年末調整や確定申告の書類を前に、介護医療保険料控除を正しく申告できているか不安に感じている人は少なくありません。介護医療保険料控除とは、疾病や身体の傷害などに備える民間の医療保険・介護保険に支払った保険料について受けられる所得控除です。平成24年(2012年)1月1日以後に契約した「新契約」だけが対象で、所得税では年間の支払保険料に応じて最大4万円、住民税では最大2.8万円まで控除されます。この記事では、対象となる保険契約の条件、控除額の計算式、年末調整・確定申告での申告方法までを国税庁の公表情報にもとづいて解説します。
介護医療保険料控除とは
疾病・介護に備える民間保険の保険料が対象
介護医療保険料控除は、生命保険料控除の一区分として設けられている所得控除です。生命保険料控除は「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3区分に分かれており、平成24年分以後の所得税からこの3区分体制が採用されていると国税庁は解説しています。介護医療保険料控除の対象になるのは、疾病または身体の傷害等により保険金等が支払われる保険契約のうち、入院・通院給付など医療費の支払事由に基因して保険金等が支払われるものです。民間の医療保険や介護保険、医療特約などの保険料が該当します。
「介護保険料控除」との名称の混同に注意
名称が似ているため混同されやすいのが、公的な介護保険料に対する「介護保険料控除(社会保険料控除)」です。この記事で扱う「介護医療保険料控除」は民間の保険会社と契約した医療・介護保険の保険料に対する控除で、両者は制度上まったく別の控除です。上限額の有無や源泉徴収票での見え方といった具体的な違いは、後述の「公的介護保険料(社会保険料控除)との違い」で詳しく比較します。申告時に取り違えないよう、まずは名称が紛らわしい2つの制度があることを押さえておいてください(社会保険料控除としての介護保険料控除そのものについては、介護保険料控除とはを解説した記事もあわせてご確認ください)。
生命保険料控除の3区分と介護医療保険料控除の位置づけ
一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除
国税庁のタックスアンサーNo.1140によると、生命保険料控除は現在、次の3つの区分に分かれています。一つ目は死亡保険金等を主な目的とする保険契約の保険料が対象の「一般生命保険料控除」、二つ目はこの記事で解説する「介護医療保険料控除」、三つ目は個人年金保険契約の保険料が対象の「個人年金保険料控除」です。それぞれの区分ごとに支払った保険料の金額に応じて控除額が計算され、その合計額が所得金額から差し引かれます。
平成24年分の所得税から導入された区分
介護医療保険料控除という区分は、平成24年(2012年)1月1日以後に締結した保険契約(新契約)から適用が始まりました。それ以前の制度では、生命保険料控除は「一般生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」の2区分のみで、医療保険・介護保険の保険料は一般生命保険料控除に含めて計算されていました。制度改正により、平成24年分以後の所得税では、新契約について3区分で控除額を計算する仕組みに変わっています。
所得税の3区分合計適用限度額は12万円
各区分の控除額には上限があり、介護医療保険料控除は所得税で最大4万円です。ただし、一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除の3区分をすべて合計した場合の適用限度額は、所得税で12万円と定められています。仮に3区分それぞれで最大4万円ずつ控除できたとしても、合計は12万円が上限となり、それを超える金額は控除されません。
対象となる保険契約の条件
疾病・身体の傷害等に基因して保険金が支払われること
介護医療保険料控除の対象となる保険契約等は、保険金等の受取人のすべてを自己または自己の配偶者その他の親族とする保険契約等のうち、疾病または身体の傷害等により保険金等が支払われるもので、かつ入院・通院等の医療費の支払事由に基因して保険金等が支払われるものです(国税庁タックスアンサーNo.1141)。具体的には、民間の医療保険、介護保険、がん保険、医療特約などがこの条件に該当することが多くなっています。
保険金受取人は契約者本人または配偶者・その他の親族
対象となるためには、保険金等の受取人が契約者本人か、その配偶者、あるいはその他の親族に限定されている必要があります。受取人が上記以外の第三者に設定されている契約は、介護医療保険料控除の対象になりません。契約時にどのように受取人を設定しているかは、生命保険料控除証明書や契約内容の確認書類で確認できます。
国外契約や保険期間5年未満の貯蓄性保険は対象外
いくつかの契約は介護医療保険料控除の対象から除外されると国税庁の解説で整理されています。具体的には次の2種類です。
- 国外で締結した保険契約等
- 保険期間が5年未満で満期返戻金がある一定の貯蓄性の高い保険契約等(いわゆる貯蓄保険など)
自分が加入している保険が対象になるかどうかは、最終的には保険会社から送付される生命保険料控除証明書の記載区分を確認するのが確実です。
新契約と旧契約の違い(介護医療保険料控除は新契約のみ対象)
平成24年1月1日を境にした新契約・旧契約の区分
生命保険料控除の制度は、平成24年(2012年)1月1日を境に「新契約」と「旧契約」に分かれています。新契約とは平成24年1月1日以後に締結した保険契約等、旧契約とは平成23年12月31日以前に締結した保険契約等を指します。この区分は国税庁のタックスアンサーNo.1140および法令解釈通達で示されており、締結日によって適用される控除の区分と計算式が異なります。
旧契約には介護医療保険料控除という区分が存在しない
ここで重要なのは、介護医療保険料控除という区分自体が新契約にしか存在しないという点です。旧契約は「一般生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」の2区分のみで構成されており、旧契約で医療保険や介護保険に類する保障を持っていた場合、その保険料は旧制度の一般生命保険料控除として計算されます。つまり、平成23年以前から契約している医療保険がある場合、その保険料は介護医療保険料控除の対象にはならず、一般生命保険料控除の枠で扱われることになります。
契約の更新・転換をした場合の扱い
旧契約であっても、平成24年以後に契約の更新や転換、特約の中途付加などが行われた場合には、その部分について新契約とみなされ、新契約の計算方法が適用されるケースがあります。自分の契約が新契約扱いか旧契約扱いかは、保険会社から届く生命保険料控除証明書に「新制度」「旧制度」などの区分が明記されているため、そこで確認するのが確実です。判断に迷う場合は、契約している保険会社に問い合わせて確認することもできます。
所得税での控除額の計算方法(上限4万円)
年間払込保険料に応じた3段階の計算式
新契約に適用される介護医療保険料控除の所得税における控除額は、国税庁タックスアンサーNo.1140にもとづき、その年に支払った保険料の金額に応じて次の表のとおり計算されます。
| 年間払込保険料 | 控除額 |
|---|---|
| 2万円以下 | 支払った保険料の全額 |
| 2万円超4万円以下 | 支払保険料等×2分の1+1万円 |
| 4万円超8万円以下 | 支払保険料等×4分の1+2万円 |
| 8万円超 | 一律4万円(上限) |
具体的な保険料額で計算例を確認する
- 年間の医療保険料として3万円を支払った場合:3万円×2分の1+1万円=2万5,000円が控除額
- 年間10万円の介護保険料を支払っていた場合:8万円超のため一律4万円が控除額
このように、支払った保険料が多いほど控除額も比例して増えるわけではなく、8万円を超えた時点で控除額は頭打ちになる点に注意が必要です。
控除額は生命保険料控除証明書の記載額で計算する
実際の申告では、自分で保険料の合計額を計算するのではなく、保険会社から毎年秋頃に送付される生命保険料控除証明書に記載された「証明額」または「申告額」をもとに計算します。証明書には、その年の1年間で支払う(予定を含む)保険料の金額と、控除の区分が明記されており、「新制度」「旧制度」「介護医療保険料」といった区分名が印字されています。また、証明書には証明額と申告額の2種類の金額が記載されていることがありますが、基本的には申告額(その年の12月までの支払見込み額を含む金額)を用いて差し支えありません。複数の保険契約がある場合は、区分ごとに証明額を合計してから、上記の計算式にあてはめます。
住民税での控除額の計算方法(上限2.8万円)
住民税独自の3段階の計算式
住民税(個人住民税)における介護医療保険料控除の計算式は、所得税とは異なる金額基準で設定されています。清瀬市の公式サイトで示されている新契約の計算式は次のとおりです。
| 年間払込保険料 | 控除額 |
|---|---|
| 1.2万円以下 | 支払った保険料の全額 |
| 1.2万円超3.2万円以下 | 支払保険料等×2分の1+6,000円 |
| 3.2万円超5.6万円以下 | 支払保険料等×4分の1+1万4,000円 |
| 5.6万円超 | 一律2.8万円(上限) |
住民税の3区分合計適用限度額は7万円
所得税と同様に、住民税でも一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除の3区分を合計した適用限度額が定められています。清瀬市の案内によると、住民税における3区分合計の適用限度額は7万円です。各区分の上限がそれぞれ2.8万円であっても、3区分の合計が7万円を超える場合は、超えた部分は控除されません。
所得税と住民税で限度額・計算式が異なる理由
所得税と住民税では、介護医療保険料控除の上限額・3区分合計の上限額がそれぞれ異なります。
| 所得税 | 住民税 | |
|---|---|---|
| 介護医療保険料控除の上限 | 4万円 | 2.8万円 |
| 3区分合計の適用限度額 | 12万円 | 7万円 |
これは所得税と個人住民税がそれぞれ別の法令にもとづいて計算される税金であり、控除額の設計もそれぞれの制度の中で個別に定められているためです。年末調整や確定申告で申告した内容は、所得税用と住民税用でそれぞれ別の計算式が自動的に適用される仕組みになっているため、納税者が両方の計算式を自分で使い分ける必要はありません。
公的介護保険料(社会保険料控除)との違い
公的介護保険料は社会保険料控除で全額が対象
40歳以上の人が納付している公的な介護保険の保険料は、介護医療保険料控除ではなく「社会保険料控除」の対象です。社会保険料控除は、納税者本人や生計を一にする配偶者その他の親族が負担すべき社会保険料を支払った場合に、その支払った金額の全額を所得金額から控除できる制度だと国税庁のタックスアンサーNo.1130は説明しています。公的介護保険料についても、給与から天引きされた金額や年金から特別徴収された金額、あるいは自分で納付した金額の全額が控除の対象になり、介護医療保険料控除のような上限額は設けられていません。
上限の有無という根本的な違い
この2つの控除の最も大きな違いは、控除額に上限があるかどうかという点です。
| 介護医療保険料控除 | 社会保険料控除(公的介護保険料) | |
|---|---|---|
| 対象 | 民間の医療・介護保険の保険料 | 公的介護保険の保険料 |
| 上限額 | 所得税4万円・住民税2.8万円 | 上限なし(全額控除) |
同じ「介護」という言葉が使われていても、制度としての性質はまったく異なるため、確定申告や年末調整の書類でどちらの欄に記入すべきかを混同しないよう注意が必要です。
源泉徴収票でどちらの控除か確認する方法
年末調整を受けた給与所得者は、源泉徴収票に「社会保険料等の金額」と「生命保険料の控除額」がそれぞれ別の欄で記載されます。公的介護保険料は前者の社会保険料等の金額に含まれており、民間の医療・介護保険に対する介護医療保険料控除は後者の生命保険料の控除額に含まれています。自分がどちらの控除をいくら受けているかは、この源泉徴収票の該当欄で確認できます。
年末調整での申告方法
給与所得者の保険料控除申告書への記入
会社員などの給与所得者が介護医療保険料控除を受けるには、年末調整の際に勤務先へ提出する「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入します。国税庁の案内(A2-3)によると、この申告書には保険会社名、保険の種類、契約者名、受取人、新契約か旧契約かの区分、年間の支払保険料額などを記入する欄があり、これらは生命保険料控除証明書に記載されている内容を転記する形になります。
生命保険料控除証明書の添付・提出
申告書には、保険会社から送付された生命保険料控除証明書の原本を添付して勤務先に提出する必要があります。証明書は毎年10月頃から順次発送されるのが一般的で、複数の保険に加入している場合は、それぞれの契約について証明書を用意する必要があります。証明書を紛失した場合は、後述するとおり保険会社に再発行を依頼できます。
マイナポータル連携による電子的控除証明書の利用
令和2年10月以降、マイナポータルを通じて生命保険料控除証明書などを電子データで取得し、年末調整や確定申告の手続きに利用できる仕組みが整備されていると国税庁は案内しています。この電子的控除証明書を利用する場合は、証明書の原本を紙で添付する必要がなく、データを年末調整の手続きに取り込む形で申告できます。勤務先がこの電子的な提出に対応しているかどうかは、勤務先の案内を確認する必要があります。
確定申告での申告方法
確定申告書等作成コーナーでの入力手順
個人事業主やフリーランス、年末調整の対象にならない人が確定申告で介護医療保険料控除を受ける場合は、国税庁の確定申告書等作成コーナーにある「生命保険料控除」の入力画面から手続きを行います。作成コーナーの案内では、生命保険料控除証明書に記載された保険会社名、保険等の種類、新契約・旧契約の区分、支払保険料の金額などを画面の指示に従って入力すると、控除額が自動で計算される仕組みになっています。なお、介護に関連する税負担としては、家族の介護にかかった医療費が対象となる介護費用の医療費控除を解説した記事もあわせて確認しておくと、確定申告で使える控除の全体像を把握しやすくなります。
年末調整済み分の二重入力に注意する
会社員が確定申告(医療費控除やふるさと納税の申告など、別の理由で確定申告を行う場合)をする際に注意したいのが、すでに年末調整で生命保険料控除の適用を受け、源泉徴収票にその金額が反映されている場合の入力方法です。国税庁のe-Tax FAQおよび作成コーナーの案内によると、年末調整で控除済みの生命保険料控除額は、給与所得(源泉徴収票)の入力画面で処理されるため、生命保険料控除の入力画面で改めて同じ保険料を入力すると、控除額が二重に計算されてしまいます。年末調整で申告済みの保険料については、生命保険料控除の入力画面で重ねて入力しないよう注意が必要です。
個人事業主・年末調整を受けていない人の申告
個人事業主など、そもそも年末調整の対象にならない人は、確定申告書等作成コーナーの生命保険料控除の入力画面に、生命保険料控除証明書の内容をそのまま入力します。複数の保険契約がある場合は、一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除の区分ごとに証明書の内容を入力していくと、区分ごとの控除額と3区分合計の控除額が自動で計算されます。
注意点・よくある誤り
控除証明書を紛失した場合の再発行
生命保険料控除証明書を紛失した場合は、契約している保険会社のカスタマーセンターや会員向けサイトから再発行を依頼できるのが一般的です。年末調整や確定申告の提出期限に間に合うよう、証明書が見当たらないことに気づいた時点で早めに保険会社へ連絡することが大切です。複数の保険契約がある場合、証明書が複数枚に分かれて送付されることもあるため、すべての契約分がそろっているかをあらかじめ確認しておくと、申告の直前になって慌てずに済みます。
旧契約の保険料を介護医療保険料控除の欄に書いてしまう誤り
前述のとおり、介護医療保険料控除は新契約のみに存在する区分です。平成23年以前から契約している医療保険の保険料を、申告書や作成コーナーの介護医療保険料控除の欄に誤って入力してしまうケースがあります。生命保険料控除証明書には新制度・旧制度のどちらの区分かが明記されているため、入力前に必ず確認し、旧契約の保険料は一般生命保険料控除の欄に入力する必要があります。
制度は将来変更される可能性がある
税制は毎年度の税制改正によって見直される可能性があります。生命保険料控除の区分や控除額の上限、計算式についても、将来の税制改正で変更される可能性があるため、実際に申告する年度の最新情報は、国税庁のタックスアンサーなど公的な情報源で確認することをおすすめします。
まとめ
- 介護医療保険料控除は、平成24年1月1日以後に契約した新契約の医療保険・介護保険等の保険料が対象の所得控除である
- 所得税の控除額は年間払込保険料に応じた3段階の計算式で決まり、上限は4万円、3区分合計の上限は12万円である
- 住民税の控除額も3段階の計算式で決まり、上限は2.8万円、3区分合計の上限は7万円である
- 公的介護保険料は社会保険料控除の対象で全額が控除され、上限のある介護医療保険料控除とは制度が異なる
- 年末調整では保険料控除申告書に、確定申告では作成コーナーの入力画面に、生命保険料控除証明書の内容を正確に転記することが必要である
この記事で扱った内容は、税制改正により将来変更される可能性があります。個別の税務判断については、最新の国税庁の情報や税務署への確認をおすすめします。なお、扶養している親族の年齢や状況によっては、介護医療保険料控除以外にも活用できる所得控除があります。例えば70歳以上の親族を扶養している場合の老人扶養控除を解説した記事のように、家族構成に応じた控除の要件を個別に確認しておくと、申告漏れを防ぐことにつながります。当サイトの情報の取り扱い方針についてはこのサイトの立ち位置もあわせてご確認ください。