気になる施設が届出済みか分からないとき、国の公表システムと自治体窓口で確認できます。未届有料老人ホームとは、老人福祉法上の有料老人ホームにあたる実態がありながら、都道府県などへの届出がされていない施設のことです。厚生労働省の調査では、令和7年6月30日時点で全国に568件あり、届出施設17,883件に対する未届率は3.1%でした。
この記事では、届出が必要になる条件、確認方法、届出施設との違い、未届が続いた場合の指導や罰則を、厚生労働省や法令の資料にもとづいて整理します。なお「未届=すぐに違法で危険な施設」と決めつけることはできません。この568件には、自治体が有料老人ホームに該当するかどうかを実態調査している途中の施設も含まれるためです。
未届有料老人ホームとは何か
定義と対象範囲
有料老人ホームは、老人福祉法第29条第1項で定められた施設です。高齢者を入居させ、次の4つのうちいずれかのサービスを提供するものが該当します。ただし、老人福祉施設やグループホームなど、別の法律で位置づけられている施設は除かれます。
- 入浴、排せつ、食事の介護
- 食事の提供
- 洗濯、掃除などの家事
- 健康管理
このような施設を設置する人は、事前に施設の所在地の都道府県知事(指定都市・中核市にある場合は、届出を受け付けるその市の市長)へ届け出なければなりません。この届出をしないまま運営されている施設を、届出の有無で呼び分ける一般的な言い方で「未届有料老人ホーム」と呼びます。
届出の有無ではなく実態で決まる
厚生労働省の「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」には、届出の有無にかかわらず、入居サービスと介護等サービスの実態があれば有料老人ホームにあたると書かれています。つまり、届出をしていないから有料老人ホームではない、という理屈は通りません。
また、同指針は、入居サービスの提供者と介護等サービスの提供者が互いに紹介・あっせんし一体的に提供している場合も、有料老人ホーム事業として扱い得るとしています(指針の記述の紹介です)。
よくある誤解
未届という言葉から、次のような誤解が生まれがちです。
- 「届出」は施設の質を認める「認可」や「指定」ではない:標準指導指針は、届出は認可や指定とは異なり、実態のある施設から届出があれば自治体は受理を拒めないと説明しています
- 「未届の施設は必ず違法な運営をしている」とは言い切れない:厚生労働省の調査の未届件数には、実態を調査している途中の施設も含まれます
- 「届出済み=安心」と言い切ることもできない:届出は認可や指定ではないため、届出の有無だけではサービス内容の良し悪しは分かりません
当サイトは特定の施設を評価・推奨しません。ここでは、届出の有無という客観的な事実と、それに伴う制度上の違いだけを整理します。
届出義務の根拠と対象範囲
老人福祉法第29条が定める届出
届出義務は老人福祉法第29条第1項から第3項に定められています。第1項は、設置者が事前に届け出ることを定めています。届出先は、所在地の都道府県知事(指定都市・中核市の区域では市長)です。
届出をしない、または虚偽の届出をした場合は、後述するとおり罰則の対象になります。
平成18年の改正で対象が広がった
東京都福祉保健局のリーフレットなどによると、平成18年(2006年)4月の老人福祉法改正で、有料老人ホームの対象が広がりました。改正前は「入居者10人以上」かつ「食事の提供」が要件でしたが、改正後は人数の要件がなくなり、前述の4つのサービスのどれか1つで対象になります。
このため、1人からでも届出の対象になります。平成18年3月以前から始めていた事業も、届出が必要とされています。
名称が違っても対象になる
施設の名前が「有料老人ホーム」でない場合もあります。国の標準指導指針では、名称にかかわらず、要件を満たせば有料老人ホームに該当するとされています。名称ではなく、提供しているサービスの実態で判断されます。
パンフレットやホームページに「有料老人ホーム」と書かれていなくても、サービス内容を確認することが大切です。
届出の有無を確認する方法
介護サービス情報公表システムで調べる
厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」(https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/)では、生活関連情報の中で有料老人ホームを検索できます。施設名や所在地から、公表されている情報を確認できます。
ただし、検索で見つからないことは、未届を意味するとは断定できません。サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)は届出が不要ですし、情報の反映のしかたに自治体ごとの差がある可能性もあります。あくまで確認の入り口として使ってください。
所在地の自治体の窓口に問い合わせる
最終的な確認先は、施設の所在地を管轄する都道府県、指定都市、中核市の担当窓口です。老人福祉法にもとづく届出の受付と指導を行っているためです。電話などで、次のことを尋ねるとよいでしょう。
- その施設は有料老人ホームとして届出がされているか
- サ高住として登録されているか
- 届出済みの場合、届出されている類型や定員
- 現在、指導などが行われていないか(答えられる範囲)
自治体によっては、届出の受理を知らせる書類を発行している場合があります。たとえば名古屋市は届出受理通知書を発行しています。書類の有無や様式は自治体で異なるため、窓口で確認してください。
重要事項説明書と実態を照らす
届出をした有料老人ホームの設置者には、重要事項説明書(費用やサービスの内容を施設が説明する書面)の作成と情報開示が義務づけられています。
見学の際には、重要事項説明書の内容と、実際のサービスや費用、職員体制などに食い違いがないかを確認しましょう。書面の提示を求めても出してもらえない場合は、自治体の窓口に相談することを考えてください。
確認の流れ
調べる順序を整理すると次のようになります。
未届と分かったらどうするか
契約前に未届と分かった場合や、届出の有無が分からない場合は、確認が取れるまで契約を急がないという選択もあります。まず所在地の自治体の担当窓口に、届出の有無を確認してください。
すでに入居している施設が未届と分かった場合も、直ちに退去が必要になるとは限りません。所在地の自治体の窓口や、担当のケアマネジャー(介護支援専門員)などに相談してください。
類型とサービス付き高齢者向け住宅との関係
有料老人ホームの3つの類型
届出をした有料老人ホームは、次の3つの類型のいずれかで表示されます。
- 介護付:特定施設入居者生活介護の指定を受けたもの
- 住宅型:介護は外部の訪問介護などの事業所を利用する
- 健康型
サ高住は届出の対象外
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)として登録した住宅には、高齢者住まい法第23条により、老人福祉法第29条第1項から第3項(届出など)が適用されません。
ただし、標準指導指針は、サ高住には有料老人ホームに該当するものが多いので、自治体が適確に把握し、必要に応じて指導するよう求めています。サ高住の仕組みはサ高住の解説記事をご覧ください。
住宅型は届出が必要
住宅型有料老人ホームは、介護サービスを外部の事業所から受ける形ですが、有料老人ホームであることに変わりはなく、届出が必要です。「住宅」という名称が付いていても、サ高住の登録がされていなければ、届出の対象になる可能性があります。
サ高住の登録と有料老人ホームの届出のどちらに当たるのかは、施設の所在地の自治体で確認できます。
未届有料老人ホームの件数と推移
令和7年6月時点の件数
厚生労働省「令和7年度 有料老人ホームを対象とした指導状況等のフォローアップ調査(第17回)」の結果によると、令和7年6月30日時点の状況は次のとおりです。
- 届出がされている施設:17,883件(前年17,246件)
- 未届の施設:568件(前年584件)
- 未届率:3.1%(前年3.3%)
前年に未届だった584件のうち、40件は届出済みとなり、67件は有料老人ホームに該当しないと確認されました。一方で、令和7年6月時点でも未届のままの施設は477件あり、うち296件に自治体が指導を行っています。なお、この未届件数には、自治体が実態を調査している途中の施設も含まれます。
件数と未届率の推移
調査の資料から、未届率の推移を並べると次のようになります。
| 時点 | 届出施設数 | 未届件数 | 未届率 |
|---|---|---|---|
| 平成21年10月 | 4,864件 | 389件 | 7.4% |
| 平成26年10月 | 9,941件 | 961件 | 8.8% |
| 平成28年6月 | 11,739件 | 1,207件 | 9.3% |
| 平成29年6月 | 12,608件 | 1,049件 | 7.7% |
| 平成30年6月 | 13,354件 | 897件 | 6.3% |
| 令和元年6月 | 14,118件 | 665件 | 4.5% |
| 令和2年6月 | 14,695件 | 641件 | 4.2% |
| 令和3年6月 | 15,363件 | 656件 | 4.1% |
| 令和4年6月 | 15,928件 | 626件 | 3.8% |
| 令和5年6月 | 16,543件 | 604件 | 3.5% |
| 令和6年6月 | 17,246件 | 584件 | 3.3% |
| 令和7年6月 | 17,883件 | 568件 | 3.1% |
未届件数は平成28年6月の1,207件をピークに減少し、令和7年には568件になりました。届出施設の数は増え続けているため、未届率はさらに低く、平成28年の9.3%から3.1%へと下がっています。
都道府県による差
令和7年6月時点の未届件数を都道府県別に見ると、愛知県が80件、兵庫県が63件、大阪府が49件、神奈川県が47件などとなっています。地域差はありますが、これは確認できた件数であり、各地域の質を示すものではありません。確認先は、施設の所在地の自治体窓口です。
数字を読むときの注意
この件数は、自治体が把握し、調査で報告された未届施設の数です。調査中の施設も含まれるため、傾向をつかむ参考にとどめてください。
届出施設との違い
届出施設の設置者に課される義務
届出をした有料老人ホームの設置者には、法令や指針にもとづくさまざまな義務があります。厚生労働省の資料に示されている主なものは次のとおりです。
- 設置届の提出
- 帳簿の作成と保存
- 重要事項説明書の作成と情報開示
- 前払金(入居一時金など)を受け取る場合の保全措置(事業者が倒産しても前払金が戻るようにする仕組み)
- 類型(介護付、住宅型、健康型)の表示
厚生労働省の資料は、届出がないと行政が運営の実態を把握できず、入居者を守るための連携体制が十分にとれなくなるおそれがあるとしています。
情報公表の仕組み
有料老人ホームは、設置者が都道府県知事に報告し、その内容が公表されます。令和3年4月からは、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」の生活関連情報で、有料老人ホームを検索できるようになりました(令和3年6月23日付事務連絡)。システムの使い方は介護サービス情報公表システムの解説記事で説明しています。
前払金の保全措置
入居時に前払金を受け取る施設には、保全措置が義務づけられています。厚生労働省告示第266号では、前払金のうち予定償却期間の残りの期間に応じた額と500万円のいずれか低い額以上を保全するとされています。方法は、連帯保証委託、保証保険、信託、公益法人等との保全契約などです。詳しくは入居一時金の保全措置の解説記事をご覧ください。
令和7年6月時点の調査では、届出施設のうち前払金を受け取る2,384件で、保全措置がないのは25件(1.0%)でした。この数字は届出施設に限ったものです。保全措置の内訳は、連帯保証委託898件、信託773件、全国有料老人ホーム協会の入居者生活保証制度492件、保証保険76件、その他120件です。
厚生労働省は前払金の保全措置がない施設への重点指導を都道府県等に求めています。
行政の指導と罰則
立入検査と報告の求め
老人福祉法第29条にもとづき、都道府県知事などは、有料老人ホームの設置者に報告を求めたり、立入検査を行ったりできます。標準指導指針は、届出の有無にかかわらず指導の対象となるとしています。また、市町村が未届の疑いのある施設を見つけた場合は、都道府県に通知するよう努めることとされています。
改善命令と事業制限・停止命令
入居者の保護のために必要と認められるときは改善命令が、特に必要と認められるときは事業の制限や停止の命令が出され、命令をした場合は公示されます。指針は、届出がなくても命令や罰則を適用できるとしています。事業の停止を命じる場合には、入居者が介護などを継続して受けられるよう、助言や援助に努めることとされています。
罰則の一覧
老人福祉法に定められた罰則は、行為によって段階が分かれています。届出義務は設置者に課されるもので(第29条)、罰則は届出義務などの違反に対して定められています。
| 条文 | 行為 | 罰則 |
|---|---|---|
| 第40条 | 届出をしない、虚偽の届出をした、報告や検査に応じないなど | 30万円以下の罰金 |
| 第39条 | 改善命令に違反した場合 | 6か月以下の拘禁刑(刑務所などに収容する刑)または50万円以下の罰金 |
| 第38条 | 事業制限・停止命令に違反した場合 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
令和8年9月の厚生労働省の通知
令和8年9月25日付で、厚生労働省は都道府県等に対し、未届施設の速やかな実態把握と届出の指導、前払金の保全措置がない施設への重点的な指導を求めました。また、立入検査を拒んだり、改善命令に違反したりした場合は、罰則の適用も視野に厳正に対応するよう示しています。
有料老人ホームに関する相談とトラブルの状況
相談件数の推移
国民生活センターのPIO-NET(全国の消費生活相談を受け付けて記録するシステム)に寄せられた有料老人ホームに関する相談件数は、厚生労働省の検討会資料(令和7年4月28日)で次のように示されています。
- 2019年度:882件
- 2020年度:784件
- 2021年度:748件
- 2022年度:1,227件
- 2023年度:1,159件
- 2024年度:834件
2022年度と2023年度に増えた背景には、入居権の譲渡を持ちかける詐欺電話の相談が増えたことがあるとされています。
2024年度の相談内容
2024年度の相談を内容別に見ると、解約(全般)が248件(29.7%)、契約書・書面が237件(28.4%)、説明不足が156件(18.7%)、サ高住に関するものが146件(17.5%)、返金が145件(17.4%)でした。割合の合計が100%を超えることから、複数の内容にまたがる相談がある可能性があります。
事例として、退去時の原状回復費用として15万円を請求された、入院を理由に解約したところ敷金等として30万円を請求された、返金がされないといったものが挙げられています。
未届とトラブルの関係
これらの相談件数は有料老人ホーム全体のものです。資料には、未届施設に限った件数は記載されていません。したがって、未届施設のトラブルが多い、あるいは少ない、と数字から言うことはできません。
そのうえで、前述のとおり厚生労働省の資料は、届出がないと行政が運営実態を把握できず連携体制が不十分となるおそれがあるとしています。契約の前に書面で確認する姿勢が大切です。
契約前に家族で確認したいこと
書面で確認する項目
届出の有無にかかわらず、契約の前には次の点を書面で確認しておくと、後で食い違いが起きにくくなります。
- 入居時に支払う費用と、月々の費用の内訳
- 退去や解約の条件、返金の有無と計算方法
- 提供される介護や生活支援のサービスの範囲と、別料金になるもの
- 介護が必要になったときや医療が必要になったときの対応
- 運営している事業者の名称、所在地、連絡先
前払金がある場合
入居一時金など前払金がある場合は、保全措置の有無とその方法を書面で確認しましょう。内容があいまいなときは、所在地の都道府県・指定都市・中核市の担当窓口に確認する方法もあります。
本人と家族で話し合う
契約は入居する本人の意思が基本ですが、費用や将来の介護を考えると、家族と共有しておくことも大切です。契約を急がされたり、その場での申し込みを求められたりして迷うときは、いったん持ち帰って検討できます。特定の事業者を選ぶ・選ばないは、複数の情報を比べたうえでご自身で判断してください。
相談できる窓口
届出の有無や、施設に関する疑問の確認先は、所在地の都道府県・指定都市・中核市の担当窓口です。
今後の制度変更:有料老人ホームの登録制
登録制の創設
社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号、令和8年6月25日公布)により、有料老人ホームに登録制が創設されることになりました。厚生労働省老健局の資料によれば、入居者保護の必要性が高いホーム、つまり中重度の要介護者などを入居の対象とするホームが対象とされています。
施行時期と未確定の事項
施行日は、公布から2年を超えない範囲で政令で定める日とされています。政省令は年内の公布が予定されているとされていますが、これは予定であり、詳細は確定していません。登録の対象範囲や基準、現在の届出制との関係は、今後の政省令や厚生労働省の通知で確認が必要です。最新の情報は厚生労働省や自治体で確認してください。
まとめ
- まず施設名と所在地を控えて、所在地の自治体に届出の有無を確認しましょう。介護サービス情報公表システムでの検索は入り口です。サ高住は届出が不要なので、登録の有無も区別して確認します。
- 未届有料老人ホームとは、有料老人ホームの実態がありながら、都道府県等への届出がされていない施設のことです。届出の有無ではなく、サービスの実態で判断されます。
- 令和7年6月30日時点で未届は568件、未届率は3.1%です。平成28年の1,207件(9.3%)から減っていますが、調査中の施設も含まれます。
- 届出をしない場合は第40条で30万円以下の罰金、命令に違反すると第39条・第38条でさらに重い罰則があり、行政は届出がなくても命令を出せます。
- 契約前には重要事項説明書と契約書を受け取り、費用、解約・返金、前払金の保全措置を書面で確認しましょう。有料老人ホームの登録制は創設されましたが、施行日や詳細は未確定です。
制度改定への注意
有料老人ホームに関する法令や指針、介護保険制度は、見直しにより変わる場合があります。上記のとおり有料老人ホームの登録制も新たに創設されました。本記事は執筆時点の法令と厚生労働省などの資料にもとづいています。最新の情報は、厚生労働省や、施設の所在地の都道府県・市区町村の窓口で確認してください。当サイトの編集方針はこのサイトの立ち位置にまとめています。