福祉人材センターは、無料で福祉・介護の仕事を探せる公的な相談窓口で、離職した介護福祉士等の届出の受付先でもあります。この届出は、再就職準備金(貸付)の要件にも関わるため、復職を考える人は早めに知っておくと役立ちます。
制度や運用は改正や自治体の判断で変わることがあるため、記事の内容は執筆時点の公的情報にもとづく目安としてお読みください。
この記事で分かること
- 福祉人材センターの役割と、利用にかかる費用
- 求職者・事業所それぞれの使い方
- ハローワーク・ナースセンターとの違い
- 離職介護福祉士等の届出と、再就職準備金との関係
- 人材動向の統計と、利用するときの注意点
福祉人材センターとは
定義と役割
福祉人材センターは、社会福祉事業に従事する人材の確保を目的として、社会福祉法に位置づけられた機関です。都道府県ごとに置かれる「都道府県福祉人材センター」と、全国に1つだけ置かれる「中央福祉人材センター」の2層で構成されています。厚生労働省の福祉人材確保対策のページでは、各都道府県に1カ所ずつ設置され、無料の職業紹介、説明会・講習会の開催、経営者向けの相談、介護の有資格者を対象とした届出制度などを行う機関として説明されています。
対象は介護に限らず、福祉分野全般です。本サイトは介護の情報サイトのため、以下では介護職の就職・転職・復職と、介護事業所の採用を中心に解説します。
主な利用者
ひとつは、福祉・介護の仕事に就きたい、あるいは戻りたいと考える求職者です。未経験の人、他の事業所へ移る人、育児や介護で離職したあとに復職を考える人が含まれます。もうひとつは、職員を採用したい社会福祉法人や介護事業所などの事業主で、求人の申込みのほか、採用や定着に関する相談・研修も受け付けています。
よくある誤解
「ハローワークの別名」「民間の人材サービスと同じ」と思われがちですが、福祉人材センターは社会福祉法にもとづく福祉分野専門の機関で、運営は多くの場合、都道府県社会福祉協議会が担っています。名称も地域で異なり、大阪府では「福祉人材支援センター」、和歌山県では愛称として「ハートワーク」が使われています。名称が違っても、同じ制度にもとづく窓口です。
福祉人材センターの事業内容
全国共通の事業
厚生労働省のページによると、令和3年度の実績は、新規求人が260,480人、新規求職者が56,446人、求人・求職相談が350,665件でした。これは福祉分野全体の実績で、介護職に限った数値ではありません。
自治体の事例から見る事業
各センターの事業は、自治体や社会福祉協議会の公表資料で具体的に確認できます。
| 県 | 名称・運営 | 主な取り組み |
|---|---|---|
| 島根県 | 県が県社会福祉協議会へ委託 | 無料の職業紹介、就職ガイダンス・合同面接会、事業所への巡回、啓発・調査研究、福祉職員の生涯研修・経営者研修、介護福祉士国家試験の対策セミナー |
| 和歌山県 | 愛称「ハートワーク」。職業紹介は無料と明記 | 就職フェア、未経験者向けの介護就職セミナー、出張相談、小中高生向けの出前講座、職場体験、介護有資格者の登録、再就職支援 |
| 大阪府 | 大阪府社会福祉協議会(福祉人材支援センター) | 無料職業紹介、就職フェア、セミナー、職業アドバイス、貸付制度の案内、職場体験。ハローワーク梅田・大阪西・淀川・門真・岸和田で出張相談(参加無料・要予約・25〜40分) |
大阪府の相談には「キャリア支援専門員」が対応しますが、職名や配置は県によって異なる可能性があります。
求人・求職以外の事業
求人と求職をつなぐだけでなく、その手前(小中高生向けの出前講座や職場体験)と、就職後(職員・経営者向けの研修による定着やキャリアアップの後押し)の段階にも働きかけている点が特徴です。開催日程、定員、受講料の有無は県や研修によって異なります。
利用方法と費用
基本的な利用の流れ
求職者の側から見た基本的な流れは、おおむね次のとおりです。ここでは大阪府の案内にみられる要素を例にしています。
- 全国サイト「福祉のお仕事」などで求人情報を確認する。
- マイページの作成や求職票(希望条件や経歴を登録する書類)の登録を行う。
- 窓口、電話、出張相談などで相談する。窓口は予約が必要な場合があり、大阪府の出張相談は要予約です。
- 希望に合う求人があれば、応募や見学などの調整を依頼する。
- 就職フェアや合同面接会、職場体験などに参加する。
求職者の費用
求職者にとって、職業紹介の利用は無料です。和歌山県は「職業紹介事業は無料」と明記しており、大阪府の出張相談も参加無料としています。第93条が、無料の職業紹介事業の許可を指定の条件としていることとも一致します。一方、研修やセミナーの受講料は県や内容によって異なるため、申込み前に募集要項を確認してください。
事業所の費用
事業所側の手数料などは、確認した公的資料からは分かりませんでした。確認すべき項目は、後述の「事業所の使い方」にチェックリストとしてまとめています。
求職者の使い方
どのような人が使いやすいか
- 未経験から介護の仕事に就きたく、まず仕事の内容や資格の取り方を知りたい
- 介護の資格を持っているが、しばらく現場を離れている
- 育児や家族の事情で離職し、復職を考えている
- 介護福祉士の取得や研修の受講費用について相談したい
和歌山県の例のように、未経験者向けの入門セミナーや職場体験が用意されている場合があります。仕事内容を体験してから応募を判断できるため、ミスマッチを避ける手段になりえます。
相談前に整理しておきたいこと
- 保有資格(介護福祉士、実務者研修、初任者研修など)と取得時期
- これまでの実務経験の年数と職種
- 希望する働き方(常勤・非常勤、日勤のみ、夜勤の可否など)
- 通勤可能な範囲と、働き始めたい時期
- 資格取得や研修受講について、費用面の相談をしたいかどうか
資格の種類は、貸付制度や届出制度の対象かどうかにも関わります。介護職への転職全体の流れは、介護職への転職ガイドで有効求人倍率や給与相場とあわせて解説しています。
相談したあとの流れ
相談後は、求人への応募や見学、面接、就職フェアへの参加などに進みます。採否や条件は応募先の事業所が判断するため、待遇や勤務条件は求人票だけでなく、面接や見学の場でも直接確認しましょう。
事業所の使い方
求人の申込み
社会福祉法人や介護事業所などは、福祉人材センターに求人を申し込めます。全国サイト「福祉のお仕事」への求人掲載や、窓口での相談が基本となります。
事業所向けの手数料や運用は、確認できた公的資料では分かりませんでした。申込み前に、次の項目を利用予定のセンターへ確認してください。
- 手数料の有無と金額
- 求人の受付方法(窓口・電話・インターネットなど)
- 求人の受付時期と掲載期間
- 求人票の作成に必要な書類
採用・定着に関する支援
センターは経営者に対する相談・援助や研修も業務としており、島根県の例では事業所の巡回や経営者向けの研修が行われています。求人票を出すだけでなく、採用のしかた、職場環境の整え方、定着の取り組みについても相談できる点が特徴です。また、社会福祉法第95条の3第3項は、介護福祉士等の届出が適切に行われるよう、事業経営者が支援に努めることを定めています(次々章で解説)。
ハローワーク・ナースセンターとの違い
3つの窓口の比較
| 福祉人材センター | ハローワーク | ナースセンター | |
|---|---|---|---|
| 対象 | 福祉分野全般 | 幅広い職種 | 看護職 |
| 運営 | 多くは都道府県社会福祉協議会 | 国の機関 | 中央ナースセンターは日本看護協会が指定 |
| 特徴 | 社会福祉法にもとづく福祉専門の窓口 | 一部に福祉人材コーナーがある | 看護師等の人材確保の促進に関する法律にもとづく |
ハローワーク(福祉人材コーナー)との違い
一部のハローワークには、福祉分野に特化した「福祉人材コーナー」が設けられています。新潟労働局の平成29年の資料では、予約制・担当制の職業相談と職業紹介、セミナー、施設見学会、公的職業訓練の案内、面接会などを行うと説明されており、福祉人材センターとの連携事業(介護就職デイ)も示されています。現在の設置状況は資料では確認できていないため、お近くのハローワークへお問い合わせください。
どちらが優れているということはなく、役割が異なります。両方を併用する人もおり、大阪府のようにハローワーク内で福祉人材センターの出張相談が行われている例もあります。
ナースセンターとの違い
ナースセンターは看護職を対象とした、別系統の仕組みです。介護施設で働く看護師が相談したい場合などは、状況に応じてどちらの窓口が適切かを各センターに確認してください。
民間の人材サービスとの位置づけ
民間の人材サービスもありますが、本サイトは特定の事業者を評価・比較しません。制度面では、福祉人材センターは公的機関が行う無料の職業紹介である、という点を押さえておけば十分です。
離職介護福祉士等の届出制度
制度の概要
離職した介護福祉士等が、その旨を都道府県福祉人材センターに届け出る仕組みがあります。社会福祉法第95条の3にもとづき、厚生労働省は「介護福祉士等の届出制度」として案内しています。
- 第1項:離職した場合などに、住所・氏名などを都道府県福祉人材センターへ届け出るよう努める
- 第2項:届出事項に変更があった場合も、同様に届け出るよう努める
- 第3項:事業経営者は、届出が適切に行われるよう支援に努める
いずれも「努める」という努力義務(するよう努めるべきものであり、しなくても罰則はない義務)です。目的は、離職した有資格者と継続的につながり、復職を支援することにあります。
届出の対象者
厚生労働省の案内によると、対象は介護福祉士です。このほか、初任者研修、実務者研修、旧ホームヘルパー1級・2級、旧介護職員基礎研修の修了者も届出ができます。資格を未取得の学生は対象外で、届出は本人のみが行えます。
届出の方法と項目
届出は、原則として居住地の都道府県福祉人材センターに対して行います。「福祉のお仕事」の届出サイトからインターネットで行え、インターネット環境がない場合は書面でも可能です。届出項目は、氏名・生年月日、住所・連絡先、登録番号・登録年月日、就業に関する情報です。届け出た情報は、復職支援にのみ使われるとされています。
届出後に受けられる支援
届出をすると、求職を始める前の段階から、センターによる働きかけや情報提供を受けられます。復職を支援する研修や、職業紹介の利用にもつながります。離職後すぐに働く予定がなくても、将来の復職の選択肢を広げるために届け出ておく人もいます。
修学資金・再就職準備金との関係
貸付事業の枠組み
福祉人材センターは、人材確保のための貸付制度とも関係します。ただし貸付の実施主体は、都道府県(県社会福祉協議会への委託を含む)または都道府県が適当と認める団体で、福祉人材センターが一律の実施主体というわけではありません。厚生労働省発社援0507第3号(令和3年5月7日最終改正)の実施要綱が示す対象事業は、介護福祉士修学資金、福祉系高校修学資金の返還充当資金、実務者研修受講資金、離職した介護人材の再就職準備金、障害福祉分野就職支援金、社会福祉士修学資金です。
貸付額の目安
実施要綱に記載された貸付額の上限は次のとおりです。いずれも無利子で、保証人が必要です。
| 事業名 | 上限額 | 備考 |
|---|---|---|
| 修学資金 | 月5万円以内 | |
| 入学準備金 | 20万円以内 | |
| 就職準備金 | 20万円以内 | |
| 国家試験対策費用 | 年4万円以内 | |
| 実務者研修受講資金 | 20万円以内 | |
| 再就職準備金 | 40万円と、計画書に記載した額のうち少ないほう | 1人1回限り |
| 障害福祉分野就職支援金 | 20万円以内 | 1回 |
県ごとに額や返還免除の条件が異なる可能性があるため、申し込む場合は各県の社会福祉協議会などが公表する要綱で確認してください。修学資金の仕組みは介護福祉士等修学資金貸付制度の記事で解説しています。
再就職準備金と福祉人材センターの届出
離職した介護人材の再就職準備金では、福祉人材センターへの届出・登録が要件のひとつです。要綱の主な要件は次のとおりです。
- 介護福祉士、実務者研修修了者、または初任者研修修了者であること。
- 介護職員等としての実務経験が1年以上あること(雇用期間が通算365日以上で、実際の従事日数が180日以上)。
- 就労した人、または就労予定の人であること。
- 直近の離職日から再就労日までの間に、都道府県福祉人材センターへ届出または登録し、利用計画書(貸付の利用について記入して提出する書類)を提出すること。離職後に届出をしていないと、要件を満たせない可能性があります。
- 1人1回限りであること。
貸付額や返還免除の条件は、介護職員再就職準備金貸付制度の記事に整理しています。復職を考える人にとって、届出は貸付の利用にも関わる重要な手続きです。
法的根拠(社会福祉法の規定)
福祉人材センターに関する規定は、社会福祉法の第93条から第101条にあります(続く第102条から第106条は福利厚生センターの規定で、別の組織です)。
- 第93条:都道府県知事が、社会福祉法人のうち都道府県ごとに1つに限って「都道府県福祉人材センター」として指定できる。条件は、職業安定法にもとづく無料の職業紹介事業の許可を受けていること。実際には都道府県社会福祉協議会が指定を受けるのが一般的
- 第94条:啓発活動、従事者の確保に関する調査研究、経営者に対する相談・援助、従事者への研修、従事者の確保に関する連絡、無料の職業紹介、就業の促進に関する情報提供・相談
- 第99条:厚生労働大臣が全国に1つに限って「中央福祉人材センター」を指定できる。指定を受けているのは全国社会福祉協議会で、全国規模の取り組みを担い、「福祉のお仕事」を運営している
これらの土台には、厚生労働大臣が定める「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための基本的な指針」(第89条)があり、福祉人材センターの事業は、この指針に沿った人材確保策の実行部隊と位置づけられます。
介護人材の動向(統計)
福祉人材情報システム上の数値
厚生労働省の資料には、福祉人材情報システム上で確認できた、2022年4月から12月までの累計が示されています。新規求人数は195,764、新規求人件数は98,901、新規求職者数は41,670、採用人数は3,144(うち紹介による採用が3,011)でした。令和3年度の年度全体の実績とは期間が異なるため、直接比較はできません。
介護労働実態調査から見る採用・不足感
介護労働安定センターの令和6年度介護労働実態調査(令和6年10月1日現在、事業所調査の有効回答9,044件)では、次の結果が示されています。
| 区分 | 採用率 | 離職率 | 人手の不足感 |
|---|---|---|---|
| 全体(2職種計) | 14.3% | 12.4% | 65.2% |
| 訪問介護員 | 14.1% | 11.4% | 83.4% |
| 介護職員 | 14.4% | 12.8% | 69.1% |
人手の不足感は「大いに不足」「不足」「やや不足」の合計です。同じ調査では、採用活動のなかで「ハローワークや福祉人材センターの担当者に相談」したと答えた事業所が、8,978事業所のうち66.9%でした。そのうち採用に効果があったとする回答は40.1%です。この設問はハローワークと福祉人材センターを合わせたものです。人手不足感が令和6年度調査で65.2%にのぼるなか、多くの事業所が公的な窓口を採用に利用している、というのが福祉人材センターを使う背景です。離職率や必要人数の推計は、介護職員の離職率や介護職員の必要数の記事も参考になります。
利用するときの注意点
センターごとに運用が異なる
福祉人材センターは都道府県ごとに運営されており、名称、窓口の場所、事業の内容、予約の要否、職員の職名などが異なります。この記事の島根県、和歌山県、大阪府の事例は一例ですので、お住まいの地域のセンターの案内を必ず確認してください。
制度の変更
制度は改正されることがあり、届出制度や貸付制度の要件・金額、条文番号も変わる可能性があります。最新の内容は、厚生労働省の公表資料や各都道府県のセンターで確認してください。
採用や貸付は保証されない
センターへの相談や届出をしても、就職や採用、貸付の決定が保証されるわけではありません。貸付には保証人が必要です。応募先の採否は事業所が決めるため、条件の詳細は求人票や契約書類で確認し、不明点は応募先に直接質問してください。
個人情報の扱い
届出や登録では、氏名、住所、資格情報などの個人情報を扱います。厚生労働省は届出情報を復職支援にのみ使うとしています。登録の前に、各センターの個人情報の取扱方針を確認しておくと安心です。
まとめ
- 福祉人材センターは社会福祉法第93〜101条にもとづく福祉分野の人材確保機関で、都道府県ごとに1カ所、全国に中央福祉人材センターがある
- 職業紹介は無料で、就職フェア・研修・事業所への相談なども行う。研修の受講料や事業所側の費用は各センターに確認する
- 離職した介護福祉士等の届出は努力義務で、再就職準備金は福祉人材センターへの届出・登録が要件のひとつ
- 名称・運用は県で異なり、制度も変わりうるため、最新情報は厚生労働省と各センターで確認する
次の一歩
- お住まいの都道府県の福祉人材センターを探す。
- 保有資格、経験、希望の働き方など、相談前に条件を整理する。
- 予約が必要か確認したうえで、予約して相談する。
復職を希望する介護福祉士等の人は、相談の前に届出を済ませておくと、再就職準備金の要件との関係でも安心です。事業所は、手数料・受付方法・掲載期間・必要書類を事前にセンターへ確認したうえで、求人を申し込みましょう。
本サイトは、特定の施設や事業者を評価・推奨せず、公的情報を並列に扱う方針で運営しています。詳しくはこのサイトの立ち位置をご覧ください。