありは11.6%です。制度別の割合は次のとおりです。
| 制度 | 割合 |
|---|---|
| 制度の利用あり(全体) | 11.6% |
| 介護休業 | 1.6% |
| 短時間勤務 | 2.3% |
| 介護休暇 | 4.5% |
制度の利用ありは、正規の職員・従業員では15.0%、非正規では8.7%でした。
令和3年度の厚生労働省委託調査では、介護離職者の64.4%が介護休業制度を、40.5%が介護休暇制度を使いたかったと回答し、55.1%が「個別の周知があれば続けられた」と答えています。こうした調査結果も厚生労働省の説明資料で示されています。
まとめ
- 介護離職防止措置は、2025年4月施行の改正育児・介護休業法で事業主に課された義務で、令和6年法律第42号に基づく
- 個別周知・意向確認、40歳等への早期情報提供、雇用環境整備が柱で、取得を控えさせる周知は認められない
- 会社から説明がなければ、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できる
- 介護休業は通算93日・3回、介護休暇は年5日(2人以上で10日)で、要介護2未満や認定なしでも対象になりうる
- 制度の申出や利用を理由とする不利益取扱いは禁止されている
- 退職を決める前に、会社の担当部署か地域包括支援センターに相談する
このサイトは特定の事業者を評価・推奨せず、公的情報を並列に整理する編集方針です。詳しくはこのサイトの立ち位置をご覧ください。