届いた介護給付費通知は請求書ではなく、支払いは不要です。保険者(市区町村)が利用内容を知らせる書類で、不正請求の防止などを目的にしています。確認できた自治体では廃止や申込制も見られ、届かない自治体もあります。この記事では、自治体の公表資料をもとに、載る項目と一致しない点、見方、相談先、施設入所や住所地特例の場合、医療費控除との関係を整理します。
- 金額は実際の支払額と一致しないことがあります。
- 医療費控除の証明には使えず、事業所の領収書を使います。
制度は3年ごとに見直され、2026年10月時点の公表資料にもとづくため、最新の内容は保険者にご確認ください。
介護給付費通知とは何か
介護給付費通知という書類の正体と、現在の位置づけ、自分の自治体での確かめ方を整理します。
介護給付費通知の定義
介護給付費通知とは、介護サービスを利用した人に対して、保険者(介護保険を運営する市区町村)が「いつ、どの事業所から、どのサービスを、どれだけ利用したことになっているか」を知らせる書類です。事業所から保険者へ届いた介護報酬の請求内容をもとに作成され、本人や家族が内容を見て、実際に受けたサービスと食い違いがないかを確かめられるようにしています。
市川市・藤沢市・東大阪市の案内では、国の介護給付適正化事業の一環で、目的は「適切なサービス利用の普及啓発」と「不正請求の防止」と説明されています。利用者に何かを請求する書類ではありません。
自分の自治体で届くかを確かめる方法
届くかどうかは保険者ごとに違うため、最初にお住まい(親御さんの保険者)の状況を確かめるのが近道です。
- 「市区町村名 介護給付費通知」で検索し、保険者の公表ページを見る
- 見つからなければ、保険者の介護保険担当課に電話で、送付の有無と申込制かどうかを尋ねる
親御さんが別の市区町村に住んでいる場合は、ご自身ではなく、親御さんの保険者が確認先です。
現在の位置づけと廃止・申込制の例
東京都福祉局の資料によると、国の介護給付適正化主要事業は令和5年度の見直しで3事業に再編され、介護給付費通知は主要事業から外れて「推奨される取組」になりました。これにより、行うかどうかは保険者の判断になっています。
これを受けて自治体ごとに対応が分かれています。公表ページで確認できた範囲では、次のような例があります。
- 通知を廃止した例:世田谷区・三鷹市(令和6年度)、土浦市(令和6年2月)、幕別町(令和6年3月)、泉南市・笛吹市(令和7年度)
- 希望者への申込制にした例:市川市・藤沢市・浦安市・東大阪市・東近江市・山梨県中央市
藤沢市の案内には、廃止が介護保険法施行令の改正による旨が書かれています。確認できた自治体の例であり、全国の状況を示すものではありません。通知が届かない自治体もあれば、届く自治体もあります。
よくある誤解
介護給付費通知について、次のような誤解が見られます。
- 請求書だと思って支払おうとする:領収証でも請求書でもなく、手続き・支払いは不要と浦安市・中央市が案内しています
- 医療費控除などの証明になると考える:医療費控除の証明には使えません(後の章で説明します)
- 載っている金額がそのまま支払額だと考える:実際の支払額と一致しないことがあります
- 全国どこでも届くと考える:自治体により異なります
届くかどうかは保険者で決まる
受け取れるかどうかは、保険者である市区町村の方針で決まります。
保険者が決める理由
介護給付適正化の取組のうち、通知は「推奨される取組」で、行うかどうかを各保険者が決めます。そのため、同じ県内でも隣り合う市で対応が違うことがあります。「うちには来たことがない」「知人の地域では届いた」という話は、そのまま当てはめられません。
申込制の自治体の例
申込制の自治体では、希望者が申請して初めて通知が発行されます。確認できた例は次のとおりです。
| 自治体 | 申込方法・時期 |
|---|---|
| 東大阪市 | 1〜12月利用分を、翌年2月10日から12月末必着で申請。発送は申請から2週間程度 |
| 浦安市 | 令和6年度分(令和6年8月〜令和7年7月)は令和7年11月30日までに連絡 |
| 中央市 | 令和6年度は年2回(9月・2月)、令和7年度以降は年1回で2月中旬。申請は毎年度必要 |
| 藤沢市 | 電子申請(e-KANAGAWA)または電話 |
期限や対象期間は年度で変わることがあります。上は各自治体が公表していた時点の内容ですので、申し込むときは最新の案内を保険者に確認してください。申請が毎年度必要な自治体では、一度で終わりと思い込まないよう注意が必要です。
従来の送付頻度
一斉送付していた時代の頻度も自治体で異なりました。年1回の世田谷区(11月)、年2回の藤沢市・三鷹市(8月・2月)・幕別町、年3回の笛吹市(6月・10月・2月)、年4回の丸亀市(5月・8月・11月・2月)、3か月に一度の土浦市、7月と1月の泉南市などです。
古い通知を見返すときは、通知に書かれた対象期間を必ず確認してください。
通知の目的と利用者にとっての意味
国の取組の一部として行われてきた背景と、家族が読む意味を整理します。
介護給付適正化事業の一環
介護給付の適正化とは、必要な人に必要なサービスが適切に提供される状態をつくる取組です。事業所の請求を保険者が点検するのとは別に、サービスを受けた本人や家族が内容を見て、利用実態と合っているかを確かめられるようにしたのが通知です。
不正請求を防ぐための確認
不適正な提供や請求がないかを確認することが、市川市・藤沢市・東大阪市の説明する目的の一つです。実際には利用していない日のサービスが載っている、事業所名に覚えがない、といった点に気づくきっかけになります。
ただし、記録と違うからといって、直ちに不正があるとは限りません。請求時期のずれなどで説明がつくこともありますので、まず事実を確認することが大切です。
離れて暮らす家族にとっての意味
離れて暮らす子世代にとって、親のサービス利用状況は見えにくいものです。届かない自治体では、事業所から交付されるサービス利用票や領収書、担当のケアマネジャー(ケアプランを作る専門職)への確認が、利用状況を知る手段になります。通知が届く自治体では、これに加えて、通知も確認手段の一つになります。
通知に載る項目と一致しない点
通知に書かれる情報の範囲と、金額が実際の支払額と合わない理由を知っておくと、慌てずに済みます。
載っている項目
自治体の案内で確認できた記載項目は次のとおりです。
- サービスを提供した年月
- 事業所名
- サービスの種類
- 利用回数・日数
- 費用の総額
- 利用者負担額(浦安市の例)
記載項目は自治体によって異なります。お手元の通知の項目名を読んで確かめてください。
載らない・含まれないもの
出典となる自治体ごとに、次のように案内されています。
- 福祉用具購入費・住宅改修費:載らない(丸亀市)
- 通所サービスの食費などの自己負担:利用者負担額に含まれない(丸亀市)
- 施設の居住費・食費・日常生活費:含まれず、実際の支払額と一致しないことがある(市川市)
- 事業所の請求が遅れたサービス:利用していても載らないことがある(藤沢市・東近江市、丸亀市)
- 居宅介護支援(ケアプラン作成):利用者負担0円で記載(丸亀市)
福祉用具購入費・住宅改修費が載らないのは丸亀市の案内で確認した内容で、他の自治体の様式は異なる場合があります。金額が0円でも、利用がなかったという意味ではありません。
実際の支払額と一致しない理由
通知は介護保険の給付に関する記録で、食費や居住費などは利用者負担額に含まれない自治体があります。これが、金額を合計しても支払額と一致しない主な理由です。もう一つは請求のタイミングで、事業所の請求が遅れると別の月に載ることがあります。月ごとの金額を細かく突き合わせて差が出ても、時期のずれで説明がつく場合があります。
高額介護サービス費の調整前の金額
江東区の案内では、通知の金額は高額介護サービス費による調整前の金額とされています。高額介護サービス費とは、1か月の自己負担額が所得に応じた上限を超えたとき、超えた分が払い戻される制度です。通知の上で負担が大きく見えても、払戻しが別に行われることがあります。詳しくは高額介護サービス費を解説した記事をご覧ください。
通知の見方の手順
届いた通知を確認する手順を整理します。
照合に使う書類をそろえる
手元のサービス利用票、事業所の領収書、ケアプランの控えを使います。通知の対象期間を最初に確認し、同じ期間の記録を用意します。
確認する順番
次の順で見ていくと、見落としが少なくなります。
全部の数字を一致させようとすると疲れてしまいます。まずは「利用していないものが載っていないか」「覚えのない事業所がないか」に絞るのが現実的です。
食い違いに気づいたとき
すぐに事業所に連絡する前に、次の点を確かめます。
- 月の境目の利用が、翌月分として扱われていないか
- 請求の遅れによる記載の抜けではないか
- 食費など、利用者負担額に含まれない費用の差ではないか
- 複数の事業所を使っている場合の取り違えではないか
これらで説明がつかないときは、次の章へ進みます。
身に覚えのない記載があったときの相談先
相談の順番を、公的な案内に沿って整理します。
まず保険者の介護保険担当課
最初の相談先は、保険者の介護保険担当課です。通知に問い合わせ先が書かれている場合は、そこが窓口です。事業所名・提供月・サービス内容をメモして、手元の記録と食い違う点を具体的に伝えると、確認が進みやすくなります。
苦情の相談の流れ
相模原市の案内に示された流れは、サービス事業者、ケアマネジャーや地域包括支援センター(高齢者の総合相談を受ける窓口)、市の担当課、国民健康保険団体連合会(国保連)の順です。
国保連の苦情処理
国保連は、都道府県ごとにある介護保険の苦情処理を行う機関です。神奈川県国保連の案内では、介護保険法第176条に基づく苦情処理機関で、相談は無料とされています。他の都道府県の国保連の扱いは、それぞれの案内で確認してください。
不正が疑われた場合に事業所に対してどのような手続きが行われるかは、この記事では扱っていません。気になる場合は保険者の担当課に相談してください。
相談前に整えておくこと(一般的な心構え)
以下は出典に定められた手順ではなく、一般的な心構えです。通知の該当部分の写し、利用票・領収書、疑問点を日付と事業所名とともに書いたメモがあると、話が伝わりやすくなります。断定せず、「通知と記録が合わない点を確認したい」と事実を伝えるのが基本です。
届かない・住所を移した場合の対応
「届かない」「施設に入った」「住所を移した」場面での確認先を整理します。
届かないとき
結論として、通知が届かなくても問題ありません。通知は確認のための書類で、手続きに必要なものではないからです。領収書・サービス利用票で代わりに確認できます。
届かない主な理由は、その自治体が通知を行っていない、または申込制で申し込んでいないことです。気になるときは、保険者の介護保険担当課に、送付の有無と申込制かどうか、期限を尋ねてください。
施設に入所した場合
市川市の案内では、施設の居住費・食費・日常生活費は含まれず、実際の支払額と一致しないことがあります。施設の請求書や領収書は、通知とは別に保管しておきましょう。
住所地特例
川崎市の案内によると、住所地特例とは、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅などに入所して住所を移しても、元の市町村が保険者のまま変わらない仕組みです。
通知の有無や申込先の窓口は、現住所の市町村ではなく元の保険者になると考えられますので、問い合わせ先を間違えないよう、保険者名を確認してください。詳しくは住所地特例を解説した記事をご覧ください。
送付先の変更
江東区の案内では、長期入院などやむを得ない場合に送付先を変更できます。届出ができるのは本人か親族で、ケアマネジャーや知人はできません。施設宛にする場合は、施設職員の承諾が必要です。可否や手続きは自治体ごとに異なります。
医療費控除との関係
通知と医療費控除の関係に絞って整理します。
通知は医療費控除の証明にならない
市川市・東大阪市・藤沢市の案内では、通知は医療費控除の証明に使えず、事業所の領収書を使うとされています。領収書は通知が届かない自治体でも受け取るものですので、保管しておきましょう。
控除の対象になりうるサービス
大阪市の案内では、医療系サービスの費用は対象になりうるとされ、次のように整理されています。
- 対象:訪問看護・訪問リハビリテーション・施設サービス(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設等)
- 条件付き:訪問介護・通所介護(医療系サービスを併用する場合)
- 対象外:住宅改修
おむつ代は、寝たきり約6か月以上かつ医師の治療等の条件があります。高額介護サービス費の払戻し分は、控除額から差し引きます。個別の判断は税務署等に確認してください。詳しくは介護費用の医療費控除を解説した記事をご覧ください。
高額介護サービス費との関係
通知の金額と払戻しの関係に絞って整理します。
上限額と通知の金額
江東区・札幌市の案内では、高額介護サービス費の上限額は所得別で、住民税非課税世帯は最大24,600円、課税所得690万円以上は140,100円です。通知の金額は調整前ですので、通知の数字だけでは払戻しの有無は分かりません。
対象外の費用
江東区の案内では、福祉用具購入費・住宅改修の自己負担、施設の食費・居住費・日常生活費は、高額介護サービス費の対象外です。
払戻しの申請
江東区では、新たに該当した人には利用月の約3か月後に申請書が届き、一度申請すれば以後は自動で振り込まれます。通知は確認のための書類、申請書は払戻しを受けるための書類と、役割を分けて覚えておくと混乱しにくくなります。
制度変更の可能性とよくある失敗
通知を巡る運用は変わりつつあります。確認の際の注意点をまとめます。
制度は変わりうる
介護保険は3年ごとに見直され、東京都の資料では第9期は令和6〜8年度です。通知の対応も自治体ごとに変わっています。本記事の内容は2026年10月時点の公表資料にもとづいており、変わる可能性があります。最新の内容は保険者にご確認ください。
よくある失敗
- 金額が支払額と違うことを、不正だと決めつけてしまう
- 請求書だと思い込み、慌てて振り込もうとする
- 医療費控除の申告に通知を使おうとして、領収書を捨ててしまう
- 施設入所後の問い合わせ先を、現住所の市区町村だと思い込む
- 申込制の自治体で期限を過ぎてしまう
このサイトの考え方
本サイトは、特定の事業所や施設を評価・推奨せず、制度の仕組みを並列に整理する立場をとっています。詳しくはこのサイトの立ち位置をご覧ください。
まとめ
この記事のまとめ
- 介護給付費通知は、事業所の請求にもとづき利用内容を知らせる書類で、請求書ではなく支払い不要です。
- 確認できた自治体では廃止や申込制が見られ、届かない自治体もあります。届くかどうかは保険者次第です。
- 金額は、市川市(施設)・丸亀市(通所)の案内のとおり、食費などが利用者負担額に含まれず、実際の支払額と一致しないことがあります。
- 身に覚えのない記載は保険者の介護保険担当課へ。神奈川県国保連の案内では、国保連は介護保険法第176条に基づく苦情処理機関で、相談は無料とされています。
- 医療費控除には通知を使えず、事業所の領収書を使います。
次にすること
- お住まいの(親御さんの)保険者に、通知の送付の有無と申込制かどうかを確認する
- 届いた通知は、サービス利用票・領収書と照らして確認する