後期高齢者医療制度における医療機関の窓口自己負担割合は、所得に応じて1割・2割・3割の3区分に分かれています。どの区分に該当するかは、前年の所得をもとに毎年見直され、住民税課税状況や年金収入額などいくつかの基準で判定されます。この記事では、1〜3割の判定基準、2022年10月に新設された2割負担の仕組みと配慮措置、介護保険の自己負担割合との違いまでを、厚生労働省や自治体の公表資料にもとづいて整理します。
後期高齢者医療制度とは(対象者・運営主体)
後期高齢者医療制度は、高齢者の医療費を支える独立した医療保険制度として2008年4月に施行されました。それまで加入していた国民健康保険や被用者保険から切り替わり、原則としてすべての対象者が資格を持ちます。
対象となる75歳以上と65〜74歳の障害認定
対象となるのは75歳以上の方、および65〜74歳で一定の障害の状態にあると後期高齢者医療広域連合の認定を受けた方です。障害の状態には、障害年金1・2級、身体障害者手帳1〜3級および一部の4級、精神障害者保健福祉手帳1・2級、療育手帳1・2度などが含まれます(出典:東京都後期高齢者医療広域連合)。
運営主体は都道府県ごとの後期高齢者医療広域連合
制度を運営するのは、都道府県ごとに設置された後期高齢者医療広域連合(全国47団体)です。保険料の決定や医療給付の支給は広域連合が担い、保険料の徴収や各種申請の受付窓口は市区町村が行うという役割分担になっています(出典:江東区、埼玉県後期高齢者医療広域連合)。
制度全体の財源は、令和4年度予算で総額約18.4兆円とされ、内訳は公費が約8.0兆円、現役世代からの支援金が約6.9兆円、高齢者自身の保険料が約1.5兆円、窓口負担が約1.5兆円となっています(出典:厚生労働省)。この財源構成が、後述する2割負担の導入背景にもつながっています。
自己負担割合の1〜3割はどう決まるか
自己負担割合は、前年の所得等をもとに一定の手順で判定されます。厚生労働省の資料に示された判定の流れは次のとおりです。
課税所得145万円以上は原則3割(現役並み所得)
まず、世帯内の75歳以上の方等のうち、住民税課税所得が145万円以上の方がいる場合は「現役並み所得」とみなされ、原則として自己負担割合は3割になります。ただし収入額が一定基準を下回る場合など、申請により1〜2割に据え置かれるケースもあります(出典:厚生労働省)。
単身世帯・複数世帯での2割負担の基準額
現役並み所得に該当しない場合は、世帯内の75歳以上等のうち住民税課税所得が28万円以上の方がいるかどうかで判定が分かれます。該当者がいなければ1割です。該当者がいる場合、単身世帯では「年金収入とその他の合計所得金額」の合計が200万円未満なら1割、200万円以上なら2割になります。複数世帯(同一世帯に後期高齢者医療の被保険者が複数いる場合)では、その合計額が320万円未満なら世帯全員が1割、320万円以上なら世帯全員が2割となります(出典:厚生労働省)。
住民税非課税世帯は1割
住民税非課税世帯に該当する場合は、上記の判定にかかわらず自己負担割合は1割です。高額療養費制度の所得区分でも、非課税世帯は「低所得者」として上限額が優遇される扱いになります(詳しくは後述の高額療養費制度の章で説明します)。
2022年10月から始まった2割負担とは
自己負担割合の区分は、長らく1割と3割(現役並み所得)の2区分でしたが、2022年10月1日から新たに2割負担の区分が設けられました。
導入の背景(現役世代の支援金負担)
前述のとおり、後期高齢者医療制度の財源の約4割弱は現役世代からの支援金でまかなわれています。少子高齢化が進むなかで現役世代1人あたりの負担が重くなり続けることを抑えるため、一定の所得がある後期高齢者にも応分の負担を求める形で2割負担が導入されました(出典:厚生労働省)。
対象者数の目安
厚生労働省の資料によると、2割負担の対象者は後期高齢者医療の被保険者全体のおよそ20%、約370万人が目安とされています。残りの多くは1割負担、現役並み所得の3割負担は一部にとどまります(出典:厚生労働省)。
2割負担の配慮措置とその終了
2割負担の導入にあたっては、急激な負担増を緩和するための経過的な配慮措置が設けられていました。
1か月3,000円までに抑える仕組みと計算例
配慮措置は、令和4年10月1日から令和7年9月30日までの3年間、2割負担該当者の外来医療費(入院分は対象外)について、窓口負担の増加額を1か月あたり3,000円までに抑える仕組みです。たとえば1か月の外来医療費総額が5万円の場合、1割負担なら窓口負担は5,000円、2割負担なら10,000円となり、負担増は5,000円になります。配慮措置により実際の負担増は3,000円までに抑えられ、差額の2,000円は高額療養費として後日払い戻される計算です(出典:厚生労働省、柏市)。
令和7年9月30日で終了
この配慮措置はあくまで3年間の経過措置として設計されており、延長はなく令和7年9月30日で終了しました。2025年10月以降の診療分からは、2割負担該当者は配慮措置による上限なく2割の窓口負担がそのまま適用されています(出典:厚生労働省、柏市)。
負担割合はどこで確認できるか
自分の自己負担割合が何割なのかは、書類の記載で確認できます。
資格確認書・マイナ保険証への記載
2025年7月31日をもって紙の被保険者証の発行は終了し、以後はマイナ保険証、またはマイナ保険証を持たない方向けに発行される資格確認書を利用します。資格確認書には自己負担割合と有効期限が記載されています(出典:江東区、デジタル庁)。
毎年8月の見直しと随時更新
自己負担割合は、毎年8月1日を基準日として前年の所得をもとに見直されます。年度の途中で所得状況に変化があった場合など、随時新しい証が発行されることもあります(出典:江東区)。負担割合を誤って認識したまま医療機関にかかると清算のやり取りが生じることがあるため、8月の切り替え時期には記載内容を確認しておくとよいでしょう。
介護保険の自己負担割合との違い
後期高齢者医療制度と介護保険は、どちらも自己負担割合が1〜3割の3区分である点は共通していますが、判定の仕組みは別物です。
対象年齢・判定基準の違い
介護保険で自己負担割合の判定対象となるのは、原則として65歳以上の第1号被保険者です。後期高齢者医療制度の対象は75歳以上(および65〜74歳の障害認定者)であるため、65〜74歳の方は介護保険の対象にはなっても後期高齢者医療の対象にはならない場合があるなど、対象年齢の範囲が異なります。また、運営主体も介護保険は市区町村、後期高齢者医療は都道府県ごとの広域連合と異なり、それぞれ独自の所得基準で判定を行います。介護保険の自己負担割合の詳しい基準については、介護保険の自己負担割合とはを解説した記事で確認できます。
医療と介護で割合が一致しないケース
判定基準が異なるため、同じ人であっても後期高齢者医療の自己負担割合と介護保険の自己負担割合が一致しないことがあります。たとえば後期高齢者医療では2割負担でも、介護保険では1割負担というケースも起こり得ます。両制度の保険料の違いについては後期高齢者医療保険料と介護保険料の違いを解説した記事で整理しています。
高額療養費制度との関係
自己負担割合が上がっても、家計への影響を抑える仕組みとして高額療養費制度があります。
所得区分ごとの月額上限
高額療養費制度では、1か月の医療費の自己負担額が所得区分ごとに定められた上限額を超えた分が払い戻されます。この上限額は診療月によって改定されることがあるため、まずは「いつの金額か」を確認したうえで見る必要があります。神奈川県後期高齢者医療広域連合が公表している令和8年8月診療分以降の限度額の例では、1割負担の「一般Ⅰ」・2割負担の「一般Ⅱ」ともに外来(個人単位)の上限は22,000円、外来と入院を合わせた世帯単位の上限は61,500円です。住民税非課税世帯の低所得区分Ⅱは外来11,000円・世帯25,700円、区分Ⅰは外来8,000円・世帯15,700円とされています。この記事の執筆時点(令和7年10月〜令和8年7月診療分)に適用されている限度額は、上記の令和8年8月以降の金額とは異なる場合があります。現在ご自身に適用されている正確な上限額は、加入している後期高齢者医療広域連合または市区町村の窓口でご確認ください(出典:神奈川県後期高齢者医療広域連合)。
年間の外来自己負担の上限
月ごとの上限とは別に、8月から翌年7月までの1年間に外来でかかった自己負担額を合算する年間上限も設けられています。前出の例では、2割負担の「一般Ⅱ」区分の年間外来上限は216,000円、外来と入院を合わせた世帯単位の年間上限は530,000円とされています(出典:神奈川県後期高齢者医療広域連合)。高額療養費制度全体の仕組みについては高額療養費制度とはを解説した記事で詳しく説明しています。
高額医療・高額介護合算療養費制度との関係
後期高齢者医療の自己負担割合が上がると、介護サービスも同時に利用している世帯では、医療と介護を合わせた年間の負担額が増える可能性があります。この負担を軽減する仕組みが高額医療・高額介護合算療養費制度です。
医療と介護の自己負担を合算する仕組み
この制度は2008年4月に創設され、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間に世帯で支払った医療保険と介護保険の自己負担額を合算し、世帯の所得区分・年齢構成に応じて定められた基準額を超えた分が払い戻される仕組みです。自己負担割合が2割・3割に上がるほど実際の負担額が増え、この制度の対象になりやすくなります(出典:内閣府、厚生労働省)。制度の詳しい仕組みは高額医療・高額介護合算療養費制度とはを解説した記事で説明しています。
今後の見直し動向
後期高齢者医療制度の自己負担のあり方は、財政状況や高齢者人口の推移を踏まえて継続的に議論されています。ここでは現時点(2026年9月時点)で公表されている情報を整理します。
2026年5月成立の改正法のポイント
2026年5月29日、健康保険法等の一部を改正する法律が成立しました。後期高齢者医療制度に関しては、上場株式の配当等の金融所得を、確定申告の有無にかかわらずより公平に窓口負担割合や保険料の算定に反映させる見直しが柱の一つとされています。具体的な施行時期については、厚生労働省の公表資料を随時確認する必要があります(出典:厚生労働省)。
3割への引き上げ議論の状況
高齢者の窓口負担を原則3割に引き上げる方向性について、政府の審議会で議論が進められていると一部で報じられていますが、この記事の執筆時点では、具体的な決定内容を確認できる一次情報(厚生労働省や関係審議会の公表資料)は確認できていません。2026年9月時点で、後期高齢者の自己負担割合を一律3割に引き上げることが法律として確定した事実はなく、あくまで検討段階の議論であることに留意してください。今後の正式な発表は、厚生労働省の公表資料で確認することをおすすめします。
まとめ
- 後期高齢者医療制度の自己負担割合は所得に応じて1割・2割・3割の3区分で、毎年8月に前年所得をもとに見直される
- 課税所得145万円以上は原則3割、課税所得28万円以上の該当者がいる場合は年金収入等の合計額(単身200万円・複数世帯320万円)で1割か2割かが分かれる
- 2022年10月に新設された2割負担には配慮措置があったが、令和7年9月30日で終了した
- 介護保険の自己負担割合とは対象年齢・判定基準が異なり、同じ人でも割合が一致しないことがある
- 高額療養費制度・高額医療高額介護合算療養費制度により、負担割合が上がった場合でも一定の上限を超えた分は払い戻される
- 3割への引き上げは2026年9月時点で検討段階であり、確定した制度変更ではない
この記事で扱った内容は、特定の制度の良し悪しを評価したり、特定の事業者・サービスをすすめたりするものではありません。当サイトの記事の作り方についてはこのサイトの立ち位置をご覧ください。