介護保険の対象となるサービスの利用料には、消費税がかかりません。ただし、福祉用具・住宅改修(障害者用物品を除く)や特別な居室、保険外のサービス、有料老人ホームのまかない等は課税されます。この記事では、国税庁と厚生労働省の資料にもとづいて、非課税の費用と課税される費用の違い、領収書の見方、医療費控除との関係を整理します。
介護サービスと消費税の基本
まず、非課税の考え方と法律上の根拠を確認します。
介護保険の対象サービスは法律で非課税
介護保険の対象となるサービスの対価は、消費税法で非課税と定められています。条文では、消費税法第6条が「別表に掲げる資産の譲渡等には消費税を課さない」とし、介護保険は別表第二の第7号イに規定されています。具体的な範囲は消費税法施行令第14条の2に示されています。
補足です。別表第二第7号イは、居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービス(訪問介護、訪問入浴介護その他の政令で定めるものに限る)、施設介護サービス費の支給に係る施設サービス(政令で定めるものを除く)、その他これらに類するものとして政令で定めるものを非課税としています。2019年9月時点では同じ内容が「別表第一」にあったため、古い資料では別表第一と書かれていることがあります。
国税庁が示す非課税の考え方
国税庁のタックスアンサーNo.6201では、介護保険法に基づく保険給付の対象となる居宅サービスや施設サービスなどが非課税とされています。一方で、サービスを利用する人が自分で選ぶ特別な居室の提供や送迎などの対価は、非課税取引には当たらないと説明されています。
つまり、「介護に関する費用だから全部非課税」でも「介護保険の対象外だから全部課税」でもありません。何に対する支払いなのかを分けて見ることが、この記事全体の軸になります。
非課税と「負担がゼロ」は別のこと
非課税とは、サービスの対価に消費税が上乗せされないという意味です。利用者の自己負担そのものがなくなるわけではありません。自己負担の割合や上限は介護保険制度で別に決まっており、消費税の有無とは切り分けて考える必要があります。
非課税になる介護保険サービス
居宅サービスの範囲
消費税法施行令第14条の2第1項は、非課税となる居宅サービスとして、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護を挙げています。ただし、特定施設入居者生活介護のうち、特別の居室の提供など財務大臣が指定するものは除かれます。
国税庁の質疑応答事例では、非課税の居宅サービスは、介護保険法第41条第1項の指定居宅サービス(福祉用具貸与と特定福祉用具販売を除く)に限られると整理されています。
施設サービスの範囲
施設介護サービス費の支給に係る施設サービスも、政令で定めるものを除いて非課税です。居住費や食費が非課税かどうかは、後ほど述べるように、サービスに当然に付随するかどうかで判断されます。
地域密着型・予防・居宅介護支援など
政令の第3項では、居宅サービスや施設サービスに「類するもの」も非課税と定めています。厚生労働省の資料には、次のようなものが含まれると整理されています。
- 特例居宅介護サービス費に係るサービス
- 地域密着型サービス(定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、複合型サービス)
- 介護予防サービス、地域密着型介護予防サービス
- 居宅介護支援、介護予防支援(ケアプランの作成にかかる費用)
- 市町村特別給付のうち、厚生労働大臣が財務大臣と協議して指定するもの
- 介護予防・日常生活支援総合事業の一部
- 生活保護法の介護扶助
ケアマネジャーが作成するケアプランの費用(居宅介護支援)も、施行令第14条の2第3項により非課税の側に入ります。
支給限度額を超えた全額自己負担分も非課税
保険給付がなくても非課税のまま
在宅サービスには、要介護度ごとに保険給付の上限(区分支給限度基準額)があります。これを超えて使った分は全額自己負担になりますが、「保険がきかないから課税される」とは限りません。
国税庁の質疑応答事例は、介護保険法第43条の支給限度額を超えて提供される居宅サービス(たとえば、ケアプランの範囲である時間・回数・種類を超えて提供されるもの)のように、居宅介護サービス費が支給されず、利用者が全額を負担するものでも、要介護者に対して提供される指定居宅サービスであれば非課税になると示しています。これは消費税法基本通達6-7-2にもとづく扱いです。
介護保険と別の内容のサービスは非課税にならない
非課税になるのは、あくまで要介護者などに対して提供される指定居宅サービスです。国税庁の質疑応答事例は、居宅への配食、寝具の丸洗い・乾燥、居宅での理髪などを介護保険の給付対象外のサービスの例としており、これらは課税のものとして扱われます。同じ事業所が提供していても、介護保険のサービスとは別の内容であれば扱いが分かれます。
保険外サービスの全体像は、介護保険外サービスを解説した記事でも整理しています。
通所・入所に付随する費用の扱い
当然に付随する日常生活費用は非課税
国税庁の質疑応答事例では、通所系・入所系のサービスに当然に付随する日常生活の費用も、居宅サービスに含まれるものとして非課税とされています。例として、通所系サービスの食材料費やおむつ代、入所系サービスの食材料費、居住費用、理美容代などが挙げられています。
施設の種類ごとの整理(家賃・食事・介護)
食費・居住費の疑問は、施設の種類によって答えが変わります。確認できた範囲を表にまとめます。
| 施設の種類 | 家賃・居住費 | 食事 | 介護サービス |
|---|---|---|---|
| 特養・老健など(施設サービス) | 非課税(付随する居住費用) | 非課税(付随する食材料費) | 非課税 |
| 介護付き有料老人ホーム(特定施設) | 家賃は非課税 | まかない等のサービス部分は課税 | 特定施設の介護サービスは非課税、上乗せサービスは課税 |
| 住宅型有料老人ホーム | 契約書で確認 | 契約書で確認 | 契約書で確認 |
有料老人ホームの扱いは、山梨県が公表している有料老人ホームの通知にもとづきます。契約の形が違えば扱いも異なるため、不明な点は契約書・重要事項説明書で確認してください。
食費・居住費の基準費用額について
基準費用額とは、国が定めた食費・居住費の目安額です。制度改定で見直されることがあり、厚生労働省の資料によると、令和6年8月には居住費の基準費用額が日額60円引き上げられ、多床室では特養等が855円から915円、老健等が377円から437円になりました。また、令和8年度の期中改定で、食費の基準費用額を100円引き上げる改定が令和8年8月に行われています。実際の適用状況は、最新の厚生労働省の資料や施設の案内で確認してください。
食費・居住費の詳しい仕組みは特定入所者介護サービス費を解説した記事をご覧ください。
課税される費用
特別な居室・事業実施地域外の送迎
国税庁のタックスアンサーNo.6201は、利用者の選択による特別な居室の提供や送迎などの対価を非課税取引に当たらないとしています。質疑応答事例では、通所介護における通常の事業実施地域以外の地域への移送サービスが、介護保険の給付対象外のサービスの例として挙げられています。
福祉用具・住宅改修
福祉用具貸与と特定福祉用具販売は、居宅サービスの非課税の列挙に入っていません。厚生労働省の資料でも、福祉用具貸与・購入(障害者用物品を除く)、住宅改修は課税対象と整理されています。そのため、これらの利用料や購入費には消費税が含まれます。
福祉用具の貸与の仕組みは、福祉用具貸与を解説した記事にまとめています。
保険外サービス・市町村特別給付
質疑応答事例では、介護保険の給付対象外のサービスとして、居宅への配食サービス、寝具の丸洗い・乾燥サービス、居宅での理髪サービスなどが例示されており、これらは課税のものとして扱われます。
市町村特別給付についても、介護給付・予防給付以外の種類のサービス(たとえば寝具の乾燥)は課税です。ただし、平成12年厚生省告示第126号に定められた配食サービスは課税の例外です。事業者が独自に行う居宅への配食は、給付対象外サービスの例として挙げられているものです。
有料老人ホームの費用
家賃と、まかない等サービスの違い
山梨県が公表している有料老人ホームの消費税の取扱いに関する通知(老高発0918第1号)では、家賃(部屋代にあたる部分)は非課税、まかない等のサービス部分は課税と整理されています。
特定施設として行う介護サービスは非課税です。「上乗せサービス」とは、特定施設として行う介護サービスとは別に、ホームが上乗せして提供するサービスのことで、課税とされています。何が上乗せに含まれるかは、ホームの契約内容によって異なります。
家賃に充当する一時金
同通知では、家賃に充当する一時金は、税率引上げの影響を受けないとされています。ただし、実際に契約している内容によって扱いが変わりうるため、契約書や重要事項説明書で確認することが前提です。
食事の軽減税率に条件がある
有料老人ホームなどでの食事の提供には、飲食料品の軽減税率の対象になる場合があります。対象となる入居者には、60歳以上の人、要介護・要支援の認定を受けた60歳未満の人、これらの人と同居する配偶者などといった条件があります。金額の基準を含む詳しい要件は、国税庁のタックスアンサーNo.6226などで最新の内容を確認してください。
日常の生活費の考え方は、介護施設の日常生活費を解説した記事でも触れています。
事業者側の事情
仕入税額控除ができない
利用者から見ると、非課税のサービスは利用料に消費税が上乗せされません。一方、介護事業者は非課税取引のため納税義務者にならず、仕入れで払った消費税を差し引く「仕入税額控除」もできません。厚生労働省の資料は、この税負担は介護報酬で手当されていると説明しています。
報酬での手当の例
平成26年度の介護報酬改定では、消費税率の引上げに合わせて基本単位数への上乗せが行われました。直近の改定内容は、厚生労働省の報酬改定の資料で確認してください。
利用者にとっての意味
平成26年度の例では、基本単位の上乗せに合わせて区分支給限度基準額は引き上げられましたが、特定福祉用具販売と住宅改修の限度額は引き上げられていません。
「非課税」と「医療費控除の対象」は別の話
まったく別の制度
消費税が非課税であることと、所得税の医療費控除の対象になることは、別の制度の話です。「消費税がかからないから、医療費控除も使える」とは限りません。
国税庁が示す例
国税庁のタックスアンサーNo.1125では、特別養護老人ホームの場合、介護費・食費・居住費の自己負担額の2分の1が医療費控除の対象とされています。介護老人保健施設と介護医療院では全額が対象です。一方、日常生活費(理美容代など)や、特別なサービスの費用は対象外です。また、高額介護サービス費の払戻しを受けた場合は、その金額を医療費から差し引きます。
おむつ代については、No.1122に、医師の治療を受け、6か月以上寝たきりの状態などの場合に、原則としておむつ使用証明書が必要という説明があります。要介護認定を受けている人は、市町村が確認書を出すことで証明書に代えられる場合があります。
控除額の考え方
医療費控除は、年間の医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の人は5%)を超えた部分が対象で、上限は200万円とされています(No.1120)。実際に控除の対象になるかどうかは、個別の状況や領収書の内容で変わるため、最寄りの税務署や税理士にご相談ください。
医療費控除の詳細は介護と医療費控除を解説した記事で説明しています。
領収書・請求書の見方と確認先
明細で見るポイント
領収書や請求書では、項目ごとに「非課税の項目」と「課税の可能性がある項目」を分けて見ます。
- 非課税の項目:介護サービス費(保険給付の自己負担分と、要介護者への指定居宅サービスの全額自己負担分)、通所は食材料費・おむつ代等、入所は食材料費・居住費用・理美容代等(有料老人ホームのまかない等は別扱い)
- 課税の可能性がある項目:特別な居室、事業実施地域外の送迎、福祉用具の貸与・購入(障害者用物品を除く)、住宅改修、保険外サービス、有料老人ホームのまかない等や上乗せサービス
分からないときの確認先
消費税の扱いに迷う場合は、まず利用している事業所や施設に問い合わせてみてください。たとえば「この項目は介護保険の対象ですか。消費税はかかっていますか。内訳の根拠を教えてください」と聞くと、整理しやすくなります。税の取扱いそのものについては、最寄りの税務署や税理士が窓口になります。介護保険の費用については、市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターに相談できます。
この記事は一般的な制度の説明であり、個別の税務判断を行うものではありません。契約内容や個々の事情によって扱いが変わることがあります。
制度変更の可能性
制度は見直されることがある
介護保険の制度は見直されることがあり、基準費用額も令和6年8月・令和8年度に改定されています。この記事は2026年10月時点で確認できた資料にもとづくもので、今後変更される可能性があります。
飲食料品の消費税率に関する動き
飲食料品の消費税率を2年間1%とする案が検討されていますが、2026年10月時点では法案の段階で、成立は確認できていません。介護施設の食費への影響は現時点では不明です。今後の動向は国税庁・厚生労働省の最新情報で確認してください。
まとめ
この記事のポイント
- 介護保険の対象となる居宅サービス・施設サービス・地域密着型サービス・介護予防サービス・居宅介護支援などは、消費税法別表第二第7号イ等にもとづき非課税
- 支給限度額を超えて全額自己負担になる指定居宅サービスも、要介護者への提供であれば非課税
- 通所は食材料費・おむつ代等、入所は食材料費・居住費用・理美容代等が非課税(有料老人ホームのまかない等は別扱い)
- 特別な居室や事業実施地域外の送迎、福祉用具・住宅改修(障害者用物品を除く)、保険外サービスは課税
- 有料老人ホームは家賃が非課税、まかない等サービスは課税。契約内容の確認が前提
- 領収書は「非課税の項目」と「課税の可能性がある項目」に分けて見て、迷えば事業所に内訳の根拠を問い合わせる
- 医療費控除の対象かどうかは別の制度。制度は変更されうるため、最新情報は税務署・税理士・市区町村・厚生労働省で確認
当サイトは特定の施設・事業者を評価せず、公的な情報を並列に整理する編集方針をとっています。詳しくはこのサイトの立ち位置をご覧ください。