介護施設の協力医療機関とは、施設が入所者の急変や入院に備え、運営基準にもとづいてあらかじめ定めておく連携先の医療機関です。2024年度(令和6年度)の改定で、その区分が「①相談対応 ②診療 ③入院受入(病院に限る)」と明確になりました。家族は施設に、協力医療機関の名称と、①②③をどの医療機関で満たしているかを確認できます。この記事は2026年9月29日時点で確認できた厚生労働省・自治体の資料にもとづきます。
家族が押さえる3点は次のとおりです。
- 協力医療機関の名称を施設に聞く
- 入院後に元の部屋へ戻れるとは限らない(再入所は「努める」規定)
- 重要事項説明書と契約書で、入院時の取扱いを確認する
協力医療機関とは何か
定義と役割
協力医療機関とは、介護保険施設などが運営基準にもとづき、あらかじめ定めておく連携先の医療機関です。特別養護老人ホーム(特養)の運営基準(省令39号第28条)では、第1項で「あらかじめ、協力医療機関を定めておかなければならない」と定められています。入所者の体調が急に悪くなったとき、施設の職員が医療機関へ相談でき、必要なら診てもらい、入院が必要なら受け入れてもらう。そうした流れを施設ごとに事前に決めておく仕組みです。
かかりつけ医・配置医師との違い
協力医療機関は、入所者一人ひとりが受診する「かかりつけ医」とは別の概念です。かかりつけ医は本人が選ぶ医師を指す一般的な言い方ですが、協力医療機関は施設が運営基準にもとづいて法人として定める連携先です。また、施設に医師が配置される仕組み(特養の配置医師、老健の医師など)は、施設種別ごとに別の基準で決められています。この記事は協力医療機関の規定に絞って扱い、配置医師の基準の詳細には触れません。
なお、協力医療機関は施設の中に併設された医療機関とは限りません。通知(老企43号)では、協力医療機関・協力歯科医療機関は施設から近距離にあることが「望ましい」とされていますが、近距離であることが要件そのものとして条文に書かれているわけではありません。
根拠と対象施設:種別による違い
どの施設に定めがあるか
協力医療機関の規定は、施設種別ごとの運営基準に置かれています。旭川市・香川県などが公表している厚労省資料の整理では、根拠条文は次のとおりです。
- 特別養護老人ホーム(省令39号第28条)
- 地域密着型介護老人福祉施設・地域密着型特養(省令第152条)
- 介護老人保健施設・老健(省令40号第30条)
- 介護医療院(省令第34条)
- 特定施設入居者生活介護・介護付有料老人ホーム等(居宅基準第191条)
- 認知症対応型共同生活介護・グループホーム(地域密着型基準第105条)
- 軽費老人ホーム・養護老人ホームにも同様の規定があります
種別ごとの要件の違い
大きな違いは、入院の受け入れ(要件③)を求められるかどうかです。
| 施設の種別 | 要件①相談対応 | 要件②診療 | 要件③入院受入 |
|---|---|---|---|
| 特養・地域密着型特養 | あり | あり | あり(病院に限る) |
| 老健・介護医療院 | あり | あり | あり(病院に限る) |
| 養護老人ホーム | あり | あり | あり(病院に限る) |
| 特定施設・軽費老人ホーム | あり | あり | なし |
| 認知症グループホーム | あり | あり | なし |
特養・老健・介護医療院・養護老人ホームは①②③のすべてを満たす協力医療機関を定めます。特定施設・グループホーム・軽費老人ホームは①②が対象で、③は含まれません。後者の3種別でも、協力医療機関を定めること自体は義務です。そのうえで①②を満たす医療機関にすることは努力義務(そうするよう努めなければならないという義務)とされています。
種別ごとの特徴は、特別養護老人ホームとはの記事でも解説しています。
2024年度改定で示された3つの要件
改定の内容
令和6年厚生労働省令第16号による改正では、次のア〜ウが運営基準に加わりました。
- ア:要件を満たす協力医療機関を定めること
- イ:年1回以上、協力医療機関と入所者の急変時等の対応を確認し、協力医療機関の名称等を指定権者(施設の指定を行う都道府県・市区町村など)に届け出ること
- ウ:入院した入所者が退院可能となったら、速やかに再入所できるよう努めること
相談対応・診療・入院受入の3要件
アでいう要件は、次の3つの区分です。
- ①相談対応
- ②診療
- ③入院受入(病院に限る)
どの区分が対象になるかは施設種別によって異なります(前述の表のとおり)。各区分の詳しい条文上の文言は、各条文と厚労省通知でご確認ください。
複数の医療機関の組み合わせ
3つの要件を1つの医療機関ですべて満たす必要はありません。たとえば①②を満たす医療機関と、③を満たす病院を組み合わせて、全体として要件を満たしてもよいとされています。
また、③は入所者専用の病床を確保することまでは求められていません。想定される連携先として、在宅療養支援病院、在宅療養支援診療所、地域包括ケア病棟(200床未満)を持つ医療機関、在宅療養後方支援病院などが挙げられていますが、これらに限定するものではありません(いずれも在宅療養や入院の受け皿として想定される医療機関の類型です)。令和6年度診療報酬改定で新設された「地域包括医療病棟」は、上記に該当する場合を除き、想定される連携先には含まれないとされています。
義務化の時期と経過措置
2027年3月31日までは努力義務
要件を満たす協力医療機関を定める規定には、経過措置(新しい基準へ移るために一定期間設けられる猶予の扱い)があります。令和6年改正省令の附則第6条により、読替えの期限は令和9年(2027年)3月31日までで、それまでは「定めておかなければならない」が「定めておくよう努めなければならない」に読み替えられ、努力義務となります。厚労省の事務連絡(令和6年7月5日)は、2027年3月末までに義務化されると示しています。
義務と努力義務は、次のように2段階で整理できます。
- 協力医療機関を定めること:現在も義務
- 要件を満たす医療機関にすること:2027年3月31日までは努力義務(特定施設・グループホーム・軽費老人ホームは、①②を満たすことが努力義務)
経過措置中の扱い
経過措置の期間中も、通知では可及的速やかに連携体制を構築することが望ましいとされています。要件を満たす協力医療機関をまだ確保できていない施設は、確保計画を併せて届け出ることになっています。
なお、自治体のページには「令和9年度末」と読める記載がある例もあります(福岡県のページなど)。この記事では、厚労省の資料と省令附則の記載に合わせて「2027年3月31日まで」としています。
年1回以上の確認と届出
「協議」ではなく「確認」
イの内容は、しばしば「年1回以上の協議」と書かれますが、条文の言い方は「確認」です。施設は年1回以上、協力医療機関との間で、入所者の急変時等における対応を確認し、その内容を踏まえて名称等を指定権者に届け出ます。一方、条文で「協議」という語が使われるのは、後述する新興感染症への対応を第二種協定指定医療機関(発熱外来または自宅療養者等への医療提供を担う、病院・診療所・薬局・訪問看護事業所)と取り決める場面です。
届出先と自治体ごとの運用差
届出先は指定権者です。都道府県知事、指定都市・中核市の長、地域密着型サービスの場合は市町村長が該当します。届出の方法や時期は自治体で運用が異なります。
- 新潟県:電子申請で受け付けている
- 福岡県:郵送または持参のみ
- 世田谷区(グループホーム・地域密着型特養):毎年9月1日から30日にオンラインで提出し、変更があった場合は10日以内に変更届を出す
協力医療機関の名称や契約内容が変わったときも、速やかに届け出る扱いです。お住まいの地域や施設の所在地の運用は、指定権者のウェブサイトで確認できます。
入院時の扱いと退院後の再入所
再入所は「努めなければならない」
特養の第28条第5項は、入所者が入院し「病状が軽快し退院可能となった場合、再び当該施設に速やかに入所させることができるように努めなければならない」と定めています。通知では、必ずしも退院後に再入所を希望する入所者のために常にベッドを確保しておくということではなく、できる限り円滑に再入所できるよう努める趣旨とされています。居室を常時確保する義務が条文で定められているわけではない点は、誤解しやすいところです。
入院した場合の期限・費用・戻れる条件は、契約書・重要事項説明書の入院時の取扱いに関する記載で確認します。
入院・外泊時の費用(告示21号)
入院や外泊の期間中の介護報酬上の扱いは、厚労省告示第21号に定めがあります。確認できた範囲は次のとおりです。
| 施設 | 対象 | 単位数 | 限度・条件 |
|---|---|---|---|
| 特養 | 入院または外泊 | 1日246単位 | 月6日限度。初日・最終日は算定不可 |
| 老健 | 外泊 | 1日362単位 | 月6日限度。初日・最終日は不可 |
| 老健 | 試行的退所 | 1日800単位 | 月6日限度 |
1単位の円換算は地域等で異なるため、単位数がそのまま金額になるわけではありません。ほかの施設種別の入院時費用や、居住費・医療費の自己負担の扱いは、この記事では確認できた範囲を超えるため記載しません。個別の負担額は施設の重要事項説明書や利用料の説明でご確認ください。
新興感染症への備えと第二種協定指定医療機関
第3項・第4項の内容
特養の第28条では、施設が第二種協定指定医療機関(発熱外来または自宅療養者等への医療提供を担う病院・診療所・薬局・訪問看護事業所。根拠は感染症法第6条第17項)との間で、新興感染症の発生時等の対応を取り決めるよう努めることが、第3項(努力義務)に置かれています。また第4項では、協力医療機関が第二種協定指定医療機関である場合、新興感染症の発生時等の対応を協議することが義務とされています。協議しても、取り決めに至らないことはありうるとされています。
想定される取決めの内容
想定される取決めは、流行初期期間の経過後(発生の公表から4〜6か月程度経過後)に、入所者が感染した場合の相談・診療・入院の要否の判断・入院調整などです。薬局や訪問看護ステーションとの連携も含められます。各都道府県の指定状況は、東京都や北海道など自治体のページで公表されています。
感染対策に関する加算として、高齢者施設等感染対策向上加算があります。(Ⅰ)は年1回以上のカンファレンスや研修への参加を、(Ⅱ)は少なくとも3年に1回以上の実地指導を評価する仕組みです。
協力医療機関連携加算と利用料への影響
加算の単位数
協力医療機関連携加算は、協力医療機関との連携体制を評価する介護報酬の加算です。厚労省の第255回介護給付費分科会(令和8年3月30日)の資料などによると、単位数は次のとおりです。1単位の円換算は地域等で異なるため、単位数がそのまま金額になるわけではありません。
| 施設種別 | 要件を満たす場合 | それ以外 |
|---|---|---|
| 特養・地域密着型特養・老健・介護医療院 | 50単位/月(令和6年度〜令和7年3月31日は100単位/月) | 5単位/月 |
| 特定施設・地域密着型特定施設 | 100単位/月 | 40単位/月 |
| 認知症グループホーム | 100単位/月 | 40単位/月 |
「要件を満たす場合」に必要なのは、特養等では①〜③、特定施設とグループホームでは①②です。特定施設では、改定前の医療機関連携加算は80単位/月でした。加算は介護報酬の一部として、利用者の自己負担にも反映されます。利用料明細に加算名が載る場合があるため、気になるときは施設に内訳を尋ねられます。
会議の要件と頻度の見直し
算定には、入所者の同意を得たうえで病歴等の情報を共有する会議を定期的に開催する必要があります。診療の求めの可能性が高い入所者や新規入所者を中心に共有すればよく、毎回全員の詳細を共有する必要はありません。テレビ電話での開催も可能で、概要の記録が求められます。複数の医療機関で3要件を満たす場合は、それぞれの医療機関と会議を行います。
会議の頻度は、令和6年度の改定当時は「概ね月1回以上」(電子的システムで随時確認できる体制があれば年3回以上)とされていました。令和8年3月30日の分科会では、ICTによる情報共有がある場合は年1回、ない場合は原則年3回とする見直しの方針が報告されています。ただし、施行日などの正式な適用条件は施設系の最新の通知で確認する必要があるため、この記事では断定しません。
算定状況と診療報酬側の評価
令和6年度介護報酬改定の検証調査(第250回分科会・令和7年12月12日、速報値のため確報で変わる可能性があります)では、50単位/月の加算の算定率は特養37.6%、老健58.3%、介護医療院51.8%でした。100単位/月の加算は特定施設61.5%、軽費老人ホーム36.7%です。算定しない理由で最も多かったのは「定期的な会議の負担が重く会議を行えていない」で、その割合は次のとおりです。
- 特養:46.3%
- 老健:52.9%
- 介護医療院:40.3%
算定の有無だけでは、連携の内容は分かりません。
診療報酬側では、協力対象施設入所者入院加算(入院初日に往診があれば600点、それ以外200点)や、介護保険施設等連携往診加算(200点)が設けられています。
協力歯科医療機関とグループホームのバックアップ施設
協力歯科医療機関
協力歯科医療機関を定めることは、特養第28条第6項で努力義務とされ、全種別に共通する規定です。医療機関の要件①〜③や年1回の届出義務は、歯科については規定されていません。
グループホームのバックアップ施設
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)では、協力医療機関とは別に、第8項でバックアップ施設(特養・老健・介護医療院・病院など)との連携・支援体制を確保することが求められています。夜間の緊急時対応などが想定されています。
入居前に確認できること
公開・掲示されている情報
特養では、運営規程の概要など重要事項を見やすい場所に掲示することが第29条第1項に定められており、令和6年改正で例示に「協力医療機関」が加わりました。重要事項のウェブサイトへの掲載も原則義務です(第29条第3項。経過措置は令和7年3月31日で終了しています)。ここでいうウェブサイトとは、法人のホームページまたは介護サービス情報公表システムです。
確認できる事項の例
見学や契約の説明の場で、職員に次のように質問できます。優劣を決めるためではなく、施設ごとの取り決めを把握するための質問です。
- 協力病院(協力医療機関)はどこですか。①②③はそれぞれどの医療機関が担っていますか
- 協力医療機関は重要事項として掲示されていますか。閲覧できますか
- 夜間の急変時は、誰が最初に連絡を受けますか
- 年1回の確認と指定権者への届出は行っていますか
- 協力歯科医療機関はありますか
- 新興感染症への対応の取決めはありますか
- 入院時はどのくらいの期間まで戻れますか。再入所の取扱いを教えてください
- 協力医療機関連携加算は算定していますか(利用料明細に載りますか)
契約前に受け取る書類の見方は重要事項説明書とは、医療的なケアへの対応の考え方は医療的ケアと施設選びの記事も参考になります。
よくある誤解と注意点
混同しやすい点
- 「協力医療機関があれば、いつでも入院できる」とは限りません。要件③は入院を原則として受け入れる体制の確保であり、専用病床の確保までは求められていません。
- 「退院後は元の居室が空けてある」とは限りません。再入所は努力義務で、居室の常時確保の義務はありません。
- 「年1回以上の協議」ではなく、条文は「確認」です。
- 「協力医療機関を定めること」と「要件を満たす医療機関にすること」は別の段階です。前者は現在も義務、後者は2027年3月31日まで努力義務です。
- 特定施設・グループホーム・軽費老人ホームには、要件③(入院の受入)は含まれません。
制度改定の可能性
この記事の内容は2026年9月29日時点で確認できた資料にもとづくもので、単位数、会議頻度、届出方法などは今後変わる可能性があります。介護保険制度は改定がありうる分野です。手続きや費用は、必ず市区町村・指定権者・施設の最新の案内で確認してください。
まとめ
- 協力医療機関は、施設が急変時や入院に備えてあらかじめ定める連携先で、区分は①相談対応②診療③入院受入(病院に限る)です。
- ③は特養・老健・介護医療院・養護老人ホームが対象で、特定施設・グループホーム・軽費老人ホームは①②が対象です。
- 協力医療機関を定めることは現在も義務で、要件を満たす医療機関にすることは2027年3月31日まで努力義務の経過措置中です。
- 再入所は努力義務で、居室の常時確保義務はありません。制度は今後変わる可能性があります。
- 次の行動として、見学時に協力医療機関の名称と入院時の取扱いを職員に聞き、重要事項説明書で確認しましょう。
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