介護職員の必要数とは、市町村の介護保険事業計画に載ったサービスの見込み量をもとに、将来そのサービスを提供するのに必要な職員の人数を推計した数字です。厚生労働省が令和6年7月に公表した第9期の推計では、2022年度の約215万人に対し、2026年度に約240万人、2040年度に約272万人とされています。この記事では、数字の意味、推計の仕組み、実際の職員数との違いを、公表資料にもとづいて整理します。
- ご家族の立場の方へ:必要数は計画上の見込みで、将来サービスが受けられなくなると示す数字ではありません。不安がある場合は、地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当課に相談できます。
- 就業を考えている方へ:求人は多く出ていますが、職場による差もあります。処遇や勤務体制は、複数の事業所で同じ項目を見比べることが大切です。
介護職員の必要数とは
この章では、必要数が何を指す数字なのか、読み違えやすい点を整理します。
定義と対象範囲
介護職員の必要数は、介護保険事業計画の見込みを前提に「この人数の職員がいれば計画どおりにサービスを提供できる」と考えられる人数を示すものです。各市町村が介護保険事業計画に位置づけたサービスの見込み量(介護予防・日常生活支援総合事業を含みます)などをもとに、都道府県が推計し、国が全国分を集計して公表します。
人数は「実人員ベース」で、常勤に換算した数ではありません。また、必要数には、総合事業の従前相当サービスに従事する職員も含まれています。
よくある誤解
読み違えやすい点が3つあります。
- 「必要数=足りない人数」ではありません。約272万人は2040年度に必要とされる職員の総数です。2022年度の実人員(約215万人)との差は約57万人ですが、これは必要数の増加幅であり、不足人数と断定できる数字ではありません。
- 将来の実際の職員数の予測ではありません。必要数は、計画上のサービス見込み量にもとづく数字です。
- 固定の数字ではありません。介護保険事業計画は原則3年に1期のサイクルで見直され、第10期の計画で再推計されうる数字です。
第9期の公表時期
第9期の必要数は、令和6年7月12日に厚生労働省が公表しました。第9期の計画期間は2024〜2026年度(令和6〜8年度)で、その次の第10期は2027〜2029年度です。公表資料では全国値のほか、都道府県別の数字も示されています。
第9期の必要数|2026年度・2040年度の数字
ここでは、第9期で示された全国の数字と、読むときの基準を確認します。
全国の必要数
第9期の推計では、2022年度の実人員が約215万人(令和4年介護サービス施設・事業所調査)でした。これに対して必要数は次のとおりです。
| 年度 | 必要数(約) | 2022年度からの増加(約) | 年あたりの増加(約) |
|---|---|---|---|
| 2022年度(実数) | 215万人 | - | - |
| 2026年度(第9期末) | 240万人 | 25万人 | 6.3万人 |
| 2040年度 | 272万人 | 57万人 | 3.2万人 |
2026年度までの4年間で約25万人、年あたり約6.3万人の増加が必要とされる計算で、2040年度までの長期では年あたり約3.2万人の増加となります。短期間の増加幅のほうが大きい点が特徴です。
基準は2022年度(2019年度ではない)
第9期の数字は、すべて2022年度を基準にした比較です。第8期の推計は2019年度を基準にしていたため、ニュースや古い記事で「2019年度比」の数字を目にした場合は、第8期のものです。第9期の公表に2019年度比の数字はありません。基準の年度が違う数字を並べて増減を比べると、誤った読み方になるため注意が必要です。
数字を読むときの注意
都道府県別の推計では、石川県は令和6年能登半島地震の前に作られた見込み量にもとづいて推計されています。地震後の状況は反映されていない点を、公表資料の注記として確認できます。また、必要数はあくまで各自治体の計画上の見込みです。サービスの利用が見込みどおりに増えるかどうかで、実際の需要は変わりえます。
推計の仕組み|見込みサービス量から国の集計まで
必要数がどのような順序で作られるのかを説明します。
市町村→都道府県→国の流れ
推計は3段階で進みます。まず市町村が、介護保険事業計画の中で、計画期間中の介護サービスの見込み量を定めます。次に、その見込み量等をもとに、都道府県が必要な職員数を推計します。最後に国が、都道府県ごとの推計を全国分として集計し、公表します。
全国の数字は、各地の計画を積み上げたものです。都道府県別の必要数にも違いがあります(後述します)。
実人員ベースで数える
数え方は実人員で、常勤換算の人数ではありません。基準年度の2022年度の約215万人も、令和4年介護サービス施設・事業所調査にもとづく実人員です。
「現状推移見込み」との違い
公表資料には、必要数とは別に「現状推移見込み」という参考値が示されています。これは、近年の入職・離職の動向がそのまま続いた場合に、職員数がどうなるかを見込んだものです。新たな施策の効果は含まれていません。
たとえば2040年度の北海道は、必要数129,055人に対し現状推移見込みは72,998人です。埼玉県は、必要数143,812人に対し現状推移見込みは113,029人となっています。これらは将来の実際の人数を断言するものではなく、施策を講じなかった場合の参考値として、必要数との差を示すものです。
第8期との比較
前回の第8期の数字と並べて、基準や前提の違いを見ます。
第8期の必要数
第8期(2021〜2023年度)の推計は、令和5年9月8日の社会保障審議会介護給付費分科会(第223回)で示されました。2019年度の約211万人を基準にした数字は次のとおりです。
| 年度 | 必要数(約) | 2019年度からの増加(約) |
|---|---|---|
| 2019年度(基準) | 211万人 | - |
| 2023年度 | 233万人 | 22万人 |
| 2025年度 | 243万人 | 32万人 |
| 2040年度 | 280万人 | 69万人 |
第9期との違い
| 項目 | 第8期 | 第9期 |
|---|---|---|
| 基準年度 | 2019年度(約211万人) | 2022年度(約215万人) |
| 2040年度の必要数 | 約280万人(+約69万人) | 約272万人(+約57万人) |
| 計画期間 | 2021〜2023年度 | 2024〜2026年度 |
2040年度の必要数は、第9期のほうが第8期より約8万人少なくなっています。ただし基準年度も計画の前提も異なるため、この差の理由を本記事で断定することはしません。「必要数は計画ごとに見直される」ことを示す例として読むのが適切です。
過去の期と単純に比べられない点
介護サービス施設・事業所調査は、平成30年度(2018年度)に集計方法が変わりました。そのため、第7期までの数字と第8期以降の数字は単純には比較できません。長期の推移を見るときは、どの調査年・どの集計方法の数字かを確認する必要があります。
介護職員数の実際の推移
必要数と比べるために、実際の職員数と、サービスを使う側の人数を確認します。
平成12年度からの長期推移
介護保険制度が始まった平成12年度(2000年度)の介護職員数は54.9万人でした。その後、令和元年度に210.6万人、令和2年度に211.9万人、令和3年度に214.9万人、令和4年度に215.4万人と増えてきました。平成12年度からはおよそ4倍ですが、2018年度に集計方法が変わっているため、目安として見てください。
令和5年度・6年の動き
令和5年度の介護職員数は212.6万人で、公表資料では前年比2.9万人の減少とされ、調査上、初めての減少でした(令和6年12月25日公表)。令和6年(2024年10月1日)の調査では2,126,227人で、約212万人台でほぼ横ばいです。
2026年度の必要数約240万人に対し、現状は約212万人台で、差は約28万人ですが、基準や数え方が異なるため不足人数とは言えません。
要介護(支援)認定者数の増加
サービスを使う側の人数も増えています。
- 平成12年度:244万人
- 令和5年度:705万人
- 令和7年12月(暫定):736.0万人(第1号被保険者3,586万人、65歳以上の認定者の割合は約20.2%)
必要数はサービスの見込み量をもとに推計されます。認定者数は、その見込みを考える際の参考となる数字の一つです。
求人倍率と離職率からみる人材確保の状況
人材の確保がどの程度難しい状況にあるかを、求人倍率と離職率の数字で見ます。
有効求人倍率
厚生労働省の福祉人材確保専門委員会の資料(令和7年5月9日)では、介護関係職種の有効求人倍率が示されています。パートタイムを含む常用の原数値です。
| 時点 | 介護関係職種 | 全職業 |
|---|---|---|
| 令和元年度 | 4.23倍 | - |
| 令和3年度 | 3.62倍 | - |
| 令和5年度 | 4.07倍 | - |
| 令和6年度 | 4.08倍 | 1.14倍 |
| 令和7年3月(単月) | 3.97倍 | 1.16倍(職業計) |
都道府県別(令和7年3月)では、地域差が大きくなっています。
- 東京都:7.65倍
- 奈良県:5.25倍
- 岩手県:2.14倍
離職率
介護労働安定センターの調査にもとづく資料の数字です。
- 令和5年度の介護職員の離職率は13.1%(同じ資料に併記された産業計は15.4%)
- 離職率が10%未満の事業所は約5割
- 30%以上の事業所も約1割
事業所によって差が大きいことが分かります。調査の詳しい読み方や最新の数字は介護職員の離職率を解説した記事で整理しています。
必要数との関係の読み方
求人倍率が高い状態は、求職者1人あたりの求人が多いことを示します。必要数の増加が見込まれるなかで、新しく職員を確保することと、今いる職員が働き続けることの両方が課題になります。国の対策は入職促進と離職防止の両面で組まれています。
高齢者人口の見通し
サービスを使う側と支える側の人口が、今後どう変わる見通しかを確認します。
65歳以上・85歳以上
国立社会保障・人口問題研究所の令和5年推計をもとにした資料では、65歳以上の人口は2025年の3,653万人から2040年に3,928万人(+7.5%)へ増えます。介護の必要性が特に高まりやすい85歳以上は、707万人から1,006万人へ、+42.2%の増加です。
| 年齢区分 | 2025年 | 2040年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 65歳以上 | 3,653万人 | 3,928万人 | +7.5% |
| 85歳以上 | 707万人 | 1,006万人 | +42.2% |
| 15〜64歳 | 7,310万人 | 6,213万人 | ▲15.0% |
15〜64歳の減少
介護の担い手になりうる15〜64歳は、同じ資料で2025年の7,310万人から2040年の6,213万人へ、15.0%減る見通しです。2040年の総人口は11,284万人とされています。85歳以上が増える一方で、15〜64歳が減る見通しです。
地域による違い
高齢化の進み方は地域で異なります。資料では、2025年から2040年の変化として、大都市型で+17.2%、過疎地域型で▲12.2%という値が示されています(対象は資料の区分による)。なお、令和7年版高齢社会白書によれば、2024年10月1日現在の65歳以上人口は3,624万人(29.3%)、75歳以上は2,078万人です。
都道府県別の違い
必要数は都道府県ごとに公表されており、伸び方にも違いがあります。
主な都道府県の必要数
第9期の都道府県別の数字から、いくつかの都道府県を抜粋します(単位は人。2022年度は実数、2026年度・2040年度は必要数)。右端は2040年度の必要数を2022年度の実数で割った倍率です。
| 都道府県 | 2022年度(実数) | 2026年度(必要数) | 2040年度(必要数) | 2040/2022の伸び |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 100,523 | 113,701 | 129,055 | 約1.28倍 |
| 埼玉県 | 98,862 | 121,799 | 143,812 | 約1.45倍 |
| 東京都 | 181,690 | 212,525 | 258,191 | 約1.42倍 |
| 神奈川県 | 145,016 | 168,664 | 197,985 | 約1.37倍 |
| 愛知県 | 104,845 | 128,461 | 145,175 | 約1.38倍 |
| 大阪府 | 193,974 | 215,481 | 235,210 | 約1.21倍 |
| 福岡県 | 86,049 | 94,458 | 110,072 | 約1.28倍 |
| 沖縄県 | 21,518 | 24,902 | 33,786 | 約1.57倍 |
| 福井県 | 13,693 | 12,349 | 12,802 | 約0.93倍 |
| 鳥取県 | 10,802 | 11,787 | 12,745 | 約1.18倍 |
伸び方の違い
表のとおり、埼玉県は約1.45倍、東京都は約1.42倍になる一方、大阪府は約1.21倍にとどまるなど、都道府県によって伸びは異なります。
一方、福井県のように、2026年度の必要数(12,349人)が2022年度の実数(13,693人)を下回る県もあります。この理由は、公表資料からは読み取れません。
お住まいの地域の数字を調べるには
都道府県別の数字は、厚生労働省の公表資料(別紙5)に全都道府県分が掲載されています。2022年度の実数、2026年度と2040年度の必要数、現状推移見込みを並べて確認できます。市町村単位の計画の内容は、各市町村の介護保険担当課や、都道府県のホームページで公表されている介護保険事業計画で確認できます。
国の人材確保対策と令和8年度の処遇改善
国は、必要数の公表と合わせて人材確保対策を示しています。ここでは概要と、令和8年度の処遇改善を紹介します。
5本柱の人材確保対策
国は第9期の必要数の公表と合わせて、人材確保対策を5本の柱で整理しています(令和6年7月12日、別紙4)。
処遇改善では、令和6年度の報酬改定で加算を一本化し、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップにつながる加算率の引上げが行われています。そのほかの柱の具体策は、公表資料(別紙4)で確認できます。
令和8年度の処遇改善
令和7年12月23日の令和8年度介護報酬改定に関する審議報告では、処遇改善加算の拡充が示され、施行は令和8年6月とされました。令和8年3月の厚生労働省の資料では、内訳は次のとおりです。
- 介護従事者に月1.0万円(3.3%)
- 生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員に、さらに月0.7万円(2.4%)を上乗せ
- 定期昇給の0.2万円を含めると、合計で最大月1.9万円(6.3%)
令和9年度の改定に向けては、加算の考え方を整理するとされています。実際に受け取れる金額は、事業所ごとの届出状況や算定要件によって異なります。仕組みの詳細は介護職員等処遇改善加算を解説した記事をご覧ください。
対策の効果を読むときの注意
前述のとおり、現状推移見込みには、これらの新たな施策の効果が含まれていません。対策がどの程度の効果を持つかは、今後の調査で確かめられていくものです。
外国人材の受入れ制度
外国人材の受入れも、国の対策の1つです。制度の概要だけ紹介します。
介護分野の4つの制度
厚生労働省の整理では、外国人が介護分野で働く制度として、次の4つがあります。
- EPA(経済連携協定)
- 在留資格「介護」
- 技能実習
- 特定技能
特定技能の概要は特定技能「介護」を解説した記事にまとめています。
育成就労制度の施行予定
技能実習に替わる育成就労制度は、令和9年(2027年)4月1日の施行が予定されています。予定は今後変わる可能性がありますので、最新の状況は厚生労働省のページでご確認ください。
家族・就業希望者にとっての意味と注意点
ここまでの数字を、ご家族の立場と就業を考える立場から、どう受け止めればよいかをまとめます。
ご家族の立場で
必要数は、全国や都道府県単位の計画上の見込みです。将来サービスが受けられなくなることを示す数字ではなく、特定の施設や事業所の職員が足りているかどうかもこの数字からは分かりません。地域の事業所の情報や介護サービスへの不安は、市区町村の介護保険担当課や地域包括支援センターに相談できます。
就業を考えている方の立場で
求人倍率が高く、必要数の増加が見込まれていることは、求人が多く出ている状態を示します。ただし、これは「働きやすい」「待遇がよい」ことを示すものではありません。離職率の事業所ごとの差が大きいことからも分かるように、職場の状況はさまざまです。就業を考える場合は、処遇、研修、勤務体制などを複数の事業所で同じ項目で確認することが大切です。転職の考え方は介護職の転職を解説した記事も参考になります。
当サイトは、特定の事業所や求人を評価・推奨したり、仲介したりすることはしていません。求人の探し方や応募の可否は、ハローワークなどの公的な窓口や、ご自身の判断で確認してください。
制度改定・第10期での再推計
介護保険部会(第121回、令和7年6月2日)では、介護保険制度が原則3年1期のサイクルで運営されることを前提に、制度改正は2027年度に始まる第10期の計画に反映することを念頭に議論されました。意見書は令和7年12月25日に公表されています。第10期の計画づくりにあわせて、介護職員の必要数も再推計されうる点には注意が必要です。
この記事の数字は、令和6年7月公表の第9期のものです。介護保険制度は法改正や報酬改定で内容が変わりうるため、最新の数字や制度は、厚生労働省や都道府県、市区町村の公表資料でご確認ください。個別の事情に関する判断は、各窓口や専門家にご相談ください。
まとめ
- 介護職員の必要数は、市町村の見込み量をもとに都道府県が推計し、国が集計した、実人員ベースの数字。第9期は2022年度の約215万人に対し、2026年度に約240万人、2040年度に約272万人。不足人数そのものではない。
- 第9期の数字は2022年度との比較で、2019年度基準の第8期とは基準が異なる。第8期の2040年度は約280万人。
- 実際の職員数は令和6年に約212万人台でほぼ横ばい。介護関係職種の有効求人倍率は令和6年度で4.08倍。
- 85歳以上は2025年から2040年に+42.2%、15〜64歳は▲15.0%の見通し。都道府県別の伸びは表で確認できる。
- 必要数は第10期(2027年度開始)で再推計されうる。最新の制度は公的機関の資料で確認する。
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