介護保険負担限度額認定証とは|対象者の条件と食費・居住費の軽減額を解説

目次

「特別養護老人ホームに入所すれば、食費や部屋代は自動的に安くなる」——実はこれは誤解です。介護保険施設の食費・居住費を軽減するには、市区町村に申請して「介護保険負担限度額認定証」の交付を受ける必要があります。申請の有無だけで、たとえば単身で所得の低い方がユニット型個室に入所した場合、1か月あたり7万円以上の差が生じることもあります。

介護保険負担限度額認定証とは、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの介護保険施設に入所したとき、または短期入所(ショートステイ)を利用したときにかかる食費・居住費の自己負担を、所得や資産に応じて軽減するための証明書です。制度上の正式名称は「特定入所者介護サービス費」といいます。この記事では、対象施設・所得段階・預貯金要件・具体的な負担限度額(令和8年8月改定後の最新額)・申請方法までを、厚生労働省と自治体の公表情報にもとづいて解説します。

介護保険負担限度額認定証とは何か

介護保険施設に入所すると、介護サービス自体の利用料(1〜3割の自己負担)とは別に、食費と居住費(部屋代)が発生します。これらは原則として施設と利用者の契約にもとづく全額自己負担ですが、所得や資産が一定以下の方については、負担の上限額(負担限度額)が定められ、実際にかかる費用との差額を介護保険から給付する仕組みが設けられています。この給付を受けるために必要な証明書が「介護保険負担限度額認定証」です。

正式名称「特定入所者介護サービス費」との関係

制度としての正式名称は「特定入所者介護サービス費」(介護予防を含める場合は「特定入所者介護予防サービス費」)で、一般には「補足給付」とも呼ばれます。負担限度額認定証は、この特定入所者介護サービス費の支給を受けるために市区町村が交付する証明書という位置づけです。証明書自体に給付の効力があるわけではなく、対象者であることを施設に示すための書類という理解が実務上は分かりやすいでしょう。

なぜ認定証が必要なのか(施設サービス費と食費・居住費は別会計)

介護保険施設の費用は、介護サービス費(1〜3割の自己負担)と、食費・居住費・日用品費などの生活費相当分に分かれて計算されます。食費・居住費は介護保険サービスの対象外であり、原則として施設が定める額を利用者が全額負担します。認定証は、この食費・居住費の部分についてのみ軽減の対象になる仕組みで、介護サービス費自体の自己負担割合や、高額介護サービス費のような別の軽減制度とは対象になる費用が異なります。

よくある誤解(入所すれば自動的に軽減されるわけではない)

こうした誤解が生まれる背景には、介護サービス費自体は要介護度や所得に応じて自動的に1〜3割の自己負担に決まる仕組みがあり、食費・居住費も同じように自動で決まると思われやすい事情があります。しかし食費・居住費の軽減(特定入所者介護サービス費の支給)は、これとは別の手続きです。本人(または代理人)が市区町村に申請し、所得・資産の要件を満たしていると認められて認定証の交付を受けなければ適用されません。

申請をしなければ、所得や資産の状況にかかわらず軽減は適用されず、施設が定める基準費用額どおりの金額を負担することになります。入所が決まった時点、あるいは入所を検討し始めた段階で早めに申請の要否を確認しておくことが大切です。

対象になる施設・サービス

この制度は、すべての高齢者向け住まいの食費・居住費に使えるわけではありません。対象になる施設・サービスは制度上明確に決められています。

対象になる施設(特養・老健・介護医療院・ショートステイ)

対象となるのは、次の施設・サービスです。

  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設(在宅復帰を目指したリハビリテーションを中心に行う施設)
  • 介護医療院(医学的管理のもとで長期療養や医療的なケアを行う施設)
  • 短期入所生活介護(特別養護老人ホーム等で行うショートステイ)
  • 短期入所療養介護(介護老人保健施設等で行うショートステイ)

これらはいずれも介護保険法にもとづく施設サービス・短期入所サービスであり、食費・居住費の基準がすべて全国共通のルールで定められている点が特徴です。

対象にならない住まい(有料老人ホーム・サ高住・グループホームなど)

次のような住まいは、介護保険負担限度額認定証の対象にはなりません。

  • 有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
  • 認知症高齢者グループホーム
  • 養護老人ホーム

これらの住まいでは、家賃や食費、管理費などが施設ごとの契約によって個別に定められており、公的な負担限度額の仕組みは適用されません。特に有料老人ホーム・グループホーム、そして名称が1文字違いの「養護老人ホーム」(環境上・経済上の理由で生活が困難な高齢者のための福祉施設で、特別養護老人ホームとは別の制度です)は混同されがちです。しかしいずれも介護保険法上は特別養護老人ホームとは別の事業類型であり、この違いが認定証の対象になるかどうかを分けます。迷った場合は、パンフレットに記載されているサービスの種類を確認するか、施設の相談員に直接尋ねるとよいでしょう。

対象者の所得区分(第1〜第4段階)

負担限度額は、本人と世帯の所得状況に応じて第1段階から第4段階までの4区分(実質的には第3段階が①②に分かれるため5区分)に分けられています。

世帯・配偶者の住民税非課税要件

第1段階から第3段階②までの対象になるための共通の前提は、本人が属する世帯全員が市区町村民税非課税であることに加え、配偶者(世帯を分けている場合を含む)も住民税非課税であることです。次のようなケースでは、たとえ本人自身の年金収入が少なくても軽減の対象外になります。

  • 同居する子などに一定以上の所得があり、世帯全体が課税世帯になっている場合
  • 世帯を分けていても、配偶者に課税所得がある場合

自分がどの段階に当たるか分からないときは、市区町村から送付される(または本人が請求できる)住民税の課税・非課税証明書に記載された所得金額に、遺族年金・障害年金などの非課税年金も含めた年金収入を合わせて、下表の基準と照らし合わせて確認できます。正確な判定は市区町村が行うため、あくまで目安として利用してください。

第1段階〜第3段階②の区分

所得段階の目安は次のとおりです(令和8年8月からの基準)。

段階対象となる人の目安年金収入等+合計所得金額
第1段階生活保護受給者、または世帯全員が住民税非課税の老齢福祉年金受給者
第2段階世帯全員・配偶者が住民税非課税82万6,500円以下
第3段階①世帯全員・配偶者が住民税非課税82万6,500円超〜120万円以下
第3段階②世帯全員・配偶者が住民税非課税120万円超

「老齢福祉年金」は、明治44年4月1日以前生まれの方などを対象にした特別な年金で、現在の受給者はごくわずかです。多くの方は、老齢基礎年金・厚生年金など一般的な公的年金を受給しているため、第1段階に該当するのは主に生活保護受給者になります。ここでいう「年金収入等」には、老齢年金だけでなく遺族年金・障害年金などの非課税年金も含めて計算する点に注意してください。合計所得金額は、公的年金等以外の給与所得や事業所得なども合算した金額です。

第4段階は原則対象外

世帯に住民税が課税されている人がいる場合や、本人が住民税課税である場合は第4段階となり、原則として負担限度額の対象外です。第4段階の人が施設に入所した場合の食費・居住費は、施設が定める基準費用額(後述)を目安に、施設との契約で決められた金額を負担することになります。ただし、後述する「特例減額措置」に該当する場合は、第4段階であっても例外的に軽減を受けられることがあります。

預貯金等の資産要件

所得の要件を満たしていても、それだけで対象になるわけではありません。負担限度額の審査では預貯金等の資産状況もあわせて確認される点が、他の多くの介護保険の軽減制度と異なる特徴です。

段階ごとの基準額(単身・夫婦)

令和8年8月からの預貯金等の基準額(本人が単身の場合/配偶者がいる場合の合計額)は次のとおりです。

段階単身の基準額夫婦の場合の基準額(合計)
第1段階1,000万円以下2,000万円以下
第2段階650万円以下1,650万円以下
第3段階①550万円以下1,550万円以下
第3段階②500万円以下1,500万円以下

所得段階が上がるほど(負担能力が高いとみなされるほど)、認められる預貯金等の基準額は少なくなる仕組みです。生活保護受給者は預貯金等の要件そのものが問われません。

対象となる資産・ならない資産

ここでいう預貯金等に含まれるもの・含まれないものは、次のとおりです。

  • 含まれるもの:現金、普通・定期預金、有価証券(株式・国債・地方債・投資信託等)、金・銀(積立購入を含む)
  • 含まれないもの:自宅などの居住用不動産、生命保険、自動車、貴金属(宝石・骨董品等で時価評価が困難なもの)

価値評価が容易な有価証券や金・銀などは資産に含まれるため、「不動産や保険は対象外だから安心」と単純に考えず、通帳や証券口座の残高を含めて総合的に確認する必要があります。

世帯を分けている配偶者の扱い

住民票上の世帯を分けている(世帯分離をしている)配偶者がいる場合でも、前述のとおり負担限度額認定証の審査では配偶者の所得・預貯金等をあわせて確認します。申請の際には、本人だけでなく配偶者名義の通帳・証券口座についても、残高の記載があるページの写しを提出する必要があります。

食費・居住費の負担限度額はいくらか(2026年8月改定後の最新額)

負担限度額認定証の交付を受けると、食費・居住費について次の上限額までの負担で済み、施設が本来請求する基準費用額との差額は特定入所者介護サービス費として介護保険から施設に直接支払われます。以下は特別養護老人ホーム等(介護老人福祉施設)における令和8年8月1日以降の1日あたりの金額です。

食費の負担限度額

区分長期入所の食費(円/日)ショートステイの食費(円/日)
第1段階300円300円
第2段階390円600円
第3段階①680円1,030円
第3段階②1,420円1,360円
(参考)基準費用額1,545円

長期入所とショートステイでは基準が異なり、特に第3段階②はショートステイの方がやや低く設定されている点は見落としやすいため注意してください。

居住費の負担限度額(部屋タイプ別)

居住費は部屋のタイプと施設種別によって金額が異なります。特別養護老人ホーム等の場合の目安は次のとおりです。

部屋タイプ第1段階第2段階第3段階①第3段階②(参考)基準費用額
ユニット型個室880円880円1,370円1,470円2,066円
ユニット型個室的多床室550円550円1,370円1,470円1,728円
従来型個室380円480円880円980円1,231円
多床室0円430円430円530円915円

「ユニット型個室的多床室」とは、個室のように壁や家具で仕切られた、少人数単位(ユニット)で介護を行うタイプの多床室(相部屋)のことです。介護老人保健施設・介護医療院では、この表とは異なる基準が使われます。詳しくは次の項で解説します。

介護老人保健施設・介護医療院の場合の金額

介護老人保健施設・介護医療院は、多床室でも施設が室料を徴収するかどうかで基準費用額・負担限度額が分かれる点が特別養護老人ホームと異なります。令和8年8月1日以降の1日あたりの金額の目安は次のとおりです。

部屋タイプ第1段階第2段階第3段階①第3段階②(参考)基準費用額
従来型個室550円550円1,370円1,470円1,728円
多床室(室料を徴収する場合)0円430円430円530円697円
多床室(室料を徴収しない場合)0円430円430円430円437円

「室料を徴収しない多床室」は、療養室の床面積が1人あたり8平方メートル以上ある「その他型」「療養型」の介護老人保健施設や「Ⅱ型」の介護医療院などが対象で、施設の類型によって基準が細かく分かれています。同じ「多床室」でも施設の種類によって金額が変わるため、パンフレットや見積書に記載されている部屋タイプの名称を、市区町村や施設の窓口でよく確認してください。

基準費用額との差額が補足給付として支給される仕組み

上の表にある「基準費用額」は、施設が食費・居住費として請求できる標準的な金額の上限の目安です。負担限度額の対象者は、実際にはこの基準費用額ではなく、段階ごとの負担限度額までを施設に支払い、基準費用額との差額分が特定入所者介護サービス費として介護保険から施設に直接支払われます。利用者が差額を一旦立て替えて後から還付を受ける方式ではなく、はじめから軽減後の金額で請求される点が、高額介護サービス費などの「超過分を後から払い戻す」制度との大きな違いです。

具体的な負担額のイメージ(計算例)

実際にどのくらい負担が軽くなるのか、金額のイメージをつかむための例を紹介します。いずれも上で示した特別養護老人ホーム等の負担限度額をもとにした試算であり、実際の請求額は施設ごとの契約内容によって前後します。

単身・第2段階・ユニット型個室に入所した場合

  • 負担限度額(1日):食費390円+居住費880円=1,270円
  • 1か月(30日)の目安:38,100円
  • 認定証がない第4段階の場合の目安(基準費用額ベース):108,330円
  • 差額:月70,230円

夫婦世帯・第3段階①・従来型個室に入所した場合

  • 負担限度額(1日):食費680円+居住費880円=1,560円
  • 1か月(30日)の目安:46,800円
  • もう一方の配偶者は在宅で生活を続けるケースが多く、世帯としては施設分と在宅分の両方の生活費を見込んでおく必要がある

第1段階・介護老人保健施設の多床室(室料徴収なし)に入所した場合

  • 負担限度額(1日):食費300円+居住費0円=300円
  • 1か月(30日)の目安:9,000円(居住費の負担は生じない)
  • 第1段階は所得段階の中でもっとも手厚い軽減が適用される区分

2026年8月の制度改定でどう変わったか

上で示した金額は、令和8年(2026年)8月1日の改定を反映した最新額です。負担限度額・基準費用額は、介護報酬改定や社会情勢にあわせて随時見直されており、なぜ・どう変わったのかを知っておくと、次の改定にも備えやすくなります。

改定の背景

厚生労働省の周知資料によると、令和8年8月からの改定は、令和7年度の年金額改定を踏まえた利用者負担段階の基準の見直し(第2段階の所得基準を「80.9万円以下」から「82万6,500円以下」に変更)と、食費・居住費の基準費用額の引き上げにあわせて行われたものです。施設で暮らす人と在宅で生活する人との費用負担の公平性や、光熱費・食材費などの物価動向を踏まえた見直しとされています。

改定前後の比較

令和8年8月の改定では、第3段階①・②に該当する人について、食費が日額30円〜60円、居住費は第3段階②の一部区分のみ日額100円引き上げられました。第1段階・第2段階の負担限度額は据え置かれており、影響を受けるのは主に第3段階の人です。

項目令和8年7月まで令和8年8月から
食費・第3段階①650円680円
食費・第3段階②1,360円1,420円
居住費(多床室)・第3段階②430円530円
食費の基準費用額1,445円1,545円

負担限度額の対象にならない第4段階の人にとっても、基準費用額が引き上げられたことで実質的な食費負担が増える改定になっています。

過去の改定(2024年8月)から見る改定の頻度

この制度の金額は、3年ごとの介護保険制度全体の見直しとは別に、比較的短い間隔で調整されることがあります。たとえば令和6年(2024年)8月には、在宅で生活する人との公平性等を踏まえ、居住費の負担限度額が日額60円引き上げられました。このときは、従来から負担限度額を0円としていた第1段階の多床室利用者については、負担が増えないよう据え置く配慮がなされています。

このように、負担限度額や基準費用額はたびたび見直される可能性があるため、本記事の金額は令和8年8月時点のものとして参考にし、実際に申請・入所する際は市区町村や施設に最新額を確認してください。

申請方法・必要書類・有効期間

要件を満たしていても、申請をしなければ認定証は交付されません。市区町村に申請し、審査を経て認められた場合に交付される仕組みです。

申請窓口と申請できる人

申請先は、本人の住所地の市区町村の介護保険担当窓口です。申請できるのは本人のほか、家族などの代理人、施設のケアマネジャーや相談員が代行するケースもあります。

入所前・入所後どちらのタイミングでも申請できますが、軽減が適用されるのは原則として申請した月からのため、施設利用が始まる前後で早めに申請しておくことが望ましいでしょう。審査から認定証の交付までは自治体によって差があり、即日ではなく数週間程度かかることもあるため、入所のスケジュールに余裕を持って手続きを進めてください。

必要書類

一般的に必要とされる書類は次のとおりです(自治体によって様式や名称が多少異なります)。

  • 介護保険負担限度額認定申請書(同意書を含む様式が多い)
  • 本人および配偶者名義のすべての預貯金通帳・証券口座等の写し(残高のわかるページ)
  • 本人確認書類の写し
  • マイナンバー(個人番号)が確認できる書類
  • 生活保護受給者は不要な場合が多いが、受給していることを証明する書類が求められることもある

通帳の写しは、記帳が最新の状態になっているページを含めて提出する必要があります。申告した内容と通帳残高に食い違いがあると、審査に時間がかかったり追加の資料提出を求められたりすることがあります。本人が窓口に出向けない場合は、家族や成年後見人が代理で申請できます。ただし委任状や代理人の本人確認書類を求められることがあるため、事前に窓口へ確認しておくと手続きがスムーズです。

認定証の有効期間と更新

認定証の有効期間は次のとおりです。

  • 継続して認定を受けている人:原則として毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間
  • 年度の途中で新たに申請した人:申請した月の1日から、その年の7月31日まで

継続して施設を利用する場合は、有効期間が切れる前に毎年更新の申請が必要になります。多くの市区町村では、前年度に認定を受けていた人に対して6〜7月頃に更新案内・申請書を送付する運用をとっていますが、案内が届かない場合や新たに申請する場合は自分から窓口に問い合わせてください。更新申請が遅れると、有効期間の切れ目に軽減が適用されない期間が生じることがあるため注意してください。

申請が認められないケース・注意点

要件を満たしていないと判断されると、申請しても認定証は交付されません。よくあるケースを確認しておきましょう。

資産要件を超えている場合

所得段階の要件を満たしていても、預貯金等の合計額が段階ごとの基準額を超えていれば対象外になります。たとえば年金収入だけを見ると第2段階に該当しそうでも、退職金や保険の解約返戻金などでまとまった預貯金がある場合は、基準額を超えて第4段階(対象外)と判定されることがあります。申請前に、通帳や証券口座の残高を本人・配偶者分あわせて確認しておくとよいでしょう。

世帯分離を検討する際の注意点

同居する子の所得を理由に、本人だけ住民票上の世帯を分ける(世帯分離をする)対応を検討する家庭がありますが、前述のとおり配偶者が世帯を分けている場合はその配偶者の課税状況もあわせて審査されるため、世帯分離だけで要件を満たせるとは限りません。また、世帯分離は高額介護サービス費など他の負担軽減制度の判定にも影響することがあります。負担限度額認定証だけを見て判断せず、世帯構成を変更する前に市区町村の窓口へ相談し、他の制度への影響もあわせて確認してください。

虚偽申告のペナルティ

預貯金等の申告に不正があり、実際には基準額を超える資産を保有していたことが後日判明した場合、認定は取り消され、すでに軽減を受けていた差額分(特定入所者介護サービス費相当額)の返還を求められることがあります。返還にあたって加算金が課される場合もあるため、通帳や証券口座の一部を申告から漏らすことのないよう、正確に申告することが重要です。

高齢夫婦世帯などのための特例減額措置

第4段階に該当し本来は負担限度額の対象外となる場合でも、一定の要件を満たせば例外的に食費・居住費が軽減される「特例減額措置」が用意されています。

対象になりうるケース

典型的に想定されているのは、夫婦のどちらかが施設に入所して食費・居住費を負担することにより、在宅に残るもう一方の配偶者の生活が経済的に困難になってしまうケースです。世帯全員が課税されているために通常は第4段階となる世帯であっても、入所にともなう出費で生活が立ち行かなくなる状況を防ぐための救済的な仕組みという位置づけです。

一般的な要件の目安

要件の詳細は自治体ごとの案内で確認する必要がありますが、一般的な要件は次のとおりです(令和8年8月時点)。

  • 世帯員(世帯を分けている配偶者を含む)が2人以上であること
  • 世帯および配偶者の年間収入から施設利用者負担見込み額を差し引いた額が82万6,500円以下であること
  • 現金・預貯金・有価証券等の合計額が450万円以下であること
  • 居住用の住宅など日常生活に必要な資産以外に活用できる資産を有していないこと
  • 介護保険料を滞納していないこと

該当する可能性がある場合は、通常の負担限度額認定の申請とあわせて、市区町村の窓口で特例減額措置についても相談してください。

高額介護サービス費など他の負担軽減制度との違い

介護保険には複数の負担軽減制度があり、名称や仕組みが似ているため混同されがちです。特に高額介護サービス費とは対象になる費用がまったく異なるため、整理しておきましょう。

制度の目的の違い

項目介護保険負担限度額認定証(特定入所者介護サービス費)高額介護サービス費
軽減する費用施設・ショートステイの食費・居住費介護サービス費の自己負担(1〜3割)
対象になるサービス特養・老健・介護医療院・短期入所生活介護・短期入所療養介護在宅サービス・施設サービス全般
判定に使う基準世帯・配偶者の課税状況+預貯金等の資産要件世帯の課税状況(所得区分)
手続きのタイミング事前に認定証の交付を受け、利用時から軽減後の金額で請求される上限額を超えた月の後で申請し、超過分が払い戻される
有効期間原則1年(毎年8月1日〜翌年7月31日)ごとの更新が必要申請ごと(口座登録後は自動化される自治体が多い)

併用できるのか

この2つの制度は軽減する費用の範囲が異なるため、要件を満たせば併用できます。たとえば特別養護老人ホームに入所している住民税非課税世帯の方であれば、負担限度額認定証で食費・居住費を軽減しつつ、介護サービス費の自己負担が所得区分ごとの上限額を超えた分については高額介護サービス費として払い戻しを受けられる場合があります。

それぞれ申請窓口・必要書類・更新時期が異なるため、施設入所が決まったら両方の制度について市区町村の窓口でまとめて確認しておくと手続き漏れを防ぎやすくなります。なお、いずれの制度も、そもそも要介護認定を受けて介護保険施設への入所要件を満たしていることが前提になる点も押さえておきましょう。

社会福祉法人等による軽減制度との違い

負担限度額認定証や高額介護サービス費とは別に、サービスを提供する社会福祉法人が独自に利用者負担を軽減する「社会福祉法人等による利用者負担軽減制度」もあります。主な対象要件(単身世帯の場合)は次のとおりです。

  • 市町村民税非課税であること
  • 年間収入が150万円以下(世帯員が1人増えるごとに50万円を加算)
  • 預貯金等が350万円以下(世帯員が1人増えるごとに100万円を加算)
  • 軽減事業を実施している社会福祉法人等を利用していること

すべての社会福祉法人が実施しているわけではなく、実施の有無や軽減の内容は法人ごとに異なるため、負担限度額認定証と混同しないよう、利用中または利用予定の施設が実施しているかどうかを個別に確認してください。

まとめ

  • 介護保険負担限度額認定証は、特養・老健・介護医療院・ショートステイの食費・居住費を軽減する証明書(正式名称は「特定入所者介護サービス費」)で、入所すれば自動的に軽減されるわけではなく、市区町村への申請と認定証の交付が必要
  • 対象になるには、世帯全員・配偶者が住民税非課税であることに加え、預貯金等が段階ごとの基準額(単身500万〜1,000万円、夫婦1,500万〜2,000万円)以下であることが必要
  • 負担限度額は令和8年8月に改定され、第3段階①・②の食費が日額30〜60円、居住費(一部区分)が日額100円引き上げられた
  • 有効期間は毎年8月1日から翌年7月31日までで、継続利用には毎年の更新申請が必要
  • 介護サービス費自体の自己負担を軽減する高額介護サービス費とは別の制度であり、要件を満たせば両方を併用できる

まずは本人・配偶者名義の預貯金通帳等を用意し、入所を検討している(または既に入所している)市区町村の介護保険担当窓口か、施設のケアマネジャーに相談することから始めてみましょう。なお、当サイトでは特定の施設やサービスの評価・推奨は行っておらず、公的データにもとづく中立的な情報提供に努めています。運営方針の詳細はこのサイトについてをご覧ください。

よくある質問

介護保険負担限度額認定証はどこで、誰が申請できますか?

本人の住所地の市区町村の介護保険担当窓口で申請します。本人のほか、家族などの代理人やケアマネジャーが代行して手続きするケースもあります。

自分がどの所得段階に当たるか、どうやって調べればいいですか?

住民税の課税・非課税証明書に記載されている所得金額と、年金収入等をあわせて、記事内の所得段階表と照らし合わせて確認できます。正確な判定は市区町村の窓口で行われるため、目安として使ってください。

有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に入居していても使えますか?

いいえ、対象外です。対象になるのは特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院と、これらのショートステイのみで、有料老人ホームやサ高住、グループホームの食費・居住費は対象になりません。

認定証の有効期間はどのくらいで、申請から交付まで日数はかかりますか?

有効期間は原則として毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間(年度途中の新規申請は申請月の1日から)で、継続利用には毎年の更新申請が必要です。交付までの期間は自治体によって異なり、数週間程度かかることもあるため、早めの申請が望ましいです。

預貯金がいくらまでなら申請できますか?

段階により異なり、令和8年8月時点で単身500万〜1,000万円以下、夫婦の場合は合計1,500万〜2,000万円以下が目安です。この基準額を超えると対象外(第4段階)になります。

高額介護サービス費とはどう違いますか?

高額介護サービス費は介護サービス費自体の自己負担(1〜3割)が上限を超えた分を払い戻す制度で、食費・居住費は対象外です。負担限度額認定証は逆に食費・居住費のみを軽減する制度で、要件を満たせば両方を併用できます。

参考・出典

  1. 介護保険最新情報 Vol.1506(令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し等に係る周知への協力依頼について) (厚生労働省老健局(独立行政法人福祉医療機構WAM NET掲載))
  2. 介護保険最新情報 Vol.1280(令和6年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直しに係る周知への協力依頼について) (厚生労働省老健局)
  3. サービスにかかる利用料(介護保険の解説) (厚生労働省(介護サービス情報公表システム))
  4. 介護保険負担限度額認定について(施設入所者等の食費・居住費の負担軽減) (前橋市)
  5. 介護保険負担限度額の認定について~介護保険施設を利用するときの居住費と食費~ (出雲市)
  6. 介護保険負担限度額認定制度について(施設入所時の食費・居住費を軽減する制度) (町田市)
  7. 介護保険負担限度額特例減額措置について (諏訪広域連合)
  8. 負担限度額認定証 (世田谷区)
  9. 社会福祉法人等による低所得者に対する利用者負担額軽減制度 (埼玉県)
  10. 令和8年8月からの介護保険施設等における居住費の負担限度額について (秋田県)