介護助手とは|仕事内容・資格の要否・導入の仕組みを厚労省・三重県の資料で解説

介護助手の定義、仕事内容、資格の要否、事業所の導入の流れ、加算や自治体の支援、介護職員へ進む研修を公的資料で整理します。

目次

介護助手とは、介護施設・事業所で介護職員をサポートし、清掃や配膳、ベッドメイクといった比較的簡単な作業を担う人を指す呼び名です。法令で定められた職種や資格ではなく、資格がなくても働ける仕組みとして三重県などで広がってきました。

施設で、介護職員とは別に配膳や清掃をしているスタッフを見かけることがあります。そうしたスタッフが介護助手にあたる場合、三重県のマニュアルでは身体介護は基本的に想定しない業務の分け方になっています。

この記事は、厚生労働省と三重県などの公的資料をもとに、仕事内容、資格の要否、導入の流れ、関連する加算や自治体の支援を整理したものです。読む立場によって、次の章から読むと早く答えにたどり着けます。

  • ご家族の方:「介護助手の仕事内容」と「利用者・家族・事業所が知っておきたい注意点」
  • 働きたい方:「資格・経験・年齢の条件」「雇用の形と賃金の見方」「自治体の支援・窓口」
  • 事業所の方:「事業所が導入する流れ」「加算・処遇改善との関係」「自治体の支援・窓口」

介護助手とは何か・法令上の位置づけ

介護助手は、資格や職種として法律に定められているのでしょうか。まず、言葉の意味と法令上の扱いを確認します。

定義と目的

三重県が2019年3月にまとめた「介護助手導入実施マニュアル」(1ページ)では、介護助手を「介護保険施設・事業所等において、介護職員をサポートする職種」で、「比較的簡単な単純作業の部分を担う」人と説明しています。

同じマニュアルは、取組の目的を次の3つに整理しています。

  • 介護人材の確保
  • 介護職員の負担軽減と専門職化
  • 高齢者の就労先の確保と介護予防

「専門職化」とは、介護職員が専門性の高い仕事に集中できるようにするという意味合いです。介護助手を入れること自体が目的ではなく、仕事の分け方を見直すことが狙いにあります。

法令上の職種名ではない

厚生労働省の第216回社会保障審議会介護給付費分科会の資料(令和5年4月27日)では、令和4年度の実証テーマ「介護助手の活用」を、「身体的介護以外の業務や介護専門職のサポート等の比較的簡単な作業を行う、いわゆる介護助手」と記しています。「いわゆる」と付いているとおり、これは介護保険法などで定められた職種名ではありません。

令和6年3月の厚生労働省老健局の通知(老高発0315第4号)も、「いわゆる介護助手の活用」を、職員間の役割分担の取組として位置づけています。つまり、国の資料では、人員基準上の職種というより、現場での役割分担の工夫として扱われています。

地域による呼び方と説明の違い

都道府県のページを見ると、説明の言葉は少しずつ異なります。

自治体公表されている説明の要点
三重県介護職員をサポートする職種。比較的簡単な単純作業を担う
大阪府掃除・配膳・ベッドメイクなどの周辺業務を担う職員
北海道元気な高齢者や子育て中の主婦など、地域の方を雇用する取組

表のとおり、共通しているのは「介護職員が行う直接のケア以外の周辺業務を担う」という点です。名称は地域や事業所で異なることがあります。名称ではなく、実際にどの業務を任されるのかを確認することが大切です。

よくある誤解

  • 介護助手は資格の名前ではありません。国家資格や公的な認定制度のような「介護助手資格」は、確認できた公的資料にはありません
  • 介護助手が行うのは、食事・入浴・排せつなどの直接の介護ではなく、周辺業務が中心です(次の章で詳しく説明します)
  • 「介護助手」と「介護職員」は同じではありません。仕事の範囲や求められる専門性が異なります

介護助手が生まれた経緯と広がり

この取組は、いつ・どこで始まり、どこまで広がっているのでしょうか。

三重県のモデル事業から

三重県のマニュアルによると、介護助手の取組は平成27年度(2015年度)に、三重県内の介護老人保健施設で「元気高齢者による介護助手モデル事業」として始まりました。元気な高齢者に働いてもらうことで、介護職員の負担を軽くし、高齢者の就労先を確保しようとする試みです。

その後、三重県は「かがやきプラン」などの取組の中で、説明会の開催や導入事業所の支援を続けています。

全国への広がり

全国老人保健施設協会の調査では、令和4年4月現在で25の都道府県が介護助手の取組を実施しているとされています(三重県「かがやきプランによる三重県の取組」の資料に記載)。この数字は老人保健施設の分野を対象にした調査結果であり、すべての介護サービスの実施状況を示すものではありません。

国の資料でも、令和4年度に厚生労働省が行った介護助手の実証(17施設が参加)や、令和6年度の生産性向上推進体制加算の要件に「いわゆる介護助手の活用」が例示されるなど、位置づけが広がっています。これらは後の章で説明します。

三重県の実績の推移

結論から言うと、採用数のピークは平成28年度の89人で、近年は件数が少なくなっています。これは三重県の数字であり、全国の傾向とは限りません。

三重県の資料(かがやきプランによる三重県の取組)には、導入施設数、説明会の参加者数、採用者数、継続雇用の人数が年度ごとに載っています。数値は次のとおりです。

年度導入施設数説明会参加採用継続雇用
平成27年度92515747
平成28年度182268981
平成29年度102404847
平成30年度131715852
令和元年度19823935
令和2年度7181210
令和3年度8361716

令和4年度は、導入施設数の見込みが11施設と記載されています(そのほかの項目は資料の時点では確定していません)。

平成27年度から令和3年度までの合計を単純に足すと、導入施設数は延べ84、説明会参加は1,024人、採用は320人、継続雇用は288人です(この合計は当サイトが表の数字を足したもので、資料に書かれた値ではありません)。年度によって増減があり、特に令和2年度は説明会参加が18人と少なくなっています。理由は資料から読み取れないため、ここでは推測しません。

三重県の介護助手の採用人数の推移平成27年度57人、28年度89人、29年度48人、30年度58人、令和元年度39人、2年度12人、3年度17人。合計は採用320人、継続雇用288人。三重県の介護助手 採用人数単位:人(平成27〜令和3年度)57H2789H2848H2958H3039R112R217R37年度の合計(当サイト集計)採用320人・継続雇用288人
三重県の資料の採用人数を年度ごとに示しました。最多は平成28年度の89人で、令和2年度は12人でした。

採用320人に対して継続雇用は288人で、およそ9割にあたります(当サイトの計算)。ただし「継続雇用」の数え方は資料に説明がないため、数値は目安として見てください。

介護助手の仕事内容

介護助手は、具体的にどんな仕事をするのでしょうか。三重県のマニュアルと国の実証資料から整理します。

業務の分け方・対利用者業務と周辺業務

三重県のマニュアル(5〜10ページ)は、介護現場の業務を大きく2つに分けて考えます。

対利用者業務と周辺業務の分け方三重県のマニュアルでは、食事・入浴・トイレ・着替えなどの直接介護を介護職員が、清掃・シーツ交換・配膳などの周辺業務を介護助手が担う。介護現場の業務の分け方対利用者業務担い手:介護職員食事・入浴・トイレ・着替えなどの直接介護周辺業務を引き受ける周辺業務担い手:介護助手清掃・物品補充・ゴミ捨てシーツ交換・ベッドメイキング洗濯物の回収・配布配茶・配膳・下膳※身体介護は基本的に想定しない
介護助手は周辺業務を受け持ち、介護職員が利用者と向き合う時間を増やします。
区分内容の例主な担い手
対利用者業務食事、入浴、トイレ、着替えなどの直接介護介護職員
周辺業務清掃、物品補充、ゴミ捨て、シーツ交換、ベッドメイキング、洗濯物の回収・配布、配茶・配膳・下膳介護助手

マニュアルは「身体介護は基本的に想定しません」と明記しています。また、利用者に直接触れないよう注意する旨の記載もあります。介護助手は、介護職員が利用者と向き合う時間を増やすために、周辺業務を引き受ける役割だといえます。

難易度によるC・B・Aの3区分

マニュアルでは、周辺業務を含む業務を、難易度によって3つのクラスに分類しています。

  • Cクラス:単純作業
  • Bクラス:要注意業務
  • Aクラス:専門業務

また、トイレ介助、着替え、離床・移動の介助、食事介助、配薬、脱衣・入浴介助は、介護職員の中心業務として整理されています。マニュアルは周辺業務の難易度をC・B・Aの3区分で整理しています。どこまで任せるかは事業所ごとに確認が必要です。

なお、医療行為(医行為)との線引きを具体的に示した資料は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。薬や医療的な処置に関わる作業は、介護助手の業務としてよいかどうかを事業所の責任者と指定権者(都道府県・市町村)に確認してください。

実証で多かった業務

厚生労働省の令和4年度実証(第216回介護給付費分科会資料)には、介護助手が実際に行っていた業務の割合が複数回答で示されています。

業務割合
食事・おやつの準備、片付け70%
居室の清掃・片付け55%
共用部の清掃53%
リネン交換・ベッドメイク50%
ゴミ捨て30%

食事の準備・片付けが最も多く、掃除やリネン関係が続いています。いずれも、三重県マニュアルが周辺業務として挙げる内容と重なる業務です。

働き方のイメージ(業務の組み立て方)

一日の具体的な流れは事業所ごとに異なり、公的資料に標準的なスケジュールは示されていません。ここでは、公表されている業務例をもとに、よくある組み立て方の考え方だけを示します。

  • 食事の時間帯に、配茶・配膳・下膳を担う
  • 居室の清掃やシーツ交換、ベッドメイクを行う
  • 共用部の清掃、ゴミ捨て、物品の補充を決まった時間に行う
  • 洗濯物の回収と配布を行う

勤務日や時間は、本人の希望と事業所の必要時間を調整して決めます。実証の課題の声には「アシスタントの希望曜日・時間で採用するため、必要な時間と乖離する」というものがあり、希望と必要のすり合わせが課題になる場合もあります(詳しくは効果と課題の章で説明します)。

資格・経験・年齢の条件

介護助手として働くのに資格は要るのでしょうか。実際にはどんな人が働いているのかも確認します。

資格は必要か

確認できた公的資料に、介護助手の資格要件を定めた規定は見つかりませんでした。三重県のマニュアル作成業務の仕様書には、専門知識がなくてもできる業務を想定している旨が書かれています。

ただし、実際の募集条件は事業所が決めます。応募条件や必要な書類、健康診断の有無などは、募集している事業所の案内で確認してください。

実証に参加した介護助手の属性

実証事業の資料では、介護助手40人の内訳が次のように示されています。

項目割合
資格なし73%
介護・医療の資格あり25%
介護現場での就労経験あり30%
60歳以上約6割(60代23%、70代以上35%)

資格のない人が7割を超える一方で、介護や医療の資格を持つ人も4人に1人ほどいます。年齢は60歳以上が約6割で、シニア層が多く参加していることが分かります。この数値は特定の実証事業のものであり、すべての事業所の傾向を表すものではありません。

未経験者が不安を減らす選択肢

資格が必須ではなくても、介護の基礎を学んでから働きたい人には、公的な研修があります。代表的なものが「介護に関する入門的研修」(21時間)です。詳しくは後の章と、介護に関する入門的研修とはで解説しています。

入門的研修は介護助手になるための必須条件ではありません。あくまで、参入のきっかけとして自治体が実施している研修です。

雇用の形と賃金の見方

介護助手は、どのような契約で働くのでしょうか。公的資料から分かる範囲を整理します。給与の金額は、介護助手だけの公的な統計が確認できないため、数字を示せません。

契約で定める内容

三重県のマニュアル(4ページ)は、契約書類に次の項目を設定するよう示しています。

  • 職務(担当する業務)
  • 契約期間
  • 勤務日
  • 勤務時間
  • 給与
  • 社会保険の加入

働く側にとっては、これらがどのように書かれているかを事前に確認することが大切です。特に、担当する業務の範囲と、身体介護を含まないことが書面で確認できると、入職後の食い違いを防げます。

パート雇用から継続雇用へ

三重県の実績表では、最初に3か月のパート雇用として始め、その後に継続雇用へ移る流れが示されています。「継続雇用」の数え方は資料に説明がありません。この雇用期間の設定は三重県の取組での例で、すべての事業所が3か月から始めるわけではありません。契約期間は求人票や契約書類で確認してください。

賃金は公的統計では確認できない

介護助手だけの賃金を示した公的な統計は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。そのため、このサイトでは時給や月収の目安は書きません。募集している事業所の案内で確認してください。

介護分野の賃金の公表資料はありますが、いずれも介護職員(訪問介護員を含む)全体の統計で、介護助手の賃金ではありません。たとえば介護労働安定センターの令和7年度調査では、月給の人の通常月の平均月収は254,951円ですが、介護助手の目安として読むのは避けてください。

金額は募集先ごとに異なるため、求人票では次の点を確認します。

  • 時給か月給か
  • 勤務日と勤務時間
  • 社会保険の加入の有無
  • 契約期間(期間を区切った雇用か、継続を前提とするか)

導入の効果と課題

介護助手を導入した事業所では、どのような変化があったのでしょうか。国の実証結果と、課題として挙がった声を確認します。

厚生労働省の実証結果

令和4年度に厚生労働省が行った実証(介護助手テーマ、17施設)では、介護助手が間接業務を担った時間に応じて、介護職員の間接業務に使う時間が減る傾向がみられました。

介護職員(141人)に聞いた結果は次のとおりです。

介護助手の導入で介護職員が感じた変化介護職員141人の回答で、気持ちに余裕ができる73%、より良いケアができる66%、コミュニケーションやケアの時間が取れる64%、精神的な負担が軽くなる58%。介護職員141人が感じた変化令和4年度 厚生労働省の実証(17施設)気持ちに余裕ができる73%より良いケアができる66%コミュニケーションやケアの時間が取れる64%精神的な負担が軽くなる58%
厚生労働省の実証での介護職員の回答です。当事者の回答で、医学的な効果を示すものではありません。
変化(介護職員の回答)割合
気持ちに余裕ができる73%
より良いケアができる66%
コミュニケーションやケアの時間が取れる64%
精神的な負担が軽くなる58%

利用者(87人)の回答では、表情の変化があったとする人が51%、発話量の変化があったとする人が44%でした。いずれも当事者の回答に基づく結果で、医学的な効果を示すものではありません。

見守り機器などとの組み合わせの結果

民間事業者が行った提案型実証(特定施設12か所)では、昼間の介護職員の総業務時間が、導入前を100%とすると76%になった、という結果が示されています。ただし、この結果は見守り機器など複数の施策を合わせた効果です。介護助手だけの効果ではないので、その点に注意して読んでください。

課題として挙がった声

実証では、導入にあたっての課題も出ています。

  • 「すぐに即戦力にはならない」
  • アシスタントの希望曜日・時間で採用するため、事業所が必要とする時間帯と食い違うことがある

導入してすぐに業務が軽くなるわけではなく、教える時間や業務の切り出しの準備が必要です。また、働く人の希望する日や時間と、事業所の繁忙時間をどう合わせるかも調整が必要です。

なお、「介護助手を入れると離職率が下がる」といった数値を示す資料は、今回確認できた公的資料の範囲では見つかっていません。そのため、離職への効果は断定しません。

事業所が導入する流れ

導入を考える事業所は、何から始めればよいのでしょうか。三重県のマニュアルなどの公表資料をもとに、考え方を整理します。

導入の流れの全体像

三重県のマニュアルが示す業務の分け方や契約書類の項目をもとに、当サイトで導入の流れの一例を整理します(マニュアル自体の章立てそのものではありません)。

事業所が介護助手を導入する流れの一例業務の洗い出し、任せる業務の整理、契約内容の決定、募集と説明、期間を区切った雇用と継続判断の5段階。介護助手の導入の流れ(一例)1業務を洗い出す対利用者業務と周辺業務に分ける2任せる業務を整理難易度(C・B・A)で分ける3契約内容を決める職務・期間・勤務日・時間・給与等4募集・説明説明会や面談で業務内容を伝える5期間を区切って雇用様子を見ながら継続を判断
三重県のマニュアルの考え方をもとに当サイトが整理した一例です。
  1. 現状の業務を洗い出し、対利用者業務と周辺業務に分ける
  2. 周辺業務のうち、介護助手に任せられる業務を難易度(C・B・A)で整理する
  3. 契約内容(職務・契約期間・勤務日・勤務時間・給与・社会保険)を決める
  4. 募集し、説明会や面談などで応募者に業務内容を伝える
  5. 最初は期間を区切って雇用し、様子を見ながら継続を判断する

詳しくは三重県の「介護助手導入実施マニュアル」をご覧ください。そのまま全国の事業所に当てはまる手順ではないため、自事業所のサービス種別に合わせて読み替えてください。

業務の切り出しで意識する点

導入前に最も時間をかけるのは、業務の切り出しです。マニュアルの考え方では、介護職員の中心業務(トイレ介助、着替え、移動介助、食事介助、配薬、入浴介助)を介護助手の業務に含めないことが前提になります。

切り出した業務は、手順を書いて見える形にしておくと、教える側の負担が減ります。また、介護職員の中に「自分の仕事が減る」という不安がある場合もあるため、導入の目的を職員全体で共有しておくことも大切です。

人員配置への算入は指定権者に確認

介護助手を、法令で定める介護職員の人員基準の員数に算入できるかどうかについて、明示した厚生労働省の文書は今回確認できませんでした。したがって、ここでは可否を断定しません。

人員基準は、サービスの種類(特別養護老人ホーム、デイサービス、グループホームなど)によって異なります。導入を検討している事業所は、指定を受けている都道府県や市町村(指定権者)に、事前に確認してください。

加算・処遇改善との関係

介護助手の活用は、加算や処遇改善とどう関わるのでしょうか。令和6年度に新設された加算と、令和8年度の処遇改善の通知を確認します。

生産性向上推進体制加算

令和6年度に新設された生産性向上推進体制加算は、加算Ⅱが月10単位、加算Ⅰが月100単位です。加算Ⅰは、見守り機器などのテクノロジーを複数導入し、かつ職員間の適切な役割分担(いわゆる介護助手の活用等)に取り組むことが要件になっています。

厚生労働省の通知(老高発0315第4号)は、役割分担の例として、次のような業務を集中的に行う者を設けることを挙げています。

  • 食事等の準備・片付け
  • 清掃
  • ベッドメイク
  • ごみ捨て

いずれも周辺業務にあたる内容です。算定の要件、届出の方法、対象サービスなどは別の資料で細かく決まっています。詳しくは生産性向上推進体制加算とはで解説しています。

令和8年度の処遇改善加算

厚生労働省の通知(老発0313第6号、令和8年3月13日)では、処遇改善加算の対象を、介護職員のみから介護従事者に広げることが示されています。内容は次のとおりです。

  • 月1.0万円(3.3%)の賃上げ措置
  • 生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員には、月0.7万円(2.4%)を上乗せ
  • 令和8年6月以降、加算区分を変更

介護助手が賃金改善の対象になるかどうかは、事業所が定める配分ルールによります。通知の本文でこの点を明示した箇所は、今回確認できませんでした。働く側は、募集要項や就業規則で処遇改善の扱いを確認し、事業所側は最新の通知と都道府県の案内で確認してください。

制度改定への注意

介護保険の報酬は3年ごとに改定があり、制度は変わりうるものです。加算の要件や単位数、自治体の補助事業も、法改正や年度の見直しで変わる可能性があります。この記事の内容は、作成時点で確認できた公的資料にもとづいています。算定や申請を検討する場合は、最新の厚生労働省の通知と、指定権者・都道府県の案内で確認してください。

自治体の支援・窓口

自分の地域にも支援はあるのでしょうか。まず、お住まいの都道府県名と「介護助手」を組み合わせて検索し、県のページや福祉人材センターの案内を探してみてください。以下は、確認できた例です。補助の条件や募集期間は年度ごとに変わります。

三重県

三重県の「介護助手導入支援事業」は、令和8年度の募集期間が令和8年10月9日から11月30日までで、締切が近づいています。導入にかかる経費を予算の範囲内で補助するもので、すでに介護助手を導入している事業所も、新たに雇用する場合は対象になります。補助額は、確認したページには記載されていませんでした。

令和4年度からは、県の福祉人材センターに「介護助手等普及推進員」が配置され、普及を進めています。

大阪府・北海道

自治体支援の内容
大阪府介護助手導入支援事業として、説明会や合同就職説明会を実施
北海道説明会の費用、ジョブマッチングの費用、研修の費用の一部を補助。令和4年度から市町村も補助対象者に

「ジョブマッチング」とは、働きたい人と受け入れたい事業所をつなぐ取組のことです。実施の主体や対象は自治体ごとに異なります。

島根県・宮城県・福岡県

  • 島根県:令和8年度の補助申請は6月12日で受付終了しています。申請には「しまね福祉・介護人材育成宣言事業所」の宣言が必要とされていました
  • 宮城県:令和5年度に5施設へ伴走支援を行い、導入手順のマニュアルを作成
  • 福岡県:「介護助手の手引き」を公開

補助には条件が付くことがあり、募集期間を過ぎると受付が終わります。事業所の所在する都道府県の最新要項を確認してください。働く側も、住んでいる地域の福祉人材センターや市町村の窓口で、介護助手の求人や案内がないか確認できます。

介護職員をめざす人の道筋

介護助手として働いた後、介護職員へ進むには何を学べばよいのでしょうか。公的な研修と、従事できる範囲の違いを整理します。

入門的研修(21時間)

厚生労働省の通知(社援基発0330第1号、平成30年3月30日)が示す入門的研修は、合計21時間です。

区分科目時間
基礎講座基礎知識1.5時間
基礎講座介護の基本1.5時間
入門講座基本的な介護の方法10時間
入門講座認知症の理解4時間
入門講座障害の理解2時間
入門講座安全確保2時間

実施主体は都道府県や市区町村で、修了すると修了証明書が交付されます。修了後は、福祉人材センターと連携してマッチングの支援を行うこととされています。内容や費用は自治体で異なるため、詳しくは介護に関する入門的研修とはをご覧ください。

ほかの研修との時間の違い

研修時間
介護に関する入門的研修21時間
生活援助従事者研修59時間
介護職員初任者研修130時間
実務者研修450時間

入門的研修の修了者は、都道府県の判断で、初任者研修や生活援助従事者研修の一部が免除される場合があります。ただし、免除の有無や範囲は都道府県によって異なります。初任者研修などの全体像は、介護職員初任者研修とはで説明しています。

介護の研修ごとの時間の比較入門的研修21時間、生活援助従事者研修59時間、介護職員初任者研修130時間、実務者研修450時間。研修ごとの時間の違い介護に関する入門的研修21時間生活援助従事者研修59時間介護職員初任者研修130時間実務者研修450時間
入門的研修は21時間で、初任者研修(130時間)や実務者研修(450時間)より短い研修です。

従事できるサービスの範囲

無資格の人や入門的研修の修了者は、通所系・居住系・施設系のサービスでは介護職員として従事できますが、訪問介護員としては従事できません。訪問介護員として働くには、初任者研修などの所定の研修を修了する必要があります。

介護助手から介護職員へ進む道筋を、直接示した厚生労働省の資料は、今回確認できませんでした。三重県の導入目的に「専門職化」が挙げられていますが、キャリアの進め方は事業所の方針にも左右されます。キャリアについて希望がある場合は、働く前に事業所に相談してみるとよいでしょう。

利用者・家族・事業所が知っておきたい注意点

家族・働く人・事業所は、それぞれ何を確認しておけばよいのでしょうか。立場ごとにまとめます。

利用者・家族の立場から

施設で、介護職員とは別に清掃や配膳を担当するスタッフを見かけることがあります。それが介護助手にあたる場合、利用者の身体に触れる介護は、基本的に介護職員が行う想定です。身体介護について気になることがあれば、施設の担当者に確認できます。

見学や面談の機会には、次のように聞いてみると、役割分担が分かりやすくなります。

  • 配膳や清掃を担当するスタッフと、介護職員の役割はどう分かれているか
  • 食事・入浴・排せつなど、身体に触れる介助を行うのは誰か
  • 気になることがあったとき、誰に伝えればよいか

施設によって呼び名も体制も異なるため、「介護助手」という言葉にこだわらず、業務の中身を尋ねるのが確実です。

家族が施設を選ぶ際に、介護助手がいるかどうかだけで施設を比べることは、この記事では勧めません。サービスの質は、人員配置、ケアの方針、記録、見学での印象など多くの要素で決まるためです。

働く側の立場から

  • 募集要項で、担当する業務に身体介護が含まれるかを確認する
  • 勤務日・勤務時間・契約期間・給与・社会保険の加入を書面で確認する
  • 処遇改善の対象に含まれるかを事業所に尋ねる
  • 将来、介護職員をめざしたい場合は、研修の受講支援があるか確認する

事業所の立場から

  • 介護職員の中心業務を、介護助手の業務に含めない
  • 導入直後は教える時間が必要で、すぐに即戦力にはならない場合がある

まとめ

要点は次のとおりです。

  • 介護助手は法令上の職種ではなく、介護職員をサポートして清掃・配膳・ベッドメイクなどの周辺業務を担う人の呼び名です。三重県のマニュアルでは、身体介護は基本的に想定されていません
  • 資格要件を定めた規定は確認できず、実証では介護助手40人のうち73%が資格なしでした。60歳以上が約6割です
  • 国の実証では、介護職員141人のうち73%が「気持ちに余裕ができる」と回答しました。一方で、すぐに即戦力にはならないという課題も挙がっています
  • 生産性向上推進体制加算の要件に「いわゆる介護助手の活用」が例示されています。処遇改善の対象は事業所の配分ルールによります

立場別の次の一歩は、次のとおりです。

  • 働きたい方:住んでいる都道府県の福祉人材センターなどに、介護助手の求人や研修を問い合わせる
  • 事業所の方:導入前に指定権者へ人員基準上の扱いを確認し、補助事業は最新の要項を見る
  • ご家族の方:利用する施設に、配膳・清掃と身体介助の担当がどう分かれているかを確認する

制度や補助は年度で変わることがあります。最新の内容は、必ず窓口で確認してください。

当サイトの編集方針はこのサイトの立ち位置で説明しています。

よくある質問

介護助手とは何ですか?

介護施設・事業所で介護職員をサポートし、清掃や配膳、ベッドメイクなど比較的簡単な周辺業務を担う人の呼び名です。三重県のマニュアルでの説明にもとづきます。法令上の職種や資格ではなく、身体介護は基本的に想定されていません。

介護助手に資格は必要ですか?

確認できた公的資料に資格要件の規定はなく、三重県の仕様書では専門知識がなくてもできる旨が書かれています。実証の介護助手40人のうち73%は資格なしでした。ただし募集条件は事業所が決めるため、応募先の案内で確認してください。

介護助手と介護職員の違いは何ですか?

介護職員は食事・入浴・トイレ・着替えなどの直接介護を中心に担います。介護助手は清掃、物品補充、ゴミ捨て、シーツ交換、配膳・下膳などの周辺業務が中心です。三重県のマニュアルでは身体介護は基本的に想定しないとされています。

介護助手の時給はいくらですか?

介護助手だけの賃金を示した公的な統計は確認できなかったため、金額は示せません。介護労働安定センターの調査などの数値は介護職員全体のもので、介護助手の賃金ではありません。給与は契約書類に記載されるため、募集先の事業所で確認してください。

介護助手は人員基準の職員数に入れてよいですか?

介護助手を介護職員の員数に算入できるかを明示した厚生労働省の文書は、確認できませんでした。人員基準はサービス種別で異なるため、算入の可否は断定できません。導入前に指定を受けている都道府県・市町村に確認してください。

介護助手から介護職員になるには何が必要ですか?

訪問介護員として働くには、初任者研修(130時間)などの研修修了が必要です。施設系などでは無資格でも介護職員として従事できます。入門的研修(21時間)修了者は、都道府県の判断で初任者研修の一部が免除される場合があります。

参考・出典

  1. 介護助手導入実施マニュアル(2019年3月) (三重県)
  2. 介護助手導入支援事業 マニュアル作成業務委託仕様書 (三重県)
  3. かがやきプランによる三重県の取組 (三重県)
  4. 介護助手導入支援事業 (三重県)
  5. 第216回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1 (厚生労働省)
  6. 生産性向上推進体制加算の基本的考え方(老高発0315第4号) (厚生労働省)
  7. 生産性向上推進体制加算について (厚生労働省)
  8. 令和8年度の処遇改善加算に関する通知(老発0313第6号) (厚生労働省)
  9. 賃金構造基本統計調査による介護職員の賃金の推移 (厚生労働省)
  10. 介護に関する入門的研修の概要・実施通知 (厚生労働省)
  11. 介護人材確保に向けた取組について (厚生労働省)
  12. 介護分野の生産性向上 (厚生労働省)
  13. 介護労働実態調査(令和7年度) (公益財団法人介護労働安定センター)
  14. 令和7年度介護労働実態調査 結果の概要 (公益財団法人介護労働安定センター)
  15. 介護助手導入支援事業 (大阪府)
  16. 介護助手 (宮城県)
  17. 介護助手導入支援事業補助金 (島根県)
  18. 地域人材の介護助手の活用 (北海道)
  19. 介護助手の手引き (福岡県)