介護施設の行政処分とは|指定取消・効力停止の違いと家族が確認する方法を解説

介護施設の行政処分の段階、指定取消の再指定制限、令和6年度の件数、家族が自治体の公表ページで確認する3ステップを整理します。

目次

介護施設の行政処分とは、介護保険法や老人福祉法にもとづき、自治体が基準違反や不正のあった事業者に行う命令・指定の効力停止・指定取消などの不利益処分と、その前段の勧告を指します。令和6年度の指定取消等は全国で158件でした。この記事では、処分の違い、有料老人ホームの扱い、家族が自治体の公表ページで確認する方法を、厚生労働省などの公的資料にもとづいて整理します。

まず知っておきたい3点

  1. 処分は、事業所を指定した自治体が公表しています(範囲は自治体で異なります。有料老人ホームは届出先の都道府県等を確認します)。まず指定した自治体を確認します
  2. その自治体の行政処分のページで調べます(「○○市 介護 行政処分 公表」のように検索できます)
  3. 不安なときは、地域包括支援センター(高齢者の総合相談窓口)や担当のケアマネジャーに相談します

介護施設の行政処分とは

行政処分と聞いても、どの段階の対応を指すのかは分かりにくいものです。ここでは言葉の意味と、混同しやすい指導との違いを整理します。

行政処分の定義と対象範囲

介護施設や介護事業所に対する行政処分とは、介護保険法や老人福祉法にもとづき、指定(介護老人保健施設は許可)を行う自治体が、基準違反や不正のあった事業者に行う措置です。法律上の不利益処分にあたるのは、命令、指定の効力停止、指定取消です。その前段にある勧告は、強い行政指導にあたります。この記事では、勧告から指定取消までをまとめて「行政の対応の段階」と呼びます。

対象の「施設」には、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、訪問介護やグループホームなどの事業所、老人福祉法の対象である有料老人ホームが含まれます。介護老人保健施設(老健)は「指定」ではなく「許可」を受ける仕組みのため、処分の名称は「許可の取消し・効力停止」になります(介護保険法第104条)。

よくある誤解

口頭での注意や改善報告書の提出といった行政指導は、法律の根拠がなくても行えるもので、「処分」とは区別されます。また、運営指導(旧・実地指導)を受けたこと自体は処分ではありません。運営指導は事業者への支援を基本とする仕組みで、監査や処分とは目的が異なります。

行政処分と指導・監査の違い

処分の前には、指導や監査があります。それぞれの目的と、監査に切り替わるきっかけを確認します。

集団指導と運営指導の役割

国は、介護保険施設等への指導監督を「指導」と「監査」に分けています。集団指導は、自治体が事業者を集めて講習形式で行うもので、報酬請求の取扱い、制度改正、高齢者虐待事案などが内容です。年1回以上行います。

運営指導は、令和4年3月31日付の通知(老発0331第6号)にもとづき、「実地指導」から名称が変わりました。事業者への支援が基本で、原則として指定の有効期間内に少なくとも1回行います。実施の1か月前に通知するのが原則です。

指導と監査の違い指導は集団指導(年1回以上)と運営指導(指定の有効期間内に1回以上、1か月前通知が原則)で支援が基本。不正等の疑いがあると事前通知不要の監査(立入検査)になり、結果により不利益処分につながる。指導監督は2つに分かれる指導(支援が基本)・集団指導:講習形式で年1回以上・運営指導:指定の有効期間内に1回以上・運営指導は1か月前に通知が原則不正等の疑い監査(立入検査)・事前の通知は不要・不正等の事実関係を把握する・結果により不利益処分につながる
指導は事業者への支援が基本で、不正等の疑いがあると監査に切り替わります。

監査の位置づけと切り替えの条件

監査は、不正等の疑いが発覚したときに事実関係を把握する立入検査で、事前の通知は不要です。結果によっては不利益処分につながります。運営指導から監査へ切り替わるのは、次のいずれか、またはその疑いがある場合です。

  1. 人員・設備・運営の基準に著しく従っていない
  2. 報酬請求に不正がある
  3. 不正の手段で指定を受けた
  4. 高齢者虐待などで利用者の生命・身体の安全に危害が及んでいる

監査のきっかけになる通報・苦情

監査のきっかけには、通報・苦情・相談のほか、国民健康保険団体連合会(国保連。介護サービスの苦情を受け付ける公的な機関)や地域包括支援センターに寄せられた苦情があります。国は、利用者本人、家族、従事者からの通報を十分に精査し、通報者が事業所に特定されないよう配慮する方針を示しています。通報の書類だけで不正を認定せず、監査で事実を確認します。

有料老人ホームについては、一般に3年に1回程度の定期的な立入検査に加えて、事件・事故・通報による臨時の検査があります。

行政の対応の段階|行政指導・勧告・命令・効力停止・取消

介護保険法では、軽い対応から重い対応へ、段階を踏んで進むのが基本です。各段階で何が起きるのかを見ていきます。

軽いものから重いものへ並べる

介護保険法にもとづく行政の対応は、行政指導(口頭注意・改善報告書)、勧告、命令、指定の全部または一部の効力停止、指定取消の順で重くなります。このうち勧告までは行政指導で、命令・効力停止・指定取消が不利益処分(法律上の処分)にあたります。次の図のタイトルは「処分の段階」となっていますが、勧告までを含めた行政の対応の段階を示しています。

介護保険法の処分の5段階軽い順に、行政指導(口頭注意・改善報告書)、勧告、命令(公示)、指定の全部または一部の効力停止、指定取消(聴聞が必要)。人格尊重義務違反と不正請求は勧告の段階がない。介護保険法の処分の段階軽い1行政指導口頭注意・改善報告書2勧告期限を定め改善報告を求める3命令勧告に従わない場合。公示4効力停止指定の全部または一部5指定取消最も重い処分。聴聞が必要重い※人格尊重義務違反と不正請求は勧告を経ず 直ちに処分の対象になりうる
処分は行政指導から指定取消まで5段階で、下に行くほど重くなります。

勧告は、期限を定めて改善措置の報告を求める強い行政指導です。居宅サービスの例では、勧告の対象は次の4つです(第76条の2第1項各号)。

  1. 指定条件の違反
  2. 人員基準の違反
  3. 運営基準の違反
  4. 休廃止時の便宜提供義務の違反

勧告に従わない場合に命令が出され、命令は公示(広く一般に知らせること)されます。人格尊重義務(利用者の人格を尊重して業務を行う義務)違反と不正請求には勧告の段階がなく、直ちに処分の対象になりえます。

効力停止と指定取消の中身

指定の効力停止には、全部停止と一部停止があります。一部停止の例として、新規利用者の受入れ停止や、期間を限って報酬請求額に上限を設ける(通常の70%など)措置が示されています。

「不正の手段による指定」を理由に取り消す場合は、指定を受けた時点にさかのぼって効力が取り消され、報酬の返還もさかのぼります。

施設類型ごとの根拠条文

処分の根拠条文は、施設・サービスの類型ごとに異なります。確認できた介護保険法の条文は次のとおりです。

類型報告検査勧告・命令取消・停止
居宅サービス第76条第76条の2第77条
居宅介護支援第83条第83条の2第84条
特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)第90条第91条の2第92条
介護老人保健施設第100条第103条第104条(許可の取消し・効力停止)
介護医療院第114条の2第114条の5第114条の6

このほかのサービスでも、類型ごとに条文が異なります。

指定取消の主な事由と再指定制限5年

指定取消は最も重い対応です。どんな場合に取り消されるのか、その後どうなるのかを確認します。

指定取消の主な事由

居宅サービスの例では、介護保険法第77条第1項に取消事由が定められています。主なものは、人員基準や運営基準を満たせないこと、介護給付費の請求に不正があること、報告や検査に対して虚偽の報告・答弁をすること、不正の手段で指定を受けたこと、サービスに関し不正または著しく不当な行為をしたことです。法人の役員等に、5年以内に不正または著しく不当な行為をした者がいる場合も含まれます。事由のうち何を見るべきかは、後の「処分歴をどう受け止めるか」で触れます。

取り消されると原則5年間は再指定を受けられない

指定を取り消されると、原則として5年間は再び指定を受けることができません(介護保険法第70条第2項)。つまり、同じ法人が同じ指定を再び受けることは、原則5年間できません。鹿児島市の公表ページにも、「指定取消日から5年間は同法人が指定を受けられない」旨の記載があります。

指定取消後の再指定制限指定を取り消されると、原則として取消日から5年間は再び指定を受けられない(介護保険法第70条第2項)。指定取消の後は原則5年間再び指定を受けられない1年2年3年4年取消日5年根拠:介護保険法第70条第2項自治体の公表ページにも記載あり
取消日から原則5年間は、同じ法人が指定を受けられません。

有料老人ホームの場合(老人福祉法)

有料老人ホームは老人福祉法が基本で、介護保険の特定施設の指定を受けていれば介護保険法の処分も重なります。制度の枠組みを整理します。

有料老人ホームは届出制

有料老人ホームは、老人福祉法第29条第1項により、都道府県知事等への事前の「届出」が必要です(認可ではありません)。届出がされていても、認可を受けた施設という意味ではないため、届出の有無だけで判断せず、運営状況の公表や処分の有無もあわせて確認することが大切です。届出の有無にかかわらず、入居サービスと介護等のサービスの実態があれば、有料老人ホームとして扱われます(標準指導指針、令和6年12月6日最終改正)。

見守りなどの機能を備えた施設の考え方は、見守り付き有料老人ホームについて整理した記事でも触れています。

改善命令と事業停止命令

都道府県知事等は、報告を求めたり立入検査をしたりできます。入居者の処遇に関する不当な行為などがあれば改善命令を、福祉関係法令に違反し入居者保護のため特に必要なときは事業の制限・停止命令を出せます。命令を出したときは公示します。命令に違反すると罰則があります(老人福祉法第29条、第38条、第39条)。未届の施設にも、命令や罰則を適用できます。

介護保険の指定がある場合の違い

有料老人ホームのうち、特定施設入居者生活介護(介護保険の対象となる、有料老人ホーム等での介護サービス)の指定を受けているものは、介護保険法にもとづく指定の効力停止・取消の対象にもなります。老人福祉法の命令と介護保険法の処分は、別の根拠法にもとづきます。

令和6年度の件数と事由

実際にどのくらいの処分が行われているのかを、厚生労働省の統計で確認します。

指定取消・効力停止の件数

厚生労働省「令和6年度における指導・監査及び指定取消処分等の状況」によると、令和6年度の指定取消等は合計158件で、内訳は指定取消59件、全部効力停止13件、一部効力停止86件でした。介護サービス情報公表システムに掲載される約21万事業所と比べると、規模の目安としては1%に満たない件数です。

令和6年度の指定取消等158件の内訳令和6年度の指定取消等は合計158件。一部効力停止86件、指定取消59件、全部効力停止13件。令和6年度の指定取消等合計158件一部効力停止86件指定取消59件全部効力停止13件出典:厚生労働省(令和6年度の状況)
158件のうち最も多いのは一部効力停止の86件で、指定取消は59件でした。

取消と停止の合計は、平成28年度が244件、令和4年度が86件、5年度が139件、6年度が158件でした。長期で見ると平成28年度より少ないものの、令和4年度を底に、5年度、6年度と増えています。サービス別では、訪問介護が30件、認知症対応型共同生活介護が13件、特定施設入居者生活介護が12件でした。

処分の事由と返還請求額

令和6年度の処分の事由は次のとおりです。

項目件数備考
不正請求36件事由ごとの計上
虚偽答弁18件事由ごとの計上
法令違反18件事由ごとの計上
人員基準違反14件事由ごとの計上
その他37件事由ごとの計上

1件の処分に複数の事由がある場合は事由ごとに数えるため、合計は処分件数と一致しません。指定取消等に伴う介護給付費の返還請求額は約11億5千万円でした(令和5年度以前の監査分で令和6年度に確定した額を含みます)。

監査・運営指導の実施状況

令和6年度に行われた監査は1,190件(前年度1,120件)でした。以下は別の集計で、上の158件とは数が合いません。監査の結果は次のとおりです。

項目件数備考
行政指導による改善報告470件監査1,190件の結果
改善勧告205件監査1,190件の結果
指定の効力停止99件監査1,190件の結果
指定取消17件監査1,190件の結果
改善命令1件監査1,190件の結果

この表は監査の結果の内訳で、先の令和6年度の指定取消等158件とは数字が一致しません。集計の違いは確認できていないため、単純に足したり比べたりしないでください。

運営指導を実施した事業所は50,424事業所で、実施率は16.2%(1年間で約6件に1件)でした。集団指導を実施した自治体は938で、実施率は57.9%です。

有料老人ホームについては、厚生労働省の令和8年4月27日付の通知・マニュアルによると、令和6年度に回答した127自治体のうち、改善命令は虐待事例4件と虐待以外2件(いずれも中核市)でした。事業停止命令の実績は確認されていません。

処分が出たときの利用者への影響とサービス継続

利用中の事業所に処分が出たとき、いちばん気になるのは「今のサービスはどうなるのか」でしょう。分かっている範囲で整理します。

便宜提供義務と事業者の責任

居宅サービスの事業者には、事業を休止・廃止する場合に、利用者が継続してサービスを受けられるよう便宜を提供する義務があります(介護保険法第74条第5項)。ほかの類型にも同様の規定があり、条文は類型ごとに異なります。

指定の取消や全部停止があった場合、利用者の支援は原則として事業者が行います。それが不十分なときは、指定権者(指定を行う自治体)が助言その他の援助で関与することが望ましいとされています。

自治体の対応の例

北九州市は、指定取消の公表の際に事業所ごとの利用者数を示しています。市が事業者に円滑な移行を指導し、利用者の相談も市が直接受けています。

有料老人ホームでは、事業停止命令を受けた場合、自治体が入居者の介護等の継続について助言し、住み替え先の確保等に努めます(老人福祉法第29条)。入居者の問合せには、他の賃貸住宅等のリスト提示や公的支援の案内で対応することが示されています。

家族が最初にすること

処分が出たと分かったときの最初の動きは、次の順番が目安です。

  1. 担当のケアマネジャーや事業所に、今後のサービスの継続について確認する
  2. 説明が十分でなければ、地域包括支援センターや市町村の介護保険担当窓口に相談する
  3. 処分の内容を自治体の公表ページで確認する

一部停止の例として、新規利用者の受入れ停止が示されています。ただし、利用中のサービスがどう扱われるかは処分の内容によるため、事業所と指定権者に確認してください。

家族が確認する方法|自治体公表ページ・情報公表システム・苦情窓口

処分の有無は、指定した自治体のページで調べるのが基本です。調べ方と、不安なときの相談先をまとめます。

自治体の公表ページ

指定取消や効力停止は、指定権者(指定(介護老人保健施設は許可)を行う自治体で、都道府県・指定都市・中核市・市町村のいずれか)が公表しています。公表のしかたは自治体によって異なります。例を2つ挙げます。

自治体公表形式分かること
千葉市指定取消の一覧と全部効力停止の一覧を年度別に掲載取消日、事由の条項、効力停止の内容
東京都報道発表資料の一覧処分に関する発表の内容

まず、利用している事業所を指定した自治体がどこかを確認します。次に、検索窓に「○○市 介護 行政処分 公表」のように自治体名と言葉を入れて探します。自治体の名称は「行政処分」「指定取消」などです。

介護サービス情報公表システムでできること

厚生労働省が運営する介護サービス情報公表システムは、約21万事業所の基本情報と運営情報を掲載しています(根拠は介護保険法第115条の35)。ただし、行政処分の記載は確認できていません。処分の有無は、自治体のページで別に確認する必要があります。システムの見方は介護サービス情報公表制度を解説した記事にまとめています。

有料老人ホームの公表

有料老人ホームは、設置者が運営状況を都道府県知事に報告し、知事が公表します。改善命令・事業停止命令は公示されます(老人福祉法第29条)。有料老人ホームの場合も、指定した自治体ではなく届出先の都道府県等のページを確認します。

苦情・相談の窓口

サービスへの不安や苦情は、事業者、ケアマネジャーや地域包括支援センター、市町村と国保連の順に相談するのが一般的です。福祉サービス全般については、都道府県社会福祉協議会の運営適正化委員会(福祉サービス全般の相談に応じる窓口)が助言や相談に対応しています。電話番号は変わることがあるため、各公式ページで確認してください。

苦情・相談の窓口の順番まず事業者、次にケアマネジャーや地域包括支援センター、さらに市町村と国保連に相談するのが一般的。福祉サービス全般は都道府県社会福祉協議会の運営適正化委員会も対応。不安や苦情の相談先の順番事業者まずは利用している事業所ケアマネジャーまたは地域包括支援センター市町村・国保連介護保険担当窓口・苦情相談福祉サービス全般は都道府県社協の運営適正化委員会も相談に対応
相談は身近な事業者から始め、解決しなければ市町村や国保連へ進みます。

通報や苦情を申し出る際は、通報者が事業所に特定されないよう配慮する方針が示されています。窓口の探し方は介護の苦情相談窓口を解説した記事で詳しく説明しています。

処分歴の見方と判断の目安

処分歴を調べたあと、どう受け止めればよいかは多くの方が迷う点です。当サイトは特定の事業所を評価しないため、見方の目安だけをお伝えします。

処分歴をどう受け止めるか

処分歴がないことは、問題がないことの保証ではありません。運営指導は毎年すべての事業所に行われるわけではなく、令和6年度の実施率は16.2%(約6件に1件)でした。反対に、処分歴があることだけで、一律に避けるべきとも言えません。処分歴は判断材料の一つです。次の点を見ると、中身を把握しやすくなります。

  1. 処分の事由が何か(請求の誤りか、利用者の安全に関わるものか)
  2. 処分の後に、どのような改善が行われたか
  3. 処分が直近か、年数がたっているか

見学や相談の際に、過去の処分の有無と改善の状況を、事業所に質問して構いません。担当のケアマネジャーや地域包括支援センターの意見も、あわせて聞くと判断しやすくなります。当サイトの編集方針はこのサイトの立ち位置をご覧ください。

公表範囲は自治体ごとに違う

確認した自治体のページには、掲載期間が明記されていないものがありました。「何年分が載っている」とは言えず、掲載範囲は自治体ごとに異なります。また、勧告や行政指導で止まったものは公表されないことがあります。

処分理由はさまざま

処分の理由は、減算漏れや加算要件の未充足から、虐待まで幅があります。公表資料で事由の条項と内容を読み、どの種類の問題だったのかを確認してください。

令和8年の法改正|有料老人ホームの登録制

有料老人ホームの制度は、令和8年の法改正で見直されます。決まっている範囲だけをお伝えします。

公布された内容

令和8年6月25日に「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)が公布されました。中重度の要介護者を入居させる有料老人ホームに、都道府県等への登録制が導入されます。原則の施行日は令和9年4月1日ですが、登録制の開始日は未定です(政令で定める日。公布から2年以内)。

いま検討中の方への影響と分からないこと

いま入居先を検討している方は、登録制が始まる前の時期にあたります。施行の時期や対象は今後の政令で決まるため、見学や契約の前に、都道府県や市町村で最新の状況を確認してください。

登録制のもとで事業停止や更新、取消がどう扱われるかの詳細は、厚生労働省の一次資料では確認できていないため、この記事では取り上げません。

令和8年4月の指導監督マニュアルは法的拘束力がなく、自治体が処分の基準をつくる際の参考です。介護報酬改定は原則3年ごとに行われるなど、制度は見直されるため、記載の内容は今後変わる可能性があります。

まとめ

押さえておきたい点を3つ、家族が取れる行動を3つにまとめます。

  • ポイント1:行政の対応は、行政指導、勧告、命令、効力停止、指定取消の段階がある。指定取消は原則5年間の再指定制限がある
  • ポイント2:有料老人ホームは老人福祉法が基本で、中重度の要介護者を入居させる施設に登録制が導入される(開始日は未定)
  • ポイント3:令和6年度の指定取消等は158件。処分歴は判断材料の一つで、ないことの保証ではなく、介護サービス情報公表システムには処分の記載が確認できていない
  • 行動1:利用している事業所を指定した自治体(指定権者)を確認する
  • 行動2:その自治体の行政処分のページで、処分の有無と事由を確認する
  • 行動3:不安があれば、地域包括支援センターや担当のケアマネジャー、市町村に相談する

法令や運用は改正されることがあります。最新の情報は厚生労働省や各自治体の公式ページでご確認ください。このサイトの編集方針はこのサイトの立ち位置に記載しています。

よくある質問

利用中の施設に処分が出たら、追い出されますか。

処分の内容によります。事業者には、休廃止の際に利用者へ便宜を提供する義務があり、すぐ退去とは限りません。処分の内容や事業所の状況によります。一部停止の例として新規利用者の受入れ停止が示されています。取消や全部停止でも、利用者の支援は原則として事業者が行い、不十分なときは指定権者(自治体)が助言などで関与することが望ましいとされています。まず担当のケアマネジャーと指定権者に確認してください。

処分歴のある施設は避けるべきですか。

処分歴だけで一律に避けるべきとは言えません。事由が何か、その後どう改善されたか、処分が直近かを確認する目安になります。見学の際に過去の処分と改善状況を質問して構いません。処分歴がないことも、問題がない保証ではありません。複数の情報とあわせて検討してください。

処分を受けた施設はどう調べますか。

事業所を指定した自治体(都道府県・指定都市・中核市・市町村)の行政処分のページで調べます。「○○市 介護 行政処分 公表」のように検索できます。介護サービス情報公表システムには処分の記載は確認できていません。公表の範囲は自治体ごとに異なります。

施設への不安や通報は、どこに相談できますか。

まず事業者や担当のケアマネジャー、地域包括支援センターに相談できます。解決しない場合は、市町村の介護保険担当窓口や、国保連の苦情相談窓口があります。福祉サービス全般は都道府県社会福祉協議会の運営適正化委員会も対応します。通報者が特定されないよう配慮する方針が国から示されています。

有料老人ホームの処分はどこで調べますか。

有料老人ホームは届出先の都道府県等が運営状況を公表し、改善命令・事業停止命令は公示されます。届出先の都道府県等のページを確認してください。公表の範囲は自治体ごとに異なります。介護保険の特定施設の指定がある場合は、介護保険法の処分も指定した自治体のページで確認します。

参考・出典

  1. 介護保険施設等に対する監査マニュアル(令和6年4月) (厚生労働省)
  2. 介護保険施設等の指導監督について(老発0331第6号) (厚生労働省)
  3. 令和6年度における指導・監査及び指定取消処分等の状況 (厚生労働省)
  4. 介護保険法(e-Gov法令検索) (デジタル庁)
  5. 老人福祉法第29条 (厚生労働省)
  6. 有料老人ホームに対する指導監督マニュアル(令和8年4月) (厚生労働省)
  7. 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について (厚生労働省)
  8. 社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)の概要 (厚生労働省)
  9. 介護サービス情報公表システム (厚生労働省)
  10. 指定取消事業者一覧 (千葉市)
  11. 行政処分の公表 (東京都福祉局)
  12. 事業所の行政処分 (鹿児島市)
  13. 指定取消の公表 (北九州市)
  14. 介護サービスの苦情相談窓口 (神奈川県)
  15. 苦情解決窓口 (大阪府)